副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第12話・前編
〜MTSとナイト・バンテッド〜



 〜洞穴の惑星・ケビオス〜

「オヤビン、今日も稼ぎはゼロ…もう腹減ったよ…」
「まだまだ!裏切ってどこかに行ったあいつらとこの前ワシらから高価な銃を盗んでった女をとっちめるまでは死ぬわけにはいかねぇ…!!」
「と言ってもアッシももう疲れたダスよ…。この前、今オヤビンの言っている例の惑星の鉄砲店から盗んだレアな銃も『鉄砲狩りの女』に盗まれてから、最近お宝は見つからないわ住人たちから金は奪えないわで何かとついてないダス。裏切ったソードとブレイドの奴らはどこの星にいるのだか…」
 ここは惑星ケビオス。山脈やその中に広がる広い洞窟で構成されている岩の星。
 そこにある大きな山を登っていたのは仮面をつけ、武装をした怪しい集団であった。
 会話の内容からして、この集団は賊の集まりらしく、最近は獲物にありつける事ができないほど運が悪いようだ。
 そして食料すらも手に入れることができないままこの惑星を彷徨っているらしい。
 一人、髑髏のような顔をした一頭身の人物が空腹に耐えることができず、地面に倒れた。
「もう、腹が減りすぎて動けない!誰か…」
 他にも4人ほどいたメンバーも疲れてその場に座り込んでしまった。
 しかし、そんな彼らの前に一人の魔女が現れた。
「山賊団の『ナイト・バンテッド』とは貴方たちのことね?」
 現れたのはMTS副官・グリルだった。
 急にテレポート能力で自分たちの目の前に出てきたグリルに『ナイト・バンテッド』と呼ばれた集団のリーダー格の大柄の外見の人物は不信感を覚え、手に持っていた大剣を構えた。
「貴様、何者だ。子分たちに手を出すのであればこのワシが相手をしよう」
「ナイト・バンテッドの首領ヘビーナイト、貴方は『腹が減っては戦はできぬ』という言葉を知らないの?」
「うっ…」
 『ヘビーナイト』と呼ばれたナイト・バンテッドのリーダー格の大柄の人物はグリルに空腹を見抜かれ、後ろに引き下がった。
 グリルはそんなヘビーナイトを見て何故ここに来たのかを説明し始めた。
「私は貴方たちを殺すためにやってきたんじゃないわよ、私は貴方たちを雇うためにここに来たの」
「ワシらを…雇う?」
「私たちマルク・ザ・トリックスターズはついこの間、貴方たちみたいな犯罪集団を味方につけることを始めたの」
「犯罪集団…ワシら以外には『マフィア』や『ギャング』と言った奴らも仲間にする気なのか?」
「そういうことね。で、もし貴方たちが私たちに雇われたとして、私たちから依頼された任務を果たしたら、めったにお目にかかれない量の報酬金を渡したいと考えているけど…どう?貴方たちからすれば悪い話ではないと思うんだけど……」
「ほう…」
「オヤビン、多額の報酬金を受け取れるなら嫌な話じゃないとアッシは思うのダスが…」
 部下の鉄球を装備した人物にも雇われたほうが良いことを進められ、ナイト・バンテッドのリーダー格ヘビーナイトは少し考えた。
「(ふむ…ワシとしては奴の考えに乗せられているというのが気に食わないのだが…。しかし、ワシらの体力ももう限界…。ここは仲間のことを考えて…)」
「決めたの?」
 考えていたヘビーナイトにグリルが聞く。
「よし、ワシらを雇ってくれ」
「わかったわ。じゃあ私と一緒にMTSの本部に来てくれるかしら?まずは食べ物を分け与えてあげるからね」
「ああ」
「やったー!久々のメシだー!」
 グリルとナイト・バンテッドという賊の集まりはテレポート能力で惑星ケビオスから姿を消した。
