副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第19話
〜プロジェクトG始動〜



 〜ププビレッジ デデデ城〜

 ここはププビレッジのデデデ城。
 デデデは昨日エスカルゴン、そしてチクタクと共に見ていた目の前で『宇宙最強』を名乗っていた魔獣・ボーラルが倒されたことについてグリルに通信をいれ、文句を言っているところであった。
「あの『宇宙最強の魔獣』とやらがカービィとメタナイトの二人によって倒されてしまったぞい!」
「えぇ?ウソぉ?お兄ちゃんからは何も聞いてないけど…」
「陛下の言うとおりでゲス!私達はちゃんとこの目で見たのでゲスから!」
「グリル様、私も陛下達に同行して目の前でボーラルさんが倒されるのを見ましたよ」
「うぅ〜ん、やっぱりお兄ちゃんの言うとおり油断できない存在なのかなぁ。カービィは…」
 グリルが困っているとデデデは手に持ったカタログの見開きの部分をグリルに見せつけながら魔獣を注文しようとする。
「強いの一匹で負けたら次は数で勝負ぞい!今日はこの種類がいっぱいある奴を頼むぞい!」
「そういう展開になる意味がわからないんですけど…。ん?どれどれ…トカゲ型の魔獣・ラガルトンシリーズをご希望のようですね?ですがちょっとその魔獣に関してはそのカタログには書いていないことがあるのでその書いていないことを今私の口から説明したいのですが…」
「書いていない事?」
「ええ、私のお兄ちゃんが言っていたのですけれども実はそのラガルトンシリーズ全9種類中で販売できるのはたったの4種類だけなんです…」
「よ、4種類?それではまたこの前の弱いロボット兵どもと一緒ぞい!」
「も、申し訳ございません!ε型、ζ型、η型、θ型、μ型の5種類はまだこちらのほうで試作段階であり、非売品という事にしてあるんです…」
「で、ワシに売ってくれるのは残りの4種類だけと言うわけか…」
「お気に召さなかったのであれば別の魔獣を…」
 新しい魔獣の話でまた文句を言いそうになっているデデデに対してグリルは頭を下げて謝った。しかしそんなとき。
「グリル、ちょっと僕の話を聞け」
「え?お兄ちゃん?」
 グリルはデデデとの会話中にマルクに呼ばれた。
 マルクの姿こそディスプレイに映ってはいないが、マルクの声はデデデ達にも聞こえた。
「今陛下は何を買うと言ったんだ?」
「え?ラガルトンシリーズを買うって…」
「丁度いい。試作段階の種類のうちζ型とθ型を解禁する」
「え?どうして?」
「いいから早く陛下に伝えろ」
「あ、うん!」
 グリルはすぐにディスプレイの向こう側のデデデの方向に向き直った。
「今陛下も聞いてたと思いますが、お兄ちゃんから許可が下りたので先ほどの4種類に加えてそのカタログに載っているζ型とθ型も買うことができるようになりました!」
「本当かぞい?じゃあそのゼ…ゼータ型?ともう一つのほうも買うぞい!」
「料金は6種類8体セットの48000デデンで!」
「金は払うから早速魔獣達をこちらによこすぞい!」
「は〜い、でも前のアンドロンと同じようにデリバリーシステムで送るとちょっと大変なので直接送らせていただきますね。ではでは♪」
 グリルはそういうと画面から姿を消した。
「なんだか今日はあのマルクが直接出てきたから何か怪しいような気がするのでゲスが…」
 今回の通信はいつもと違ってマルクが直接出てきたことに不信感を抱いたエスカルゴンが呟くとチクタクがそのことに答えた。
「それはマルク様の良心であって企んでいるとかそんなことは多分ございません。ともかく、今回も魔獣をご購入いただき有難うございます。お二人には私も心のそこから感謝していますよ」
「(やっぱりわしは話についていく事ができないぞい…)」
 話についていく事ができずに黙っているデデデを他所に、チクタクはまたMTSの魔獣が売れた事に喜びを感じていた。


