副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第18話
〜星の戦士コンビVS宇宙最強の魔獣〜



 〜ウィザード・フォートレス 研究室〜

 MTS本部の魔獣研究室。
 ここでは、MTS首領のマルクが下っ端であるプランクやマドゥーたちと共に研究を行っている最中だった。
「『プロジェクトG』に必要な『新型ウィルス魔獣』の基本形は今日で完成させるぞ。お前たち、ミスを犯したらただでは済まないからな」
「はっ!!」
 彼らが研究に取り掛かって数分後…。
「ついに完成したぞ、この『新型ウィルス魔獣』が…!」
 マルクは完成した『新型ウィルス魔獣』の入ったアンプルを見て目を輝かせていた。
 だが、すぐにプランクたちに次の指示を出す。
「おい、お前たち。とりあえず試作物として作ったこの『新型ウィルス魔獣』。これをどこか別の場所に保管しておけ。僕はまだこれから別にやることがあるから、またここへしばらく戻って来れなくなる。僕が戻ってきたらまた実験を再開しよう」
「『やること』ってグリル様のお相手とか魔獣ボーラルの様子を見ることですか?」
 マルクの『これからやること』について気になった一人のマドゥーがマルクに質問した。
「フッ、それもあるな。とにかくお前たちは僕が戻ってくるまでは勝手な事はするなよ」
 マルクはプランクたちとマドゥーたちにそう忠告するといつものとおりテレポートで姿を消した。

 〜ウィザード・フォートレス 資料室〜

 研究室から資料室へとワープしたマルクは、なにやらとても分厚い歴史の本を読みはじめた。
 そして読み始めた瞬間、彼の隣にテレポートを使ってグリルがやってきた。
「お兄ちゃ〜ん、なに読んでるの?」
「歴史の本だよ。宇宙各地にいる様々な種族についてのデータが載っている本だね」
「へぇ〜、そういえばそんな本あったね。え?なになに?『ダークマター族』?『ダークマター族』ってどんな種族なの、お兄ちゃん?」
 グリルはコンピューターの扱いには長けている一方で、コンピューター関係以外の難しい事や面倒くさい事は嫌いで、マルクが読むような分厚い本を読むことは苦手であった。
 グリルは本の中の文を読もうとせず、マルクにその『ダークマター族』という種族が何者かを訊いてきた。
「『ダークマター族』…それは銀河大戦が始まる前…いや、僕たちが生まれるより前…いや、かの宝剣ギャラクシアを作ったフォトロン族が生まれるよりも前から宇宙にいた種族だ。今では生き残りがたくさん存在しているが全員の行方がわからないらしい。しかし、まだ種族として成り立っていた頃のダークマター族の者たちに定められている『ダークマター族の掟』は本当に厳しいものだよな」
「え?どんな決まりなの?」
「『ダークマター族の掟』にはいろんなものがあるが、その内の一つで、一番厳しい決まりは『他の種族の者に惹かれて恋愛関係、そして結ばれるまでに発展してはいけない』というものなんだ。これをすることは一族最大の禁忌であり、そのようなことを犯したダークマター族の者は族長配下の執行人によって処刑されていたらしい」
「えぇ!?じゃあ一目惚れした人がいてもその人の種族が自分と同じダークマター族では無かったらダメって事?」
「そういうことだ。理由はここに書いてあるけど『宇宙で一番優れた種族であるダークマター族の血筋を他の種族のもの共に分け与えてはいけない』からだそうなんだ」
「なんてサイテーな種族なの?女の子の気持ちを全然考えてないじゃない!まあ私にはお兄ちゃんしかいないからどうでもいいような気もするけど…」
「さてグリル。お前は今から司令室のほうに戻れ。陛下から連絡が来るかもしれないからな。僕はシアタールームのほうへ行ってボーラルが何をしているのか監視しているよ」
「え、うん!今日もお仕事がんばるからね!」
 グリルは元気に返事をするとテレポート能力で資料室から消えた。
「(まったく、グリルがいるとゆっくり読書をすることができないな…)」
 マルクはグリルの事を少し鬱陶しいと思いつつもテレポート能力で消えた。


