副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第9話
〜凶獣ティンダロス〜



 〜ウィザード・フォートレス グリルの部屋〜

 MTSの本拠地であるウィザード・フォートレスの副官グリルの部屋には、テレビゲームをしているマルクとグリルの姿があった。
 しているゲームの内容は、どうやら自分たちと星の戦士たちを使用キャラクターにした格闘ゲームらしい。
 兄妹がプレイする格闘ゲームはタッグバトルモードの最終ラウンドに突入、相手キャラクターはカービィとメタナイト卿だった。
「いよいよタッグバトル最終ラウンドだ〜。お兄ちゃん、私はメタナイト卿を倒したいよ〜」
「じゃあ僕はお前がそう言うならカービィを倒す」
 ゲーム内の戦いが始まって数分後…。
「あ〜ん、メタナイト卿倒したけどカービィにやられちゃったよぉ〜。悔しいぃ〜」
「ハッ、最後は僕が必ず勝つ!」
 ゲーム内ではメタナイト卿とグリルが倒され、カービィとマルクが残っている状態だった。
 そして、ゲーム内のマルクが必殺技を放ち、カービィの体力ゲージを0にして勝利した。
「フッ、まあこんなものだろうな。グリル、僕が作ったこの格闘ゲームの感想は?」
「お兄ちゃんのことだから、ゲーム内の私たちを思いっきり強くして星の戦士たちを貧弱にするようなバランス崩壊ゲー作ると思っていたけど、キャラそれぞれに個性があってゲームバランスは崩壊していなかったし、すごくいい出来だと思うよ?」
「『お兄ちゃんのことだから』と言うのは余計だろう。さて、休み時間はこれぐらいにしておいてグリル、仕事の話に戻るぞ。現在、お前のおかげで星の戦士をまた一人捕まえる事に成功し、これで一応『素敵な計画』の材料は揃った。今日もお前は司令室に戻って陛下の注文を引き受けて魔獣を配信した後は、最初に捕らえたナックルジョーがいる惑星アクアリス支部に洗脳に欠かせないあいつを送り込むんだ」
「えぇ〜!?もう洗脳まで入っちゃうの?もっと材料集めしないの?2人だけでいいの、お兄ちゃん?」
「カービィと繋がりが薄い生き残りの星の戦士よりも、資料にあるポップスターにやってきて誤解からカービィたちと対決したが、最後は改心して仲良くなり、親密な関係になった次世代の星の戦士を洗脳して送り込むほうが、カービィ、そしてカービィに味方するものに与えるショックが大きいと、僕は考えているからだよ。だから偶然にも僕が材料として最も適していると考えた二人が運よく揃ったから、今日にも『素敵な計画』は実行開始する。ただ、間違えてほしくないのは、今日陛下に送る魔獣は洗脳した星の戦士ではな、く普通の魔獣という点だ。そして今日は明日お前がするべきことも少し指示しておこう。明日、洗脳した星の戦士とカービィの戦いは僕も見物したいから、陛下に洗脳した星の戦士と魔法ビデオカメラを一緒に送ってくれ。僕とグリルは陛下が撮ったその映像を司令室で一緒に見てやろうじゃないか。というわけでお前は司令室に戻れ」
「いよいよなのね…。あぁ〜、楽しみだ♪では今日言われた事は全て頭の中に入れたし、司令室に行ってきま〜す♪」
「いい返事だ、では僕も社長室に戻るとしよう…」
 兄妹の怪しい会話は捕らえられたナックルジョーとシリカに危険が迫っているのを表している会話でもあった……。

 社長室に戻っていたマルクはパソコンに入っているHN社から盗んだ星の戦士の資料を見てなにやら考え事をしており、横にはドロシアもいた。
「(グリルが捕らえた星の戦士の名はシリカ。銀河戦士団女団員ガールードの娘を名乗る女戦士で、立派な戦士だった母親の事を誇りに思っている、か…)」
「どうした、マルク?」
 資料を見ていたマルクにドロシアが話しかけてきた。
「いや、今回グリルが捕らえた星の戦士は幸せ者だなと思っていてな…」
「『幸せ者』というのは自分とこいつの過去を比べて言っているのだろう?」
「ああ、母親に大事にされていたと思われる彼女は両親から虐待を受けていた僕なんかに比べたらとても幸せ者だよ。僕も小さい頃は両親とはいつまでも仲良く暮らせると思っていたが、それは間違いだったからね」
「確か『生まれながら魔法の才能が素晴らしかったお前たちは親に自分たちを超える力を持つかもしれない』と思われ虐待されたんだっけか…」
「両親は今の僕からすれば僕たちの仲間・マジカルーマ族を滅ぼしたナイトメアと同じ思考回路だったと思うね。にしても彼女に『僕がガールードを殺した真犯人だよ』と教えたら面白いことになりそうだな…フフフ……」
「そんなことをしてもこいつの怒りの矛先がお前に向かうだけだろう、そもそもお前がそうやって人前に出るのは普段のお前から考えればおかしな行動だと思うが…」
「星の戦士たちは僕自身が出向くほどの実力じゃないというのは分かりきった事さ。だが、最悪もし僕自身が出向く事になったらということも考えてみただけだよ」
「なるほど…、お前はやはり自信家なのか用心深いのかよく分からない複雑な性格なのだな」
「ドロシアは僕たちの仲間にして正解だったよ。魔獣の大量生産に役立っているのはもちろんのこと、僕やグリルの話し相手にもなって話していても飽きないからね」
「そうか、それは良かったな。だが何度も言うが私が味方しているのはお前のところにグリルがいるからだというのは忘れずにな…」
「ハハハ、分かってるよ」


