〜ウィザード・フォートレス 社長室〜
ここはウィザード・フォートレスのマルクの部屋こと社長室。今日はグリルはマルクと話すためにここに来ていた。 「ねぇお兄ちゃん、なんか可愛いペットみたいな魔獣を作ってくれない?」 「そんなもの自分で作ればいいだろう。そもそもグリルにはすでに僕がHN社から盗んできたチリドッグの子供がペットとしているだろう?」 「違うの、もっとこう魚みたいなちっちゃいペットがほしいんだよ、お願い」 「だからそんなのは自分で作れ」 「嫌だ!お兄ちゃんが作ったのじゃないと愛情が無いんだもん!」 グリルがいきなりワガママを言い出したので、マルクは溜め息をついてからこう答えた。 「…仕方ないな、じゃあちょっと研究室まで一緒に来てくれ」 「やったぁ〜♪じゃあ可愛いのお願いね♪」 マルクの返答にグリルは急に機嫌を直し、一緒に研究室に来た。 〜ウィザード・フォートレス 研究室〜 「グリル、お前はさっき魚みたいな小さなペットがほしいと言ったな?」 「うん、なんか観察できる奴ね」 「それに丁度良い動物がいるんだ。マドゥー、そこにあるハダカカメガイが入った水槽を持ってきてくれ」 「わかりました」 そう指示された『マドゥー』という小型の魔法使いは、ある水槽をマルクの目の前に持ってきた。 彼らは組織内ではアクアリス支部で姿を現したプランクと同じような仕事をしており、やはりプランクと同じくたくさんの個体が存在している。 「どうぞ」 「うわ〜、可愛い〜」 「これは惑星アクアリス北部の海で捕獲したハダカカメガイと呼ばれる生物だ。こいつを今から魔獣に改造してお前の新しいペットにしてやろう」 マルクは魔法をその水槽の中にいるハダカカメガイにかけた。 「…なんにも変わってないように見えるけど…」 「こいつは1匹だけじゃただの役立たずだよ。まあ僕がそのうち何匹も作ってみようと思うから、そのときまで期待して待っててくれ」 「うん、ありがとう、お兄ちゃん!(最初は嫌がってたのに、いざやるとなるとお兄ちゃんすごい乗り気になってたし…)」 グリルはマルクにお礼を言うと、その水槽を持ったまま司令室に戻った。 「う〜む、なんだか今日はペットがほしくなってきたぞい…。こういうときはMTSに頼むぞい」 デデデは今日もちょっとしたきっかけからMTSを呼び出した。 「ハァイ♪陛下、今日は私はすごく気分が良いので張り切っちゃいま〜す♪」 「今日はわしの新しいペットとなる魔獣をよこすぞい」 「え!?私も今日お兄ちゃんから新しいペットをもらったんだけど…」 「その新しいペットとはどんな奴ぞい?」 「えっと、こういうのよ。名付けて妖精魔獣オリクネ!」 グリルは先ほどマルクが作った魔獣の写真をデデデに見せた。 「なんか小さくて可愛いぞい、わしもこいつがほしいぞい」 「陛下も気に入ったんだ。じゃあ今からお兄ちゃんにもっと作ってもらうよう頼みま〜す♪ちょっと時間がかかるかもしれないけど待っててくださいね♪」 グリルは笑顔でそう答えると通信を切った。 デデデ城のフームの部屋では、フーム達がローナから聞いた情報をメタナイト卿に報告しているところだった。 「魔導組織マルク・ザ・トリックスターズ…」 「メタナイト卿、何か知っているの…?」 「いや、私が銀河戦士団にいた頃、宝剣ギャラクシアの奪還をガールードと共に命じられたときに惑星ハーフムーンと言う場所で宇宙の長旅によって疲れていた私達に協力してくれた、マジカルーマ族の少年を思い出してな…」 「マジカルーマ族?」 「ぽよ〜?」 「マジカルーマ族は惑星ハーフムーンに住んでいた種族で、魔法と賢さに長け、そして長寿の種族だ。