〜ウィザード・フォートレス 社長室〜 MTSの本拠地には、『惑星フロリアへ訪問をしに行く』と言って出かけていたマルクが帰ってきていた。 マルクが一休みしているところに妹のグリルがやってきた。 「お兄ちゃんお帰り!随分早く帰ってきたけど、どうしたの?」 マルクはグリルの予想よりも早く帰ってきたらしく、理由を話し始めた。 「実はね、惑星フロリアに住む名門貴族の『ドロチューズ家』の10万代目当主である『ドロッチェ・ドロチューズ男爵』の屋敷に訪ねに行ったのだけど…」 「え!?犯罪者だけじゃなくて貴族まで仲間にしようとしているの?貴族は犯罪者ほど使えないと思うんだけど…」 グリルはマルクが貴族の家を訪ねに行った理由を『雇うため』と考え、大声でマルクに言った。 マルクはグリルの考えが自分の考えと微妙にずれていたので少々笑みをこぼしながら話を続けた。 「大体そうだけど、お前の考えている事と方向性がちょっと違うな。貴族を仲間にするといっても僕はドロッチェ男爵だけしか仲間にしないよ。なぜなら今の当主・ドロッチェ男爵は魔法の杖から繰り出す超能力を使う事ができ、戦闘能力が高いとの噂を聞いたからね」 「で、断られて帰ってきたの?」 話を先読みしようとしたグリルにマルクは冷めた表情で言葉を返す。 「先読みするのはお前の悪い癖だな。断られたんじゃなくて、実はその屋敷には男爵とその召使いのチューリンたちはすでにいなかったんだ」 「いなかったの?」 「うん。張り紙があったのだけど、魔獣とかに殺されたのではなく、召使い全員を連れてどこかへ旅に出たらしい。行方はどこかわからないから探しようが無いけどね…」 「それで早く帰ってきたんだ〜。で、お兄ちゃんはそのドロッチェ男爵って人がどこに何しに行ったか予想できる?」 「フッ、それなら確かドロチューズ家は今のドロッチェ男爵の前の世代で随分落ちぶれてしまったと聞いているからね、家でも捨てて失踪したに違いないさ」 「う〜ん、なんかかわいそうだね…」 グリルの感想を聞いたマルクは次の話に移ろうとする。 「ドロッチェ男爵の話はここまでにして。グリル、お前が雇ったと思われる山賊団『ナイト・バンテッド』は期待できそうな奴らか?」 「え?彼らの話を聞いてるとなんかちょっと実力不足っぽいんだよね〜…」 「なるほど、やはり犯罪者とはその程度か。仲間にしておくだけ都合がよくて僕たちの邪魔はされないからいいけどね。それから、話は変わるけどグリルには面白い僕の作品を紹介しよう」 「え?作品ってどんなの?見たい、見たい!」 マルクが魔法で召喚したのは4枚の花びらのような身体に一つ目を持つ奇妙な生物らしきものだった。 「なぁに、これ?どこかで見たことがあるような気がするんだけど…気のせいかな?」 「こいつはパラマター。僕が作り出したメカ生命体だ。戦闘能力は持っていないが、こいつを宇宙各地に送り込めばここのシアタールームにその映像を映すことができる。つまり、今陛下が持っている魔法ビデオカメラを使用しなくともポップスターの様子を好きなときに見れるようになったってことだ」 「お兄ちゃんまたすごいのを作ったんだねぇ〜」 「物と言うのは作るたびに進化するからね。これからポップスターの様子を見るときはこのパラマターを使うから、陛下には魔法ビデオカメラを返すように言ってくれ。最後に、前も言ったと思うが例の薬の回収を忘れないようにな」 「はいはい、わかってるよお兄ちゃん。じゃあどこかの部屋で待機しているナイト・バンテッドのメンバーに出撃命令を出すね♪」 グリルはテレポート能力で社長室から姿を消し、昨日雇った山賊団『ナイト・バンテッド』の待機している部屋へ向かった。 〜ウィザード・フォートレス ナイト・バンテッドが待機している空き部屋〜 マルクとグリルが社長室で話しているのと同じ頃。 先日、MTSに惑星ケビオスで拾われて話の成り行きで雇われることとなった山賊団のナイト・バンテッドのメンバーはグリルに言われたとおり空いている部屋に待機して、自分たちの武器の磨いて出撃準備をしていた。 