副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第20話・その4
〜グリルVS星の戦士〜



 シリカと合流したカービィ達はゴッドの捜索を続けていたが、またもやカブトガニのような小動物がカービィ達を襲ってきた。
 それらの小動物をメタナイト卿、ナックルジョー、シリカの3人が撃退し、一行は先へ進む。
 そして、カービィ達一行はついに奥の広場のような場所でカブトガニのような小動物を撒き散らしていたゴッドと遭遇する。
「あ!やっぱりあの小せえ奴はあいつが生み出していたんだよ、姉ちゃん!」
「ええ!」
 予想が当たったブンとフームがゴッドを見ながら言う。
「あの魔獣はまた新たな変化を遂げている…」
「さっきとまたえらく変わっちまったな…。はっきり言って冗談キツいぜ…」
 メタナイト卿とナックルジョーは先ほど戦ったときとまた姿を変えたゴッドに驚かされる。
「グオオオン!」
 ゴッドは先ほどの姿よりも更に高くジャンプできるようになったのか、ジャンプをして天井に張り付く。
「あんなこともできるようになったのか…。よし、二人ともちょっと待っててくれ」
「え?ちょっ…ちょっと!あんた何する気なの?」
「待て、ナックルジョー!」
 ナックルジョーが一人でゴッドのところへ向かい始め、シリカとメタナイト卿の二人は彼が何をしようとしているのかわからず、止めようとする。
 だが、ジョーは二人を無視して天井にいるゴッドに向かって拳から気弾を撃った。
 ドシュン、ドォォォン!
「グアオアアオオオン!!」
「よし!」
「一体何のマネだ?」
 気弾を命中させてガッツポーズを取ったジョーの横にメタナイト卿がやって来て、一体何をしたのかを聞いた。
「奴に実体のない飛び道具が効くか効かないかを試したんだ。さっきとは違ってあいつにそれらの攻撃は通用するはずだぜ」
「ジョー、なんでわかったの?」
 メインシャフトでの戦いにいなかった為、なんのことだかさっぱりわからないシリカが話に入ってきた。
「あぁ、お前は知らなかったっけ?あいつはさっき…」
「オオオオオオオオオオオオオ!!」
 ジョーがそう言いかけた途端、天井に張り付いていたゴッドが彼ら目掛けて突っ込んできた。
「おっと!」
 メタナイト卿、ナックルジョー、シリカの3人はその攻撃を避ける。
 カービィ、フーム、ブンの3人は危険と感じた為か、メタナイト卿達に言われるより前に物陰に隠れて戦いを見守る事にした。
 そしてジョーはシリカに先ほどの戦いにおいてゴッドが実体の無い飛び道具の類の攻撃を吸収してしまうという話の詳細を説明する。
「なるほど…。ということはその吸収している様子がなかったから通用するとあなたは考えたわけね…」
「そういうことだ。はあっ!!」
 ドォォォン!
「ガアアアアッ!」
 6足歩行になった事により、素早さを増したゴッドにもナックルジョーは的確に気弾を命中させる。
 吸収していないことが判断できた今では得意技が使い放題だ。
 ゴッドは壁や天井を這いずり回ったりしながら星の戦士達3人に攻撃を加えるチャンスを窺っているようだった。


 〜ウィザード・フォートレス 司令室〜

 ウィザード・フォートレスの司令室では今まで監視用の魔獣・パラマターを通じて戦いの全てを見ていたマルクとグリル、ドロシアの3人がいる。
 だが、ここでマルクはまたグリルに緊急指令を出した。
「グリル、メタナイト卿達が今の状態のゴッドを倒したらポップスターの今パラマターを通じて見ている場所に行き、ゴッドそのものを奴らの目の前に現れて回収しろ」
「どういうこと?お兄ちゃん?」
「もうあんな姿になって攻撃手段が減ってしまったゴッドにはなんの魅力も感じなくなった…。だから数日後、僕の手で奴を処分する」
「でも星の戦士の前に姿を現すって、カービィ達の目の前には現れないほうがよかったんじゃないの?」
「今さっきお前も見ていただろう?僕が今こうしていることはカービィ達にまだバレてはいないが、お前が勝手な事をした所為でお前の存在はもう、洗脳から解放されたナックルジョーやシリカはもちろん、カービィやメタナイト卿にも知らされてしまったからな。もう気にしなくていいんだよ」
「あ…そういえばそうだったね!じゃあゴッドが弱ったところで私が回収しに行くよ!」
「じゃあ今回もよろしく頼んだよ。それから僕が今から言う事…ジェクラについての真実を向こうに行ったときに星の戦士たちに伝えておくんだ、いいな?そして今回は回収すること以外の余計な事はするなよ?」
「うん!…でも、さっきは星の戦士と戦って良いって…」
「今回のお前の目的は『ゴッドの回収』だけだ。目的がある以上勝手な事はしないでくれ」
「はーい」
 グリルはマルクの指令を引き受け、マルクからある説明を受けた後、まだ出動するタイミングではない為、もうしばらく星の戦士達とゴッドの様子を見張っている事にした。


 グリルがマルクから直接緊急指令を言い渡されたのと同じ頃、メタナイト卿とナックルジョー、シリカの3人はゴッド相手に奮闘していた。
 ナックルジョーはらくらく気弾をゴッドに当てていくが、メタナイト卿やシリカは素早く動き回るゴッドに攻撃を一発ずつ撃ち込んでいくのがやっとであった。
 特にシリカはそんなジョーを見て「さすがだな」と心の中で感心していた。
 そしてついに…。
 ドォン!