私は盗まれた宝剣ギャラクシアがある星に向かう途中で長旅に疲れ、そのときはまだ平和な星だった惑星ハーフムーンに立ち寄り、そこに現れたマジカルーマ族の少年、マルクに食料などの物資補給をさせてもらったのだ…」 「マルク?その少年がMTSと何か関連があるの…?」 「わからない。だが、ギャラクシアを奪還した後に他の惑星で聞いた話では、マジカルーマ族はナイトメアに強大な力を持つものが多い事を恐れられ、種族の者ほとんどがナイトメアの魔獣達に虐殺され、滅びてしまったらしい…。この事からその少年も、今生きている可能性は低いだろう…。それに私の知っている彼は私達にとても協力的で頭もよく、正義感のある性格だった…。周りからも好感を持たれて 親しまれていたらしく、発言や態度から悪を嫌っていた彼は仮に今生きていたとしてもこんな事はしないだろう…。ただ、彼の名前が組織名にあるのなら少なくとも彼が関連している可能性はゼロというわけではない…」 「マジカルーマ族の少年マルク…」 メタナイト卿の話を聞き、マルクとMTSの謎に首を傾げたフーム達であった…。 その一方でデデデは、MTSから大量に送られてきた魔獣・オリクネに満足していた。 そんなデデデの横にはエスカルゴンもおり、ディスプレイにはグリルの姿がある。 「これが魔獣オリクネかぞい」 「こんなのでも本当に魔獣なんでゲすかねぇ〜?」 「弱そうでも可愛いペットだから許すぞい。それにしてもグリル、この魔獣は本当にわし達のお守りになるのかぞい?」 「はい、陛下達が危なくなったとき、そのオリクネ達は絶対に大活躍します!お楽しみに♪」 最後にそう言ってグリルはディスプレイから姿を消した。 デデデはグリルとの会話を終えて部屋の外の廊下に出るとカービィとフーム、ブンに見つかってしまった。 「デデデ!今まで一体何をしていたの?」 「最近の事件は全部お前の仕業じゃないのか!?」 そう問われたデデデだったが、マルクがかけた魔法の力でこう返した。 「それはなんの話ぞい?」 「とぼけないで!じゃあカービィを襲ったあれはなんなの?」 「知らないでゲス」 エスカルゴンもこう答えて、フーム達の前から姿を消した。 「(あの二人、何かに操られてるような気がする…。でも、ここで聞き出しておかないと…)」 「待てよ、デデデ!」 〜ウィザード・フォートレス 社長室〜 こちらのウィザード・フォートレスではグリルがマルクと一緒にいた。 「そろそろいい頃じゃない?お兄ちゃん、あれをやってよ」 「わかったよ。それじゃあ、今陛下はどんな状況になっているかは知らないが、試しにやってみるか」 マルクは体内のほんの少しの邪悪な力を黒い雷に変え、ウィザード・フォートレスからププビレッジに向かって空間を超えて落とした。 カービィ達とデデデはMTS関連の事で言い争いになっていた。 「なにか知ってるんでしょ?」 「わ、私達は本当に何も知らないでゲス」 そんな中、外で雷鳴が鳴り響いた。 「雷の音?」 フーム達が外をのぞくと、マッスル・シープの事件のときと同じく、空が黒い雷雲で覆われていた。 「あの時と同じ…!」 そしてゴロゴロという音と共にどこかに雷が落ちた。 雷が落ちた後は以前と同じく空模様はすぐに戻った。 だが、城の廊下の天井を破壊して突然巨大な何かが現れたのだ。 「うわあ!」 天井が崩れたことによって落ちてきた破片をカービィ達は避けた。 「あれは…魔獣?」 現れたのは先ほどデデデがMTSに注文をした大量の妖精魔獣オリクネが、マルクの放った黒い雷によって集合・合体・巨大化した魔獣であるビッグオリクネだった。 ビッグオリクネは空中を飛び回りながら頭から触手を伸ばしてカービィ達に攻撃を仕掛けてきた。 