「ワシはもう武器の手入れは終わったぞ。お前たちはどうだ?」 巨大剣を磨いて鞘にしまった山賊団の首領・ヘビーナイトが部屋にいた他のメンバー全員に声をかけた。 「俺はもう問題ないッスよ、オヤビン!」 メンバーの中で最初にヘビーナイトの言う事に答えたのは、斧を装備し、一頭身で髑髏のような顔をしている団員だった。 「オヤビン、アッシも大丈夫ダス!」 次に喋ったのは鎖つきの『チェーンハンマー』や『フレイル』と呼ばれる鉄球を装備した団員。 「私もいつ出撃しても問題は無い。槍の手入れは終わった」 三日月のような装飾をつけた兜を頭にかぶっている団員も続けて答えた。 「……………」 一人(?)だけUFOのような見た目をした団員は黙っていた。 「ジャベリン、オヤビンの言う事に何か言ったらどうダス?『準備はまだできていない』とか…」 黙っている『ジャベリン』と呼ばれたUFOのような姿をした団員に鉄球を装備した団員が話しかけた。 「ラジャー」 鉄球を装備した団員の呼びかけにジャベリンというUFOのような団員は答えた。 喋り方からして、このジャベリンという団員は『ロボット』や『メカ生命体』の類らしい。 「メイス、諦めろ。いつも言っているがお喋りなお前とは違ってジャベリンは無口なだけさ」 ヘビーナイトはジャベリンに話しかけていた鉄球を装備した団員に『メイス』と呼びながら止めた。 「またオヤビンはそんなことを…」 メイスという鉄球を装備した団員はその言葉はもう聞き飽きたというような態度で返した。 「よし、後は雇い主の呼びかけがあるまでここで待つだけか…」 ヘビーナイトがそう言って一休みしようとした瞬間、そのときは訪れた。 テレポート能力でグリルがナイト・バンテッドが待機している部屋に現れたのだ。 「山賊団ナイト・バンテッドの皆、惑星ポップスターが朝を迎えたわ。今すぐ私と一緒に司令室まで来てちょうだい」 「ぬぅ?もうそんな時間か?思ったより時間が少なかったな…」 ヘビーナイトが驚いたような口調でグリルに言うと、グリルは少し威張ったような口調で答えた。 「ここは日の光が絶対に差し込むことの無い常夜の惑星だってことを忘れたの?まあ普段からここで暮らしている私とは違って、貴方たちがここにいると日付などの時間の感覚を失うのは分からなくはないけどね」 「そうか…。ではワシたちをその司令室とやらに案内してくれ。準備はもうできている」 ヘビーナイトの自信のある返事を聞いたグリルはテレポート能力を使ってナイト・バンテッドのメンバーと共に司令室に向かった。 〜ププビレッジ デデデ城〜 ププビレッジではデデデがあくびをしながら玉座に座って、今日も魔獣を購入しようとMTSを呼び出していた。 「昨日の夜は城内が騒がしかったが、お前たちに頼んだあの雷によって生まれた魔獣が近くで暴れていたのかぞい?」 「そうだと思いますよ?だってあれ以外私たちは何もやってないし…」 「う〜む…。まあそれは良いとして、今日は気分的に普通の魔獣をよこすぞい」 「普通の魔獣?すみませんが、今日の陛下の注文は却下させていただきます」 「ど、どうしてぞい?」 「今日は私たちが用意したお客さんでカービィたちをやっつけちゃってください♪」 「お客さん?魔獣もお客さんとそう変わらんぞい」 「まあ実際に目で見てもらうのが一番ですよね、それじゃあ今からそちらに送りま〜す♪」 デリバリーシステムからデデデのもとに送られてきたのはMTSが雇った山賊団『ナイト・バンテッド』。 武装をしたこの一団の素性を知らないデデデは彼らに名前を聞いた。 「お、お前たち…一体何者ぞい?」 「お前がデデデ大王か?」 「そうだが…いきなり馴れ馴れしいぞい!」 「失礼、ワシたちは『ナイト・バンテッド』という宇宙を渡り歩いている山賊団。ワシたちはMTS社に雇われ、デデデ大王に協力をして『星のカービィ』を始末するようにと頼まれてここに来た。