副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第20話・その2
〜進化する怪物〜



 デデデ城内には異形の魔獣が生み出し、ばら撒いていくカブトガニのような小動物が大量に発生していた。
 城の各地にいるワドルディ兵士達は火炎放射器でそれを焼却・排除しつつ魔獣の捜索を続けていた。
 カービィ、フーム、ブンも小動物の排除はメタナイト卿に任せている。
 メタナイト卿がギャラクシアで周囲の小動物を切り裂いていく。
「この小さいのもあの魔獣が生み出しているのかな?姉ちゃんはどう思う?」
「う〜ん…確かにどこから沸いてきているのかわからないわね………」
 因みに、この小動物自体は先ほどワドルディ達がジェクラの姿をした魔獣と
 戦っていた際にもいたのだが、カービィやフーム達が現場に駆けつけたときは
 そのときにいた小動物達はすでにワドルディ達によって片付けられていた為、
 カービィやフーム達が小動物を目にすることは無かった。
 その為フーム達は異形の魔獣が生み出しているものと完全に断定できるわけではなかった。
 メタナイト卿が周囲の小動物を全滅させたとき、3人に一つ提案をした。
「なるほど、そうか。3人とも、私の話を聞いてくれ」
「メタナイト卿、話って?」
「ジョーやシリカ、魔獣の捜索は地上はソード達に任せ、我々は城の地下の方を探すことにしよう」
「そうね。城の隅々まで探さないとね」
「ぽよ!」
 カービィとフームはメタナイト卿の提案に賛成し、ブンも頷いた。
「うむ。では城の中庭の噴水のところから城の地下へ行こう」
 カービィ達4人は城の外に出て、中庭のところの噴水を開き、かつて宇宙戦艦ハルバードの格納庫に向かったときのように地下へ行くエレベーターへ乗った。
 だが、エレベーターは前回のHN社最終決戦時に乗ったときと全く違うものになっていた。
「え?な、なんだよこれ?前乗ったときこんなのだったっけ?」
 それを見て最初に口を開いたのはブンだった。
「ぽよ?」
「なんだか随分違うものになっているけど…」
 フームやカービィもその変わり様に首を傾げている。
 そんな3人にメタナイト卿が説明をし始める。
「そなた達は知らなくても無理はない。HN社を倒してすぐに陛下が自分の趣味で地下のものを色々と作り変えてしまったようでな。地下へ続くこのエレベーターは前よりも広く大きくなり、ターンテーブルと列車が追加されたのだ」
「デデデの奴、また変なことに金を使いやがって…」
 メタナイト卿からデデデの話を聞き、ブンは呆れたように言った。
 メタナイト卿が説明したとおり、デデデはHN社壊滅後、『退屈だから』という理由で城の地下関連のものを大幅に改装した。
 ハルバード格納庫に続くたくさんの村人が乗れた巨大エレベーターは、列車ターンテーブルつきでなおかつ更に前の3倍くらいの大きさになり、より多くの人数が乗れるようになった超巨大エレベーターに改造され、使う用途は全く不明ではあるが現実世界で言うディーゼル機関車のような形をした黄色い一両編成の列車(地下鉄と思われる)が配置されているのだ。
 このほかにも前述のとおりデデデは地下を改装したようで、この超巨大エレベーターはほんの一部に過ぎないらしい。
「なんか趣味悪いような気もするけどとにかくこれで早く地下に降りようぜ」
 と言ったブンが最初に乗り、あとにカービィ、フーム、メタナイト卿が続いた。
 そしてメタナイト卿が列車の近くにあったスイッチを押すとアナウンスが流れた。
『ターンテーブルガカコウシマス、オノリノカタハオイソギクダサイ。ターンテーブルガカコウシマス、オノリノカタハオイソギクダサイ』
 アナウンスが2回流れた後、カービィ達4人を乗せた超巨大エレベーターは地下へ向かって下降し始めた。