 〜ププビレッジ デデデ城〜

 デデデ城には今日もカービィを倒すための魔獣を購入しようとデリバリーシステムを使ってグリルと話しているデデデの姿があった。
「今日売ってくれるのはこの犬かぞい?」
「はい、『猟犬魔獣ティンダロス』という魔獣です♪そのうちこの魔獣は量産してこれを使った『101匹ティンちゃん計画』とか『102匹ティンちゃん計画』という2つの計画を考えています♪」
「『101匹ティンちゃん』?『102匹ティンちゃん』?それは何ぞい?」
「この凶暴なティンダロスを量産して星の戦士たちにぶつける計画です。まあ実行するのは機会があったらですけどね。それじゃあティンちゃんでカービィをやっつけちゃってください♪」
 グリルがディスプレイから姿を消した後、デデデはデリバリーシステムで送られてきた犬の魔獣・ティンダロスを見つめていた。
「最初はただの犬と思っていたが、よく見るとこの犬なんだか姿がちょっと怖いぞい…」
 デデデがそう呟くのもそのはず。
 MTSから送られてきた魔獣ティンダロスは口が裂け、背中からは皮膚を突き破って触手が伸びているなど、本当に生物なのか疑わしくなるようなとてもグロテスクで恐ろしい姿をしていたのだ。
 デデデはしばらくじっとティンダロスの事を見ていたが、そのティンダロスはうなり声をあげながら突然城の外へ飛び出していった。
「奴はカービィのところへ行ったのかぞい?」


 〜マルク・ザ・トリックスターズ 惑星アクアリス支部〜

 デデデとの魔獣に関する話を終わらせたグリルはマルクの命令でナックルジョーが捕らえられている惑星アクアリス支部にある魔獣と共にやってきていた。
「さあ、今日は貴方にとっても大事な仕事をしてもらうわよ、洗脳魔獣ブレノウ」
 グリルがブレノウと呼んだその魔獣は2頭身の人型で、毒々しい刺繍が目立つ緑色のローブを羽織った老人のような姿をしていた。
「大事な仕事…?」
「そう、お兄ちゃんからの命令よ!お兄ちゃんが考えた『素敵な計画』のために此処に捕らえてある星の戦士の子を洗脳してほしいの」
「マルク様からの命令か…。今まで私はマルク様が支配した惑星の住民たちしか洗脳した経験がないが、星の戦士の洗脳まで任されるとは…」
「だから大仕事なのよ、じゃあ簡単な説明はここまでにして、星の戦士を捕らえている牢屋の部屋に行くわよ」
「わかりました」
 グリルとブレノウはテレポートを使ってナックルジョーを捕らえてある牢屋へと向かった。


 場面は変わってここププビレッジではデデデがMTSから買った魔獣ティンダロスがカービィを求めて村のはずれをうろついていた。
 村の子供たちはカービィを探し回るティンダロスを見て不快に思っていた。
「あ、あれって魔獣?」
「やだ〜、なんだか気持ち悪い」
「これって近づかないほうがいいよね?」
 村の子供たちがこちらを見ているのに気づいたティンダロスはうなりながら子供たちを睨み付けた。
「グルルル……」
「うわあああ!」
 ティンダロスに睨み付けられた村の子供たちは恐怖のあまり逃げ出してしまった。
「カービィに知らせないと!」
 そして、ティンダロスもカービィを探して走り始めた。

