副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第11話
〜カービィVSシリカ〜



 〜ウィザード・フォートレス 司令室〜

 MTSの本拠地の司令室には、先ほど惑星メックアイからブレノウによって様子がおかしくなったシリカを連れてきたグリルと首領のマルクの姿があった。
「お兄ちゃ〜ん、只今戻りました〜!」
「シリカを連れてきたようだね。こいつは生身では素手と怪力以外に武器を持たないから、僕が作った強力な武器を装備させてカービィに差し向けてやろう」
 マルクが作り出した武器は肩に背負うタイプでジェットブースターとミサイルキャノンが一つとなったようなバックユニットと2丁のビームマシンガン、ホルスターと2本のビームブレードだった。
「こいつを送り込んで今度こそ確実にカービィを殺す!そしてその様を僕たちも見届けてやるんだ…!」
「ねぇ、お兄ちゃん」
「何だ?グリル」
「ナックルジョーはどうするの?あのままポップスターに放置しておいていいの?」
「奴は一回でカービィを倒す事ができなかった。一度で倒す事ができなければ二度目も同じ事、ナックルジョーの戦力ではカービィを倒す事ができない。だからもうあいつは不用だ。放置しておく事にするよ」
「え〜?でも復活してカービィにまた戦いを挑むかもしれないよ?」
「グリル、お前は本当に分かっていないな。一度敗退した相手に負け犬が活動を再開して挑んだところで返り討ちに遭うだけだろう。奴はいるだけでゴミ同然さ。まあシリカのこともカービィを倒せると期待はしているけど、一度カービィに負けたらポップスターに捨てることにしているからね」
「勿体無いなぁ〜、捨てなければ心強い味方になってくれるかもしれないのに」
「そんな雑魚が僕たちのところに居てもお荷物になるだけ…」
 マルクがそう言いかけたとき、グリルが反論した。
「え?前と言ってる事違ってない?お兄ちゃんつい最近は『相手側から見たら強さは相当なものかもしれない』みたいなこと言ってたじゃん」
「よく考えてみるんだグリル。カービィに負けるような屑はうちの組織にいらないんだよ、わかるか?」
「う、うん(ちょっとお兄ちゃんそれは酷すぎるよ…)」
 自分の発言を聞いて不満そうな顔をしたグリルを見たマルクはグリルが何を考えているか簡単に当てた。
「今、お前は『捨てるなんてそれは酷すぎる』と心の中で思っていただろ?」
「え?いや…別に…そんなことは…無いよ……」
「お前はまだ甘いな。お前の心はどうしても完璧に非情になりきれてない部分がある。味方であろうと捨てるべきときは捨てなければならないというのをよく覚えておくんだ。仲間想いの奴は戦場では早死にするぞ。生きたければそういうこともしなければならない。まあ今の状況であればまだ僕たちは当分死なない、いやこれからもずっと死ぬことは無いけどね。それからグリルはモトシャッツオを捨て駒にしたりとお前からする「酷い事」をすでにやっているじゃないか」
「あ…うん、次からは気をつけるよ」
「さあ、お説教はここまでにして。グリル、今すぐ陛下と連絡を取ってシリカを送り込め。僕はこの前のように先にシアタールームに向かっている」
「わ…わかったよ、お兄ちゃん」
 テレポートで姿を消したマルクを見ていたグリルの顔は少し悲しげなものを感じられる表情だった。
 そして、その陰にはドロシアの姿が…。