「グオオオオオオオウウン…」
 メタナイト卿、ナックルジョー、シリカの攻撃が同時に命中し、ゴッドをダウンさせた。
 攻撃を受けたゴッドはその場でグッタリとしてしまった。
「やったあ!」
「ぽよ〜!」
 隠れて戦いを見守っていたカービィ、フーム、ブンはメタナイト卿達が勝利したのを見て喜んでいた。
 メタナイト卿、ナックルジョー、シリカもゴッドを倒したことを確認し、ほっとしていた。
 だが、安心していたのもつかの間。メタナイト卿達戦っていた3人がカービィ達のところへ歩いて戻ろうとした瞬間、彼らの間で突然爆発が起きた。
 ドガアアン!!
「!!」
「な…なに?」
 フームは突然起きた爆発にびっくりし、他の者も口には出さなかったがびっくりしていた。
 煙から現れたのは、ナックルジョーとシリカが遭遇した事のある人物……魔法使いのグリルであった。
「ちょっと派手な登場の仕方だったかなぁ…」
「あ、貴方は誰なの?いきなりなんのつもり?」
 今現れた魔法使いがグリルであると知らないフームは彼女に食って掛かった。
 するとナックルジョーとシリカがカービィ、フーム、ブンの元へ急いで駆け寄った。
 メタナイト卿もなにか危険を感じ、同じようにした。
 そしてナックルジョーが何も知らないカービィやメタナイト卿、フーム、ブンに説明をし始める。
「あいつが…この前俺達が話していた……グリルだ」
「な…」
「なんですって?」
 メタナイト卿とフームはジョーの発言に驚愕した。
「ああ、よく覚えていたわねぇ。あんた達2人は洗脳されたときに、そこにいるカービィと同士討ちになって死んでればよかったのに…」
「貴様…!」
 シリカは現れて挑発的な発言をしたグリルに敵意をむき出しにしている。
「悪いけど今日はあなた達と戦いに来たんじゃないのよ。そこにいる魔獣、ゴッドを回収しに来ただけなの」
「ゴッド…?そこの最初は俺の親父に似た姿をしていた魔獣の名前か?」
「似ていると言うか…ゴッドは貴方のお父さん本人よ?」
「な…貴様、証拠は?何を証拠にそんなことを言っている!俺の親父は銀河大戦のときに死んだはずだぞ?」
 グリルは今回自分がここにやって来た目的を話すと同時に衝撃的な発言をそれに混ぜて言った。
 ジョーはそれに喰らいつく。
「証拠?じゃあ今から言う事は全て本当の話よ。嘘はひとつもないということを覚悟しておきなさい」
 グリルは最初にカービィ達にそう注意した後、話を続けた。
「それがねぇ…実は貴方のお父さんの死骸は土葬されていたのをナイトメアの手下たちが掘り返して『何かに使えそう』と考えたナイトメアが冷凍保存をしてたのよ。メタナイト卿、貴方や銀河戦士団のメンバーはジェクラの事を燃やさずに土に埋めたわよね?」
「ああ…燃やす事ができなくてな…」
 グリルがしてきた質問にメタナイト卿が正直に答える。
「そう、それでそのジェクラの死骸はナイトメア要塞が滅びる前に私達MTSの手に渡ったというわけ。それで今回、私達はジェクラの死骸にある実験をしたの」
「実験…?」
 その場にいた者はグリルの言う事に首を傾げる。
「私達MTSは死者を蘇らせるウィルス魔獣を作り上げる事に成功した…。
 そして実験体にナックルジョー、貴方のお父さんであるジェクラを選んだの。そして今ここにいるのが貴方の本物のお父さんの成れの果てってわけ」
「……ぐ………」
