一方、こちらは先ほどエルギガンデスなどの魔獣を殲滅し、これからのことについて話していたエスピリトを初めとする妖精たち一行がいる場所である。 「じゃあそれぞれ別の場所の救援に…」 他の妖精たちを指揮していたエスピリトがそう言いかけた途端、彼らの上空を身体が一部機械となっている魔獣が猛スピードで飛んで通過した。 紛れもなくグリルの命令で女王を探して星のあちこちを飛び回り始めたボーラルである。 「はっ!??」 その姿を見たエスピリトはなにかを本能的に感じ取ったらしく…。 「皆!これから城へ戻って女王様の護衛に戻るグループと別の場所の救援に向かうグループに分かれよう!」 「兵士長?いきなり何を言ってるんですか?城へ戻るって…」 一人の妖精が指示を変えたエスピリトに疑問を抱き、それを声に出して言った。 「今、空を飛んでいったあいつからは物凄い殺気を感じた…。あんな奴がもし女王様のところへ行ったら女王様が危険だ……!」 「と言うことは?」 「僕とプリステスはもし奴が城に来たらの事を考えて念のため城へ戻る!皆は他の場所の救援に急いで!」 エスピリトは素早く他の妖精たちに指示を与えるとプリステスと共に城の方向へ飛んでいってしまった。 「気をつけてくださいね〜!」 そして、二人を見送った他の妖精たちも複数のグループに分かれてそれぞれ別の方向で戦っている兵士たちを助けに行くべく飛び立った。 「(あの女王様はどこへ隠れているものやら…)」 女王を探し出して殺すために自ら動き始めたボーラルは空を飛んで女王の居場所を捜索中であった。 しばらく飛んでいると、ボーラルは大きな城のような形をした妙な建物を見つけた。 「(あの大きなお城は…?あそこが怪しそうですね、妖精たちが集まっていてまさに女王がそこにいると示してるみたいです)」 そしてボーラルは妖精たちが陣形を作っている城のような建物の門の前に降り立った。 「ふっふっふ……。ようやくこの身体で初めて戦うときが来たようですね…」 「!!」 自分たちの目の前に降りてきたボーラルに陣形を作っていた妖精たちはいきなり、それも一斉にエネルギー波を撃ってきた。 「ん?」 妖精たちの撃った無数のエネルギー波がボーラルに炸裂する。 いつしかエネルギー波の起こす爆発と煙で妖精たちの側からはボーラルの姿は見えなくなってしまう。 「や…やったのか…?」 妖精たちはボーラルを倒したかどうか確認するために一旦エネルギー波を撃つのをやめた。 煙が晴れた後、そこにはボーラルの姿はなかった。 「…倒したみたいだ」 「どこを見ているのです?」 妖精たちは倒したかと思ったが、すでに自分たちの後ろに敵…ボーラルの姿はあった。 「!!い、いつの間に……!」 「MTSに逆らう者は皆殺しです!!」 ドシュゥゥゥゥゥン!! 「「わああああぁぁぁああぁっ!!」」 驚いている妖精たちに向けてボーラルはそう言い放ち、手のひらを前に突き出し、そこから赤紫色のエネルギー波を発射した。 妖精たちはエネルギー波を浴び、遠くへ吹っ飛ばされてしまう。 「さて、これでもうお城を守る者たちはいなくなりました。さあ貴方たち、お城の中の妖精の皆さんを痛い目にあわせてやりなさい!!」 するとボーラルの号令でどこからともなく宇宙船から持ち込んできたと思われるラガルトンシリーズとアンドロンシリーズ、ドロシアが生み出した絵画の魔獣たちが集まってきて、ボーラルを通り過ぎ、城の大きな扉を壊して城内へと突撃していった。 大量の雑兵魔獣たちが城内へ侵入し、妖精たちが混乱する中、ボーラルも城内へと入っていった。 ボーラルが『女王が逃げ込んでいるかもしれない』と考えた城の建物内はまだたくさんの兵士妖精たちがおり、現在城内は、彼らと無数の雑兵魔獣が入り乱れて戦っているという、大混乱な状態となっていた。 