お前に力を貸してやろう」 「偉そうな口調で話すなぞい!何者かはよく分かったが、今カービィを倒すためにここに来たと言ったな?」 「ああ、その通りだ」 「噂ではカービィは今日、この城のどこかにいるらしいぞい。お前たち全員でカービィを探してやっつけるぞい!」 「うむ、ではワシたちは失礼する」 ナイト・バンテッドはデデデに挨拶をしてから玉座の部屋から出て行き、カービィを探し出して倒すべく行動を開始した。 「うん、まあお客さんというのは、ああいう人たちといったところですね…。それから陛下、前に渡した『魔法ビデオカメラ』を返してくださいませんか?私たちはそれを改良してより良い物にしたいと思っているので…」 グリルは嘘の理由で魔法ビデオカメラをデデデから奪い返そうとする。 「ん?そう言われたなら仕方ないが…これぞい」 デデデはあっさりと了承し、魔法ビデオカメラを取り出してデリバリーシステムに乗せた。 グリルは更にデデデに頼みごとをする。 「あとそれから…今手元にあったらで良いんですけど、あのカタツムリみたいな人が発明したと言われる『エスケル魔獣黄帝液』を買い取りたいのですが…」 「そのエスカルゴンの発明品がどうして必要なんだぞい?」 「それはカメラとあまり変わらない理由ですけど、我が社でそのエスケル魔獣黄帝液のサンプルを基にして、私たちのほうでよりいい物を作りたいと考えているからよ。今カタツムリみたいな人を呼んでくれませんか?」 「わかったぞい。お〜い、エスカルゴン!どこに居るか?」 「へ、陛下?お呼びでゲしょうか?」 デデデが呼ぶとエスカルゴンはすぐ横にやって来た。 「グリルがお前の発明品・エスケル魔獣黄帝液を欲しがっているぞい」 「え?あの薬をでゲスか?」 エスカルゴンはデデデから話を聞くと自分からもグリルに聞いた。 「はい、それなりの値段で買い取りますよ。とにかく貴方の作ったその薬が欲しいんです」 「え〜っと、今捨てようと思っていたのがいくつか…」 「じゃあそれを全部私にください♪(運良いよねぇ〜、私って)」 「これでゲス」 エスカルゴンはデデデが置いた魔法ビデオカメラの横に自らの発明品で現在マルクが欲しがっていると思われるエスケル魔獣黄帝液が入ったアンプル数本を置いた。 「これで欲しいものは全部かぞい?」 デデデはグリルに改めて聞く。 「はい、あとはそちらから転送してください。こちらにはすぐ届くと思うので、受け取り次第エスケル魔獣黄帝液を買い取ったお金をそちらに送りま〜す」 「わかったぞい」 デデデはデリバリーシステムのスイッチを押して乗っけていた魔法ビデオカメラとエスケル魔獣黄帝液が入ったアンプルをMTS本社に転送した。 転送してからすぐにグリルは言葉を返した。 「届きましたよ、ではこちらがお金です」 グリルがそう言うとすぐにデデデの元にエスケル魔獣黄帝液を買い取ったお金が届いた。 「こ、こんなにたくさんあるぞい!本当にいいのかぞい?」 「良いんですよ、別に。それは全部お兄ちゃんの良心だと思ってください。では長くなりましたが、山賊団がカービィを倒せるといいですね♪」 グリルは満足そうな顔をしてディスプレイから姿を消す。 〜ウィザード・フォートレス 研究室〜 MTSの首領・マルクは新しい研究を始めるためにウィザード・フォートレス内の研究室にいた。 「(グリルの奴、何をしている…?)」 マルクが心の中で待っていたそのとき、グリルがテレポート能力で研究室にやって来た。 「お兄ちゃん、あのカタツムリみたいな人から例の薬を買ってきたよ!」 マルクはグリルからエスケル魔獣黄帝液が入ったアンプルを一つ渡され、それをしばらく見つめていた。 「これがエスケル魔獣黄帝液…」 「これを何に使うの?」 「大体今から作るものの完成図は僕の頭の中でもうできている。グリル、これはまだ使わないから僕の目に見えるところに置いといてくれ」 「うん!」 グリルはマルクからまたアンプルを受け取って研究資料のところへ置いた。 