副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第16話
〜代弁者・Mr.チクタク〜



 〜ウィザード・フォートレス 食堂〜

 惑星ハーフムーンにあるMTSの本拠地。
 MTS首領のマルクは現在グリルが作った料理を食べているところだった。
「うん、グリルの手料理はなかなかだな」
「ホント!?お兄ちゃんに褒められるのはやっぱり嬉しいな♪」
「でも最近になって食事する機会が減ってきたからというのもあるけどね。知っているだろう、グリル。僕たちやドロシアは別にものを食べなくても生きていける身体になっていることぐらいは」
「うん、知ってるよ。お兄ちゃんがご飯食べる理由は『料理の味を楽しんでいるから』でしょ?」
「そうだ。それから甘いものを食べるのは頭の回転をよくするためかな。しかし最近僕は糖分が不足しているわけではないとは思うけど新しい魔獣の発想がなかなか思いつかなくて苦しんでいるんだ…。これから星の戦士たちと長い戦いをしなければならないのにこれには参っているよ…」
「やっぱりそれはお兄ちゃんは最近お菓子食べてないからだよ。私が街まで行ってお菓子取ってこようか?」
「悪いね。じゃあお願いするよ。宜しく、グリル」
 と、グリルが出かけようとすると通信が入ってきた。
「あれ?通信が来たみたいだよ、お兄ちゃん?」
「僕のお菓子を手に入れる前に先に司令室に行ってくれ。多分陛下からだろう。今日はチクタクと彼の直属の部下魔獣をププビレッジに行かせる予定だったな」
「うん、わかってる!でも陛下とのお話終わったらちゃんとお菓子持ってくるからね!」
 グリルは張り切って食堂を後にして司令室へ向かった。


「どうなっておるぞい!昨日注文したロボットたちもあっさりとカービィたちにやられちゃったぞい!」
「ごめんなさい陛下。あのロボットたちは量産型という低いコストで作っている魔獣たちだから1体1体の戦力は弱いもので…」
 グリルは通信を入れたデデデに昨日の事で文句を言われ、それに対応していた。
「大体MTSの魔獣はHNの魔獣より強かったんじゃないのかぞい?」
「それだったら!今日は今度こそ本当にすごく強い魔獣がいるんですよ!」
「またそんなこと言ってカービィに負けたらタダじゃおかないぞい!」
「いや、今度の魔獣であれば絶対にカービィに勝てます!」
「本当かぞい?じゃあそのとびっきり強い魔獣を頼むぞい」
「オッケー、じゃあそちらに送りま〜す♪」
 文句を言ったデデデを静めてからグリルはデリバリーシステムを通じて魔獣を送った。
 出てきたのは大きな目覚まし時計のような見た目をした魔獣だった。
「騒音魔獣チクタク、彼がいればカービィは確実にやっつけられますよ♪では」
 グリルは通信を切ってディスプレイから姿を消す。
「初めましてデデデ陛下。わたくし、MTSに所属する魔獣・チクタクと申します。呼ぶときは『Mr.チクタク』と呼んでください」
「よ、よろしくぞい…」
「突然で悪いのですが、わたくし今日からこの城に住んでしまっても構わないでしょうか?」
「それはどうしてぞい?」
「わたくしはMTSの考えを宇宙全てに広めるのが使命である『代弁者』でありまして。そのため、今日から毎日全宇宙に番組をお送りしているここの『チャンネルDDD』のニュース番組内に出演したいのですが…」
「う〜ん…いきなりそんな事を言われても困るぞい。それに、お前はカービィを倒してくれるんじゃないのかぞい?」
「我がMTS社の貴重なお客様である貴方に頼んでいるのです。ですからお願いします…!そしてこれも陛下が対抗心を燃やしているカービィを倒すためなのですから…」
「そこまで言うなら仕方ないぞい。今日チャンネルDDDを放送するときにゲストとして一緒に出演するぞい」
「有難うございます…!!では早速スタジオへ行きましょう。それから、私のお供の魔獣がしばらくしてから来ますのでそれもお楽しみにしていてください」
「お供?」
「奴は凶暴な性格で誰これ構わず襲う危険な魔獣ですので、少し遅れてやってくるようにしてあります」
「じゃあそちらも楽しみにしておくぞい」
 交渉が終わったデデデとチクタクはチャンネルDDDの報道番組を放映するために使っている城のスタジオへ向かった。