 カービィ達4人が超巨大エレベーターに乗って城の地下へ向かった直後、異形の魔獣が地上の中庭に現れた。
 それを目撃した複数のワドルディ兵士達が魔獣との戦闘を開始する。
 ババババババババッ!
「グオオオオオオオッ!」
 ドス!!!!
 ワドルディ兵士達はマシンガンを魔獣に向かって撃つが、魔獣にはやはり効果が殆ど無く、彼らは魔獣の右腕を振り回す攻撃に跳ね飛ばされてしまう。
 ボオォォォォォッ!!
 一人のワドルディ兵士が魔獣の生み出した小動物を焼き払う際に使っていた火炎放射を異形の魔獣に浴びせた。
「グッ!グウウウウウッ!!」
火炎放射は異形の魔獣にかなり効いているらしく、魔獣は苦しみ始めた。
 ヒュン、ボオオオッ!
 また火炎放射器を使ったワドルディ兵士とは別のワドルディ兵士が偶然手に持っていた焼夷手榴弾を魔獣に投げつけた。
「オ゛ォォォォォォ!!」
 異形の魔獣は焼夷手榴弾の攻撃にも大きく怯み、身体が燃え上がった。
 すると魔獣は身体の火を消そうとしたのかどうかはわからないが、噴水の水に身体を突っ込んだ。
 だが魔獣が倒れこんだ所為で噴水が破壊されてしまった。
 そして…。
「ウウウウウウウウ!!」
 異形の魔獣は壊れた噴水の下にあった先ほどまで超巨大エレベーターが止まっていた場所に倒れた。
 だが、超巨大エレベーターはカービィ達が使っている為そこには何も無く、大きな穴だけが開いている状態となっており、魔獣はそのまま地下へ真っ逆さまに落ちていった。
 戦っていたワドルディ兵士達は穴を覗き込んだ後、何かを話した後、
 その場から立ち去っていった。

 カービィ達4人はターンテーブル付き超巨大エレベーターで地下に降りている最中であった。
 このエレベーターはどうやら上昇・下降速度共に遅いらしく、ゆっくりと降りていた。
 そしてカービィ達4人はターンテーブルの真ん中に配置されている列車の車内で休んでいた。
「このエレベーター遅すぎじゃないか?姉ちゃん」
「うん、前に乗ったときよりもだいぶ遅いわね…」
 フームとブンはエレベーターの速度の遅さがあまり気に入らないようであった。
 一方カービィは列車の窓からじっと外を見ている。
 外は地下である為か明るくする為の電灯が昇降路のあちこちに付いている。
 景色はエレベーターが下降している為、昇降路内についた電灯がまるでどんどん上昇していくような光景となっていた。
 メタナイト卿はいつものように身体の下半分をマントで覆って何もせずただ突っ立っている。
「ねぇ〜、まだなのかぁ?メタナイト卿〜」
「ぽよ〜」
 退屈しているブンとカービィがメタナイト卿に向かってそう言った。
「…まだまだ時間はかかりそうだ」
「はぁ〜…」
 メタナイト卿の答えにブンは溜息をついた。
 だがそのとき。
 ヒュウゥゥゥゥゥゥゥゥ、ドスゥゥゥン!!
「うわあああっ!」
 突然列車の上に何か降ってきたらしく、列車内はその衝撃で大きく揺れた。
 アクシデントにカービィ、フーム、ブンはパニックとなってしまう。
「グルルルルル…」
「!!!」
 大きな唸り声が聞こえ、カービィ、フーム、ブンの3人はゾッとした。
「ま、まさか!」
 メタナイト卿も突然の出来事に驚いているようであった。そして次の瞬間。
 ドゴォォォォォォン!
 列車の天井を一部突き破って巨大な爪の生えた右腕が出現した。
「わああああっ!」
 カービィとフームとブンはその場で床に伏せた。
「私が外に出て様子を見よう!カービィ達は外に出ないでくれ!」
 メタナイト卿はカービィ達3人に指示を出しつつギャラクシアを片手に列車のドアから外に出た。