 カービィはフーム、ブンの2人と一緒にカワサキのレストランにやってきていた。
 カービィはカワサキの作った料理をとてもおいしそうに食べている。
「いや〜、やっぱりカービィがいると生ごみが出なくて助かるね〜」
 そんな時、先ほどティンダロスから逃げてきた村の子供たちのイロー、ハニー、ホッヘの3人がレストランにやって来た。
「あ、カービィ!こんなところにいたんだ〜」
 急いで駆け込んできた3人を不思議に思ったフームは何があったのか聞くことにした。
「一体どうしたの?3人ともそんなに焦って…」
「今、外に変な犬の化け物が外に…」
「犬の化け物?」
「ぽよ?」
 ガシャーーーン!
 イローたちが事情を詳しく話そうとしていたそのとき、レストランの窓ガラスを破って何かが入ってきた。
 入ってきたのは先ほどイローたちと遭遇したティンダロスであった。
「?」
「あ、あいつだよ!さっき見かけた犬の化け物は!!」
 入ってきた犬の化け物・ティンダロスを見たホッヘが叫んだ。
「グルルル…、ガウッ!」
 ティンダロスはうなり声をあげながら周囲を見渡した後、カービィを見つけるといきなり襲い掛かってきた。
「カービィ、逃げて!」
「ぽよぉ〜!!」
 フームの声を聞いたカービィはティンダロスの飛びつき攻撃を避けて店の外へ逃げ出した。
「ガウガウッ!」
 ティンダロスは逃げたカービィに向かって吠えた後、何故か別の方向を向いていた。
「こ、こっちに来るなよ〜?」
 急にカービィを追うのをやめたティンダロスに不信感を抱いたブンが呟く。
 そのティンダロスが見つめていた先にはカワサキが先ほど海で釣りをして手に入れたと思われる生魚があり、ティンダロスはそれに飛びつき、なんと食べ始めた。
 グチュグチュ…
「あ〜、さっき釣ったばかりの新鮮な魚が〜…」
「魚を食べている…?」
「腹減ってたのかな〜?」
 フームたちは攻撃手段を持たないため、生魚を食べているティンダロスをただ見ていることしかできなかった。
「ガルルルル………」
 生魚を食べ終わったティンダロスはカービィを追うつもりなのか、外へ飛び出していった。
「カービィのところへ行ったのかしら?」
「だとしたらカービィが危ないよ、姉ちゃん!」
「あの犬を追いましょ!」
 フームとブンも犬の化け物・ティンダロスを追ってレストランカワサキの店の外へ走り出した。

