副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第8話・後編
〜シリカ、惨敗する〜



カービィがクラッコリベンジを倒したのと同じ頃、惑星メックアイの廃工場ではシリカがまだ休んでいた。
「(そろそろここを出よう…)」
 そう思って行動に移した途端に何かが廃工場の中に入ってきた。
「…なに!?」
 シリカがそう言って自分の近くにあった積み上げてある荷物を見ると、そこには仮面をつけた2頭身の人型の魔獣が乗っており、シリカを見下ろしていた。
「Aqui esta!(いたぞ!)」
 そう、この2体の魔獣はポップスターでカービィが取り逃がし、グリルの元へ逃げ帰ってきたJ・アックスとチェンソー・Jだったのだ。
 シリカの腹部から流れ出る血を見て興奮したチェンソー・Jが嬉しそうに叫んだ。
「Miralo,esta herido!(見ろ、奴は怪我をしているぞ!)」
 続いてJ・アックスも斧を構えてこう言う。
「Siiii,Quiero matar…!(やべぇ、殺してやりてぇ…!)」
「Vos voy a romper a pedazos!(八つ裂きにしてやるぜ!)」
 2体の魔獣は掛け声と共にシリカに向かって武器を振るう。
「(こいつら…魔獣なのか?こんな奴ら見た事ないが…新手の魔獣?)」
 重傷を負った体のままでも何とか魔獣の攻撃を避けるシリカ。
「(下手に反撃するとこっちが殺られる…でも…この状況を何とかしなければ…)」
 ブオォォォォォン!
 チェンソー・Jのチェーンソーがシリカに振り下ろされた。
「くっ!」
 シリカはその一撃を改造銃から伸ばしたナイフで受け止めた。しかし。
「うぐっ!」
 チェーンソーを受け止めている間にできた隙を突かれてJ・アックスの斧による攻撃をまともに受けてしまったのだ。
 胸部のプロテクターを装備している部分に当たったので火花が散っただけでダメージは軽減できたようだが、元々グリルから受けた傷を持っていたシリカは衝撃のせいで後ずさりをした。
 再びシリカにチェンソー・Jのチェーンソーが振り下ろされた。
 シリカはそのチェーンソー目掛けてミサイルランチャーにした改造銃で砲撃をした。
 ミサイルによってチェンソー・Jの左腕のチェーンソーは粉々に吹き飛び、攻撃手段を失ったチェンソー・Jは、悔しそうにしながらシリカに言葉をぶつけた。
「Basta ya,hijo de puta!(やりやがったなてめぇ!)」
「たあっ!」
 シリカは武器を失ったチェンソー・Jに蹴りを浴びせて吹っ飛ばした。
 蹴り飛ばされたチェンソー・Jは地面に強く頭を打ち、もう動く事はなかった。
 続いて残ったJ・アックスが斧を振り回して襲い掛かってきた。
 シリカは改造銃から伸ばしたナイフで受け止め、弾いてからJ・アックスを斬り付けた。
 ナイフの一撃で苦しんでいたJ・アックスに向かってシリカは改造銃をマシンガンの形態にして弾丸を連射する。
 ババババババッ!
「Lord Marx…(マルク様…)」
 数発撃たれたところでJ・アックスは死に際の言葉を放ちながら静かに倒れた。
「はぁ、はぁ…や、やったか……?」
 休むどころか2体の魔獣に襲撃されたシリカは疲労が更に溜まってふらつき、今すぐにでも倒れそうな状態だった。
 だが、次の瞬間。
 ガシャーーーーーン!
