副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第2話
〜謎の黒い雷〜



 〜惑星ハーフムーン・ウィザード・フォートレスの司令室〜

 惑星ハーフムーンにあるMTSの本拠地。
「もぉ〜!何だか退屈だよぉ〜…。ねぇドロシア、私退屈なんだけど何をしたら退屈じゃなくなるかなぁ?」
「グリル、お前が普段やっている事をやればいいだけの話だ」
「えぇ〜!?だって、今は私の仕事何も無いし…」
「……」
「そうだ!退屈なときは各惑星を飛び回っている星の戦士に直接対決を挑めばいいんだよ!じゃあ今から早速出動しようかな…」
「好きにしろ。だが、そんな事したらマルクに何と言われるか…」
 グリルがそう行動を開始しようとすると司令室に通信が入った。
「あ!陛下からだ!ドロシア、私の普段の仕事、見ててね!」
「仕事が入ったおかげで退屈じゃなくなって良かったじゃないか、グリル」
「でもこの仕事済ませた後私本当に星の戦士と戦いに行くもん!ん〜、まずはこの子がいいかな」
そうやってグリルが選んだ人物とは…。


 〜ポップスターのププビレッジ〜

 今日もカービィを倒す為の魔獣を買おうとMTSを呼び出すデデデ。
 側にはエスカルゴンもおり、どうやら魔獣を買うついでにエスカルゴンを紹介するつもりのようだ。
 やがてMTSと回線が繋がってディスプレイにグリルの姿が写し出される。
「あ、陛下、こんにちは♪…あ、あら?貴方の傍にいるのは…?」
「紹介するぞい。こいつがワシの側近のエスカルゴンぞい。エスカルゴン、こっちがMTSのグリルぞい」
「…え、えっと、側近って……その…カタツムリのような人が?(お兄ちゃんこんな人の事私に教えてなかったし…)」
「なっ……わ、私がカタツムリであることに何か文句があるのでゲスか?」
「え?あ、いえ、そういう訳じゃなくって、ちょっと意外だと思って……ごめんなさい」
「…まあ良いでゲス。とりあえず、よろしく頼むでゲスよ」
「うん、こちらこそ。どうかお見知り置きを♪」
 そんな風に挨拶を交わす二人。そしてエスカルゴンはグリルに質問をする。
「ところで、あんたのとこの魔獣は、HN社の魔獣よりも安くて強いのが多いって陛下から聞いたでゲスが、本当なんでゲしょうね?」
「そりゃ勿論よ。それに安いどころか、無料でそちらに魔獣を送ることだってできちゃうんです!」
「何、無料!?何でそれを早く言わないぞい!?」
「正確に言えば魔獣を送ると言うよりも、これによってププビレッジにある物や生物を魔獣に変化させることができるといった感じなのですが…。魔獣化させるものや魔獣の強さは、こっちで指定することができないのが難点で…」
「無料でカービィを倒せるなら別に構わんぞい!だから今回はそれで頼むぞい!」
「分かりました、陛下がそう判断するなら、今回はそれでいかせて貰う事にしますので…」
「し、しかし無料なのは良いでゲスが、どうやってこの国にある物や生物を魔獣化させるんでゲスか?」
「組織の首領であって、私のお兄ちゃんでもある人の魔法によってそれらを魔獣化させるんです♪」
「お、お兄ちゃん…?」
「そ、それは一体誰ぞい?」
「お兄ちゃんについては、また今度紹介するね♪それでは、いずれ魔獣が現れるだろうから、楽しみに待ってて下さいな♪」
 そう言うと、グリルは回線を切ってディスプレイから消えた。
「あ!?ちょっと…、待つぞい!」
「それにしても、いずれ魔獣が現れるって……どうやるんでゲしょうかね?」
「う〜ん、無料なのは良いが、少し気になるぞい…」
 グリルが最後に言ってた言葉が気になる二人であった。