 生魚に興味を示したティンダロスから逃げることのできたカービィは村のはずれの草原をのんびりと歩いていた。
 だが、そこに生魚を食べ終わったティンダロスがカービィを追いかけてやってきた。
「ぽよ!」
「ガウガウガウガウ!!」
 追いついてきたティンダロスにカービィは驚くが、その間にもティンダロスは物凄いスピードでカービィに追いつき、レストランカワサキで初めて遭遇したときと同じような飛びつき攻撃を仕掛けてきた。
「ぽよ〜!」
 ティンダロスはカービィを押し倒し、噛み付いて攻撃をしようとするが、丸いカービィは前足で押さえつけようとしてもうまく押さえることができず、手こずっているようだった。
 その現場にティンダロスを追っていたフームとブンもようやく辿り着いた。
「姉ちゃん、カービィが!」
「来て、ワープスター!」
 危機に陥ったカービィのところにフームが呼び出した新ワープスターが現れ、取っ組み合っていたティンダロスを跳ね飛ばし、カービィを助けた。
「グァウ!」
 新ワープスターに飛び乗ったカービィは空を飛んでティンダロスの襲撃から逃れようとするが、この程度のダメージで倒れるティンダロスではない。
 すぐさま起き上がって空を飛ぶカービィを追って走り始めた。
「カービィ、今は何とかそいつを振り切って!今なにかコピー能力を得られそうなものを探しているから……」
 フームはカービィに命令するとブンと共に周りに何かカービィがコピー能力を得られそうなものがないか探し始めた。
「グルルルルルル……ガウッ!」
 カービィを追うティンダロスは空中にいるカービィに向かって背中から触手を伸ばして攻撃をした。
「ぽよぉ〜〜!!!」
 ティンダロスの触手は新ワープスターとカービィに絡みつき、地上に引きずりおろした。
 触手攻撃で地上に引きずりおろされたカービィに、ティンダロスはまたしても飛びつき攻撃をする。
 そんな時、カービィがコピー能力を得られるようなものを探していたブンは偶然あるものを見つけ、フームに渡した。
「姉ちゃん、このトンカチだったらカービィがハンマーカービィになれるかもしれない…!」
「これだわ!カービィ、これを吸い込んで!」
 ブンから受け取ったトンカチをフームはカービィの近くに投げつけた。
 カービィはトンカチが近くに投げつけられてもまだティンダロスと取っ組み合っていたが、新ワープスターがまたティンダロスの元に突っ込んできてカービィを再び助けた。
 ティンダロスが離れたことによってトンカチを認識したカービィはそれを吸い込み、ハンマーカービィとなった。
「やったあ、ハンマーカービィだ!」
 ハンマーカービィとなったカービィを見てブンが嬉しそうに言う。
 ハンマーカービィはティンダロスと対峙すると手に持つハンマーを振りかぶる姿勢になった。
 カービィの出方を疑っていたティンダロスだったが、自分から先制攻撃を仕掛けることにし、噛み付こうと裂けている口を開けてカービィに突進した。
「ガウッ!」
「ハンマー叩き!」
 カービィは突進してきたティンダロスにハンマーで殴りつけた。
「ガアゥ!」
 ハンマーによる一撃は強烈で、新ワープスターの突撃があまり効いていなかったと思われるティンダロスに大きなダメージを与える事ができたようだ。
「ガルルルル…………」
 起き上がったティンダロスはカービィを恐ろしい目つきで睨み付けた後に口を大きく開けて、今度は伸縮自在で鋭利な舌を伸ばして攻撃してきた。
「グアウッ!」
 カービィはこれを避け、攻撃後の隙ができたティンダロスに体を回転させながらハンマーで敵を殴りつける技・ジャイアントスイングで反撃をする。
「ジャイアントスイング!」
「グギャッ!」
 ジャイアントスイングを浴びたティンダロスは自身の最大の武器である牙を全て折られてしまった。
 それでもまだカービィを倒してやろうと得意のハイジャンプからの飛びつき攻撃を繰り出した。
 カービィは襲い掛かってくるティンダロスに怯まず、ハンマーに何かのエネルギーを集めていた。
 そして、赤く炎のように光ったハンマーで今まさに自分に飛びつこうとしていたティンダロスを攻撃した。
「鬼殺し火炎ハンマー!!」
 ドガッ!!
「グワゥワゥゥゥゥゥ……」
 ハンマーカービィの新必殺技を喰らったティンダロスは倒され、断末魔の声を上げて爆発四散した。
「やったあ!」
「よし、カービィの勝ちだ!」
 ハンマーカービィの新必殺技によってティンダロスが倒されたことを見届けたフームとブンは喜んでいた。


 〜MTS 惑星アクアリス支部 牢獄の部屋〜

 再び場面は変わってここはグリルがいるMTS惑星アクアリス支部。
 この牢獄の部屋にはグリルと戦って敗北し、手足を縛られて封じられていたナックルジョーが捕らえられていた。
「(俺としたことが……油断していた…それにしても…ここの奴ら何が目的で俺を……?)」
 牢の中で考え事をしていたナックルジョーの前にグリルと謎の魔獣・ブレノウが現れた。
 ナックルジョーはグリルたちに向かって大声で目的が何かを聞いた。
「貴様ら、何を考えている!目的は一体……!」
「貴方、数日前から私がスピーカーで話しかけてもそれしか言わないじゃない。もっと違うこと喋ってよ。それよりもねぇ、私たちはまた新しく星の戦士を一人別の惑星で捕まえちゃいました〜♪」
「!?それは誰なんだ、教えろ!」
「さあね。ともかく貴方たちは利用価値があるからこうやって生かしておいてやってるのよ、ありがたく思いなさい」
「くっ…!」
「で、今日私が特別に直接貴方に会いに来たのは理由があってね…」
「……?」
 グリルは牢の鍵を開けると自分の横にいたブレノウをナックルジョーの目の前に来させた。
「お前、俺に何を……?」
 ナックルジョーの目の前にやって来たブレノウは怪しい呪文を唱え始めた。
「うっ…気が……遠くなって……」
 ブレノウが放った催眠術のようなものはナックルジョーに効いているらしく、彼はなにかに意識を奪われるような感覚に襲われ、眠ってしまった。
「これでいいだろう」
「ついに星の戦士が一人私たちの手に堕ちたのね、フフッ…」
 しばらくしてブレノウの催眠術のようなもので眠ってしまっていたナックルジョーは目を覚ましたが、眠る前とはなんだか様子が違っていた。  身体の色は変色し、目は瞳が消えて真っ赤な色に染まっていた。
「気が付いたのね。それでは私たちの本部に行きましょう、格闘魔獣ナックルジョー」
「うぅ〜……」
 様子がおかしいナックルジョーはグリルの指示に従って彼女についていった。
 ブレノウは一体ナックルジョーに何をしたのであろうか………?




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