「な…なんということだ…」
 メタナイト卿が外の様子を見に列車内から出ると列車の屋根の上にどういうわけか異形の魔獣が乗っていた。
 異形の魔獣は先ほどのワドルディ兵士達の攻撃でここへ落ちてきたのだが、そんなことをその場にいなかったカービィ達4人が知るはずも無い。
「ウオォォォォォォォ!!!!」
 異形の魔獣は雄たけびを上げると屋根の上でジャンプし、メタナイト卿の前まで降りてきた。
 超巨大エレベーターをバトルフィールドに、メタナイト卿と異形の魔獣の1対1の戦いが開始された。
「うおおっ!」
 先手を取ったのはメタナイト卿。異形の魔獣に斬りかかる。
 ズバッ!
 異形の魔獣はギャラクシアによって切りつけられたが、傷はちょっとした切り傷程度で傷は浅く、その上驚異的な回復能力ですぐに回復した。
「ガオオオッ!!!」
 次は異形の魔獣が右腕の巨大な爪でメタナイト卿を切り裂こうとする。
「ぐっ!」
 ガギイィィィィン!
 メタナイト卿は爪攻撃をギャラクシアで辛うじて受け止めた。
「はっ!!」
 メタナイト卿は魔獣を弾き飛ばし、大きな隙ができた魔獣に必殺技を撃ち込む体勢に入る。
「ソードビーム!!」
 ビュン!!
 ギャラクシアから三日月状の光刃を放つ技・ギャラクシアソードビームが異形の魔獣に向かって放たれた。
「グオオアア!」
 ピシュン!!
 だが異形の魔獣は素早く反応し、右腕でギャラクシアソードビームを打ち消してしまった。
「う…嘘だろ?前にギャラクシアを奪いにやって来た魔獣を一撃で倒した技が効かないなんて…」
 列車内から戦いを見ていたカービィ達3人の内、ブンは驚きを隠せなかった。
 ブンの言う『前にギャラクシアを奪いにやって来た魔獣』とはHN社がかつてポップスターに送り込んだ魔獣・キリサキンの事である。
 キリサキンはギャラクシアを手にしたソードカービィが撃ったギャラクシアソードビームによって倒された魔獣であるが、そのキリサキンも相当な戦闘力を誇っていた強敵とも言える存在であった。
 MTSが動き始めてからギャラクシアソードビームが通用しない魔獣にローナ女王を襲ったアイアンマムがいたが、アイアンマムは身体が頑丈な超鋼鉄製のボディで覆われていた為、効かなくても不思議ではなかったので周りが特に驚く事もなかった。
 だが、今回現れた異形の魔獣はキリサキンのように生身であるはずなのに、ギャラクシアソードビームでも傷一つつけることができないということになった為、カービィ達は驚愕していた。
 だが、メタナイト卿はその異形の魔獣の強さに屈せず、戦いを続ける。 「はあっ!!」
 メタナイト卿が斬りつけると異形の魔獣は瞬時に回復し、次にメタナイト卿がギャラクシアソードビームを出すと異形の魔獣はそれを打ち消し、異形の魔獣が爪を振り下ろすが、メタナイト卿はギャラクシアでそれを受け止める。
 それが2〜3回ほど繰り返された。
 だが、このときメタナイト卿はあることを思いつく。
「(斬るのが効かないのであれば…)」
 メタナイト卿は弾いて隙のできた異形の魔獣に向かってギャラクシアソードビームよりも威力は低いが隙が少なく、連射も可能で、なおかつ敵を『斬り裂く』のではなく敵を『燃やす』技である波動斬りを3発連続で放った。
 すると…。
「グアアアアオオオオッ!!!」
 波動斬りを3発浴びた異形の魔獣は全身が燃え上がり、苦しみだした。
「そうよ!あの魔獣は火に弱いのね!!」
「いいぞぉ!そのままやっつけろ!!」
「ぽよぽよ〜!!」
 列車内では魔獣が火に弱いことに気づいたフームとメタナイト卿が有利になった事で嬉しくなっている
 カービィとブンが応援をしている。
 先ほどワドルディ兵士達も行っていたが、どうやら異形の魔獣は火に弱かったらしく、波動斬りは魔獣に対して相当なダメージとなった。
「オオオオオオッ!」
 魔獣は苦しみながらも巨大な右腕でメタナイト卿に攻撃をする。
「ふっ!」
 メタナイト卿は最低限の動作で攻撃をかわすと魔獣の無防備となった右腕にギャラクシアを振り下ろした。
「うおおっ!」
 ザブシュッ!!!!!ボトッ、ブシャアアアア!!
「ガアアアアアアウッ!」
 ギャラクシアの一撃が弱っていた異形の魔獣の右腕を斬り落とした。
 そして魔獣の傷口からは赤い血が吹き出した。
 メタナイト卿は右腕を失って苦しむ異形の魔獣に向かって走っていき、跳躍した。
「うりゃあああああっ!!」
 ザクリッ!!!!
 跳躍したメタナイト卿は異形の魔獣の顔にギャラクシアを力いっぱい突き刺す。
「ギャアアアアオオオオオオ!!」
 異形の魔獣はメタナイト卿の攻撃が強烈な一撃だったのか、悲鳴を上げた。
 そしてメタナイト卿はギャラクシアを異形の魔獣の顔面から引き抜く。
「グ…ウウウ…」
 ビュン!
 深手を負った異形の魔獣は空高くジャンプし、超巨大エレベーターから逃げ出した。
「やったあ!!」
 魔獣が逃げ出し、メタナイト卿が勝った事を確認した列車内のカービィ、フーム、ブンは大喜びしている。
 だが、エレベーターはまだ止まらず、ゆっくりと下降し続けていった。