ボーラルはそれをまったく気にすることなく、妖精たちが雑兵の魔獣に気を取られている隙に自身は天井すれすれの部分を高く飛び、討ち取るべき標的であるこの国の女王にしてこの星の支配者である、巫女のような姿をした妖精を探し回っていた。 しばらく探し回っていると、ボーラルは自由に空を飛んで空中戦が充分できるほどの広さがある大広間へとたどり着いた。 だが、その部屋にたどり着いて床に降りた途端、ボーラルは何かの気配に気づいたが、気づいたときにはもう彼らは近くまでやってきていた。 「「もう諦めるんだ!」」 ボーラルはその部屋に着いてすぐに待ち伏せていたと思われる妖精たちに取り囲まれてしまったのだ。 この妖精たちを率いていたのは、少年のような姿をした妖精で、先ほどボーラルの姿を見て何か危険を感じ、城に戻ったエスピリトと、彼についていった銀色の髪の毛と青いマントが特徴の妖精のプリステスの二人であった。 「まったく…次から次へと懲りない方たちですね…」 ボオオオオッ! 「「わあああ!」」 ボーラルは倒しても次々と出てくる妖精たちに呆れている様子であり、取り囲んでいた妖精たちを火球で吹き飛ばした。 火球を受けた妖精たちは、倒れて動けなくなってしまう。 残されたのはエスピリトとプリステスだけだ。 「はあっ!!」 しかし、二人は他の妖精たちが倒されても怯むことなく、勇敢にボーラルに立ち向かう。 プリステスは閃光を放ってボーラルの視界を奪おうとした。が、しかし。 「ふぅん!!」 「きゃっ!!!」 ズゴォォォン! ボーラルはプリステスの目の前までまるで瞬間移動をしたかのように一瞬でやってきて、パンチを喰らわせる。 パンチを浴びたプリステスは後方に強く吹っ飛ばされ、壁にめり込んで気を失ってしまう。 「ここにいるのはもう貴方一人ですか」 「くっ…、女王様には指一本も触れさせない!!」 「ほっほっほ。その意気です…と言いたい所ですが、果たしてそんなに上手くいくものなのでしょうかね…」 ボーラルは相変わらず落ち着いた態度をとっており、その不気味さはエスピリトに恐怖を植え付けるのには充分なものであった。 しかし、エスピリトはここで退くわけにはいかない。彼には主君である女王を守るという使命があるのだ。 こうして、エスピリトとボーラルの一騎打ちが始まった。 エスピリトとボーラルは空を飛び、空中戦を展開する。 「ふっ!!」 ビシュン!! 先手を取ったのはエスピリト。彼はボーラル目掛けて魔力弾を撃ち出す。 ズガン!! ボーラルはそれを腕で防ぐと、両腕に装着されたビームガトリングガンから光弾を連射する。 ズドドドドドドドドドッ!! 「くっ!!」 エスピリトはビームガトリングガンの攻撃を自分の目の前にバリアーを張って防御しつつ、エネルギー波を手のひらから発射。 「ん?」 攻撃の最中で防御行動をとることができなかったボーラルにエネルギー波が直撃する。 だが、ボーラルはダメージを受けた様子を見せず、エスピリトに殴りかかってきた。 接近戦はエスピリトの方がやや不利だ。 エスピリトはボーラルの攻撃を受け流して魔力弾を彼の腹部に撃ち込んだ。 「ぐぅっ!!」 零距離で放たれた魔力弾はボーラルに少しダメージを与えたようで、彼は後退した。 「思ったよりもやるじゃないですか…」 「甘く見てもらっちゃあ困るよ!」 続けてエスピリトは両手を使った強力なエネルギー波をボーラル目掛けて撃ち出した。 「ほっほっほ、そんなものですか?」 それに対してボーラルは顔色一つ変えずに右背部に装備されている大型ミサイルランチャーを起動させ、そこからミサイルを撃つ。 ドガァァァァァン!! 