 〜ウィザード・フォートレス 司令室〜

「ねぇ、どうしてまだ開発途中のラガルトンのζ型とθ型の販売を許可したの?」
 MTSの本拠地では通信を終えたグリルがすぐ横にいたマルクに突然販売許可を出した魔獣のことについて聞いていた。
「理由?理由は簡単だよ、『実用テスト』さ」
「『実用テスト?』」
「そう、今まで僕は魔獣を…たとえば今のところ僕が作った中では『一番いい魔獣』である『ボーラル』がまだ未完成のとき、彼の戦力テストは他の魔獣と彼を戦わせてどれくらいの強さが必要かを調整していたのだけれど、それでは星の戦士と魔獣とでは戦闘力が違うからあまり当てにできなかったんだよ。そこで僕が考えた方法が、前にも話したような気もするけど『未完成の魔獣を上手く陛下に買わせて星の戦士達と実際に戦わせ、こっそりとテストを行う』というものだ。これで以前よりももっと正確なテストができるということだ」
「でもそんなことしたら一度テストしちゃった魔獣は何に使うの?陛下は同じ魔獣は多分二度と頼まないだろうし、私達はもうすでについ最近までは支配した星の数が100ぐらいだったけど、昨日で文明を築いている惑星は殆ど支配しちゃったし、不用になっちゃうんじゃないの?」
「だから僕達には『宇宙調査隊』があるのだろう?僕たちやナイトメア、銀河戦士団のメンバーでも知らない未知の惑星を見つけるためのさ。戦闘データを得て完成した魔獣はそのような未開惑星の侵略に使う事ができるだろう?星がなかなか見つからないようであれば陛下を通さずに直接送り込むのもありだしな」
「そういえばそうだったね、でもやっぱりそんな星私達が宇宙調査隊を派遣して見つかった事なんて一度もないでしょ?」
「確かにそうかもしれないがまだ未開の星がないと決まったわけではない。調査を続けていればいつかは一つぐらいは見つかる。宇宙はとても広いし、僕達の知らない事はまだまだあると思うんだ」
「未知の惑星かぁ〜、もしそんなのが見つかったらそのときの侵略は私も直接参加していいかな?」
「それはそのときに決めよう、グリル。まだ見つかったわけじゃないんだから。さあ僕は魔獣研究のほうに戻るとしようか」
「『新型ウィルス魔獣』っていうのがもう完成したんだっけ?」
「うん、あとは実験に使う素体となる生物にウィルス魔獣を注入してポップスターに送り込むだけだよ。まだこの段階では本番ではなくテストだけどね」
「お兄ちゃんが珍しく時間をかけて作った傑作が楽しみだなぁ〜♪星の戦士をやっつけられるといいよね」
「『珍しく』は余計だ。じゃあグリル、僕はこれで。研究もそうだけど、ボーラルの治療もしなくちゃならないから悪いけどあまり長く構っていられないんだ」
「ううん、やることあるなら全然いいよ!」
「そう言ってくれて助かるよ」
「(やっぱりボーラルはカービィ達に負けたことをお兄ちゃんは知ってたのね…)」
 期待して目を輝かせている一方でマルクの発言から何気なくボーラルが倒されたことを知ったグリルにマルクは微笑むとテレポートをして姿を消し、研究室に向かった。