 再び場面は変わって惑星ハーフムーンのウィザード・フォートレス司令室。
 デデデとの会話を終えたグリルは自らが動き出そうとしていた。
「さて、お兄ちゃんには『あれ』をやってもらうよう頼んだし、私はお兄ちゃんには秘密で星の戦士のところに遊びに行こうかな。お兄ちゃんとドロシアのおかげで私がやっていなかったポップスター以外の残りの惑星全てがMTSの手に堕ちたわけだし、まあ魔獣だらけの星をうろついていたら星の戦士なんか簡単に見つけられるはずだよね、多分…。じゃあドロシア、お兄ちゃんには私が出掛けた事は内緒ね!」
「…ああ」
 そういうとグリルはテレポート能力を使って司令室から消えた。


 一方、こちらはレン村長の牧場。今日は此処でカービィ達が羊と戯れていた。
 しかし、さっきまで雲一つ無かった青空が、突然薄暗い雲に覆われる。
「な…何かしら…?」
 あまりに急に空模様が変わったことに疑問を感じるフーム達。
 すると、曇り空からゴロゴロ…と音が聞こえたきたかと思った瞬間、凄まじい音が周囲に鳴り響いた。
 空には数本の雷が連鎖的に光っている。
「姉ちゃん、なんかヤバそうだぞ…?」
「みんな、レン村長の家に戻りましょう!」
「ぽよ〜?」
「メェ〜…」
 急な事態に驚いたカービィ達は大慌てでレン村長の家に戻り、羊達は雷の音に集団で固まって怯えている。
 するとその羊達の群れに、一本の雷が落下してきたのだ。その際に鳴った激しい轟音に思わず目を瞑るカービィ達。
 しかし、フームは羊達に落ちた雷が、何故か黒い光を放っていたことに気が付いていた。
「あれは…一体…?」
 そして雷が落ちてから数秒後には辺りは静かになり、カービィ達は再び牧場に出てきてみた。
 すると、外は元の青空に戻っているばかりか、辺りも何事もなかったかのような雰囲気になっていた。
 それに疑問を感じたカービィ達だったが、まだおかしな点があることに気が付いた。
 雷が直撃したはずの羊達に怪我一つない上に、彼らの表情がおかしくなっているのである。
 色々と妙な点があるのに困惑するカービィ達。
 すると突然一頭の羊が何の前触れもなく大きな音と共に真っ黒な靄の塊となり、他の羊達もその靄の塊の中に入り込んで行った。
 黒い靄の中に羊達が全て入っていくと、黒い靄がモゴモゴと動き出して何かの形に変形していった。
そしてその黒い靄が徐々に消えていくと、そこには上半身は大柄で筋骨隆々だが下半身が短足の羊人間という、奇妙な生き物が現れた。
「何なの、あれ…?まさか、あれも魔獣?」
 その羊人間を見て呆然とするカービィ達だが、突然その羊人間がカービィ達に襲いかかって来た。
「グオォォォォォォ!」
「うわぁ〜!」
 羊人間は大木のように太い腕を振り下ろして攻撃したが、カービィ達はギリギリで避ける。
 相当なパワーがあるらしく、太い腕で叩きつけられた地面は大きくへこんでいた。
 その奇妙な姿とこちらに襲いかかって来たという点から、フームは羊人間が魔獣だと判断する。
 実は羊達に落ちたあの黒い雷には打たれたものを魔獣化させる力があり、それに撃たれた羊達が合体して誕生したのが、先程現れたアンバランスな体型をの羊人間型の魔獣「マッスル・シープ」なのである。
 フームは、早いところ倒さないと皆が危ない上に牧場もメチャクチャになってしまうのでカービィに戦うように命じたい。
 だが、辺りにはカービィにコピーできそうなものが何も無い。
「ぽよ〜!」
「ね、姉ちゃん…!」
「どうすればいいのよ〜!」
 慌てだすフーム達の元に、火が点いた松明を持ったメタナイト卿が現れた。
「カービィ!これを吸い込め!」
 その松明をカービィに向けて投げるメタナイト卿。
 投げられた松明を吸い込み、カービィはファイアカービィになった。
「やった〜!ファイアカービィだ!」
「ぽよ〜!」
 だが、すぐにマッスル・シープに捕まってしまった。 渾身の力で握られて締め付けられるカービィだが、すぐに反撃を開始する。
 ゴォォォォォ!
 口から灼熱の炎を吐いてマッスル・シープの顔を攻撃した。  
しかし、マッスル・シープは顔に炎を浴びても微動だにしなかった。
 それにフームらは驚くが、何とカービィは自分自身に炎を吹きかけ、全身を炎で纏わせる新必殺技「火達磨地獄」を発動させたのだ。
「火達磨地獄!!!」
 炎の塊となったカービィに熱がって思わずカービィを解放するマッスル・シープ。
 そして地面に降り立ったカービィは、全身に炎を纏ったままマッスル・シープに向かって走り出し、「バーニングアタック」を繰り出した。
「バーニングアタック!」
「グメェェェェェェ!」
 その攻撃がマッスル・シープの腹にヒットすると、そのままカービィはマッスル・シープの体を貫通した。
「やった〜!」
「イェーイ!」
 カービィに腹を貫かれたマッスル・シープは体がバラバラになり、無数の黒くて小さな玉になってしまった。
 すると、その黒い玉が元の大人しい羊達に戻っていった。どうやらこの戦いは、カービィが制したようだ。
 羊達が元に戻って、カービィ達は安心する。
 しかしフームは、あの羊人間のような魔獣を生み出した原因と思しき『黒い光を放つ雷』のことが気になり、メタナイト卿にその事を話してみた。
「…黒い光を放つ雷?」
「他の雷は白く光っていたのに、不思議な事にその羊達に落ちた雷だけは黒く光っていたのよ」
「うむ…となると、羊達が合体して魔獣となったのは、その黒い雷が原因と見て間違いないだろう」
「でも、あの雷は一体…?」
「分からない。ただ、この前の正体不明の移動する大砲や、最近部屋に篭ったままで我々に姿を見せず、玉座の間に他人を入れない陛下等ここ最近の不自然な出来事から新たな敵が存在している可能性がある。現在私やソード、ブレイドの方でその新しい敵の存在について調査しているが、これといった情報は得られていない…」
「謎の敵……何だかHN社以上に厄介な存在になりそうな気がするわ…」
 僅かに恐怖感を抱いたフーム達であった…。