「うわっ!!」 「うおお!!」 エネルギー波と大型ミサイルが衝突して大爆発が起き、二人を吹き飛ばした。 「くそっ、まだまだ!」 エスピリトは吹っ飛ばされても攻撃の手を休めず、吹っ飛ばされてる最中にも両手で魔力弾を作り出してボーラルに投げつける。 しかし、その魔力弾をボーラルは避けてエスピリトに急接近、彼に強力なパンチを入れた。 「うあああっ!!」 エスピリトは更に吹っ飛ばされて壁に激突、そして床に倒れこんだ。 「くっ…はぁはぁ……」 エスピリトの方はもう限界のようで、床に倒れたまま、立ち上がることが出来ない。 ボーラルの方はまだ平然とそのエスピリトの近くに立っていた。 「もうお終いですか?こんな早く終わってしまうとは…ちょっとガッカリしましたね」 「く、くそ……」 ボーラルは動けないエスピリトに歩み寄って彼の首を掴んだ。 「さあ、どうやって殺して差し上げましょうかね?」 「(じょ、女王様…私はどうやら…ここまでのようです…)」 抵抗する事ができず、止めを刺されそうになったエスピリトに悔しさが滲んだ。 しかしそのとき、ボーラルもエスピリトも予想外の出来事が起きた。 ボオオオオッ!!! 「な?ぐわあ!!」 「!?」 エスピリトを掴んでいたボーラルの右横の方向から火球が飛んできたのだ。 火球の威力は充分だったようで、ボーラルを大きく吹っ飛ばした。 エスピリトがその方向を見ると、彼がよく知る人物……女王が立っていたのだ。 「じょ、女王様!」 「なに……?」 女王はエスピリトの元へ駆け寄ってくる。 「エスピリト、貴方はもう充分戦いました。あの者は私が倒します」 「で、ですが…それでは貴方の身が…」 「エスピリト、下がってください」 駆けつけた女王の言葉を聞いてエスピリトは傷だらけの身体のままなんとか起き上がり、大広間から壁にめり込んで気を失っていたプリステスや、他の兵士妖精などを連れて撤退した。 「これはこれは、女王様がわざわざ自分から来てくれるとは…。探し出して殺しに行く手間が省けましたよ」 「もうこの国を攻撃するのはやめてください」 「その言葉が私に通じるとでも?」 「通じないのなら私が貴方の身体にこの国を襲ったらどうなるのかをお教えしましょう」 「随分と偉そうな態度をとりますねぇ…。まあいいでしょう。貴方はもうじき死ぬのですから…」 「わかりませんよ?」 「たいした自信ですねぇ…。それとも恐怖のあまり頭がおかしくなったのですか?」 「………………」 「では私の方から行きますよ?でやあああっ!!」 言葉の応酬の中、最初に攻撃をしたのはボーラルだった。 目の前に立っている女王目掛けてボーラルは殴りかかる。 ボーラルは物凄い速さで女王を殴れる距離まで近づいたが…。 ズドォン! 「どうぁあ!!」 女王は顔色を変えずに、接近してきたボーラルにエネルギー波を撃ち、吹き飛ばす。 エネルギー波を浴びたボーラルは床を転がり、壁にぶつかった。 「い…今のは少し効きましたよ…ですが…」 ボオオオッ! 「がああっ!!」 ボーラルは何か言いかけたが、女王は容赦なく掌から火球を撃ってボーラルを攻撃する。 「私としたことが…たったの攻撃2回だけで……こんな…」 「終わりにしましょう。私は他の者の命など奪いたくありません」 「お…おのれ……」 ボーラルは身体に力を入れて起き上がろうとするが、エネルギー波と火球のダメージが大きく、起き上がるにも起き上がれない。 しかし…。 「情けないわね〜、なんでこんなのに負けちゃってるのよ」 そんな危機に陥ったボーラルを助けにやって来た……というよりは、後から向かうと言ってボーラルと共に女王を探さなかった魔女・グリルがやってきた。 「ほ…っほほ…。