「まずはHN社のデータにあったウィルス魔獣を作成しよう」 マルクはそう言うと早速研究にとりかかった。 マルクがエスケル魔獣黄帝液とウィルス魔獣を基に作ろうと考えているものとは……? 同じ頃、MTSから星の戦士に向かって放たれた刺客『ナイト・バンテッド』はデデデ城内で目的のカービィを探し回っていた。 「『星のカービィ』…。奴はどこに……?」 リーダーのヘビーナイトを先頭に後ろに他のメンバーが続く。 彼らを通路の角のあたりに姿を隠してカービィフーム、ブンの3人は様子を見ていた。 「あいつら何者?」 「MTSがカービィを倒すために送ってきた奴らじゃないか?姉ちゃん」 「ぽよ〜?」 だがそんな3人の後ろに、ヘビーナイトから『ジャベリン』の通称で呼ばれていたUFOのような姿をした団員がいきなり現れた。 「敵発見、敵発見」 「う、後ろに!!」 カービィたちは驚いて逃げ出そうとするが、すでに目の前に他の山賊団のメンバーたちが先回りしていた。 「貴方たちは一体何者?」 「カービィを狙ってきたのか?」 フームとブンは強気な口調で聞く。 「ワシらは『ナイト・バンテッド』。宇宙を渡り歩く山賊団だ。そしてワシの名はヘビーナイト。この『ナイト・バンテッド』のリーダーだ」 「ヘビーナイト?」 フームたちの問いに答えたのは大柄な体格をしている首領のヘビーナイト。 「山賊の貴方たちがどうしてこんなところにいるの?」 フームはヘビーナイトに続けて質問をする。 「ワシたちは今、MTS社に雇われて山賊ではなく傭兵の仕事をしている。奴らはワシたちに『星の戦士を始末してくれれば多額の報酬金を渡す』という約束を持ちかけてきた。よってこれも金のためだ、そこにいる『星のカービィ』とやらには消えてもらうぞ」 「自分たちの欲望のためならなんでもするって言うの?」 フームが怒ったような口調でヘビーナイトに言い放つ。 「もうワシは仲間たちをつらい目にあわせたくないからな…。野郎ども、『星のカービィ』をやっちまえ!」 ヘビーナイトの掛け声で他のメンバーが一斉に動いてカービィに攻撃を仕掛けようとしたそのとき。 ドカーン! 「ぐっ!!」 ナイト・バンテッドのメンバーの目の前に飛び道具が飛んできた。 「カービィ、フーム、ブン!こっちだ!!」 3人を助けたのはメタナイト卿とソードナイト、ブレイドナイトであった。メタナイト卿がギャラクシアソードビームでナイト・バンテッドを威嚇したのだ。 ヘビーナイトはメタナイト卿の隣にいた騎士二人を見てハッとした。 「貴様ら、ソードにブレイド!こんなところにいたのか…」 その呼びかけにソードナイトとブレイドナイトの二人は振り返った。 「あ、貴方は…」 「ボス!」 「ソード、ブレイド!どうしたの!?」 その場から離れようとしていたフームがヘビーナイトの呼びかけに止まった二人の騎士に言う。 「メタナイト卿、カービィたちをお願いします」 「私たちはこの者たちと話があります…!」 ソードナイトとブレイドナイトの返事にメタナイト卿は頷いてカービィたち3人を連れてその場から離脱した。 カービィたちがどこかへ行ったところでヘビーナイトはそこに残ったソードナイトとブレイドナイトと話を始める。 「久しぶりだな、お前たち二人はこの惑星で一体何をやっているんだ?ワシたちに何も言わずにどこかへ行きおって…」 「ボス、黙って出て行ったことは謝る。俺たちが悪かったんだ!」 ヘビーナイトに頭を下げたソードとブレイドの二人に髑髏のような顔をして斧を装備したナイト・バンテッドの団員が怒鳴った。 「この裏切り者!今すぐこの俺が…」 すると斧を振りかぶったその団員をヘビーナイトが止めた。 「待てアックス。まずはこの二人からは事情を聞かなければ。場合によっては当初の予定通り殺す事になるかもしれないが…」 『アックス』と呼ばれた団員は振りかぶっていた斧を静かに降ろした。 「ソード、ブレイド。改めてお前たちは今まで何をしていた?