副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第10話
〜カービィVSナックルジョー〜



 〜ウィザード・フォートレス 司令室〜

 ウィザード・フォートレスの司令室。
 ここにはグリルの帰りを待っていた首領のマルクとMTS惑星アクアリス支部から帰ってきたグリル、洗脳魔獣ブレノウの催眠術によって様子がおかしくなったナックルジョーがいた。
「ナックルジョーを連れてきてくれたか、グリル。準備はもう整ったようだな。では陛下と連絡を取り、ナックルジョーとこのポップスターで撮った映像をここのシアタールームに転送する事のできる特殊な魔法ビデオカメラを陛下に渡してくれ」
「うん、わかった!さあナックルジョー、貴方はこの機械の上に乗っててね」
「………」
 グリルの指示に従うナックルジョー。
 そしてグリルはポップスターのデデデのところへ通信を入れた。


 ププビレッジのデデデ城には、今日もカービィを倒すための魔獣を購入しようとデリバリーシステムを起動させようとするデデデとエスカルゴンがいた。
 デデデが玉座に座ってMTSに通信を入れようとしたとき、MTS側から通信がやってきて勝手にデリバリーシステムが起動した。
 ディスプレイにはグリルの姿が映し出される。
「(ん?今日は向こうから通信が来たぞい)」
「ハァイ、陛下♪今日はサービスとしてとても強い魔獣をタダであげちゃいます!」
「とても強い魔獣!?タダ?良い事ずくしぞい!ぐへへへへ」
「あの〜、そんなに強い魔獣なんでゲスか?もしそうだったらそんなのをタダで私どもにくれるなんて正気でゲスか?そちらが大損するだけのような…」
「細かい事は気にしなくていいんですよ、今日は大事なお祭りの日なんですからね♪」
「お祭りの日?」
「でも条件があります!」
「条件?それは何ぞい?」
「その魔獣とカービィの戦いを魔獣と一緒に送る特殊なビデオカメラで撮ってください!私たちはその魔獣とカービィと戦いを見たいもので…」
「わかったぞい。そのビデオカメラとやらで魔獣とカービィの戦いを撮るから魔獣をよこすぞい」
「交渉成立ですね♪それじゃあ始めましょ、とっておきのイベント・かつての仲間の潰し合いをね!」
「かつての仲間の潰し合い?」  グリルの言った事に首を傾げるデデデとエスカルゴン。  考える事もできないうちにデリバリーシステムから魔獣と特殊なビデオカメラが送られてきた。
 魔獣の姿を見たデデデとエスカルゴンは驚愕した。
「お、お前は……!」
「あのナックルジョーでゲスか?」
「でも最後に会ったときの色ではなく、最初にあったときの色に近い色をしているぞい」
 魔獣として送られてきたのは様子がおかしいナックルジョーだった。 「そう、彼はカービィではなく我々の味方になった…。陛下の言う事も聞くので命令してみてくださいね♪それからそこにある特殊なビデオカメラで陛下はカービィたちに気づかれないようにカービィとナックルジョーの戦いを撮影してきてください♪」
「わかったぞい!エスカルゴン、そうとなればグリルの言うとおりカービィたちにバレないようにナックルジョーと共に出動ぞい!」
「は、はいぃ〜!」
「ではナックルジョー、カービィを今から倒しに行くぞい!」
「グルルルルルル……」
 デデデの命令を聞いたナックルジョーは城の外に出て行き、デデデとエスカルゴンもグリルが渡した魔法ビデオカメラを持って外に出た。


 〜ウィザード・フォートレス シアタールーム〜

 デデデとのコンタクトを終えたグリルはウィザード・フォートレス内のマルクとドロシアが待っているシアタールームにやってきた。
「お兄ちゃん、陛下との通信はもう終わったよ!」
「流石はグリル、うまくやってくれたようだな。では陛下の持っているカメラからの映像を見るとするか」
 マルクはシアタールームの大画面の電源を起動した。
 するとデデデが持っている魔法ビデオカメラの映像が映し出された。
「カービィ、かつての仲間とどう戦うのかこの目で確かめてやるよ………フハハハハ……」