ま、まさかこんな事になろうとは思いもしませんでしたし………」 「まあいいわ。私が今からお手本を見せてあげる」 そしてグリルは女王と向き合い、いつものような相手を見下した態度で話し始めた。 「あんたみたいなのにボーラルがやられた理由がよくわからないけど、『宇宙で2番目に強い』私を倒すことなんてできないわよ」 「…貴方たちは、絶対に戦いをやめる気はないのですね?」 「当たり前じゃない!あんたを倒すまでは…ね」 「じゃあ仕方ありません」 女王は先ほどのボーラルと戦ったときとは打って変わって素早く動き、火球をグリルに向けて発射する。 「ふっ!」 グリルも素早く動いてそれを避け、女王に接近して蹴りを入れる。 しかし、女王はそれを難なく受け止め、掌から電撃を放ってグリルを攻撃した。 ビリビリビリビリッ! 「うわあぁぁぁぁぁ!!…うっ!」 電撃はグリルにかなりのダメージを与えたようで、彼女は怯んで後ずさりをした。 グリルは再び起き上がろうとするも、何故か身体が言う事を聞かず、起き上がったはいいが、身体を自由に動かす事ができなかった。 「か…身体が痺れて……思うように…」 グリルは電撃を浴びて感電し、身体が麻痺して思うように動く事ができなくなってしまったのだ。 身体が痺れているグリルにも女王は構わず攻撃魔法を撃ち込んでいく。 「ぐっ! あっ! うわああ!!」 攻撃魔法を連続で浴びたグリルの身体はすでにボロボロで、彼女にも体力は殆ど残されていなかった。 「(負けちゃうの?この私が…。『宇宙で2番目に強い』はずだったのに…)」 「(あの…グリル様が……。マルク様以外の者に負けている…?)」 今まで星の戦士相手に戦ってきたグリルであったが、肉体的にも精神的にもここまで追い詰められたのは初めてのことだった。 グリルは自分が負けるという恐怖に怯え、現実を受け入れることが出来なかった。 戦いを挑んだ相手があんなに強かったなんて。 その光景を横で見ていたボーラルも驚いていた。 今まで彼もグリル自身もグリルより強い存在はマルク以外に知らなかったのだから。そうでなければならなかったから。 「ぐ…ま、負けなんて…認めない……」 「もう諦めてください。この国は貴方たちのものではありません。今すぐ………」 「黙って!!私は…『宇宙で2番目に強く』なくちゃいけないのよ……はぁ…はぁ…。私よりも強いのは…わ、たしの…はぁ…お、お兄ちゃんしかいないんだから…!」 すでに身体は傷だらけで、戦う力は残されていないのにリップルスターの女王に対して強がった態度を見せ、立ち上がって戦いを続けようとするグリル。 しかし、やはり身体に力が入らず、立つ事ができない。 グリルとボーラルが女王の攻撃で相次いで倒れ、MTS側はあっという間に窮地に立たされてしまう。 戦いはリップルスター側の勝利になると思われた。 だが、そんな状況の中、どこからかMTS側であるグリルとボーラルにとって聞き覚えのある少年の声が聞こえてきた。 「見苦しいぞ、お前たち」 「…お…お兄ちゃん?」 「マルク…様?」 現れたのは、MTSの首領にしてグリルの兄、そしてリップルスター襲撃を企てた張本人である惑星ハーフムーンに住むマジカルーマ族の男・マルクであった。 「お前のことはずっとパラマターを使ってドロシアと一緒に監視していたよ。お前がやられそうになって焦っているドロシアの気を静めさせるために僕は直接ここまでやってきたんだ。…ははは、お前としたことが随分みっともない姿だな?こんな情けない姿を星の戦士たちに見られたらきっと奴らは大笑いするぞ?」 「わ、笑わないでよ!…あそこにいるこの国の女王様本当にカービィとかの何倍も強いのよ!