詳しく話してもらいたい」 ヘビーナイトの聞いたことに騎士二人はメタナイト卿との出会い、そしてその後の魔獣チリドッグの襲撃事件について全て話した。 「ふん、そういうことだったのか。ならワシたちに話すこともできないわけだな。おい、お前たち。星の戦士を探しに行くぞ」 「オヤビン?この二人を殺らなくていいの?俺たちを裏切ったんだよ?」 「今はソードとブレイドよりも星の戦士のほうが先だ。探しに行くぞ」 「ボス!待ってくれ!」 ヘビーナイトは他のメンバーと共に星の戦士たちを探すべく歩き出そうとしたが、それをソードとブレイドが止めた。 「なんだ?」 「星の戦士に手を出すなら俺たちはボスたちを倒す…!」 ソードとブレイドは剣を構え、かつての同僚であるヘビーナイトと山賊団のメンバーに言い放った。 「二人だけで俺たちを相手にするって言うのか?」 団員の一人であるアックスが斧を構えながら言い返した。 ヘビーナイトは何かを思いつき、その考えをソードとブレイドにも聞こえるようにメンバー全員に話した。 「お前たち、それならワシに考えがあるぞ」 「なんダスか、オヤビン?」 「こうするんだ」 「?」 ヘビーナイトはソードとブレイドに近づき、二人の腹部に強烈なパンチを浴びせた。 「うっ…!」 ソードとブレイドの二人は鎧を着ているが、ヘビーナイトはその二人を難なく気絶させてしまった。 「さすがオヤビン!鎧を着た相手も簡単にダウンさせるとは…」 アックスはヘビーナイトのパワーに歓心してときめき、褒めるように言った。 「さてここからが本題だ。今からお前たち4人は星の戦士を探しに行け」 「え?オヤビンは探しに行かないんですか?」 「ワシはこの二人と話がある。今はお前たちだけで星の戦士たちを探せ」 「なんだかよく分からないけど…ラジャー!!」 ヘビーナイト以外のナイト・バンテッドのメンバーは号令と共に星の戦士たちを探しに向かった。 ヘビーナイトはソードとブレイドの二人を掴み、部下たちとは別の方向に向かった。 ソードとブレイドの二人がかつての仲間であったナイト・バンテッドのメンバーと偶然の再会を遂げて話し合っていたのと同刻。 ソードとブレイドに言われてその場から一旦離れたカービィたちは、昨日の深夜からナックルジョーとシリカが休んでいるフームの部屋にいた。 「おい、お前ら。なんでこの部屋に急いで駆け込んできたんだ?」 「ナックルジョー、敵襲よ!」 「え、敵襲?」 急に部屋に入ってきたカービィたちにナックルジョーが話を聞き、フームがそれに答えた。 「敵襲って…MTSの奴らか?」 「正確にはMTSに雇われた山賊団らしいぜ。確かナイトなんちゃらとか言ってたような…」 「そのナイトなんちゃらっていうのは、まさか……『ナイト・バンテッド』か?」 「シリカ、貴方何か知っているの?」 ナックルジョーと同じく、状況がよく分からないシリカにフームとブンが説明をすると説明されたシリカは今襲撃してきたナイト・バンテッドのことを知っているような発言をした。 「いや、つい最近色々とあってね…。それについて話そうと…あ、やっぱりその話はあとで良いか。今はそいつらを何とかしないとな……」 「……?」 ナイト・バンテッドとシリカの間に何があったのか少し気になっていたフームとブンだったが、今は気にしている暇は無かった。 「とにかく、今は応戦しないと!ソードとブレイドの二人も危ないし…」 「フーム。あの二人何してるんだ?」 ソードとブレイドの話題が出たため、ナックルジョーはフームに聞く。 「あの二人、彼らと話があるから私たちを逃がしたのよ」 「そりゃ厄介だな。早いところ二人を助け出して山賊どもをぶっ潰そうぜ。いくぞカービィ、メタナイト」 「すごい自信ね…」 ナックルジョーの強気な発言に呆然とするフーム。 そして、ナックルジョーがカービィを掴んで部屋の外に出ようとした瞬間、先ほど名前を呼ばれなかったシリカが名乗り出た。 「ま、待てジョー!私も一緒に戦いに行く!!」 「いや…でも。お前、そんな身体で大丈夫か?」 