しかしカービィ達はその触手をかわした。 「カービィ、あの瓦礫を吸い込んで!来て、ワープスター!」 フームはカービィに先ほど落ちてきた天井の破片を吸い込むように命令をし、新ワープスターも呼び出した。 その破片を吸い込んだカービィはストーンカービィとなる。 カービィは新ワープスターに乗り、空中を浮遊して追いかけてるビッグオリクネを外まで誘導する。 シュババババッ! ビッグオリクネは頭部の触手を伸ばしてカービィを捕まえようとする。 しかし新ワープスターに乗ったカービィは触手をかわし、体を石のように変化させた。 浮遊しているだけであるため、空中での移動速度がのんびりとしているビッグオリクネに、石になったカービィが空中から押し潰し攻撃をした。 ビッグオリクネは触手で反撃し、石のようになったカービィを触手で絡めとることはできたものの、逆に重みで触手を千切られてしまい、最期は押し潰されて倒された。 カービィが勝利し、喜ぶフームとブン。 デデデ城のデデデの部屋では、デデデとエスカルゴンがビッグオリクネが倒されてしまった事をグリルに報告していた。 「わしのお守りのペットがカービィに簡単に倒されてしまったぞい!」 「陛下、よく考えてよ。ビッグオリクネは私達の件でカービィ達に追い詰められていた陛下を助けてくれたんだよ。もうお守りとしての役目は果たしたじゃない」 「え!?そうだったのかぞい?」 「お守りって最初からそういう意味だったのよ。今日のオリクネはお兄ちゃんの試作品で大した魔獣じゃなかったみたいだし、今度はちゃんとした魔獣を送るね♪」 グリルはデデデとの通信を切り、ディスプレイから消えた。 ウィザード・フォートレスではグリルはすでにオリクネに飽きてしまい、別のことを考えていた。 「あ〜、退屈だなぁ〜。お兄ちゃん、星の戦士関連の報告はまだ進展が無いから退屈なんだけど…」 そんなグリルを見たマルクは溜め息をついた。 「(こいつ、僕がわざわざ作ってやったペット用魔獣にもう飽きたのか…)」 そう思っていたマルクだったが、グリルにあることを話すのを思い出し、グリルにその事を話し始めた。 「グリル、僕が昔HN社にいたとき、魔獣軍団がジェクラを捕らえ、その後の処分をどうするかを考えてそのことをナイトメアに提案したという話は覚えているな?」 「うん、確かお兄ちゃんはナイトメアに『強い奴は殺すのは勿体ないから洗脳して有効利用したほうが良い』って提案したんだよね?」 「そうだ、よく覚えているじゃないか。だから僕はこれと同じように捕まえた星の戦士は洗脳して魔獣にしようと思うんだ」 「でもお兄ちゃんは『自分達からすれば星の戦士は皆弱い』って言ったじゃん」 「グリル、それは『僕達からすれば』という場合だろう?相手から見たらその対象は強いか弱いかどうか分からないじゃないか。『仲間同士で殺しあう』というのもいい気味だからな、僕はこの作戦で行こうと思っている。だがナックルジョー以外の星の戦士はグリルが言ったとおり、未だに一人も捕まっていない。まだ道具が足りないからこの作戦で行こうとは言ったが、今の段階ではまだ実行はしない。それとナックルジョーの奴は牢獄で何をしている?」 「手足を縛って封じて何もできないようにしておいたよ。あの子今は意識を取り戻して牢屋の中で暴れてる。それと私がスピーカーで組織の目的は教えられないって言っておいたよ」 「ほう。だが、やはりこの調子じゃ作戦実行はまだ無理だな」 「早く実行できるように各惑星の警備を強化するね♪(お兄ちゃんが作戦を早く実行できるように私自身が動かないと…!)」 なにやらこの後大変な事になりそうな怪しげな事を話しているマルク兄妹だった。 |