 〜ポップスター ププビレッジ〜

 カービィが様子がおかしいナックルジョーを倒した翌日の朝。
 デデデは起床直後に昨日グリルが『また無料で魔獣をくれる』と言っていたのを思い出し、デリバリーシステムを起動した。
 玉座のスイッチを押すと、デリバリーシステムが起動してディスプレイにグリルの姿が映し出される。
「あ、陛下!今、丁度私のほうから通信入れようとしていたところだったんですよね!」
「そんなことはどうでもいいぞい!今日タダでくれると言ったカービィを倒すための魔獣を早くよこすぞい!」
「もう、陛下ったら気が早いですよ!急かされなくても約束は守りますってば。はい、じゃあいつものように魔獣を送りますね〜♪あ、これは特別にタダだからいつものようにじゃないか、エヘへ」
 グリルが話し終えるとデデデがいる部屋は暗くなり、デリバリーシステムが光りだして魔獣が送られてきた。
「こいつは…前にわしを狙ってやってきた暗殺者……?」
 その魔獣はデデデにとって見覚えがあった。
 送られてきた魔獣は以前、森に隕石のようなものが降ってきたのでそれを危険視したエスカルゴンと共にその森を調査した際にいきなり自分たちに襲い掛かってきた少女・シリカにそっくりだったのだ。
 デデデは以前のことを思い出しながら目の前にいた魔獣を見ていたが、魔獣は唸り声をあげながら恐ろしい目つきでデデデのことを睨んできた。
「あ゛ぁ〜……」
「ぐ、グリル!こいつはナックルジョーと同じようにわしの言う事は聞くのかぞい?」
「ちょっと睨まれただけでそんなに怖がらないでくださいよ。うん、そのシリカは陛下の言う事は何でも聞きますよ。昨日送ったナックルジョーと同じで喋る事はできないけど、命令には忠実ですからね♪」
「ほぉ〜、それなら良かったぞい。ではお前は今すぐカービィのところへ向かうぞい!」
「ギシャアアアア!」
 シリカはデデデの命令を聞いて吠え声をあげるとマルクによって取り付けられたバックユニットについているジェットブースターで空中に飛び上がり、部屋から出て行った。
「あ、何度も言うようかもしれませんが、シリカとカービィの戦いはこの前のカメラで撮ってくださいね♪フッ、2度目のパーティーの始まりね…!」
 グリルは決め台詞を言い終わるとディスプレイから消える。
 デデデは先日グリルから渡されたカメラを持ち、カービィとシリカの戦いを撮影するためにエスカルゴンを探した。
「お〜い、エスカルゴン!どこにおるか?」
「へ、陛下?」
「今すぐカービィを追って消えた魔獣を探しにいくぞい!」
「あの!展開が急すぎて私、頭がおかしくなりそうなんでゲスが…」
「つべこべ言わずに一緒に来るぞい!」

 同じ頃、デデデ城の廊下ではカービィとフームがメタナイト卿に昨日どこかへ消えてしまったナックルジョーが見つかったかを聞いていたところだった。
 フームがメタナイト卿に早速ナックルジョーのことについて聞いた。
「ジョーは見つかったの?」
「周囲を探してみたが、どこにも…」
「そんな……」
「あの魔獣がジョー本人と分かったわけではない。だがその場合ジョーはどこへ…」
 すると突然城のどこかで何かの大きな物音が聞こえた。
 ドカーン!
「何の音かしら!?」
「カービィ、姉ちゃん、メタナイト卿!見に行ってみようぜ!」
「ぽよ!」
「なんだか嫌な胸騒ぎがするが…」
 メタナイト卿は嫌な予感がしつつもカービィたちの後を追った。

 カービィたちがやってきたのは以前ワドルディたちの食堂としても使われていたデデデ城の大広間だった。
 カービィたちがこの部屋のドアを開けた途端、部屋から砂埃がぶわっと出てきた。
「げほっ…げほっ…。この埃は何なの?」
 フームが突然出てきた砂埃にそう言った途端、メタナイト卿は何かを察知し、カービィたち3人に「皆、伏せろ!」と叫んだ。
「え!?」
 カービィたちはいきなり叫んだメタナイト卿の言うとおり地面に伏せた。
 カービィたちが地面に伏せた直後、カービィたちのすぐ後ろにあった壁にビームのようなものが当たって火花が飛んだ。
「何事!?」
 フームが辺りを見渡すと自分たちの目の前に見覚えのある人物が顔を出した。
「貴方は……シリカ?」
「グルルルルル…………」
 フームはその人物、シリカを見て思わず動きを止め、棒立ちになった。
「グアッ!」
 シリカは目の前で棒立ちになっていたフームに向かって手に持っていたビームマシンガンを撃った。
「フーム、危ない!」
 メタナイト卿はフームの前に立ち、シリカが撃ったビームをギャラクシアで防いだ。
「うおぉぉぉ!」
 ビームマシンガンを撃った後の隙ができたシリカにソードナイトとブレイドナイトが飛び掛る。
「卿!ここは私たちに任せてカービィのところへ!」
「来い!我らが相手をしよう!!」
 ソードナイトとブレイドナイトはシリカを押さえつけてメタナイト卿に叫んだ。
「すまない、任せたぞ!!」
 メタナイト卿は少し躊躇ったが、ソードナイトとブレイドナイトにその場を任せることにしてカービィたちを連れて戦いが起きている大広間から別の場所に向かった。
「はあっ!」
「グゴオォォォォォォ!」
 ソードナイトたち二人は見事なコンビネーション技で様子がおかしいシリカを攻撃する。
「グルルルルル……」
 だが、シリカは攻撃を受けた後、背中のバックユニットについているジェットブースターで空を飛んで部屋から飛び出し、ソードとブレイドの二人の目の前から姿を消した。
「ま、待て!」
「くっ!ソード、後を追うぞ!奴がカービィや卿たちのところへ向かったら危険だ!」
「おう!」
 ソードとブレイドはシリカの後を追って部屋から飛び出た。