「それで、メタナイト卿達や魔獣は地下に?」
「はい、ワドルディ達から報告によるとそのようです」
 城のある通路ソードナイトやヘビーナイト達といった騎士達がワドルドゥ隊長にメタナイト卿と魔獣がどこへ行ったのか聞いていた。
「メタナイト卿達や魔獣が地下にいるのであれば、ジョー殿やシリカ殿も地下にいるのでは?」
「う〜ん、わからないけど行ってみる必要はあるかもしれないダス」
「ならばエレベーターで地下へ行くぞ!」
「ラジャー」
 騎士達は超巨大エレベーターがある中庭の噴水の場所へ向かうことにした。

 カービィ達4人を乗せたエレベーターはあるフロアで止まってしまった。
 とりあえずカービィ達は一旦そこのフロアで降りる事にした。
「あれ?ここってハルバードの格納庫じゃないよな?」
「うむ、ここはデデデ城の電力供給施設だ。ここも陛下によって最近改装させられている」
「それよりもメタナイト卿、魔獣は追わなくていいの?」
「あのエレベーターは速度が遅い。追うにしても時間が掛かるだろう。それに地上にはソード達がいる」
「確かにエレベーターは遅いけど、あの魔獣はとても強いってわかっているのにソード達に任せるの?」
 『ターンテーブルガジョウショウシマス、オノリノカタハオイソギクダサイ。ターンテーブルガジョウショウシマス、オノリノカタハオイソギクダサイ』
「え!!?」
 フームがメタナイト卿にそう聞いた瞬間、アナウンスが流れてエレベーターが上昇し始めてしまった。
「あ〜あ、エレベーターが上に行っちまったぜ…」
「どうするの、メタナイト卿?」
 呆れ気味に上昇していくエレベーターを見つめているブンとこれからどうしていけば良いのかをメタナイト卿に聞くフーム。
「仕方ない、ここのフロアを探そう」
 こうしてカービィ達4人はしばらくデデデ城の地下の電力供給施設に留まることとなってしまった。