 〜デデデ城 メタナイト卿の部屋〜

 『宇宙最強の魔獣』を自称していた強敵・ボーラルを倒したカービィたち星の戦士。
 大怪我をしたはずであった彼ら4人の身体はメタナイト卿の持つギャラクシアの特殊な力で完全に回復していた。
 そしてそこにいた全員はその能力に驚き、特にフームが感心してしまっていた。
「すごい…それが宝剣ギャラクシアの力…」
「うむ。今の『ギャラクシーヒーリング』は傷ついた所有者と、所有者の味方と判断される者を治療する能力…」
「でも、それがあれば皆が怪我をしてもなんとかなるってこと?」
「いや、便利だと思われるが、この技も昨日の『ハイパーマッハトルネイド』と同じく一日の使用回数が限られているから、無闇に使うことはできない…」
「じゃあそれに頼ることはできないっていうこと?」
「…………」
「姉ちゃん、『宇宙最強の魔獣』ってなんなんだ?」
 ボーラルがププビレッジにやって来た2日間はフームと別々にいたブンはボーラルの存在を知らなかった為、フームにボーラルのことについて聞いた。
「ええ、恐ろしく強い奴だったわ。でも、その魔獣がなんだとかと言うよりはこれからのことが重要なのよ」
「これからのこと?」
「そう、この後チクタクやボーラルみたいな強さを持つ魔獣が次々とMTSからこの星に送り込まれたとしたらそれはただ事じゃ済まないわ。私はカービィ達が勝つとは信じているけれど…」
「………」
 フームとブンがそんな事を話していると外でパトロールをしていた元ナイト・バンテッドのメンバーであるメイスナイトとジャベリンナイトが慌ててメタナイト卿の部屋に入ってきた。
「た、大変ダス!」
「む?どうした…?」
 慌てているメイスナイトにメタナイト卿が事情を聞いた。
「そ、城の外に魔獣らしき化け物が!」
「数は?」
「変なトカゲみたいな奴で、ざっと40体ぐらいはいるダス!」
「なんですって?」
「そんなにいるのかよ…」
 メイスナイトの報告を聞いたフームとブンを初めとするそこのいた者達は魔獣と思われる存在の数に対して驚きを隠せなかった。
「まずいな、40体もいるとは…。村に被害が出る前に早く魔獣達を倒しに向かうぞ。カービィ、ジョー、シリカは私と共に前線で戦おう。ソード達は私達の後方支援とフームとブンの護衛を頼む」
「はい!!」
「おう!!」
「ぽよ!!」
 その場にいた全員がメタナイト卿の指示を受け入れ、返事をした。
 だが一人、出かける直前にヘビーナイトがカービィの目の前にやってきて彼に前に決闘をした際にも吸い込ませた剣を差し出してきた。
「カービィ殿、これを」
 カービィはそれを吸い込んでソードカービィに変身した。そして彼らは全員で城の外に向かった。


 〜ウィザード・フォートレス 研究室〜

 カービィやメタナイト卿達が多数の魔獣を殲滅するために戦いを始めようとしていたのと同じ頃。
 マルクはなにやらまた『新型ウィルス魔獣』という謎に包まれたものに関する実験をしていた。
 そして彼の周りには実験を手伝っている下っ端のプランクやマドゥー達がいる。
「これより試作型の『新型ウィルス魔獣』を使った最初の魔獣実験を行う。お前たち、そこにいる僕があらかじめ用意し、眠らせておいた実験用の魔獣をこっちの台まで持ってきてくれ」
 マルクの指示された研究を手伝っているプランクとマドゥー達の一部は近くで眠っていたかつてホーリーナイトメア社が送り込んだフィギュアが変化した1.5頭身ほどのザコ魔獣に似た姿をした魔獣を複数がかりで運んできた。
「じゃあ僕がこの手でこいつにウィルス魔獣を注入しよう」
 マルクは『新型ウィルス魔獣』が入ったアンプルを魔法で持ち上げ、注射器にそれをセットして、その注射器を眠っている魔獣に近づけた。
 ブスッ
 注射器の針が魔獣の身体に刺さり、薄紫色の液体のようなもの…新型ウィルス魔獣が注射器から魔獣の体内に注入されていった。
「これでよし」
「あ…あの!これだけでいいのですか?」
 実験があっさり終わってしまったと見たのか、一体のプランクがマルクに聞いた。
「いや、まだだ。次は宇宙カプセルを用意しろ。この魔獣をポップスターに直接送り込む」
「それならデリバリーシステムを使ったほうが早い気が…」
「そうしたらもしも無差別になんでも襲う魔獣であった場合に陛下とかが殺される危険性がある。まだウィルス魔獣が投与した生物にどのような効果をもたらすかは開発者であるこの僕も全て把握しているというわけではないからね。わかったらとっとと準備しろ」
「りょっ、了解」
 プランクやマドゥー達はまだ眠っている魔獣を宇宙カプセルの中に入れた。
 するとマルクは宇宙カプセルの目の前までやってきて、それに魔法をかけた。
「これをポップスターのデデデ城の近くに一瞬で移動させよう…ふんっ!」
 マルクが目を光らせると宇宙カプセルは消え去ってしまった。
「よし、お前たち。今日の実験は一旦ここで中断だ。僕はシアタールームでパラマターを通して先ほど送り込んだ魔獣の様子を見ることにする。お前達はこの『新型ウィルス魔獣』の効果についての研究をここで続けてくれ。ポップスターでのテストを見た後、僕もまた研究に戻るとしよう」
 マルクはそういうと言葉通りテレポートで研究室から消え、シアタールームに向かった。