一方、デデデとエスカルゴンは城内をカービィを探して飛び回るシリカを追い、MTSから送られたカメラで撮影していた。
「と、飛ぶのが速すぎるぞい!ちょっと止まってほしいぞい!」
 デデデはシリカに向かって叫ぶが、シリカが止まる事はなかった。
「何で言う事を聞かないぞい?グリルはわしの言うことをちゃんと聞くって言ってたぞい!」
「へ、陛下…もしや、騙されたのでは?」
「あっ!カービィたちぞい!バレないように隠れるぞい!」
 エスカルゴンの言葉を軽く無視したデデデはカービィたちに見つからないようにすぐさま物陰に姿を隠し、戦いの様子の撮影を続けた。

 ソードとブレイドの二人をジェットブースターで振り切ったシリカは、ターゲットであるカービィたちの目の前に空から舞い降りた。
「シリカ!」
「畜生!しつこさは初対面のときと変わらないな!」
 フームとブンは追ってきたシリカに対して叫んだ。
「グガアァァァァァァァァ!!!!」
 狂ったかのような吠え声をあげたシリカはバックユニットに装備されているミサイルポッドからミサイルを乱射する。
「避けろ!」
 メタナイト卿がカービィたちに指示を出すと、カービィたちは散らばって避けようとする。
 ドガドガドガドガドガァン!
 ミサイルがカービィたちに雨霰と降り注いだ。
「うわあぁぁぁぁ!」
 全員直撃は逃れたようだが、散らばって逃げたのとミサイルの爆発の所為で4人とも逸れてしまった。
 これはチャンスとばかりにシリカは逸れてフームたちを探しているカービィにバックユニットの主砲からエネルギー弾を撃つ。
「ぽよ〜!」
 エネルギー弾の直撃を受けたカービィは大きく吹っ飛ばされた。
「あっ!カービィ!!」
 フームは離れ離れになっていたカービィを見つけ、彼のところに駆けつけた。
「グオォォォォォォ!」
 倒れたカービィにシリカは容赦なくミサイルポッドから無数のミサイルを撃った。
「カービィ、吸い込みよ!」
 カービィが危険と感じたフームは彼にシリカが撃ったミサイルを吸い込むように命令する。
 カービィはフームに言われたとおりミサイルを吸い込むと新しいコピー能力を得た。
「ムッ、あれはミサイルカービィ!」
 砂埃が晴れてカービィとフームを発見したメタナイト卿とブンがやってきた。
「メタナイト卿にブン!大丈夫だった?それに…ミサイルカービィって?」
「あのコピー能力は、ミサイルのような飛翔体を吸い込む事によって手に入れられるコピー能力…体をミサイルに変形させて敵をどこまでも追いかける…」
 フームの質問にメタナイト卿が答えた。
「でも、ナイトメア要塞で敵のミサイルを吸い込んだときは、ボムカービィになってたぜ?」
 ナイトメア要塞での出来事を思い出したブンはメタナイト卿に疑問を投げかける。
 そう、あの時はカービィはエアライドマシンに乗っていたエアライダーの持つミサイルランチャーから放たれたミサイルを吸い込んだとき、ボムカービィになったのだ。
 その時のことを思い出したブンはカービィが今回同じようなミサイルを吸い込んだはずなのに別のコピー能力を得た事が不思議で仕方なかった。
 だが、その質問にもメタナイト卿は答える。
「うむ、この能力が使えるようになったのはカービィが戦士としての実力を身につけて成長したからだろう…」
 メタナイト卿がミサイルカービィについての解説をしていたとき、シリカは姿を変えたカービィのことをしばらく睨みつけていた。
 しばらくしてカービィを挑発するような動作を見せた後にシリカはジェットブースターで飛び上がった。
 カービィもその直後、身体をミサイル状に変えてシリカを追いかけるように飛んだ。
「カービィを誘っているの?後を追いましょ!」
 フームは空へ舞ったシリカを見てそう推測し、メタナイト卿とブンと共にカービィとシリカの後を追うことにした。

