副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第8話・前編
〜逆襲の魔獣、クラッコリベンジ〜



 〜ウィザード・フォートレス 社長室〜

 ハーフムーンにあるMTS本拠地。
 ここにテレポートを使ってマルクの元にポップスターで戦いを見物していた副官グリルと、カービィの攻撃から逃げた魔獣J・アックスとチェンソー・Jが帰ってきた。
「お兄ちゃんただいま〜!」
「お前、どこで何をしていたんだ…?」
「あ…いや、ポップスターに戦いを見に行ってたんだよ!」
「カービィ達の前に姿を現すなんてことはしてないよな?」
「全然、そんなの私でも分かるわよ!」
「なら良いんだが。それよりも、今日僕は新しい魔獣の生産法を試してみたいと思うんだ」
「新しい魔獣の生産法?」
「僕が盗み出してきた、過去にナイトメアが作った魔獣のデータを再生し、それを基にして更に僕の魔法で性能をパワーアップさせることによって、強化再生魔獣を誕生させるというものだ」
「へぇ〜、面白そうだね!!」
「というわけで僕はこの生産法を今から試して陛下に送るための強化再生魔獣を作成しようと思う。グリルはいつものように退屈かもしれないが、司令室で陛下からの通信を待っていてくれ」
「はいは〜い(お兄ちゃんに言うと失礼かもしれないけど司令室で待つことって本当に退屈なのよねぇ〜…)」
 グリルが心の中でそう呟いているときにはマルクはすでに研究室に向かったあとであった。

 〜ウィザード・フォートレス 司令室〜

 マルクの命令でデデデからの通信をJ・アックスとチェンソー・Jと一緒に待っているグリルはなんだかイライラしているようだった。
「はぁ〜…なんかムシャクシャするわねぇ〜…。なんでこうも気分が悪いのかしら…?」
「それはあの星の戦士を取り逃がしたからだろう?」
 そんなグリルに声をかけたのはドロシアだった。
「そうね…、ドロシアの言うとおり、やっぱりそれが原因かもね…。早いところ探し出して捕まえないとね、『素敵な計画』のためにも…。って、なんで知ってるのよ!私ドロシアに何も話してないじゃない!」
「忘れたのか、メックアイ支部からの連絡が入らないからグリルが話さなくても私には分かる。そしてお前の実力であれば相手に怪我ぐらいさせたことも予想できる。マルクはグリルが内緒で行動している事を今のところは知らないから魔獣研究に没頭して普通に過ごしているがな…。それにしても話し相手が私ではなくマルクだったら『怪我人相手に手こずり過ぎだ』と怒鳴られていたところだったな、グリル……。いや、それ以前に『勝手な事をするな』と言ってたか……」
「もう!そんな怖いこと言わないでよドロシア!じゃあ私は陛下と話すの終わらせたら、この2体の魔獣連れてメックアイにあの子を探しに行くね♪」
「好きにしろ。私はいつでもお前の味方だから、今回も勝手な行動を許さないマルクには黙っておこう…」
 グリルはドロシアと話し終えると向き直ってデデデからの通信を待つことにした。


 〜惑星メックアイ〜

 惑星メックアイでは、グリルと戦い重傷を負ったシリカが敵に見つかりにくい安全な場所を求めて彷徨っていた。
「ぜぇ…ぜぇ…奴らの……目に…付きにくい所…」
 ふらつきながら歩く事数分、途中で見かけた『この先公園外部廃工場』と書かれた看板を通り過ぎ、シリカは一つの1階建ての廃工場に辿り着いた。
「…ここなら……人目につかなさそうだ…。だけど……ここに長居はできないだろうから…ここの倉庫で一休みしたら…また出発しよう…」
 そう考えてこの廃工場の倉庫でいったん体を休める事にしたシリカ。
 しかし、彼女はこの後この場所が大変な事になろうとは、その時、知る由もなかった…。


 ププビレッジのデデデ城には魔獣を注文するためにデリバリーシステムを起動するデデデの姿があった。
「ハァイ陛下、今日はどんな魔獣にする?」
「注文ぞい!今日はなんだか昔の事が懐かしい気分がするから、風変わりな魔獣を頼むぞい」
「『昔懐かしい』と『風変わり』を結びつける意味が分からないんですけど…。あ、でもそれなら丁度良い魔獣がいますよ」
「丁度いいのならどんな値段でどんな奴でもいいからよこすぞい」
「分かりました、陛下なら昔どこかで見た事あるような姿をした魔獣をお送りいたしま〜す♪あ、でもこの魔獣はデリバリーシステムを通すとちょっと危険なので、直接送る事にします」
「なるべく早く頼むぞい」
「じゃあどんな魔獣が現れるかは楽しみにしていてくださいね♪お兄ちゃ〜ん、例の魔獣できたぁ〜?では、これで」