 同じ頃、ソード達7人の騎士は魔獣によって破壊されてしまった噴水がある中庭の広場でエレベーターを待っていた。
 そう、彼らがエレベーターを噴水の中のエレベーター乗り場でスイッチを押して上昇させたのだ。
「こないダスね〜…」
 騎士の一人であるメイスナイトはエレベーターの遅さの所為で暇そうに待っていた。
 だがそのとき、そこにいた騎士達全員はエレベーターの昇降路の中からなにかが近づいてくる音を感じ取った。
「おいメイス!なんか近づいてくるのがわかるか?」
 アックスナイトがメイスナイトに聞いた。
「エレベーターじゃないなにかが来るダスね、オヤビンやソード、ブレイド、トライは?」
「ワシにもわかる。今こちらへやってきて…」
 ビュン!!!
 ヘビーナイトがそう言いかけた瞬間、昇降路の中からメタナイト卿に敗れて右腕を失い、顔面に深い傷を負った異形の魔獣が現れた。
「あ…あいつが…今暴れているという魔獣?」
「なんかいかにも強そうな感じがするダスね〜…」
「感心している場合じゃないぞ、メイス!」
 突然現れた魔獣に戸惑うアックスナイトと感心しているメイスナイト、そしてそんなメイスナイトにツッコミを入れているブレイドナイト。
「待て、だが様子が変だ」
 ソードナイトが最初に魔獣が怪我をしている事に気付く。
「確かに、右腕と顔をやられているな…。まさかメタナイト卿が?」
 ヘビーナイトもソードナイトと同様に魔獣が怪我をしている事に気付き、これをやったのはメタナイト卿ではないかと推測した。
「なら丁度良い、弱っている今のうちにあの魔獣を倒すか」
 トラインデントナイトは手に持った三つ叉の槍を構える。
 だが、異形の魔獣は騎士達の方を見た後、方向を変えて城の方へ素早く逃げ出した。
「ふん!逃げ出すとは情けない…後を追うぞ!」
「おう!」
 ヘビーナイトの呼びかけに他の騎士達は答え、魔獣の後を追った。

「どうなっておるぞい!何故見ず知らずの魔獣がこっちで暴れておるぞい!城を壊されちゃあ話にならないぞい!」
「ご…ごめんなさい陛下、これには深いわけがありまして…」
 デデデはデリバリーシステムを起動し、MTSに対してワドルドゥ隊長から聞いたかってに城を荒らし回っている魔獣のことについて文句を言っていた。
「なんでもいいから奴を止められる強い魔獣をいっぱいよこすぞい!」
「え?…あ、ちょっと待っててください、ちょっとお兄ちゃんに相談してみます」
「できるだけ早く戻ってくるぞい」
 グリルはそういうと一旦デデデとの通信を切った。


 〜ウィザード・フォートレス 司令室〜

「ねぇねぇ、お兄ちゃん。陛下が『あの魔獣倒せる魔獣をちょうだい』って言ってきたけど、そんな魔獣ってウチにあるの?」
 グリルは先ほどデデデに言われた事に関してマルクに相談していた。
「ゴッドを倒せる魔獣なんて今の所いるわけないだろう?それに奴は元々『魔獣を倒す為の魔獣』なのだからな。でも一つまた面白い実験をしたくなったんだ」
「『面白い実験』〜?なに、それ?」
 グリルはマルクその発言が少し気になっていた。
「うん、現在パラマターを通して奴の戦いをお前やドロシアと全部見てきたわけだが、ここで奴の力を試したいと思うんだ」
「力を試す?」
「そうだ。そして陛下にもあの魔獣のすごさとHN社よりも僕達の方が優れている事を見てもらうんだ」
「『HN社よりも私達の方が優れている』って当然の事じゃない?」
「そうじゃなくて。陛下の目の前でそれを証明するんだよ。グリル、魔獣保管室にはHN社の魔獣であったキリサキンとチリドッグ、レイゾウがそれぞれ一匹ずついただろう?その3体を今からここに持ってきて、陛下のところへ送ろう」
「お兄ちゃんの考えている事が大体わかったような気がするわ。いいよ、すぐに持ってくるね♪」
 グリルは言われたとおりすぐにキリサキン、チリドッグ、レイゾウの3体を司令室に持ってきて、デリバリーシステムに3体を乗せた。
 そしてデデデのところへ通信を入れ、司令室の画面にデデデの姿が映った。
「魔獣は用意できたかぞい?」
「ええ、もちろん。3体来ますので注意してくださいね♪」
 グリルは司令室のスイッチを押し、魔獣達を転送した。