 山賊団まで味方につけたMTSの勢いはまだ止むことはなさそうだ。


 ププビレッジではカービィがシリカを倒した日の夜を迎えていた。
 外の天気はとても悪く、大雨が降り、雷が鳴っていた。
 カービィとフーム、ブンはデデデ城の通路を歩いているところだった。
 カービィたち3人が大臣一家の部屋に入ろうとすると、慌ててその部屋からフームとブンの両親であるパーム大臣とメーム夫人が飛び出してきた。
「パパ、ママ!一体どうしたの?」
 いきなり飛び出してきた両親に驚いたフームが聞いた。
「カービィ!フーム!ブン!ロロロとラララが突然おかしくなって…」
「私たちに物を投げてきたりしたのよ!」
「なんですって!?」
「見に行こうぜ、姉ちゃん!」
「ぽよ!」
 ロロロとラララがおかしくなったのをパームとメームから聞いた3人は急いで大臣一家の部屋に向かった。
 大臣一家の部屋に入ったカービィたちが見たのは、身体の色が変色し、目つきが悪くなり、目が真っ赤に染まっているロロロとラララだった。
 実はロロロとラララの2体は、デデデに頼まれたMTSが放った黒い雷を浴びて凶暴化してしまっていたのだ。
 しかしそんなことを知らないカービィたちはパニックとなり、とりあえずその場から逃げることにした。
「カービィ、ブン!逃げましょう!」
 フームの指示に従い、カービィとブンは一緒に逃げ出す。
 凶暴化したロロロとラララは椅子等の身の回りのものをカービィたちに投げつけて追いかけてくる。
「(あの二人の目を盗んでどこかの部屋に隠れないと…)」
 フームはそう考え、カービィとブンと一緒に通路の角を曲がり、一つの部屋に飛び込んだ。
 部屋は様々な荷物が保管されている倉庫のようで、部屋の後ろには裏口の扉もあった。
 ロロロとラララが入ってこないようにフームは正面の扉と裏口の扉の鍵を閉めた。
「はぁ…このこれで一先ずは安心できそうね…」
「それよりも姉ちゃん」
「何、ブン?」
「ロロロとラララはどうして急にパパたちや俺たちに襲い掛かってきたんだろう?」
「分からないけど、これももしかするとマルク・ザ・トリックスターズの仕業かもしれないわね…。カービィが能力を得られそうなものがあったら吸い込ませて応戦し、正気に戻してあげないと……」
 ドン!!ドン!!
「!!??」
 考え事をしているのもつかの間。いきなり裏口の扉を何かに物凄い力で叩かれたのだ。
「ロロロとラララかしら?」
「居場所がバレたのか?でもここの裏口は城の水路につながっているはずじゃ…」
「水路……まさか!」
 ドガァン!
「グオォォォォォォォォォォ!」
「し…シリカ?」
 裏口の扉を突き破り、吠え声をあげて現れたのはロロロとラララではなかった。
 昼間、城の前の池に転落して行方不明となった様子のおかしいシリカだったのだ。
 昼間の戦いでビームブレード2本とバックユニット、二つあったビームマシンガンのうち一つは失われており、ホルスターにはもう一つのビームマシンガン、手には愛用の改造銃(ナイフ形態)がある。
 水路を通ってここにやってきたらしく、身体には水草が付着している。
「こっちもダメなの!?」
 カービィたちは急いで倉庫部屋から飛び出た。
 倉庫部屋から飛び出すとマシンガンで武装した5、6人程のワドルディ兵士たちが待ち伏せをしていた。
 カービィたちはワドルディ兵士たちの後ろに隠れた。
 シリカを見たワドルディ兵士たちの指揮官・ワドルドゥ隊長は待機していた兵士たち全員に指示を出す。
「侵入者発見!撃てぇぇぇぇ!」
 ババババババババババ!