 デデデ城の渡り廊下でカービィとシリカは空中でのスピード戦を繰り広げていた。
 カービィはシリカを追いかけるように飛んでいたが、数秒後すぐに追いつき、シリカの真上にやってきて背部に装着されたバックユニットに体当たりを仕掛けた。
 カービィの体当たりをバックユニットに受けたシリカは、バックユニットが壊れたために上手く飛行できなくなり、空中で回転しながら壁に激突した。
 壁に激突して倒れたシリカの目の前にミサイル形態から元の姿に戻ったカービィが着地した。
 シリカはカービィの姿を確認するとすぐに起き上がり、背中の壊れたバックユニットを外してビームマシンガンを腰に戻し、2本のビームブレードを取り出した。
 シリカは素早い動作でビームブレードを構えてカービィに斬りかかる。
 ミサイルカービィとなったカービィは近接戦闘が苦手なため、シリカのビームブレードによる斬撃を受けてしまった。
「ぽよぉ!」
「オォォォォォォ!」
 その後もカービィはシリカの攻撃を避けて逃げることしかできない状態が続き、いつの間にかベランダの辺りまで追い詰められてしまった。
「グルルルルルル……」
 シリカは2本のビームブレードで追い詰めたカービィをバルコニーの下、デデデ城の入り口前にある池に落とそうとしている。
 カービィにビームブレードが当たろうとしたその時。
 ササッ!
「カービィ!大丈夫か!?」
 追い詰められたカービィの目の前にメタナイト卿が現れた。
 メタナイト卿はシリカのビームブレードをギャラクシアで受け止め、弾いた。
 すかさずメタナイト卿はシリカをギャラクシアで斬りつける。
 シリカが怯んだ隙にメタナイト卿はカービィに向かって指示を出す。
「カービィ、回りこむんだ!」
「ぽよ!」
 メタナイト卿の指示に従ったカービィはバルコニーの端っこからシリカの後ろのほうに回りこんだ。
 そして、カービィは身体をミサイル状に変形させてシリカに体当たりを繰り出す。
「グギャアア!」
 体当たりをまともに受けたシリカは頭から地面にぶつかった。
 シリカはなおも立ち上がってカービィに襲い掛かろうとしたが…。
「グ…ググ…」
 頭をぶつけたシリカはふらつき、苦しみ始めた。
 そして。
「ア゛ァァァァァァァァ…」
 バルコニーの手すりを越えてシリカは下の城門前の池に転落した。
「カービィ!メタナイト卿!」
 危険だったので隠れていたフームたちがカービィたちのもとにやってきた。
「シリカは?」
「城の前の池に落ちた」
 フームの問いにメタナイト卿が答えた。
「メタナイト卿、今日は私たちも一緒に探すわ!」
「待て、見つけてもいきなり襲われたら危険だ。ジョーと同じく私やソードとブレイドの方で探しておこう」
「………」
 メタナイト卿は一緒に行くと言ったフームの申し出を断り、後からやって来たソードとブレイドの二人と共に城の外へ出て行った。
 カービィたちは少し心配そうな表情でメタナイト卿たちを見ていたのであった…。

 戦いの様子を見ていたデデデとエスカルゴンはいつものようにグリルに報告をしていた。
「ナックルジョーに続いてあのチビの娘もカービィ負けてしまったぞい!」
「一応見てましたよ。う〜ん、ダメだったらこの場合どうしたらいいんだろう…」
「また魔獣をよこすぞい!」
「やっぱり成り行き的にそうなりますよね〜。でも次の魔獣はタダじゃありませんよ?ちゃ〜んと陛下にはお金を払ってもらいますからね♪」
「でもグリル、お前はあの雷を使えばタダと言ったはずぞい」
 黒い雷を落とすようにMTSに頼もうとしたデデデにエスカルゴンは以前のことを思い出して忠告をする。
「陛下、あれはいい加減な奴だから魔獣がどこに出るのか解らないでゲスよ?」
「それでも構わんぞい!とにかく今日はまだ物足りないぞい!」
 「かしこまりました、では今日の夜にそちらに黒い雷を落としますので楽しみにしていてくださ〜い♪」
 グリルは通信を切ってディスプレイから姿を消した。


 ウィザード・フォートレスでは戦いの様子をデデデが撮った映像から見ていたマルクが呆れていた。
 隣には司令室でデデデとの通信を切ったグリルがいる。
 兄妹はまた別の行動を開始しようとしていたところだった。
「結局、2人とも使い物にならなかったな。それはさておき、グリル。僕は今から惑星フロリアのある場所を訪ねに行く。お前はその間、僕が指示したことを全てきっちりやっておくんだ。いいな?」
「うん!」
「それから明日、ドクター・エスカルゴンからナイトメア社の資料にあった例の薬剤を買い取る事も忘れないように。新しい魔獣を作るのに必要だからな」
「は〜い!お兄ちゃんに言われたことはぜ〜んぶやっておきま〜す☆」




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