 〜デデデ城 デリバリーシステムの部屋〜

デデデの元には現在MTSが暴れている異形の魔獣…つまりはゴッドを止めるべく(正確にはマルクがゴッドの力を試す為)送り込んだHN社の魔獣であるキリサキン、チリドッグ、レイゾウが転送された。
「こいつらは確かHN社の…」
「ええ、あの魔獣はどうやら極端な熱や冷気に弱いらしいので彼らを選んだのです♪」
「あの化け物が熱に弱いとかどこで知ったんだぞい?」
「(ギクッ)」
 グリルは適当なことを言っていた為、デデデにそこを突っ込まれて返す言葉に困った。
「え!?えぇ〜〜〜っと…そのぉ…。じ、事前に調べておいたんですよ!じゃ、じゃあ私はこれで〜」
 グリルは通信を切り、ディスプレイから消えた。
 デデデは早速届いた魔獣達に命令をする。
「お前達!今この城には怪しい魔獣がおる。見つけ次第コテンパンにやっつけてやるぞい!」
「グオオオオオッ!」
デデデの命令を聞いたキリサキン、チリドッグ、レイゾウの3匹の魔獣はデリバリーシステムの部屋から出動した。
「う〜〜ん、でもわしもなんだか奴らの戦いが見たくなったぞい。そうだ!こういうときのエスカルゴンのあれがあったぞい」
 するとデデデはどこからかエスカルゴンの作ったメカホッパーと、それを操作するリモコンを取り出した。
「奴らの行ったところへついていくぞい」
 デデデはメカホッパーを使って魔獣達3匹を追跡することにした。

デデデ城のある通路では騎士達が逃げ出した異形の魔獣を魔獣が生み出す小動物を処理しつつ追いかけている最中であった。
「あそこにいたぞ!」
 ソードナイトとブレイドナイトを先頭に騎士達が異形の魔獣を追い詰めた。
「もう逃がさん!」
「覚悟するダス!」
 ブレイドナイトとメイスナイトが武器を構えて異形の魔獣に言い放つ。
 他の騎士達もそれぞれの武器を構えている。
「ウオォォォォォッ…」
 するといきなり異形の魔獣の姿が変化し始めた。
 斬りおとされていた右腕が前ほどの大きさはないが復活し、メタナイト卿によってボロボロにされた顔も新しくなり、完全とはいえないが回復した。
「なんということだ…」
 ヘビーナイトはその回復能力の高さに驚かされた。
 他の騎士達も驚きを隠せないでいる。
「だがここで退くわけにはいかん、いくぞ!」
「おう!」
「ラジャー」
 ヘビーナイトの声と共に騎士達は武器を構え、攻撃の態勢に入る。
 ソードナイトとブレイドナイトがコンビネーション攻撃で魔獣を翻弄し、アックスナイトとトライデントナイト、ジャベリンナイトが遠距離から攻撃を仕掛け、ヘビーナイトとメイスナイトがパワーを生かした強力な攻撃を与える。
 それらの繰り返しで魔獣を追い詰めていく。
 そしてその一連の行動を数回繰り返したところで…。
「ぬぅん!!!」
「ウオオオッ!」
 ヘビーナイトの攻撃で魔獣は怯み、またその場から撤退する。
「逃げた!?」
 傷ついた魔獣はまた素早い動きで別の場所へ逃げ出した。
「くっ…見失った」
 トライデントナイトは敵を見失い、悔しそうな発言をする。
「ボス!奴を見失った今、ここは手分けして探そう!」
「おう、それは良い考えだ。ではあの魔獣をそれぞれ一人ずつかつ別の場所を探すぞ」
 ヘビーナイトが言うと同時に騎士達はそれぞれ7手にわかれて魔獣の捜索を開始した。