「!?」
 完全に疲れきっていたシリカの目の前に待っていたかのように、以前遭遇した魔女のような帽子をかぶった魔法使い・グリルが廃工場の屋根を突き破って現れたのだ。
「随分手間を掛けさせてくれたわね。でも今度は逃がさないわよ」
 そう言い終える前にグリルはシリカにほぼ瞬間移動のような高速移動で接近して掴みかかったと思うと、至近距離での蹴り上げを浴びせた。
「うわっ!」
 グリルはシリカを蹴り飛ばすと『いい物を見つけた』ような目で何かを見ていた。そしてその何かを手に取った。
「これで遊んであげようかしら…?」
 グリルが手に取ったのは普通の鉄パイプだった。
 それを手に持ったままグリルは振りかぶった状態でシリカにゆっくりと近づいていく。
 シリカは起き上がってミサイルランチャーにした改造銃でグリルに向かって砲撃をしたが、グリルは物ともせずに近づいてくる。
 そしてグリルは鉄パイプでシリカを殴りつけた。
「うっ!」
 シリカは頭部を殴られるのは回避したようだが、左腕を殴りつけられてしまう。
 さらにグリルの力があまりにも強すぎたのか、シリカの左腕から赤い血が滲み出た。
「あ…あぐぐ…」
 シリカは重なる怪我と疲労の所為で体力が限界を超え、立つことができなくなり、手はついているものの、人間で言う『四つん這い』の状態になった。
 グリルはそれを面白がって鉄パイプをまた振りかぶり、シリカに強烈な一撃を浴びせる。
「うりゃ☆」
「うぐぁっ!」
 鉄パイプによる攻撃を受けてうつ伏せの状態になったシリカにグリルは更なる追い打ちをかけるかのように、また鉄パイプで彼女を殴りつけ、とどめに踏み付けをした。
「これで最後よ、て〜い☆」
「は…うぅぅ………」
 鉄パイプで背中を殴られた上に踏み付けでとどめを刺されたシリカは力の抜けるような声を上げ、動かなくなった。
 そして殴られたその背中からは血が流れ出ていた。
 グリルは鉄パイプについたシリカの血を舐めとり、独り言を呟く。
「ちょっとやりすぎちゃったかな?息は………まだしてるね♪よし、このままメックアイ支部に持ち帰っちゃおう!持ち帰ればこれがお兄ちゃんの『素敵な計画』の材料に…」
 グリルはウキウキしながら気絶したシリカを念力で運ぼうとすると、何かに呼び止められた。
「グリル」
「ん?」
 呼び止めたのは……彼女の兄、マルクであった。
「お前、こんなところで何をしている…?」
「あ…お、お兄ちゃん!いや、これは…その…」
 勝手な行動をしていたのが見つかって顔を青くしながら焦るグリルに、マルクは少し怒ったような口調で話し始めた。
「ここの廃工場が騒がしいという情報を洗脳した住民から聞いたメックアイ支部のメンバーからの通信に応答し、観に来たのだが…お前は本部の司令室にもいないと思ったらここにいたのか…。何をしていたか全て話してもらおうか」
「あ、あのぉ……お、お兄ちゃんの言っていた『素敵な計画』の手助けをしたいと思って……ここにいた星の戦士を……」
「まったくお前という奴は……勝手な行動もそうだが、あまり星の戦士達の目の前に姿を現すようなことはしないでほしいんだよ、僕としては」
「で、でもぉ!これで星の戦士また一人捕まえたんだし、あとは洗脳して魔獣にするだけでもういいじゃない!」
 グリルの言った事に対しマルクはしばらくしてから溜め息をつきながら答えた。
「はぁ……まあ、今回はお前が手柄をあげたから許しておこう。第一よく考えたらここに死んでいる危ない性格の魔獣どもなんかに任せた場合、下手したら気絶させるどころか調子に乗って星の戦士の首でも斬り落として殺していたかもしれないしな…。じゃあグリル、僕は先にウィザード・フォートレスに帰るから、気絶しているそいつをメックアイ支部に運んでおいてくれ。そうしたら帰って来い」
「オッケ〜イ☆」
 マルクの言う事に元気に返事したグリルは念力で気絶したシリカを持ち上げた状態でテレポートし、どこかに消えた。
 マルクが考案した『素敵な計画』はまた実行に向けて一歩進んだのであった…。




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