…痛っ」 グリルは起き上がって自分のことをからかってきたマルクに女王の強さが本物であることを教えるが、傷が痛み、すぐに傷口を押さえて、またしゃがみ込んでしまう。 「わかった。お前はこの部屋の外でボーラルと大人しくしていろ」 「お兄ちゃん…気をつけてね…!」 マルクはグリルを残して一人女王と対峙する。 「貴方が…この星にやって来た『外の世界の者』たちを指揮していた方なのですね?」 「ああ、そのとおりだ」 「どうしてこの星を襲うのですか?何故あなた方はこんな事をしなければならないのですか?私たちには私たちの、あなた方にはあなた方の平和な暮らしがあったはずでしょう?」 女王は真剣に目の前にいる青年・マルクに問い質した。 どうして、貴方たちはこんなことを望んでいるのか。彼女や妖精たちには理解する事ができなかった。 だが、目の前にいるその人物から返ってきたのは、今まで誰にも邪魔されずに平和な暮らしをしてきた者には理解し難い答えであった。 「僕たちの目的はこの宇宙の星の全てを自分たちのものにすること…。僕たちが目的を達成するためには邪魔者を残らず始末する必要がある。…貴方も含めて、ね」 「そうやって今まで貴方はいくつの命を奪ってきたというのですか?」 「…さあ?殺すのは随分昔からやっているからな。でも、僕は今まで無駄な殺しを行なう事はしていないし、そんな無駄な事をした覚えは全くないな」 そのマルクの答えを聞いて、女王は決意をする。 「…貴方とはどうやら話し合っても分かり合うことはできないようですね。私は決めました。私はここで貴方を倒します…倒してみせます!」 「僕も全宇宙の生命…いや、なにもかもが自分の言うとおり・思い通りに動かせるようにならないと気が済まない性分だからな、貴方のような『争いごとが嫌いで何がなんでも人と分かり合おうとする者』の考えなんて理解する気は最初から全くないよ。宇宙は全てこの僕に跪き、従うべきなんだ」 マルクは言葉を言い終えると空中に浮かび、女王もそれに続いて空へ飛ぶ。 マルクとリップルスターの女王による、リップルスターの命運をかけた戦いが今、開始された。 マルクは先手を取り、空中を浮遊しながら口の中から冷気の塊『アイスボール』を発射する。 ドシュゥン!! 女王はアイスボールをかわし、反撃に転じようとする。だがそのとき、女王にとって予期せぬ出来事が起こる。 バァン、ビシュンビシュンビシュン!! 「!!」 女王が避けた事によってアイスボールは地面にぶつかった。 アイスボールはそのまま地面にぶつかって破裂し、消滅するものだと女王は思っていた。 だが、その予想は大きく外れ、アイスボールは破裂したまではよかったが、その破裂したアイスボールの破片は自動追尾する性質を持った複数の光弾に分散され、空中にいる女王に襲い掛かった。 バシバシバシッ!! 「うああ!!…くぅっ……」 自動追尾する性質を持つ氷結効果のある光弾を女王は避ける事ができず、まともに被弾してしまう。 氷結弾を浴びた女王の身体はみるみるうちに凍り付いていき、ついには飛べなくなって彼女は床へ墜落した。 「(これで終わりだ。さようなら…)」 身体の一部が凍り、動けない女王の目には、口にエネルギーを溜めているマルクの姿が。 マルクは身動きのとれなくなった女王を口からの破壊光線『マルクキャノン』で吹き飛ばそうというのだ。 「くっ!!」 女王は氷を自力で振り払い、まだ溜めている途中で隙だらけのマルクに向かって火球を撃つ。 「なっ!!?」 マルクは光線を溜めるのをやめ、火球を素早く回避した。 そしてマルクはまた宙に浮いたが、今度は高く浮かず、やや低い位置での浮遊をし、常に女王の周りを飛んでいるかのような動きを見せる。 ボオッ!! 