ここは惑星ポップスターにある村・ププビレッジ。 ナイトメアを倒した星の戦士「星のカービィ」と宝剣ギャラクシアを使う騎士・メタナイト卿が住んでいる平和な場所である。 その村にあるデデデ城。村を支配する王であるデデデ大王は、ナイトメアが倒された後も未だにカービィを倒すことを考えており、かつてのホーリーナイトメア社のことを思い出していた。 「(つい最近まではこのスイッチを押すと、何時でもHN社に繋がったぞい…)」 そう思い出しながらディスプレイ起動のスイッチを押した。 「(何日も前から何回起動してみてもHN社との通信回線が切れたディスプレイには何にも映らなかったし、どうせ今回も同じだぞい…)」 デデデはそう思っていたが、ディスプレイには なんと紫色の帽子を被った一頭身の魔女のような姿をした人物が映し出された。 以前から何も映らなかったディスプレイに突如誰かが現れたことに驚くデデデ。 「こ、これは…どういうことぞい!???」 するとディスプレイに映っている魔女はデデデに笑顔で挨拶をした。 「ハァイ、初めまして♪我がMTSへようこそ〜♪貴方がデデデ陛下ですよね?」 何がどうなっているのか理解できずにいるデデデに、魔女は 「ほんの数分前に、貴方のそのデリバリーシステムとMTSの回線を繋がせてもらいました〜♪」 と話した。デデデは魔女の言っている事に対して 「え、MTS…?何がなんだかさっぱりぞい。それに、お前は一体誰ぞい?」 と聞くと、魔女は 「私の名前はグリル、MTSの副官を務めている者で〜す♪」 と答えた。 更にグリルと名乗ったその魔女はデデデにこう聞いてきた。 「そしてMTSというのは、敵対している、またはライバルとしている者を倒したいという人の為に、魔獣を送って手助けをすることを主体にしている会社なんです! デデデ陛下、貴方はナイトメアが滅んでから数ヶ月が経った今でも、カービィを倒したいと言う気持ちが残っているんじゃないかしら?」 デデデは自分の思っていたことを当てられて驚く。 「な、何故分かるぞい!?」 グリルは理由をこう話した。 「実は事前に、貴方のことやポップスター、他の惑星等についてはある程度と調査してあるんです!もちろん、宇宙各地で有名になってしまった英雄『星のカービィ』とその仲間の星の戦士たちのこともね……」 「カービィのことも……ってことは、カービィの弱点とかも調査済みってことかぞい!?」 「今の所は、カービィがどんなタイプの魔獣を苦手としているかとか、そんな所かな〜…(お兄ちゃん調査してるみたいだけど私にはあんまり詳しく話さなかったし…、まあ一応こう誤魔化しておこうかしら)」 「そ、それじゃあ、早速カービィが苦手としている魔獣を……っと、その前に聞きたいぞい」 「え、何か?」 「そっちの魔獣は、HN社の魔獣よりも強いのかぞい?」 「え!?あ、その事なら安心してください、そんなの当然ですよ。フフフ…我がMTSで作り出した魔獣は、HN社の魔獣なんかとは比べ物にならないぐらい強いんだから…」 やけに自信に満ちた顔で言うグリル。 「おぉ!そ、それじゃあ、早速そっちの魔獣を送ってくるぞい!」 カービィを倒せる魔獣が欲しいデデデは、HN社の魔獣より強いというのを聞いて感激し、目を輝かせた。 グリルは笑顔で話しながらデリバリーシステムを起動させた。 「それじゃあ、今回は初利用サービスとして、魔獣を一体無料で転送してあげちゃいます!すごくお得でしょう?」 送られてきた魔獣とは一体…? 場面はププビレッジの外れにある原っぱに移る。 そこには日向ぼっこをしているフームとボール遊びをしているカービィとブン、村の子供たちの姿があった。 「カービィ!」 「ぽよ〜」 「(今日も平和ね…)」 ナイトメアが滅んだ事によって得た平和な日々をカービィと村の住民たちは満喫していた。 しかし、それでもまだHN社の生き残りの魔獣たちが宇宙各地で暴れている事もあり、オーサー卿やナックルジョーといったメンバーは まだ宇宙中を飛び回って魔獣たちと戦っているらしい。 カービィを宇宙各地で戦わせないのはやはり「まだ幼いから」という理由があるからである。 そしてメタナイト卿もカービィを守るためこの地に留まっている。 そして今に至るというわけである。 だが、遊んでいるカービィたちの側に突然何かが落ちてきたのである。 「うわぁ!!」 「ぽよ〜!」 「きゃあ!」 いきなり何だと驚くカービィたち。 落ちてきたのは、赤と白のツートンカラーの鉄球のようなものだった。 「姉ちゃん、何だよこれ?」 「さあ…?一体何なの?」 「ぽよ?」 