 〜惑星アクアリス〜

 ここは水の惑星アクアリス。
 地表面の90%が綺麗な水で被われている別名「宇宙の泉」と呼ばれる惑星。
 すでにMTSに支配され、魔獣だらけになってしまった星だが、一人魔獣の群れと戦っている少年がいた。
「バルカンジャブ!スピンキック!」
「グギャァァァァァ!」
 彼の名はナックルジョー。『魔獣ハンター』を名乗って宇宙各地で魔獣狩りをしている格闘少年である。
 現在、幼いためにまだ自由に宇宙を旅できないカービィと、それを守るメタナイト卿の代わりにHN社の生き残りの魔獣を倒すために前と同じく宇宙各地で魔獣と戦っていたのである。
「クソッ!この惑星はいつからこんなに魔獣だらけになったんだ!?今戦った奴の中には見た事のない魔獣も存在していたし…」
 独り言を呟きつつも強力な必殺技で次々と魔獣たちを倒していくナックルジョー。
「ふぅ…、これでこの辺りの魔獣は全部倒したはずだ…」
 そう一安心していたナックルジョーの前に物陰から一人の魔女が現れた。
「結構やるじゃない、貴方が魔獣ハンターのナックルジョーだよね?」
「誰だ、お前?」
「私の名前はグリル。『宇宙で2番目に強い存在』なの。あんまり詳しく話せないんだけど、今私と私のお兄ちゃんは貴方が生きていると邪魔でいろいろと困るのよね」
「何だと…!?」
「貴方、あの程度の魔獣しか倒せないなんて見たところ私の足元にも及ばない実力ね。でも、退屈しのぎに丁度良いし、今ここで貴方を潰してあげる」
 するとその挑発にナックルジョーは鼻をこすりながら答えた。
「ヘッ、潰されるのはお前のほうなんじゃないのか?」
「わからない人ね。そんな事はともかく、ゲーム開始よ」
「望むところだっ!」
 ナックルジョーとグリル。水の惑星を舞台に二人の戦いが始まろうとしていた…!




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