 〜ププビレッジ デデデ城〜

 デデデ城では、行方がわからなくなったボーラルを信用できなくなりかけていたデデデが新しい魔獣を注文しようとグリルのところに通信を入れていた。
 そして、エスカルゴンや城に一緒に住む事になっているチクタクも横にいる。
「グリル、『宇宙最強の魔獣』であるあのボーラルとやらが帰ってこないぞい!」
「やっぱり大した事のない魔獣だったんでゲスなぁ〜」
「チクタク、貴方ボーラルとあっていないの?」
「いや、昨日見送ったときからは…」
「もしかしてボーラルはカービィに倒されちゃったんじゃあ…」
「倒されたならまた次の魔獣をよこすぞい!」
 デデデがグリルに抗議した瞬間、突然デデデの目の前にあのボーラルが現れた。
「陛下、私はまだ生きていますよ。そんなに焦らなくとも…」
「お前はボーラル!生きているなら何故すぐに昨日の内に報告しなかったのかぞい?」
「少しこの村を見物していたもので…」
「で、お前はカービィをやっつける事ができたのかぞい?」
「いえ、まだ倒すことはできていませんが…」
「何故すぐに倒さないぞい!?」
「昨日は星の戦士たちがどれほどの実力かを確かめていたのですよ。今日は本番という事で今度こそ『星のカービィ』を倒してきます」
「いいからとっとと倒しに行くぞい!」
 デデデに急かされたボーラルはすぐに外に出て行った。

 同じ頃、ボーラルに呼び出されたメタナイト卿とカービィは彼と戦うための準備をしていた。
「カービィ、まずはこれを吸い込め」
 ヘビーナイトはかつて決闘したときと同じように腰にさげているもう一本の剣をカービィに差し出した。
 カービィは剣を吸い込んでソードカービィとなる。
 そして、メタナイト卿とカービィ、フームの3人はボーラルが待つという昨日の戦いの舞台である原っぱへ向かった。
「卿、どうかお気をつけて…」
「ソード。そんな心配しなくてもメタナイト卿なら魔獣をぶっとばしてくれるダスよ!」
 メタナイト卿に心配そうに声をかけたソードにメイスが言う。
「だといいのだが…」

 デデデに急かされてボーラルはカービィやフームに宣言したとおり、昨日ナックルジョーやシリカと戦った場所にやって来た。
「(さて、まだ『星のカービィ』と『メタナイト卿』の二人はまだここへ来ていないようですね…。やってきたら『宇宙最強の魔獣』の力を思い知らせてやらないといけませんね…)」
 ボーラルはそんなことを考えながらカービィとメタナイト卿を待っていた。
 しばらくすると…。
「あっ!あそこにいたわ!!」
「ぽよ!」
 ボーラルが待ち望んでいたカービィとメタナイト卿、そしてフームの3人がやってきた。
「約束どおりちゃんとやってきましたね?そしてそこの『メタナイト卿』、はじめまして。わたくしが『宇宙最強の魔獣』ボーラルです」
「お前か…MTSで『最強』を名乗っている魔獣というのは…」
「殺す前に言っておきますが、私から見れば貴方の知るHN社の最強クラスであったと言われるマッシャー、キリサキン、デンジャー、クラッコなどは虫ケラと同然の存在なのですよ」
「気をつけてメタナイト卿、あいつの挑発に乗っちゃダメよ」
「うむ」
 フームはメタナイト卿に小声で言った。
「それでは始めましょうか」
 ボーラルはそう言うと瞬間移動でカービィとメタナイト卿の目の前までやってくる。
 カービィは手に持った剣で、メタナイト卿はギャラクシアでボーラルを斬りつける。
 ボーラルはすぐに距離をとり、指先からのビームで反撃し、空へ飛び立つ。
 カービィとメタナイト卿は素早くかわし、メタナイト卿はマントを翼状に変化させ、ボーラルを追って空へ飛び立った。
「来て!ワープスター!!」
 フームは新ワープスターを呼び、カービィはやって来た新ワープスターに飛び乗ってメタナイト卿とボーラルに続く。
「はああっ!!」
 メタナイト卿はギャラクシアを構えてボーラルに突進する。
「ふん!」
 ボーラルもメタナイト卿に対抗するように突進をした。
 ザシュッ!
「ぐぉっ!」
 メタナイト卿はすれ違いざまにボーラルをギャラクシアで斬りつける。
「なるほど…今のはなかなか効きましたよ。それが伝説の『宝剣ギャラクシア』とやらですか…。そのような武器を持っている貴方をあのお方が恐れるわけです」
「言え。お前たちMTSの目的はなんだ?一体何をたくらんでいる…?そして、HN社とはどういう関係なのか…」
「わたくしには上層部の皆様が一体何を考えているのかは今のところまだ理解できないところもあるので何とも言えませんが、やはり貴方と『星のカービィ』を潰すのが最終目的であるのかもしれませんね…」
「くっ!」
 話しているメタナイト卿とボーラルのところに新ワープスターに乗っているカービィが飛んできた。
「スピニングソード!!」
 カービィは新ワープスターからジャンプし、身体を回転させながらボーラルを剣で斬りつけようとする。
「ふっ!」
 ボーラルはそれを最小限の動作で避ける。
「ぽよ〜!」
 カービィは空から落ちそうになるが、新ワープスターがそれを受け止めた。
 ボーラルはカービィとメタナイト卿の二人に更なる攻撃を仕掛けようと彼らの目の前まで近づいてきた。
 そしてキックやパンチによる猛烈なラッシュを仕掛けてきた。
「どわっ!」
「ぽよぉ〜!」
 同時に吹っ飛ばされ、地上へ落下していくカービィとメタナイト卿。
 追撃をするべくボーラルも急降下をする。
「死ねぇぇぇぇぇ!」
「ふっ!」
 ガキィィン!
 ボーラルは急降下をしながらメタナイト卿にキックを浴びせようとするが、ギャラクシアで受け止められてしまった。
 受け止められて隙だらけなボーラルのことをカービィは剣で斬りつける。
「ぐぁっ!」
 剣で斬りつけられたボーラルは離れて距離をとった。
「ふっふっふ…その意気です。もっと私を楽しませてください…」
 攻撃を受けても余裕のある態度でボーラルは不気味に笑っていた。