 騎士達に一回も攻撃できずに傷つき、敗走した異形の魔獣…ゴッド(以後、ゴッドの表記で統一する)はデデデ城のある広場にやって来た。
 だがしかし、ここでゴッドを待ち受けていた存在がいた。
 先ほどMTSからデデデに転送されたHN社の魔獣達である。
「パオーーンッ!!」
 シューーーーッ!
 まず最初にレイゾウが冷気をゴッドに浴びせてきた。
「グウゥゥ?」
 ゴッドは足元が凍って身動きが取れなくなる。
「ガオオッ!」
 ゴオオッ!
 続いてチリドッグが動けなくなったゴッドに火球を飛ばした。
「グオオオオオオオオオッ!」
 ドッコーーーーン!!
まだ火に弱いと言う弱点は健在だったのか、ゴッドは爆炎に包まれて苦しみだし、身体が爆発した。
「グルルル…」
 キリサキン、チリドッグ、レイゾウは炎を見つめていた。
 しかし、その中から何かが出てくることに気付き、すぐに警戒心を強めた。
「ハアァァァァァァ…」
 炎の中から現れたのは、なんと先ほどとはかなり違う姿に進化を遂げたゴッドであった。
 体格は先ほどよりも一回り大きくなり、腕は4本に増え、そのうちの2本は後ろに回り、翼のような形状となっている。
 進化したゴッドは独特の声を出しながらそのままキリサキン達の元まで歩いてくる。
「ガオオオオオオオオオッ!!」
 まず最初にキリサキンがゴッドに襲い掛かる。
 キリサキンは突進攻撃を仕掛けるが、簡単にゴッドに避けられてしまう。
 続いて両手の鎌で切り裂いてやろうとゴッドに攻撃をする。
 だがゴッドはやはり難なく避け、空中で回転しながら尻尾でキリサキンの顔面を鞭打つ。
 このときチリドッグも火球で攻撃をしてきたが、ゴッドは全て避けてしまった。
「ギュゥン!!」
 シュン、ザクリィッ!!
 そしてゴッドは空中から急降下をしつつ爪をキリサキンに向かって振り下ろした。
「グ…アァ……?」
 キリサキンは自分が何をされたのかが理解できなかった。
 しかし、まもなくキリサキンの身体が真っ二つになり、血を吹き出しながら爆発を起こした。
「パオオオオン!」
 レイゾウが次はゴッドに攻撃を仕掛ける。レイゾウは冷気を鼻から噴射してゴッドを攻撃。
 ゴッドは冷気を受けたが、効いている様子が無い。
 次の瞬間、ゴッドは素早い動きでレイゾウの目の前にやってきて回し蹴りを繰り出した。
 ブゥン、バキィッ!!!
「パオオオオン!!」
 回し蹴りでレイゾウの牙が吹っ飛び、レイゾウは悲鳴を上げる。
 チュイイイイイン、ドシュンッ!!
 牙を折られて戦いどころではなくなっているレイゾウにゴッドは追い撃ちをかけるかのように新しい攻撃手段なのだろうか、右の掌から緑色のエネルギー弾を作り出し、レイゾウに向かって撃ち出した。
 ドッカーーーーン!!
 緑色のエネルギー弾が命中したレイゾウは身体が粉々になって消し飛び、倒されたようだった。
「ガオオオオオン!!」
 最後に残されたチリドッグがゴッドに戦いを挑む。
 ゴオッ、ゴオオッ!!
 チリドッグは距離を取って火球でゴッドを攻撃する。
 火球は全てゴッドに命中したが、ゴッドは全く怯む様子を見せず、チリドッグに近寄ってくる。
 どうやら進化をしたときに炎への耐性を手に入れたようだ。
「グルルル…」
 チリドッグは攻撃が効かない事に焦っていた。
 焦っているチリドッグなどお構いなしにゴッドは跳躍し、ドロップキックをチリドッグに向かって繰り出した。
「ガオオオッ!!」
 ドロップキックはチリドッグの腹部に命中、チリドッグは吹っ飛ばされ、そのまま壁に激突してめり込み、気絶してしまった。
 シュウウウウウウウ、ドオォォォォォォォォッ!!
 壁にめり込んでのびているチリドッグにゴッドは容赦なく、また新しい攻撃手段なのだろうか、口から青白い破壊光線を吐きつけた。
 ゴオオオオオオッ、ドカーーーーーーーン!!
 青白い破壊光線を浴びたチリドッグは大爆発を起こし、部屋一面が紅蓮の爆炎に包まれた。

 〜デリバリーシステムの部屋〜

「あーーーーっ!!メカホッパーが壊されたぞい!」
 デデデはゴッドとHN社の魔獣の戦いの様子をメカホッパーで見ていたが、チリドッグが起こした大爆発に巻き込まれたメカホッパーが破壊され、映像が見れなくなってしまったのだ。
「ぐぬぬぅ…あの魔獣の強さは恐ろしいぞい…。いや、でもあの魔獣なら本当にカービィを…。ぐふふ、城を壊されては少し困るが、カービィを倒せるならまあ良いかぞい♪」
 デデデはゴッドならカービィを倒せるのではないかと勝手に思い、ゴッドの強さに満足し始めた。




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