カービィたちは何がなんだか分からずに、鉄球を眺めていた。すると、突然この鉄球が動き出したのである。 動き出した鉄球からは小さい大砲のようなものが生え、そこからカービィに向けて砲弾を発射してきたのである。 「ぽよ〜!!!」 「カービィ!」 油断していたカービィは、砲弾を喰らって数メートル先に吹っ飛ばされてしまった。 そして弾を撃った鉄球の下部に小さい鉄球が足になるように4個装着され、カービィを追い回し始めたのである。 いきなりの出来事に戸惑うフームたち。カービィも、弾を撃ちながら襲ってくる謎の動く砲台のような物体から逃げ回るしかなかった。 フームはもしかしてと呟いた。 「もしや…HN社の生き残りの魔獣…!?」 すると、そこへ偶然メタナイト卿がやって来た。フームはすぐさまカービィ襲っている動く砲台が何なのかをメタナイトに聞いてみた。 メタナイトは動く砲台を見つめた。しかしメタナイトはこう答えたのである。 「……すまない、あんな動く砲台のような物体は…私も見たことが無い……」 「え!?」 「ど、どういうことなんだ?」 「銀河対戦の最中でも、あんな姿形の魔獣や兵器は見たことが無い。アレは恐らく……HN社の魔獣ではないだろう…」 「そんな!HN社の魔獣ではないって…じゃあアレは一体…!?」 メタナイトですら知らないという動く大砲のようなものは、グリルがデデデに無料で送ってきた魔獣の一種であり、その名も「砲台魔獣モトシャッツオ」である。 しかし、デデデとグリルのやりとりを見ていないフームたちにはそんなことが分かるはずも無かった。 モトシャッツオの正体が気になりつつも、とりあえずフームは逃げ回っているカービィに 命令をする。 「カービィ!そいつが撃ちだす弾を吸い込んでコピーするのよ!」 その命令を聞いたカービィはモトシャッツオの砲弾を吸い込み、コピーしようと試みた。 しかし、なんとその弾からはコピー能力が得られなかったのである。 コピーできる能力が無いと戸惑うカービィ達だが、その間にもモトシャッツオはどんどん攻撃を仕掛けてくる。 逃げ回っていたカービィはブンたちと遊んでいたときに使っていたボールを見つけると、フームの指示無しに自分からそのボールを吸い込んだ。 そしてカービィは前に見せた事がなかったスイミングキャップのような帽子を被った姿に変身した。 「初めて見るコピー能力だ…」 「メタナイト卿、あのコピー能力を知らないの?」 「ああ、一体あのコピー能力でどう戦うのか…」 カービィは体を完全な球状に変形させて飛び跳ね回り、モトシャッツオの砲弾を避けた。 「なるほど、あれはボールカービィ」 「ボ、ボールカービィ?」 「体を球状に変形させて自分の体を弾ませ、その弾みで敵に体当たりして攻撃する。状況によっては使いにくい能力だが、体当たりは強力だ」 ボール状になったカービィは弾みながら体当たりをモトシャッツオに決めた。 その体当たりをまともに喰らったモトシャッツオは、その破壊力に耐え切れずにそのまま大爆発を起こした。 「やった〜!」 こうしてカービィは(フーム達から見れば)正体不明の魔獣との戦いに勝利した。 だが、突如襲ってきたあの魔獣(モトシャッツオ)が一体何だったのか疑問に思ったフーム達は、「もしかすると、ナイトメアに続く新たな敵が出現したのでは」と僅かに不安を抱くのであった。 一方、こちらデデデ城ではデデデがバルコニーに出て双眼鏡を覗いていた。 カービィとモトシャッツオの戦いを見ていたのである。 そしてモトシャッツオがあっさり倒された事に怒ったデデデは、すぐさまMTSと回線を繋いでグリルを責め立てた。 「モトシャッツオがあっさりと倒されたぞい!いくら無料でくれた魔獣だからって、アレはあんまりぞい!」 「やっぱりね。あっさり倒されるのも無理は無いわ。何故なら、モトシャッツオはほんの小手調べの為に 送っただけの捨て駒なんだから…(まあ資料には無かったコピー能力のデータを確保できたし、これは上手くいったとお兄ちゃんに報告しなきゃ…)」 「うぐ〜…今回は金を取られなかったから良しとするけど、次からはきっとカービィを倒せるほど強い魔獣を送るぞい!!」 デデデが悔しそうにと言う。 「陛下、そんなの分かっているわよ。次からは、モトシャッツオの何百倍も強い魔獣をそっちに送りますから。とにかく、今後とも我がMTSをどうかヨロシクお願いしま〜す♪」 そんなデデデに対してグリルは笑顔でそう言うと、回線を切った。 「グフフフ……これで再びカービィをやっつけるチャンスが巡ってきたぞい…」 ディスプレイからグリルが消えた後、一人怪しい笑みを浮かべるデデデであった…。 |