 一方、カービィ達星の戦士は城の周りに突然湧いてきた魔獣達を相手に奮闘していた。
 彼らが戦っている魔獣は先ほどデデデがMTSに注文したトカゲのような姿をした魔獣『ラガルトンシリーズ』と呼ばれる存在で、この魔獣達は数日前に現れたロボット軍団…つまりはアンドロンシリーズと同様に一体一体の戦闘力は低いが、数と敏捷性、連係プレーで勝負をする魔獣であり、色と種類のバリエーションはアンドロンシリーズよりも多く、やはり種類によって戦力も微妙に違っている。
星の戦士4人とソードやブレイドといった騎士達は一人で複数を相手にしている状況ではあったが、やはり一体ずつの戦力が弱かったことが幸いして善戦していた。
 ズバッ!
「ギャアオォォォ!!」
 カービィとメタナイト卿、騎士達の攻撃がラガルトンを切り裂く。
「スマッシュパンチ!」
「グオォォ!」
 ナックルジョーの気弾が命中したラガルトンは吹っ飛ばされ、動かなくなった。
 ドカァン!!
「グアッ!??」
 シリカが放ったミサイルランチャーの爆発で複数のラガルトンが吹っ飛んで戦闘不能となる。
 そして戦いが始まってから数分が経過したが、ラガルトンシリーズの魔獣は殆ど数が減らない。
「まだいるのか、これじゃあキリがないな…」
 シリカは改造銃を構えながらその魔獣の数の多さに少し呆れたように言った。
 そしてデデデ城の前の水の中からは体格は他のラガルトンシリーズの魔獣と同じだが、手足などがカエルのような姿をしたラガルトンシリーズの魔獣が出現した。
「ギャアァァオン!」
 カエルのような姿をした魔獣はカービィ達に飛びついて攻撃をしてきたが、反撃の前に魔獣達は次々と倒されていく。
 更に数分が経過し、全員の活躍でそれ以外のラガルトンシリーズの魔獣達も数が減りつつあった。

 カービィ達がたくさんの魔獣達と戦っているデデデ城の前から少し離れたところに突然謎の物体が出現した。
 先ほどMTSの研究室でマルクが生み出した新型ウィルス魔獣を投与された実験台の魔獣が入っている宇宙カプセルだ。
 その場所にマルクが偵察・監視用として送り込んだメカ魔獣・パラマターが飛んできた。
 パラマターはどうやら宇宙カプセルの様子を見ているらしい。


 〜ウィザード・フォートレス シアタールーム〜

 パラマターを通してマルクはポップスターに転送した宇宙カプセルの様子をじっくり見ていた。
「新型ウィルス魔獣を注入した生物はどのような変化をするのかもこの僕の目で確かめておかなければな…」
 マルクはそう言うとなにやら魔法をパラマターに送った。
 すると外部からは中の様子が見づらかった宇宙カプセルの内部の映像がシアタールームのスクリーンに映し出された。
 マルクは魔法でパラマターを透視できるようにしたらしく、そのまま様子を見ることを続けた。
 宇宙カプセル内にいた魔獣の変化はすぐにおきた。
「ウ…ウグオォォ……」
「ついに来たか!?」
 新型ウィルス魔獣を投与されたザコ魔獣は身体が肥大化、筋肉が膨れ上がっていき、異形の姿へと変化していった。
 マルクはそのスクリーンの映像に釘付けとなった。
 そして、新型ウィルス魔獣を投与されて異形化した魔獣は怪力で宇宙カプセルを破壊して自ら脱出。
 その際に魔獣は飛び散った部品の中から太くて長めの鉄パイプを拾ってそのままどこかへ歩き、スクリーンの映像から姿を消した。
「奴を追うか…もし星の戦士達の元へ行かなかったら僕のほうで誘導するようだな」
 マルクは魔法でパラマターを遠隔操作し、異形化した魔獣の後を追わせた。