 一方、そんなことが裏で起こっているのも知らないカービィとフーム、ブンは外でメタナイト卿と話していた。
「先日、オーサー卿から連絡があってな…。オーサー卿は現在の状況を報告してきたのだが、ナックルジョーとシリカの二人が数日前から連絡が取れず、消息不明となっていると言っていたのだ…」
「何ですって!?ジョーとシリカに一体何が…」
「わからない…だが現在オーサー卿たちは宇宙の様々な惑星に向かって彼らの捜索中らしい。私たちにできることは彼らの無事を祈ることぐらいか……」
「ぽよ〜…」
 メタナイト卿の話を聞いたカービィは心配そうな顔つきになった。
 しばらくして、4人が話しているところに見覚えのある人物がゆっくり歩きながらやってきた。
「あぁっ、貴方は…ジョー!生きていたのね、行方不明って聞いたから心配しているところだったのよ!」
「『噂をすれば影をさす』とはこの事だな!」
「じょーぽよ〜!」
 やってきたのは先ほど行方不明と聞いたナックルジョーだった。
 この星に来ている事が確認できて嬉しそうに声を上げる3人だったが、メタナイト卿だけが冷静にナックルジョーの事を見ていた。
「待て!彼をよく見ろ、様子が変だぞ……!」
「……え!?」
 ナックルジョーのところへむかおうとしたフームたちをメタナイト卿が止めた。
「あぁ〜………」
 メタナイト卿が3人を止めると同時に様子がおかしいナックルジョーは変な呻き声を上げた。
「ジョー…?」
「姉ちゃん!ジョーの奴、メタナイト卿の言うとおり様子がおかしいぞ!よく見ると目と服の色が変だし、変な声も上げてる!」
 ブンがフームにナックルジョーの状態を話し終えると同時に、様子がおかしいナックルジョーはカービィたち4人に向かっていきなり拳から光弾を飛ばしてきた。
「キシャアアアア!!」
「避けろ!」
 飛ばされた光弾を避けるようにメタナイト卿がカービィたちに指示を出す。
「わあっ!」
 いきなり自分たちを襲ってきたナックルジョーに対してフームは動揺していた。
「そんな…ナックルジョー……どうして……。嘘でしょ!?」
「また来るぞ!」
「ハアァァァァァ……」
 再び光弾がカービィたちに放たれた。カービィたちはこれもなんとか避けたが、フームだけでなく他の皆も戸惑っていた。
「冗談って言ってよ!」
「まずい、こちらの声が耳に届いてないようだ!」
「ぽよ……」
 ナックルジョーはカービィに向かって走り出し、ぐんぐんこちらに近づいてきた。
「カービィ、逃げて!」
 フームがカービィに命令したが間に合わず、カービィはナックルジョーの投げ技「巴投げ」を受けてしまう。
「ぽよ〜!」

 その様子を隠れて魔法ビデオカメラで撮っていたデデデとエスカルゴンは、様子がおかしいナックルジョーがカービィを追い詰めるのを見てナックルジョーのことを応援していた。
「ナックルジョー、カービィを叩き潰すぞい!」
「シーッ!陛下、声が大きいでゲスよ!」
「あ…すまんぞいエスカルゴン。グリルとの約束は『バレないように戦いを撮影する』だったかぞい?」
「そうでゲスよ!熱くなってもいいから陛下はもっと静かにしていることでゲス」
「あ、向こうに行ったぞい!後を追うぞい」
 カービィたちとナックルジョーが別の場所に移動するのを見たデデデとエスカルゴンは後を追った。


 ウィザード・フォートレスのシアタールームではデデデが撮っている映像をマルクたちが満足そうに観ていた。
「なかなかよく撮れているな。まだ始まったばかり、これからが面白いと期待しよう……。で、グリル」
「え、なぁに?お兄ちゃん」
「お前自身がキレのいいところやつまらないと思ったところで、お前は今から僕が指示する次の仕事に取り掛かってくれ」
「うん!」
「次にお前がブレノウと向かうのは惑星メックアイだ。この後にすることは言われなくてもわかるよな?」
「あ、はいはい!ちゃんと仕事はやるよ、でもまだキレが良くないし、これからがお楽しみって場面だからもうちょっとここで観てていい?」
「ああ、仕事をするのは今日中であればいつでもいいよ」