 デデデ城のバルコニーではカービィとメタナイト卿のタッグとボーラルの戦いの様子をデデデとエスカルゴン、チクタクの3人が望遠鏡で見ていた。
「あれが『宇宙最強の魔獣』の実力かぞい?なんかパッとしないぞい…」
「そうでゲスねぇ陛下。私もパッとしないなぁなんて思っていたんでゲスよ。Mr.チクタク、何度も聞くようですまないのでゲスが、本当にあのボーラルとやらは『宇宙最強の魔獣』なんでゲスか?」
「う〜む…確かボーラルさんはMTSの魔獣養成所では、1対1の戦い以外は今までやったことが無かった覚えがあるのですが…」
「なにぃ?1対1の戦い以外はやったことが無い?それじゃあまずいぞい!」
「あの人は結構な自信家というか威張りん坊な人ですからね…。調子に乗って、やったこともないのに2対1の戦いなんか始めてしまったのではないのでしょうか…」
「じゃあ『最強』というのは1対1での戦いならではの話という事でゲスか?」
「そういうことになるんじゃないでしょうか…」
「なんだか不安になってきたぞい…」
 ボーラルへの不安を抱き始めた3人であったが、観戦を続けた。


 チクタクの話では『1対1の戦い以外はやったことが無かった』らしいボーラルであったが、それであってもカービィとメタナイト卿を追い詰めつつあった。
「ほっほっほ…」
「(二人とも…頑張って!)」
 フームは心の中でカービィとメタナイト卿のことを応援している。
「ふっ!はっ!たぁっ!」
「ぽよ!」
 ボーラルの連続攻撃がカービィに決まる。
「うぉぉっ!」
「おっと」
 メタナイト卿はギャラクシアによる必殺技『ギャラクシアソードビーム』を決めようとするが、素早いボーラルには難なくかわされてしまった。
「(あの魔獣の動きは速すぎる…!動きを封じる方法は…)」
「ソードビーム!」
「そんな隙だらけの攻撃は私に当てる事はできませんよ」
 カービィの撃ちだしたソードビームもボーラルは楽に避け、逆にカービィを殴り飛ばす。
「ぽよ〜!」
 カービィはメタナイト卿の横まで吹っ飛ばされてきた。
「カービィ!」
 体力の少ないカービィはもう倒れそうになっていた。
 メタナイト卿はなんとか立てるものの、それでもボーラルから受けたダメージはかなりのものであった。
 余裕を見せつけながらボーラルが歩いてきた。
「正直昨日痛めつけた星の戦士もそうですが、あなた方にはガッカリしましたよ。この程度の実力しかないのであれば、わざわざ『宇宙最強』であるこのわたくしが出向く必要は無かったのではないかと今も思います。ですがこれもあのお方のご命令です、もう消えておしまいなさい!」
 ボーラルがシリカにも撃ったあの貫通力の高いビームを指先から放とうとした、その時。
「ハイパーマッハトルネイド!!」
「なにぃ!?」
 ゴオォォォォォォォォォォ!!
 メタナイト卿はとっさに4方向に竜巻を放つ謎の技を繰り出し、ボーラルを跳ね飛ばした。
「ぐ…!な…なんだ…今の攻撃は……?」
 ボーラルは何が起きたのかさっぱりわからず、更にはその技によって大ダメージを受け、ボロボロになっていた。
「い、今だカービィ!」
「ぽ…ぽよ…」
「な…」
「はぁっ!」
 グサッ!!
「うぐぉぉぉ!」
 メタナイト卿の痛い反撃をまともに受け、傷だらけで動く事のできないボーラルに向かってカービィは力を振り絞って走り出し、手に持った剣でボーラルの腹部を串刺しにした。
「ぽよ…」
「カービィ、しっかり!」
 ボーラルは腹部に剣が突き刺さったまま退いた。
 そして、傷だらけで疲れていたカービィも倒れてしまった。
 フームは心配してカービィに駆け寄った。
「はぁはぁ……ば…馬鹿なぁ…こ、こんなことがァ…!!!この『宇宙最強の魔獣』ボーラルが…星の戦士ごときにぃ…!!!!!」
「!!」
 悔しそうな台詞を吐いて今にも倒れそうなボーラルをカービィ、メタナイト卿、フームの3人が見た。
「ちッ、ちくしょぉ〜〜〜!!!!!
 ボーラルは断末魔と思われる悲鳴を上げると大爆発を起こして跡形も無く消え去ってしまった。
「か…勝ったの…?」
「どうやら…そのようだ……」
「でもメタナイト卿、貴方が使ったあの技って…?」
「あれは『ハイパーマッハトルネイド』…。ギャラクシアに秘められたパワーを使用して繰り出し、自分の意志で周囲にいる狙った相手全てだけに強烈な攻撃を浴びせる技…。ただこの技には欠点がある…」
「欠点?」
「『ハイパーマッハトルネイド』はギャラクシアにあるパワーを大量に使ってしまう技…。あの技は一日に一回しか使う事ができないのだ…」 「……あまり期待はできないって事?」
「ああ。それにもしこの戦いがMTSに見られているとしたら奴らは対策を練ってくる可能性もある…」
「そんなことは…」
 フームは『そんなことはない』と言おうとしたが、注意深い動きを見せる事がある彼らならやりかねないとすぐに考えを変えたため、それ以降の言葉を言うのをやめ、話を変えた。
「とにかくメタナイト卿、貴方とカービィは早く怪我を治さないといけないと思うわ。また新しい敵が襲ってくるかもしれないし」
 メタナイト卿はフームの言った事に頷いた。
 『宇宙最強の魔獣』を名乗るボーラルという強敵をなんとか撃退したカービィ達だったが、まだ彼らの身近にはもう一体の強敵・チクタクが存在している。
 カービィたちはまだ気を抜く事ができない状態に置かれていた…。