女王は火球を撃ってマルクを撃ち落とそうとするが、当たらない。 しばらくすると床からいきなりイバラのような触手が飛び出し、女王に襲い掛かってきた。 これもマルクが魔法で出現させているものである。 だが、女王は魔力弾でイバラを吹き飛ばしていっきにマルクに近づく。 そして掌に魔力弾を作り、マルクに投げつける。 「うわっ!」 マルクは少し油断していたようで、魔力弾による攻撃を受けてしまう。 その後も両者の攻撃魔法の応酬が続き、死闘は数時間にも及んだ。 数時間が過ぎる頃には、さすがに両者とも限界で(マルクは戦いを始めたときから現在までずっと玉乗りピエロのような普段の姿のままで、羽を生やした形態ですらなく、手加減をしていたが)、お互いに息が荒くなっていた。 「ぜぇ…ぜぇ…。フ、フフ。僕はまだ……本気を出してはいないがな…今まで戦った相手の中で…お前は一番強いと思ったよ」 「はぁ…はぁ…。早く…諦めて……この星から…」 「はは…まだそんなことを言うのか」 「当たり…前です。この星を、守っているものとして…そう言わせていただきます……」 「星の戦士を…カービィを……遥かに上回る……強敵………か。ハ、ハハハ…」 「星の…戦士……?カー……ビィ?」 マルクが何気なくそう言った途端、リップルスターの女王は急にその言葉に喰らいつく。 「そうだよ。僕が今一番憎んでいる存在さ……。多分、他の星からは離れすぎて……外の宇宙の事は何もわからないお前たちは知らないだろうが…この宇宙には僕たちの行動を邪魔する『星の戦士』と呼ばれる奴らが…いるんだ。そいつらを始末する事も…今の僕たちの目的でもあるんだ」 「……………」 「きっと星の戦士はお前たちにあったら協力をするだろうが……多分それが現実となる日はこれからもずっとないだろう。何故ならお前たちの星の文明はまだ宇宙へ飛び立つ手段を開発してない上に、この星は僕たちのように毎日調査隊を使って探し続けないと見つけ出すことすらできないほど辺境の場所にあるのだからな……。だが、お前たちには『宇宙はまだ広く、お前たち以外にもたくさんの生命があちこちで生きている』ということも覚えておいてほしい。…お前たちに味方するわけではないけどな」 「(私たちに…味方してくれる……)」 女王はマルクの言葉を最初から最後までしっかりと聞き、頭の中に入れた。 「まあ仮にもしお前たちが星の戦士と手を組んだとしたらそのときは確実に殺すということを忘れるな。…今回この星を手に入れるのはお前という予想外の強敵の存在があったから止めにした。どっちにしろここには誰も来ないし、それよりも先に星の戦士を殺してからだと僕は考えを改めた。もうしばらくは僕たちはこの星には来ない」 女王にそう言い残してマルクは女王と戦った部屋を出て行き、外にいたグリルの元へ向かう。 「グリル、ハーフムーンに帰るぞ」 「え?結局この星はどうするの?」 「この星を手に入れるのは後回しだ。なにせ手に入れるのに時間が掛かりすぎるのは僕はあまり好きじゃないし、持ち込んだ魔獣たちはほぼ全滅、お前もボーラルも僕ももうボロボロだしな。ここの星を次に攻撃するのはまた準備が整ってからにしようと考えているんだ。だから今日は一緒に帰ろう、転移魔法ですぐに。傷を治して、お風呂とかにも入りたいだろう?」 「うん、早く帰りたい!!…あ、宇宙船も忘れずに持っていかなきゃ!!」 マルクとグリル、ボーラルはテレポート能力を使って一瞬で姿を消し、それと同時に外にあった宇宙船も消え、リップルスターから離脱した。 妖精たちの住む星リップルスター。 宇宙全ての星を自分の所有物にしようと考えているマルクによって危機に晒されたが、彼自身が一旦諦めた事により、星の平和は守られたのであった……。 |