 デデデ城の大臣一家の部屋のリビングには、カービィとフーム、ブン、ナックルジョー、シリカの5人がいる。
 フームとブンの両親であるパーム大臣とメーム夫人は買い物に出かけていて不在だ。
 ブンはなんとなくテレビをつけて『チャンネルDDD』を観ていた。
「ここのところデデデの奴ニュースを放映しないけど何やってるんだろ?つい最近まではしょっちゅう何かあるごとにやっていたと言うのに…」
「それは怪しいな。あのMTSとかいう連中に何か言われて放送していないって可能性もあるかもな」
 ブンがテレビを見ながら呟いた事にナックルジョーが答えた。
「とにかくやっててもやってなくても、どうせ俺は見ないからいいか…」
 ブンがリモコンを使ってテレビを消そうとしたそのとき。
 突然画面が切り替わって久しぶりの報道番組が始まった。
「This is チャンネルDDD!」
 前のとおりエスカルゴンのナレーションでの開始。
「ちょ、ちょっと消さないで!」
「な、なんだよ姉ちゃん」
「久しぶりのニュースは何かあるのかもしれない!」
 フームはブンからリモコンを取り上げてテレビ画面を見る。
 リモコンを取り上げられたブンを含むほかの3人もテレビに注目した。
「久しぶりのようでゲスが、ニュースの時間でゲス!」
 前のとおりニュースの司会…というかアナウンサーはエスカルゴン。
 しかし、今回は何か違う雰囲気が漂っていた事をその場にいた全員が悟れていた。
「今回はニュースと言っても、ゲストの話をしっかり聞くだけでゲス!なお、これは全宇宙の全惑星に放映されているでゲス!それではゲストのMr.チクタク、宜しくでゲス〜!ジャジャ〜ン!!」
 エスカルゴンが画面から消えるとテレビ画面にはカービィたちから見れば初めて見る人物が映っていた。
「だ…誰だよこいつ…」
「目覚まし時計のような姿をしているけど…魔獣?」
「とにかく最初は様子を見ましょう!」
 突然現れたその人物にブンとシリカ、フームが戸惑い、話し始める。
「え〜、はじめましての人が多いのですかな?テレビの前の皆様こんにちは。わたくしMTS上層部の代弁者・チクタクと申すものです」
「ち…チクタクぅ!?それにMTSって…!」
「ブン、静かに!」
 フームが驚いたブンに静かにするよう注意した。
「わたくし今日からこのチャンネルDDDにて、MTSの考えを皆様に伝えるべく活動していきたいと思います!そして、MTSの考えに共感する方は、是非我が社にご支援ください!」
 カービィたちは「何だかインチキっぽい」と思いつつ番組を見ていた。
「わたくしたちMTS社は、ライバル心を燃やしている相手を倒したいというお方のために援助をすることを目的とした会社です。そのようなことをお考えの方は是非MTS社のお客様となってください!これは全てわれらの社長のお言葉と思ってもらって構いません。何度も言うようですが、なぜならわたくしは『代弁者』ですから…」
「まずい、止めに行かないと!」
「ええ、行きましょう!皆!」
「ぽよ!」
 カービィたち5人はチクタクの演説を止めるべくチャンネルDDDのスタジオに向かい、走り出した。