 〜ププビレッジ カービィの家がある丘〜

 カービィは一度HN社のデスタライヤーの襲撃によって壊されてしまったが、今は再建された自分の家のベッドでトッコリと一緒に昼寝をしていた。
 そんな時、事件は起きた。プププランド全体が雨雲に覆われた後、大雨が降り始めたのだ。雷もなっている。
 その雷はカービィの家の近くに落ちた。
 ドシャッ!
「ウギャアアアア!」
 カービィの家の中で昼寝をしていたトッコリは雷鳴のせいで目が覚めたと同時に叫んでしまった。
 そして彼はカービィを起こそうと声を掛けた。
「お、おい!カービィ、外が大変な事になっているぞぉ!」
 トッコリの大声で目が覚めたカービィは眠そうに目をこすっている。
「ぽよぉ〜?」
「『ぽよぉ〜?』じゃねぇだろおぉぉぉぉ!お前も星の戦士だったらこの突然降ってきた大雨と雷の原因を探れ!もしかすると今噂になっている再び現れた魔獣達の仕業かもしれないしな!」
「ぽよっ!」
 トッコリの言葉に目を覚まし、返事をしたカービィは大雨の降る外に飛び出した。

 カービィとは別の場所にいたフームとブンはデデデ城の自分達の部屋にいた。
「急に大雨が降り出したけど一体…」
「雷までなってるし、カービィは大丈夫かなぁ?」
「また魔獣かしら…?」
「カービィのところに行ってみようぜ!」
 二人は家を飛び出したカービィと同じように城の外に出た。

 フームとブンは、カービィがこちらを探し求めて自分から向かってきたのですぐに合流する事ができた。
「カービィ!」
「ぽよ!」
 合流した直後、すぐ近くに雷が落ちてきた。
「うわっ!」
 雷に当たる事はなかったが、フームは以前似たような現象にあったことを思い出した。
「そういえば昔、同じことがあったような気が…」
 何かを思い出そうとしているフームだったが、次の瞬間カービィ達の前に何かが現れた。
「あいつ…どこかで見たような気がする…」
「確かに…あの姿どこかで…。まさか……クラッコ!?」
「ぽよ?」
 カービィ達の前に姿を現した魔獣は、色こそ違うものの以前にカービィが戦った雷雲のような魔獣・クラッコにそっくりな姿をしていた。
「カービィ、気をつけて!」
 クラッコに似た魔獣はカービィを追跡し、上空から雷を連発してきた。
「あいつ!前よりも動きが速くなってやがる!」
「来て、ワープスター!」
 呼び出された新ワープスターにカービィは飛び乗ってクラッコに似た魔獣の追跡から逃れようとする。
 だが、クラッコ以上のスピードを持つその魔獣はすぐにカービィに追いついてきた。
「新しいワープスターのスピードについてくるなんて…」
 クラッコに似た魔獣は電撃をカービィに向かって飛ばしてきた。
「カービィ、吸い込みよ!」
 そのクラッコに似た魔獣が発した電撃を吸い込んだカービィはスパークカービィとなった。
 その後しばらくは空中でスパークカービィとクラッコに似た魔獣による電撃の応酬が続いた。
 だが、クラッコに似た魔獣は急に電撃による攻撃をやめた。
「ぽよ?」
 クラッコに似た魔獣はエネルギーを溜めているようだった。
「カービィ、気をつけて!」
 フームがそういった瞬間クラッコに似た魔獣は強力な電撃を様々な方向に放った。
 カービィはフームが声をかけたおかげかその電撃をかわすことができたが、クラッコに似た魔獣の攻撃は止まない。
 続いてクラッコに似た魔獣は、自身に生える棘をミサイルのようにしてカービィに飛ばしてきた。
 カービィはこれを電撃で防ぐ。しかし次々と繰り出される激しい攻撃の前に、カービィは疲れてきているようだった。
 そんなカービィはあることを思いついたらしく、いきなりクラッコの周りを新ワープスターに乗ったままぐるぐると飛び回り始めたのだ。
「カービィ、何をする気なの?」
 クラッコに似た魔獣は自分の周りをハエのように飛ぶカービィを不審に思いながらも電撃や棘による攻撃で撃墜しようとするが、上手く当てる事ができないでいた。
 カービィはクラッコに似た魔獣の攻撃を避けて飛び回り続ける。
 そのときだった。クラッコに似た魔獣は自分の周囲を飛ぶカービィを目で追い続けた所為で目を回してしまったのだ。
 同時に、カービィの身体も緑色に光ってバチバチと音を立てていた。
「姉ちゃん、あれ…」
「カービィの身体が光っている…?」
 そして緑色の電気のようなもので光っていたカービィは周囲に強烈な電撃を撃ちだした。
 目を回していたクラッコに似た魔獣はそれを避ける事ができずに直撃を受け、爆死した。
「カービィが勝った〜!」
 クラッコに似た魔獣が倒されると、大雨だった天気は回復し、日の光が射し込んできた。
 マルクが新しい製造法で作った魔獣はカービィにより見事に倒されたのであった。

 その様子をデデデ城のバルコニーから見ていたデデデは、魔獣が倒されたことでまた悔しがっていた。
「くうぅ〜、MTSが言っていた魔獣というのは昔HNに注文したクラッコだったというのは分かったが、あれはいくらなんでもカービィにあっさりやられすぎぞい!あいつはクラッコより強かったんじゃないのかぞい!?ったくお馬鹿お馬鹿ぁ〜!くそっ、またグリルに文句を言ってやるぞい!」
 デデデはグリルに文句を言う為に、怒りながらバルコニーを後にしたのであった。




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