実はシリカは以前グリルから受けた腹部の傷がまだ完全に回復しておらず、その上魔獣化した際にカービィと戦ってできた怪我もあるため、やや危険であった。 だが、そんな状態にも関わらず、ジョーの言ったことにシリカは自信に満ち溢れた答えを返した。 「大丈夫だ、問題ない。たかが相手は盗賊だろ?それに、私は奴らとの戦闘経験があるし、怪我をしてるのはジョーも同じじゃないか」 「まあお前が良いって言うなら良いんだけどさ…。でもあまり無理しなくてもいいんだぞ?」 「うるさい!私が女だからって甘く見るな!!」 「(そういうことじゃないんだけどよぉ…)」 ナックルジョーの方も、魔獣化してカービィと戦ったときにカービィの攻撃で怪我をしていた。 だが、元々腹部に傷を負っていたシリカよりは怪我の状態はマシだった。 最終的にその場にいた全員でナイト・バンテッドと戦うという事になり、カービィたち一行は部屋の外に出た。 一方、こちらはヘビーナイトの指示で抹殺すべき星の戦士たちを探しているナイト・バンテッドの残りの4人のメンバー。 4人は物陰に隠れて部屋から出てきたカービィたちを見ていた。 最初に星の戦士たちを見つけて口を開いたのは先ほど首領のヘビーナイトに『アックス』と呼ばれていた男だった。 「おい、あそこにいたぞあいつら」 サササッ! 続いて鉄球を装備した『メイス』と呼ばれていた男と、三日月のような飾りがついた兜を頭にかぶり、手にはフォークのような三叉の槍を手に持った人物が星の戦士たちの様子を見た。 「ん?どれどれ…さっき見た4人と…あいつは…!アッシたちから例の高価な銃を盗んだ奴ダス!」 「丁度良いじゃないか。あそこにいる星の戦士4人始末できたらそれと同時に恨みを晴らす事もできるぞ…」 「………」 相変わらず、様子を見ても『ジャベリン』と呼ばれている団員は黙っていた。 「トライ、こういうときは参謀のお前が役に立つダス。奴らをどうやって始末するダス?」 『トライ』と呼ばれたのは先ほどメイスと共に星の戦士の様子を見た三日月の飾りがついた兜を頭にかぶっていた団員だった。 『トライ』と呼ばれているこの人物はどうやらナイト・バンテッドの中では『参謀』という作戦の指揮を取る首領の補佐という役割を持っているらしく、メイスに良い案が無いかを頼まれた。 トライは頭の回転が速く、すぐにアックス、メイス、ジャベリンに小声で思いついた作戦の内容を話した。 「うむ、ではまず最初は全員で奴らを襲撃しよう。そこで、俺が合図を出したら二手に別れろ。そしてそれぞれ別の場所で2対2の戦いを挑むんだ」 トライはメイスに言われたとおり作戦の内容を話したが、アックスがそれに意見を出した。 「おいおい、一気に片付けたほうが速くないか?」 「二人ずつで戦ったほうができるような事もあるんだよ。さあ、速いとこ手柄を立ててボスに褒めてもらい、MTS社から金をがっぽり貰うとするか」 トライは少し一方的に話を進め、手に持った三叉の槍を構え、飛び出す準備をする。 「(あんまり乗り気じゃないんだけどなぁ…。まあ暴れられるならいいか、それに今までトライのおかげで警備が厳重な場所からお宝とか盗めたりできたんだし、また奴を信じてみるか)」 少しトライの作戦にやる気が出なかったアックスだったが、とりあえず気を取り直して手に持った斧を構え、トライの後ろについた。 そして、アックスとは違って完璧にトライの事を信用しているメイスと、特に何も考えていない無口なジャベリンが後に続いた。 そして…。 「それにしても、ワドルディたちは何故ナイト・バンテッドに攻撃をしないのかしら…?」 「姉ちゃん、それはやっぱりデデデの指示によるものなんじゃないか?」 「でしょうね…」 フームとブンが部屋から出てそのようなことに関する話をしているとき、突然一緒にいたシリカとメタナイト卿、ジョーが足を止めた。 「シリカ、どうしたの?」 「しっ!何かがこの近くにいる…」 「確かに、私も何かを感じた」 「どこかに隠れているぜ…」 3人が何かの気配に不審に思ったそのとき、突然何かが目の前に飛び出してきた。 