 〜デデデ城 スタジオ〜

「今日の話はここまでとさせていただきましょう、全宇宙の皆様!是非MTS社にご協力ください!」
 チクタクはそう締めくくって今日の放送を終了した。だがカメラはまだ回っている。
 スタジオの物陰には、その様子を見ていたデデデとエスカルゴンがおり、チクタクの行動の事に関して小声で話していた。
「あいつはこの番組は全宇宙にMTSの考えを伝えるだけでなく、カービィたちをおびき寄せるのも目的って言ってたぞい」
「しかし、こんなんで本当にカービィは来るんでゲしょうかね?それと、あいつの『危険な魔獣が入ってくるから隠れていろ。危険な魔獣が倒された後はずっと耳栓をつけていろ』って言葉は一体何の意味があるのだか…」
 エスカルゴンがあまりチクタクのやり方を信用していないような発言をした、そのとき。
 複数の人物の足音が聞こえ、その直後、スタジオにカービィ、フーム、ブン、ナックルジョー、シリカの5人が乱入してきた。
「チクタクって言ったわね?貴方ここのスタジオを使って何を考えているの!?」
「やってきましたね、星の戦士たちよ。何を考えているかって決まっているじゃないですか。MTS社の考えを全宇宙に伝える、ただそれだけです」
「そんなの全部嘘だろ!?」
「ぽよ!」
 フームとブン、カービィはチクタクに噛み付くように言った。
「良いでしょう。そこまでやる気があるのでしたら、私たちが貴方たち星の戦士を今ここで倒して、その無様な姿を全宇宙に晒してやりましょう!」
「『私たち』?」
「お前一人しか今ここにはいないだろう」
 今この場には自分たち5人を除けばチクタク一人しかいないと思ったナックルジョーとシリカがそう言った。
「私の部下の魔獣はすでにそこに来ていますよ…」
「!?」
 カービィたち5人はあたりをキョロキョロしたが、何もいない。
 しかし次の瞬間、感覚が鋭いシリカが何かに気づき、叫んだ。
「ジョー、危ない!後ろから何かが!」
「え?うわっ!」
 ジョーはシリカの言葉を聞いて後ろを振り返ると何かが飛び掛ってきた。
 しかし、ジョーは反撃をしてその『何か』を蹴りで吹っ飛ばす。
「こいつは…トラ?」
 ジョーに襲い掛かった『何か』の正体はトラのような姿をした奴だった。
「そう、そいつこそが私の手下。行きなさい、魔獣ガルベル!」
「グルルルル…ガオオオオオオッ!」
 ガルベルは雄たけびを上げた後、近くにいたシリカに襲い掛かった。
「うわあっ!ぐ…喰らえ!」
 グサッ!
「ガウッ!」
 シリカはガルベルに押し倒されたが、仰向けに押し倒された事が幸いし、改造銃のナイフを突き刺し、蹴り飛ばして反撃した。
「スマッシュパンチ!」
 続いてナックルジョーがスマッシュパンチをガルベルにお見舞いしたが、それでもガルベルはまだ倒れなかった。
「チッ!倒れないか…!」
「タフな奴だな!」
 ナックルジョーは再びスマッシュパンチを放ち、シリカは取り出した光線銃をガルベルに向けて撃った。
「グァオオオオン!」
 ガルベルは二人の同時攻撃の一回目には耐えたが、ジョーとシリカはそれぞれスマッシュパンチと光線銃を連射し、ガルベルは耐えられなくなってその場に倒れた。
「やったあ!」
「ぽよ!」
 コピー能力を得られなかったため戦っていないカービィ、そしてフームとブンはガルベルが倒れたのを見て喜んだ。
「…さあこれで味方の魔獣はいなくなった。残りはお前だけだぜ!」
 ガルベルを倒したナックルジョーはチクタクを指差して言い放った。

 一方、こちらはメタナイト卿と騎士たちの部屋。
 スタジオではカメラ自体はまだ回っているので、テレビでも戦いの様子を見ることができた。
 テレビを通じてメタナイト卿と騎士たちは、ガルベルとの戦闘の一部始終を見ていた。
「た…助けに行かなくていいのですか?」
 テレビを見たまま動きを見せようとしないメタナイト卿にアックスが聞いた。
「待て。あの魔獣は今までのMTSの魔獣とは何かが違うような気がする。今は様子を見ておこう」
 その発言を聞いて、「今までと違う奴ならなおさら助けに行ったほうがいいような…」と言いかけた周りの騎士たちだったが、「卿には何か考えがあるのではないか」と悟り、何も言わなかった。