 ラガルトンシリーズの魔獣達と戦っていたカービィ達は敵の数の多さに少し疲れ始めてきており、敵を倒すペースが落ちていた。
 ラガルトンシリーズの魔獣は敏捷性に優れているため、疲れて始めているカービィ達では攻撃を当てることが少し困難となっていた。
「くっ、ちょこまかと!」
 ソードナイトとブレイドナイトが剣による攻撃を当てようとするが、ラガルトンシリーズの魔獣の一体はジャンプでそれをかわした。
「ソードビーム!」
 カービィは3体いた魔獣にソードビームを放つが、その内の頭と肩の部分が赤い色をしたラガルトンシリーズの魔獣2体には避けられてしまう。
 他の者達も魔獣達の敏捷さには手を焼き、表情に余裕がなくなってきていた。
 そんな中、メタナイト卿が魔獣と戦いつつ他の戦っていた者たち全員にあることを提案してきた。
「皆、私にいい考えがある」
「いい考えってどんな?俺はあまり余裕が無いから簡単に話してくれよ」
 近くにいた魔獣に蹴りを入れつつジョーが答えた。
「その魔獣達を全員で取り囲むようにし、城や村とは反対の場所に1箇所に集めてほしい。それが上手くいったら私がそのときにまた指示を出そう」
「わかりました、難しいかもしれませんがやってみます」
「了解」
「はっ!」
「ぽよ!」
 シリカとナックルジョー、騎士達とカービィはメタナイト卿の指示に従った。
 彼らはメタナイト卿に言われたとおり魔獣達を取り囲むようにし、城や村とは反対のところへ1箇所に集めることに成功する。
「で、これからどうするんだよ?」
 飛び掛ってきた魔獣をバルカンジャブで攻撃しながらジョーがメタナイト卿に聞いた。
「全員避けろ!!巻き込まれて一緒に吹き飛ばされても知らんぞ!」
「え!?」
「ぽよ?」
 ゴオォォォォォォォォッ!!
 メタナイト卿は突然叫ぶと、パワーをチャージした宝剣ギャラクシアから1箇所に集まっている魔獣達に向かって、太くて強力な金色の破壊光線を放った。
「わあぁっ!」
 その場にいたカービィ達全員はその破壊光線に当たらないように反射的に避けた。
「ギャアアアアアオォォォォン!!」
 1箇所に集まっていた魔獣達にギャラクシアから放たれたその破壊光線が直撃した。
 激しい光が収まってカービィ達は周囲を見渡すと魔獣達は全員消えており、周りの地面は削られて地形が先ほどと変わってしまっていた。
 全員がすさまじい迫力の前に言葉を失っていた中、戦いを見守っていたフームが口を開いた。
「今のもギャラクシアによるものなの…?」
「うむ、今の技は『エクスプロージョン・ザ・ギャラクシア』…。ギャラクシアに宿る力を使って強力なエネルギー波を放つ攻撃だ」
 メタナイト卿がフームが聞いたことについて解説をする。
「さすがですね!」
「やっぱ宝剣ギャラクシアはタダモノじゃないよなぁ〜」
 アックスナイトとブンが感心したように言う。
「ちぇっ、またおいしいところを持っていきやがって」
「でもいいじゃない、ジョー。魔獣を倒せたわけだし」
「それはそうだけどさぁ…」
 少し拗ねているジョーと魔獣が倒されてほっとしているシリカ。
「じゃあ皆、早く城に帰って…」
 すでに気がつくと日が暮れていた。
 そしてフームがそう言って皆で城のほうに戻ろうとしたそのとき、ブンがこちらに向かってくる何かに気づき、それを見ていた。
「ね…姉ちゃん、何あれ……?」
「え?」
 カービィ達のところに2足歩行の大男のような姿をし、右手には太くて長い鉄パイプを持っている得体の知れない謎の存在がこちらにゆっくりと歩いて近づいてくるのだ。
 そしてそれはなにやら唸り声を上げている。
 不審に思ったメタナイト卿とシリカ、騎士達はそれぞれの武器を構え、ナックルジョーは身構えた。
「あれは…魔獣なのか?だが雰囲気がどことなく今までの奴と違う気が…」
 ナックルジョーは本能的に何かを感じ取っていた。
 そう、こいつこそがマルクによって魔獣に新たに開発した新型ウィルス魔獣を投与したことによって誕生した新しいタイプの魔獣だったのだ。
 グロテスクな姿をしたその魔獣は右手に持った鉄パイプを振りかぶったままカービィ達のところへ近づいてくる。
「ふっ!!」