「!!」 「とおっ!!」 ザッ! 派手な登場の仕方をしてカービィたちの目の前に現れたのは、トライを先頭にしたナイト・バンテッドのメンバー。 「見つけたぞ、星の戦士たち」 「ナイト・バンテッド!」 「ぽよ〜!」 「今すぐとっととここで消えてもらいたいのだが…」 「!?」 「散らばれぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!」 「こっちまで追っかけてみろダス!」 「かかって来いや!」 トライの合図でナイト・バンテッドの4人はそれぞれトライとメイスのペア、アックスとジャベリンのペアに別れて正反対の方向に逃げ出した。 「あいつら、何がしたいのかしら…?どうするの、メタナイト卿?」 「うむ。罠という可能性もあるが…ここは二手に別れて追撃しよう。ジョー、シリカ。そなたたちは向こう側の奴らを追ってくれ。私とカービィ、フーム、ブンはあちらへ行こう」 「わかった。行くぞ、シリカ」 「うん」 メタナイト卿の指示でカービィとメタナイト、そしてフームとブンはアックスとジャベリンのペア、ナックルジョーとシリカの二人はトライとメイスのペアの方をそれぞれ追いかけた。 ヘビーナイトによって気絶し、デデデ城の大広間へ連れて行かれたソードとブレイドは、丁度目が覚めたときだった。 「気がついたか、お前たち」 意識が戻った二人にヘビーナイトが話しかけた。 「ボス!」 「さっきも言ったが、メタナイト卿やカービィたち星の戦士を狙っているのなら俺たちは…」 起き上がった途端に剣を構えた二人をヘビーナイトは『待て』というように両手を出した。 「戦う前に聞きたいことがいくつかあるのだ。ソード、ブレイド。話を聞いてくれるか?」 「は…話……?」 武器である大剣を構えていないヘビーナイトを見てソードとブレイドは静かに剣を下ろした。 「まずお前たちが何故戻ってこなかったはつい先ほどの話でよくわかった。で、その後はお前たちは何をしていたのかをここで聞きたい。今ここにいては困るアックスたちは別の場所に向かわせたから、落ち着いて話して欲しい」 「別の場所って…メタナイト卿たちのところへか?」 「くっ!」 再び剣をヘビーナイトに向ける二人であったが、ヘビーナイトはやはり落ち着いた態度でソードとブレイドを止めた。 「戦うのは話が終わってからだと言ったはずだ。さあ、早く話せ」 変に落ち着いているヘビーナイトを不審に思っていたソードとブレイドだったが、また彼の言うとおり剣を下ろす。 そして、ヘビーナイトが望んでいたとおり、自分たちがあの事件後、メタナイト卿の下で剣術を習い、デデデ城の騎士として働き、カービィに協力をしていたこと全てを話した。 「それで、星の戦士たちを裏切る事はできないと言う事か…」 「頼む、ボス!カービィたちには攻撃をしないでくれ!」 「元々この襲撃にお前たちは関係なかったんだ。だが、偶然にもお前たちにこうして再開する事ができただけの事…。そして今、お前たちは新しい主人や仲間に恵まれていることを知ったワシはお前たちに興味が無くなった。とりあえず、別の盗賊団に入ったのではないから一先ずは安心した。『裏切り者』というのはワシたちの考えすぎだったようだな…」 「な…何を言っているんだ…?」 「話は簡単だ。今、復讐目的ではなく新しい主人の下で剣術を修行したお前たちと手合わせ目的で戦ってみたいという事だ」 そう二人に言ってヘビーナイトは武器である大剣を取り出して構えた。 「ボスは相変わらず話がよく分からない人だな、ブレイド」 「ここはやるしかないだろう」 戦う準備をしたヘビーナイトに向かって下ろしていた剣を二人はまた構えた。 「ワシたちナイト・バンテッドの下を離れて数年…そのときから変わったと言うお前たちの強さを見せてもらおうか!」 「おう!」 かつての山賊団の一員ソードとブレイド、山賊団の首領ヘビーナイトの戦いも今、始まった。 |