 マシンガンから放たれる弾丸がシリカを襲った。
 だが、シリカには全く効いておらず、シリカはワドルディたちを掴んで投げ飛ばして蹴散らす。
「わあぁぁぁっ!」
 投げ飛ばされたワドルドゥ隊長は常に持っている短剣を落とした。
 シリカはカービィたちの目の前にやって来た。
 フームはワドルドゥが落とした短剣を見てチャンスとばかりにカービィに指示を出す。
「カービィ、吸い込みよ!」  ワドルドゥの短剣を吸い込んだカービィはソードカービィとなる。
 コピー能力を得た瞬間すかさずカービィはソードビームをシリカに放つ。
 ソードビームの一撃にシリカは怯み、カービィは続けて近距離攻撃を浴びせていく。
 そして距離をとって再びソードビームを撃つ。
「グウゥゥゥン…」
 その攻撃はシリカに決定的なダメージを与えたらしく、彼女はうつ伏せになって倒れた。
 しかしまだ少し動いており、シリカは気を失っただけのようだった。
「た…倒した…?」
 フームは少し恐怖を感じながらも呟いた。
 だが、その場を離れようとしたカービィたちのところに一つのテーブルが飛んできた。
「わあっ!?」
 カービィたち3人は何とかそれを避け、テーブルが飛んできた方向を見た。
「ロロロ?ラララ?」
 ロロロとラララは騒ぎに気づき、こちらに向かってきたのだ。
 だが、元々戦力は無いに等しいロロロとラララはソードカービィとなっているカービィの敵ではなかった。
「ソードビーム!」
 ソードビームを浴びたロロロとラララは地面に落ちた。
 ダメージを受け、フラフラになっているロロロとラララは体色、目つき、目の色が元に戻っていった。
 彼らは一旦気絶をしたが、すぐに目を覚ました。
「あれ、僕たちは一体…」
 正気に戻ったロロロが寝起きしたときのような声で言った。
「ロロロ、ラララ。貴方たちはどうやら何者かに操られていたようね。私たちを攻撃してきたのよ」
「私たちが…カービィや皆を?」
 フームとブンから事情を聞いたラララがきょとんとした表情で呟いた。
「そんな…何度謝っても…許せないよね?そんなことしていた僕たちのことを……」
「悪いのは貴方たちじゃないから、気にしないで」
「あ…有難う……」
 自分を責めたロロロをフームは優しく慰めた。
 シリカの攻撃で気を失っていたワドルドゥ、そしてワドルディたちも目を覚まし、カービィたちのもとにやって来た。
 しかし、そのとき。
「グオォォォォォン!」
「な、何…この声?」
 謎の吠え声に何が起こっているか理解できないロロロたち。
「!!ワドルドゥ隊長、ワドルディ、ロロロ、ラララ!早く逃げて!ここは危険よ!」
 フームはすぐに何が起きているかを察し、ロロロたちに逃げるように指示を出した。
 ロロロたちはそれに分かったとばかりにうなずいてその場から離脱した。
 謎の吠え声を上げたのはシリカ。
 ロロロたちが離脱した直後、先ほどまで活動を停止していたシリカが吠え声を上げながら起き上がったのだ。
「カービィ、応戦よ!」
「ぽよ!」
 フームの指示を聞いてカービィはシリカに斬りかかっていった。
 シリカはカービィの攻撃を改造銃から伸ばしたナイフで受け止め、弾いてしまった。
「姉ちゃん!シリカの奴、さっきよりも強くなっている!」
「そんな…!」
 カキン、カキン!
 カービィとシリカ、二人の武器のぶつかり合いが続く。
 カービィは弾いた一瞬の隙を突いてシリカに斬撃を浴びせた。
 そこからシリカは体勢を崩し始め、カービィの攻撃の前にあと一歩というところまで追い詰められた。
 カービィが攻撃を決めようとした次の瞬間、カービィに突然謎の敵の突進攻撃を受けた。
 突進を受けて吹っ飛ばされたカービィはソードカービィから普通のカービィに戻ってしまった。
「何事!?」
 フームとブンは何が起きたのか分からず、混乱していたが、現れた敵の姿を確認すると驚愕した。
「な…ナックルジョー…?今までどこに……」
 フームがそう言い終えると、同時に今まで行方不明だったナックルジョーはカービィに攻撃を仕掛ける。
 倒される寸前まで追い込まれていたシリカも体勢を立て直し、ナックルジョーに続いてカービィに飛び掛っていった。
「やめて、二人とも!」
 フームは叫んだが、ナックルジョーとシリカの二人はお構いなしにカービィに猛攻撃を始めたのであった。





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