 バババババッ!
 魔獣に最初に攻撃をしたのはシリカ。改造銃をマシンガンの形態にし、魔獣に発砲した。
 だが、効果が薄いのか全く効いていないのか、魔獣は構わずこちらへ向かってきた。
「グガアオォォ!!」
 魔獣は右手に持つ鉄パイプを素早く振り下ろしてきたが、カービィ達はそれを何とか避けた。
 だが、鉄パイプが振り下ろされた地面にはヒビが入っており、その場にいた者達はその威力の高さに内心ゾッとしていた。
「皆、あの鉄の棒に気をつけて!!近くで戦ったらあれに吹っ飛ばされちゃうわ!」
 フームがカービィ達に忠告した。
 その忠告を聞き、アックスナイト、トライデントナイト、ジャベリンナイトがそれぞれの武器を投げる、または撃って順番に攻撃した。
 しかし、それらの攻撃は全て魔獣の鉄パイプで弾かれてしまった。
「ゲゲッ!あれはどんだけ硬いんだ!?」
「くっ!」
 投げつけた武器が鉄パイプで弾かれたのを見て驚くアックスナイトとトライデントナイト。
「(鉄パイプ?ならばワシの怪力で…)」
 そう考えていたのは力持ちのヘビーナイト。
「うおぉぉぉぉ!!」
「え?」
 突然ヘビーナイトは魔獣のほうに向かって走り出した。
 『接近戦をしてはならない』と思っていた周りの者達その行動に驚かされる。
「ガアオォォォ!」
 走ってきたヘビーナイトに魔獣は鉄パイプを振り下ろす。
 ガギィン!!
「ぐっ!」
 鉄パイプによる一撃をヘビーナイトは手で受け止める。金属音が鳴り響いた。
「グルルルル…」
 ギリギリギリ…
 ヘビーナイトは受け止めた鉄パイプを手から離さず、より強く掴んだ。
 魔獣のほうも鉄パイプからヘビーナイトを振り払おうと力を入れている様子だった。
 すると魔獣の持っている鉄パイプが徐々に形が変わっていき、曲がり始めていった。
「ふん!」
 魔獣が持っていた鉄パイプが曲がって武器として使い物にならなくなったところを見てヘビーナイトは突然鉄パイプから手を離し、魔獣を巨大剣で斬りつけた。
 魔獣は手から鉄パイプを離し、巨大剣で斬りつけられて大きく怯んだ。
「今だ!!」
 ヘビーナイトの活躍で怯んで倒れそうになっている魔獣にメタナイト卿は素早く近づいた。
「はあっ!」
 グサッ!バチバチバチッ!
「ガオオォ!」
 メタナイト卿はギャラクシアを魔獣の身体に突き刺し、その敵の体内に高圧電流を流す攻撃をした。
 そしてナックルジョーとシリカの二人が飛び出し、二人で同時にジャンプをして空中からそれぞれジョーは拳から気弾を、シリカは改造銃からのミサイルを撃つ。
 それらを浴びて弱りきって地面に倒れた魔獣にソードカービィがソードビームを放った。
「グアアアアオオオ!!」
 魔獣はソードビームを浴びると身体がスパークし、大爆発を起こして倒された。
「終わった…のか?」
「そうみたいだな」
「いつの間にか日も暮れてるし…今日はもう休みましょ?」
「ぽよ〜!」
 なんとか魔獣を倒してナックルジョーとシリカ、カービィや他の一同は安心し、フームが提案したとおりデデデ城にひとまず帰って休む事にした。


 MTSの本拠地にいたマルクはカービィ達と実験台の魔獣の戦闘の様子を全てパラマターを通して全て見ていた。
 そしてモニターの電源を消して考え事をしていた。
「(ふぅん…。やはりまだ未完成だから戦闘能力あの程度か……。しかしカービィ達に傷一つつけることができなかったというのは少しガッカリしたな…。もっと『プロジェクトG』の『G』の由来である『神のような完璧な生命体』を作り出す為に研究を続けなくてはならないということか。それとラガルトンの未完成品は特に問題は無かったからそのうち実戦に使ってみるとするか…)」
 マルクは今回送り込んだプロジェクトGによって生み出した魔獣には少し低い評価を、ラガルトンの新型にはある程度の評価をつけた。
「(また忙しくなりそうだな、今日もこれから研究室で魔獣の研究…とくに新型ウィルス魔獣関連を進めていくとしよう…)」
 マルクは再び転移魔法(テレポート)で研究室へ向かった。




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