 場面はこちらスタジオのほうへ戻る。
 こちらでは、カービィ、ナックルジョー、シリカの3人対チクタクの戦いが始まる直前であった。
「『代理人』のチクタク…それが私のMTSでの名前。貴方たちには消えていただきます」
「消えるのはそっちだろ?」
「ふん、どうですかね?」
 ナックルジョーの言う事にチクタクは落ち着いた態度で返した。
「はぁっ!スピンキック!」
 ナックルジョーが先手を取り、ジャンプしてからのスピンキックをチクタクに向けて喰らわせようとした。
 しかしスピンキックの光弾がチクタクにあたる直前、彼は突然姿を消した。
「何ッ!?」
「ふっ!」
「うわっ!」
 チクタクはすでに空中にいたジョーの真後ろにおり、パンチで彼を地面に叩き落した。
 ジョーを地面に叩き落した後、チクタクも地面に着地した。
 ババババババッ!
 着地したチクタクにシリカは改造銃を変形させたマシンガンを撃つが、謎の高速移動で全て避けられてしまう。
 ガッ!
「ぐっ!」
 いつの間に真正面まで近寄られており、シリカも殴り飛ばされてしまう。
「はぁっ!」
「ぽよ〜!」
 高速移動で次はまだ変身していないカービィをチクタクは蹴り飛ばした。
「姉ちゃん、あいつ一体何なんだよ!」
「わからない…一体どうしたら…」
 フームとブンはチクタクのその異常な能力に驚かされていた。
「あいつなかなかやるぞい!」
「確かに。今のところカービィたちの攻撃を一回も受けていないでゲスからなぁ」
 物陰で様子を見ていたデデデとエスカルゴンはチクタクの強さに満足している。
「カービィ、これを吸い込んで!」
 シリカはカービィに向かって改造銃からの火炎放射を放つ。
 カービィはシリカに言われたとおり炎を吸い込み、ファイアカービィとなる。
 そしてカービィ、ジョー、シリカの3人はチクタクを取り囲む状態となった。
 カービィは口から火炎を、ジョーはバルカンジャブを、シリカは改造銃からのミサイルをそれぞれ同時に放った。
「これなら避けられない!」
 攻撃が当たると確信し、ジョーがそう言いながらバルカンジャブを繰り出す。
「考えが甘いんですよ、貴方たちは…!」
 チクタクは3人の同時攻撃が当たる寸前に腕をかざした。すると…。
 シ〜〜〜〜ン…。
 チクタクに当たるはずだった火炎とバルカンジャブ、ミサイルの同時攻撃は突然彼の目の前で止まってしまった。
 それどころか、カービィたちや周囲のチクタク以外の者全員の動きが、時が止まったかのように止まってしまっていた。
「私が時間を操る事ができるというのを最初に高速移動を使ったときに気づかなかったのですね、この人たちは…」
 独り言を呟きながらチクタクは止まっているカービィたちの横を余裕で通り抜けていき、3人から距離を置いたところで再び腕をかざした。
 すると、再び止まっていた時が動き出し、カービィたち3人は自分らが放った攻撃が取り囲んでいたはずのチクタクに当たらなかったため、それぞれが攻撃を受けてしまい、自滅してしまう。
「ぽよぉ〜〜!」
「うわあああっ!」
「うぐっ!」
 味方の攻撃を受けて倒れたシリカが後ろを見ると取り囲んだはずのチクタクがそこにはいた。
「そんな…いつの間に?」
「くっ!なんて奴だ!」
 驚きを隠せないシリカと焦り始めたジョーは何とか立ち上がり、何としてでも攻撃を当てようとチクタクに向かって走っていく。
「ふっ!」
 チクタクは再び腕をかざして時を止める。
 走ってきたジョーとシリカの二人の後ろまでやってきて、殴って吹っ飛ばせる距離まで近づいてからまた時を動かした。
「はぁっ!」
「うあっ…!」
「があっ!!」
 チクタクは二人を後ろから殴り、空中に浮かせた。
「ぽよ〜!」
 次はカービィが火炎放射を口から吐いてきたが、それを高速移動でかわしてカービィも吹っ飛ばす。
 続いて宙に浮いているジョーとシリカに追い撃ちをかけるべく、高速移動で彼らのところまでやってきて二人を地面に叩き落す。
「うっ!」
「ああっ!!」
「ふん、どうです?私と戦ったのを後悔するべきだと思うのですが…」
「くそっ…負けるものか…!」
「ぽよ…」
 3人はまだ一度もチクタクに攻撃を当てる事ができていない。
 攻撃を無駄に出し続けているため、3人は体力をだいぶ消耗しており、息が上がり始めていた。
「あきらめの悪い人たちですね…」
 チクタクは再び高速移動をし始める。
 カービィたち3人は攻撃を当てようとするも、やはりまったく当たらず、焦りと疲れが同時に蓄積していった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
 その後、ずっと高速移動し続けるチクタクを追いかけることに疲れた3人はついに体力が限界となり、息を切らしてしまった。
「ではそろそろ止めを刺しますか…!」
 疲れてその場で動けなくなってしまったカービィを見たチクタクは構えを取って、強烈な目覚まし時計の音を強化したような破壊音波を発し始めた。
 ジリリリリリリリリリリリィィィィィン!!!
「「「うわああああああああぁぁぁぁぁっ!!」」」
 その破壊音波は耳の鼓膜が破れるかと思うぐらいのすさまじい騒音であり、疲れきっていたカービィたちに大ダメージを与えた。
 近くにいたフームとブンも思わず耳を塞いでしまった。
「なるほど〜、耳栓をしろとはこういうことだったんでゲスなぁ〜」
 その一方で、事前に耳栓をしていたデデデとエスカルゴンの二人は平然としていた。
 チクタクの破壊音波は鳴り止んだが、直前に耳を塞いでいなかったカービィたち3人には致命的なダメージであったのか、倒れたまま動けなくなっていた。
 フームとブンは心配そうに3人のところへ駆け寄った。
「皆、大丈夫!?」
「ちょっとガッカリしましたね、星の戦士は私の力でも簡単に倒せるなんて…。これではボーラルさんは必要ない…かもしれませんなぁ」
 3人を見たチクタクは髭を触りながら独り言を呟いた。  その言葉はカービィやジョーたちに声をかけているフームとブンには届いていない。
 だが、チクタクは自分の髭を触っているときにある異変に気づいた。
「ん?な…なんと!ひ…髭が…!髭が乱れているではありませんか…!!あああ、いけない恥ずかしい…」
 どうやら高速移動を使い続けていた所為で自分の髭が乱れてしまったらしい。
 チクタクは何処からかクシを取り出し、乱れた髭を直し始めた。  実は彼、自分の髭を何故かとても大切にしており、1日に何回も髭の手入れをするほどであった。
「え?な…何をしているのかしら…?」
 たまたまチクタクのほうに目をやったフームは彼が何をしているのかわからないでいた。
「とにかく今のうちのようだぜ姉ちゃん。3人をどこかへ運ばないと…」
「そうね、もし彼が戦いを放棄したのであれば今のうちかも…。もう皆戦えなさそうだし…」
 フームとブンはチクタクが髭を直している隙を突いて倒れたカービィたち3人を運び、スタジオから出て行った。
 カービィたちを運んでいったフームとブンがスタジオから出て行くと、隠れて様子を見ていたデデデとエスカルゴンが出てきてチクタクのところまでやってきた。
「なんでカービィに止めを刺さなかったぞい?」
「仕方ないではありませんか陛下!わたくしの髭が乱れてしまっては話になりません…!」
「なんでそんなに髭を大切にしてるんだぞい?」
「髭の生えていない陛下にはわかりませんよ、このこだわりというものが…」
「確かによくわからんぞい…でもお前は本当に強い魔獣ぞい!気に入ったぞい!」
「そう言ってくれるとありがたいです。でもしかし、私よりも強い魔獣はあと一人いますよ、『宇宙最強の魔獣』と呼ばれる方が…」
「『宇宙最強の魔獣』!?」
 いきなりそんな単語を聞いたデデデは驚き、思わず大声を上げてしまった。
「ええ、そのとおりです」
「でも『最強』と言われてナックルジョーの奴に簡単に倒された魔獣がいたような…」
「何を言っているんです陛下。あの人はちゃんとした強さを持っている方ですよ…。それにあの人は明日ここに来る予定になっていますから…」
「ここへ来るのかぞい?」
「ええ、あの方とこの私がいれば星の戦士ももう終わりです」
「ぐへへへ、一応期待しておくぞい」
 チクタクからMTS社の『宇宙最強の魔獣』の存在を聞かされたデデデとエスカルゴンは心の底からとても期待していた。