〜ウィザード・フォートレス 社長室〜

「はぁ…はぁ…あぐあ…マルク様…」
 突然テレポート能力でマルクの部屋に現れたのは、ププビレッジでカービィとメタナイト卿に敗退し、爆死したはずのボーラルだった。
 実は、彼は爆発して身体が全て滅ぶ寸前に残された力でテレポート能力を使い、MTSの本部まで逃げてきたのだ。
 今にも死にそうなボーラルの目の前に首領のマルクが現れた。
「パラマターを通して全て観させてもらったぞ。お前は本当は今回出動するのが嫌だったという事、そしてカービィとメタナイト卿の二人に負けたということも全てな…」
「い…今までの私の行動は全て筒抜けだったのですか?」
 ボーラルはマルクが作った監視魔獣パラマターの存在を知らなかったらしい。
「そういうことだ。もうこんな身体になってしまったお前は使い物にならないからこの場で処刑する……と言いたいところではあるが、僕はナイトメアとは違ってそこまで鬼ではない。正直お前があのパワードマッシャーを倒した経歴があるナックルジョーを圧倒した事、メタナイト卿とカービィの二人相手に一時優勢だったということに関しては、生みの親であるこの僕も驚いているし褒めてやりたいよ。さすがは僕が今日までに作った魔獣たちの中では『最強』と言われているほどの実力はあるな」
「………」
「だがお前は今その状態でしばらくいると間違いなく傷の所為で死ぬ。いくら魔獣とは言えど不老不死ではないからな…。しかしお前は実力のこともあるからまだまだ星の戦士を倒すために働いてもらうぞ」
「ですが…わたくしは…この身体ではどうすることも…」
「こうするんだ。おい、お前たち」
 マルクが呼ぶと複数のプランクとマドゥーたちがマルクとボーラルの元へやってきた。
「ボーラルを治療室へ運べ。見てのとおりこいつはもう身体が半分崩れかけている重傷だ。特殊な治療や手術を僕が行うこととするから、先に連れて行くんだ」
 プランクとマドゥーたちは死にそうなボーラルを抱えると社長室を後にした。
「(また一つ仕事が増えたな……。まあいい。ボーラルはまだまだ利用価値がある存在だ。奴自身を満足させるためにも強化手術を行ってもしものときのために備えておくか…)」
 マルクはボーラルがカービィたちによって殺されかけたために少し困っていたが、すぐに気を取り直して傷ついたボーラルを治療するためにプランクとマドゥーたちが向かった治療室のほうにテレポート能力で飛んでいった。




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