 場面は変わってププビレッジ。戦いの舞台は海沿いの崖の上に移っており、カービィは様子がおかしいナックルジョーに一方的にやられていた。
「ウゥゥゥ!」
 ナックルジョーは唸り声を上げながらスマッシュパンチでカービィに攻撃をした。
「わぁっ!」
「カービィ!!」
 その後もナックルジョーは最初に敵として現れたときやHN社の社員になっていたときと同じように、カービィに容赦なく技をたたみ掛けていった。
「もう止めて!ナックルジョー!!」
 フームがナックルジョーに呼びかけるがナックルジョーのカービィに対する攻撃は止まない。
「フーーーーッ!」
「ぽよぉ〜!」
 スピンキックを浴びて吹っ飛ばされるカービィ。
「グワアーーーーーーーッ!」
 ナックルジョーの吠え声をあげる狂ったその姿はまさに魔獣のものだった。
「これは……避けられない戦いなの?」
 ナックルジョーを見たフームが呟く。
「フーム!」
 メタナイト卿がフームを呼び止めた。
「え?」
「あのジョーは本物かそれともそのような姿をした何かなのかはわからない……。だが、呼びかけても攻撃をやめないということは戦う以外に彼の攻撃をやめさせる方法はない。カービィにジョーの放つ技を吸い込むよう指示するのだ!」
 メタナイト卿の言った事に対し、フームは少しの沈黙の後にそれを受け入れることにし、コクリとうなずいた。
「グルルル…ハアッ!」
 ナックルジョーのスマッシュパンチがカービィに向かって撃たれた。
「カービィ、吸い込みよ!」
 フームの命令に従ってカービィは光弾を吸い込み、ファイターカービィになった。
 ファイターカービィとなったカービィはナックルジョーにバルカンジャブで攻撃をする。
「バルカンジャブ!」
 ナックルジョーもそれに対抗するためにバルカンジャブを放つ。二つの光弾がぶつかり、爆発を起こした。
 それからはカービィとナックルジョーの技の応酬が続く。
 2人は遠距離戦から近距離戦に移行し、激しい戦いを続ける。
「スマッシュキック!」
「ギャアアッ!」
 カービィのキックがナックルジョーを吹っ飛ばす。
 ナックルジョーはすぐに起き上がって反撃するべくスマッシュパンチを撃つ。
「ぽよぉ!」
 キックの後にできた隙を突かれたカービィは光弾を浴びてしまった。
 しめたと思ったのか、ナックルジョーは肉弾戦に持ち込もうと考えたのかカービィに突進をする。
「カービィ!」
 そう叫んでナックルジョーの突進を受け止めたのはメタナイト卿だった。
「グルルルルル……」
 ギャラクシアでタックルを弾かれたナックルジョーは後ろに2歩下がった。
「メタナイト卿!」
 フームが叫んだ直後、メタナイト卿はギャラクシアから火炎のような衝撃波を放ってジョーを攻撃する。
「ギャアウン!」
 その攻撃を受けたナックルジョーは怯み、足を止めた。
「今だ、カービィ!」
 メタナイト卿は与えてくれたチャンスをカービィは逃さず、カービィはライジンブレイクをナックルジョーに命中させた。
「ライジン……ブレイク!!」
「グギャアアア!」
 ライジンブレイクをまともに喰らって吹っ飛ばされたナックルジョーは崖の下の荒れた海に落っこちて行った。
「ジョー!!」
 ナックルジョーが落ちた崖の下に向かってフームは叫んだが、下の海に彼の姿は無かった。

 しばらくしてから4人は崖の下に降りて浜辺でジョーの事を探したが、やはり見つからなかった。
「ジョー!どこへ行ったの?」
「姉ちゃん、そろそろ日が暮れる!パパたちには何も言ってないから叱られるかも…」
「では私たちのほうで探しておこう。ジョーを見つけ次第報告しに城へ帰る」
 メタナイト卿がフームたちが帰った後も捜索してくれると申し出た。
「え、ええ。頼んだわ。ジョーが無事であればいいけど……」
 フームはそれを承知した。
「だがさっきも言ったとおり必ずしも本人というわけではなく、彼に擬態した新手の魔獣の可能性もあることを忘れないでくれ」
「うん…(なんだか不安になってきたわ……)」