 フームの部屋には、チクタクとの戦いで倒れたカービィたちが運び込まれ、メタナイト卿も様子を見にきていた。
「テレビから見ていたのだが、あの魔獣は時間を操る力を持っているのかもしれない…」
「え?時間を?」
「正確にはわからないが、自分だけが高速移動や瞬間移動をできるということは自分だけあのように動ける空間を作り出せるという可能性もある」
「じゃあそんな魔獣にどうやって勝てばいいの?」
「………」
 時間を操っている可能性のある魔獣チクタク…。
 今のカービィたちではまだ太刀打ちする事のできない強敵であった…。


〜ウィザード・フォートレス グリルの部屋〜

 グリルの部屋にはグリルと今日はププビレッジに行かなかったボーラルが話し合っていた。
「う〜ん、チクタクは大丈夫なのかしら?まさか『自分の髭が乱れた』というだけで戦いを放棄するなんてことは…。まあそれは良いとして。次は貴方の出番よ、ボーラル」
「言われなくてもわかっていますよ。『宇宙最強の魔獣』の実力がどれほどのものか貴方にも見てもらいたいですね」
「やる気は充分みたいね。それじゃあ明日にはププビレッジに行くわけだから今日は最終テストでもしておきなさい。私はお兄ちゃんにお菓子届けに行くから」
「ほっほっほ、そんなことをする必要はありませんよ。わたくしの勝率は間違いなく100%なのですから…」
 グリルはボーラルの言葉を聞いてニイッ、と笑うと部屋から出て行った
 『宇宙最強の魔獣』と言われる魔獣・ボーラル。果たしてその実力は本当にMTSのメンバーが言うとおり、チクタク以上のものなのだろうか…?




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