 デデデ城では、ナックルジョーがカービィに負けたのを見て帰ってきたデデデがグリルに報告をしていた。
「どういうことぞい、あのナックルジョーがカービィに負けてしまったぞい!」
「ちゃんとその魔法ビデオカメラで見てたから私も知ってますよ。それはおいといて、ナックルジョーは多分生きてますよ?」
「えぇ?わしはちゃんと見ていたぞい、カービィの攻撃を受けて倒されるナックルジョーの姿を…」
「彼は私たちと手を組んだ事で普段の彼では考えられない生命力を手に入れてますし、それに何よりデータを見ると最初にそちらにやってきたときも獲物をどこまでも追いかけるしつこい性格でしたから簡単にはやられないでしょう。今はどこかで活動停止していてそのうち傷が回復したらまたカービィを襲いに現れると思います」
「ほ、ほぉ〜。それならいいぞい(また難しい事を喋り始めたぞい……)」
「あ、それと陛下。そのカメラはまだ持っていてくださいね」
「それは…どうしてぞい?」
「何故かって?それはまた明日私たちのほうから通信を入れて、新しい魔獣を無料で陛下に提供しようと考えているので、その魔獣とカービィの戦いも撮影してほしいからです」
「また魔獣をタダでくれるのかぞい?で、今度はどんな奴ぞい?そいつも強いのかぞい?」
「強い?当たり前じゃないですか。こちらの魔獣も陛下がどこかで見たことある魔獣なので楽しみにしていてください♪あ、もっと詳しい事は明日話すので本日はこの辺で、さよなら〜」


 〜MTS 惑星メックアイ支部〜

 デデデとの通信をきったグリルはすぐさまブレノウと共にシリカが捕らえられているMTSの惑星メックアイ支部に向かった。
 牢獄の部屋にはアクアリス支部にいたナックルジョーと同じように手足を縛られて封じられたシリカがいた。
 シリカはグリルとの戦いで負った傷はMTSによって治療を受けたらしく、腹部の傷口には血の滲んだ包帯が巻かれており、鉄パイプに殴られてできたと思われる痣の部分には湿布が貼られていた。
 グリルは牢屋越しにそのシリカに話しかけた。
「フフッ、怪我の具合はどう?」
「貴様、敵である私の怪我を治そうとするだなんて頭がどうかしている!大体目的は何なんだ!最近宇宙各地に現れる魔獣たちの中にはHN社の生き残りの魔獣以外にもお前たちが作った魔獣もいるんだろ!?」
「怪我治すのってそんなに良くない事なの?でも貴方は私たちの行動方針がちょっとずれてたら私に殺されてたかもしれないのよ、生きている分有難いと思わないの?それとねぇ、今貴方の仲間のカービィやメタナイト卿のいるポップスターに貴方と同じように私たちに捕まった星の戦士を洗脳して送り込んだところなのよ…」
「!!卑怯な事を……!」
「あ〜、怪我がちょっと治った程度で暴れると傷口が開いて逆に自分に悪いよ〜?すぐに傷を完治したいのなら私の回復用の魔法があるけど、かけてもらいたいなら私に跪くことね」
「そんな事をする必要はない!この治療はお前たちが勝手に私にやったことだろう!」
「元気なのはいいことだけど、もうちょっと静かにしてよ。最後に、今日は貴方にあることをするために私はここに直接会いにやってきたの」
「ある事…?」
 グリルはシリカのいる牢屋の扉の鍵を開け、中に洗脳魔獣ブレノウを入れる。
「何のマネだ?」
 ブレノウは戸惑っているシリカの目の前までやってくると、アクアリス支部でナックルジョーに浴びせたものと同じ怪しい呪文を唱え始めた。
「や…やめろ……視界がかすんで…」
 その催眠術でナックルジョーと同じくシリカは自我を奪われてしまいそうな強烈な眠気に襲われ、眠ってしまった。
「有難う、ブレノウ。これでまた星の戦士を一人、洗脳する事ができたわ」
 数分後、眠っていたシリカは目を覚ましたが、ナックルジョーのように様子がおかしくなっていた。
 ナックルジョー同様に身体の色は変色し、目は瞳が消えて真っ赤な色に染まっていたのだ。
「次は貴方がカービィと戦う番よ、銃撃魔獣シリカ。まずは私と一緒に本部に来なさい」
「グルルルルル……」
 グリルはテレポートを使うと様子がおかしいシリカと共に消えた。
 シリカもやはりナックルジョーみたく洗脳されてしまったのか?
 そうであればカービィに再び仲間同士で戦わなければならないという危機が迫っているのか………?




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