 グリルの言った事にカービィ達、特にナックルジョーが激しい怒りを覚えた。
 そして怒ったナックルジョーはグリルの目の前までやってきた。
「貴様…他人の身体をなんだと思ってやがるんだ……!?」
「私達MTSは貴方達星の戦士を殺す為ならなんでもするわよ。卑怯?なにそれおいしいの?」
「くっ……この野郎!!!」
 ナックルジョーはグリル、そしてMTSに対する怒りが爆発し、グリルに殴りかかった。
 だが、そのナックルジョーをシリカが止めた。
「ジョー!グリルとMTSが憎いのはわかるけど、あいつが言ったことを鵜呑みにしないで!」
「うるせぇ!俺は今、あいつをこの手で殴ってやらねぇと気が済まねぇんだよ!!」
 ジョーは自分のことを押さえつけていたシリカを振り払った。
 するとグリルは転移魔法で瞬間移動をし、ジョー達との距離をとる。
「そんなに戦いたいなら今すぐ戦ってあげてもいいわよ?でもあんた達一人ずつじゃ全然相手にならないから、どうしようかなぁ〜……そうだ!」
「??」
 何かをひらめいたようなグリルに全員が注目した。
「この際星の戦士達4人で私と戦ってよ、そうでもしないと手応えがぜ〜んぜんないからさぁ」
「チッ!」
「嘗めやがって…」
 グリルの言ったことにシリカは舌打ちし、ジョーは甘く見られていることに更なる怒りを募らせる。
「そしてあなた達2人は関係ないからこうなってもらうわ」
 するとグリルはカービィを自分の近くにワープさせた後、非戦闘員であるフームとブンを魔法の結界に閉じ込めた。
「こ…これって……?」
「出られないぞ、姉ちゃん!」
「あなた達はそこで星の戦士の惨めな姿をしっかりと目に焼き付けておきなさい…フフフ…」
 グリルは閉じ込められているフームとブンにそう小声で言った。
「カービィ、皆!そんな奴はやっつけちまえ!」
 ブンとフームは魔法の結界の中からカービィ達4人を応援する。
「さあ、楽しいゲームの始まりよ♪私の玩具が勝手にどこかへいっちゃダメでしょう?面白いわ」
 ブゥン、バチバチバチ!
 グリルは星の戦士達4人に向かって挑発的な発言をしながら彼らが逃げられないように、更にこの広場を電気の柵で囲ってしまう。
「カービィ、最初にこれで変身して」
 カービィの隣にいたシリカがどこからか拳銃を取り出し、カービィの口に入れる。
 拳銃を飲み込んだカービィはガンマンカービィへと変身した。
「許さねぇ…!たあっ!」
 最初にグリルに切り込んで行ったのはナックルジョー。
「ふっ、ていっ!」
「ぐあっ!」
 グリルは素早い身のこなしでジョーの突進をかわし、隙のできたジョーの背中にキックを入れる。
 ドォン、ドォン、ドォン!
 次にシリカがグリルに向かって改造銃からミサイルランチャーからミサイルを3連射して攻撃を仕掛けた。
 ボオォォォォォッ!!
 グリルはシリカに対して掌から火球のフレイムボールを5発放ち、そのうち3発はミサイル3発を相殺し、残った2発はシリカに直撃した。
「うあああっ!」
 シリカは身体がフレイムボールの炎に包まれてしまい、全身が燃え上がった。
「ふん!」
 ガシッ!
 そのシリカをグリルは右手で掴み、そのまま自分達の周りを囲むべく自分で出現させた電気の柵にシリカをぶつけた。
 ビリビリビリビリッ!
「あがああああっ!!!!」
 電気の柵に触れてしまったシリカは感電してしまい、グリルが手を放すと床に倒れこんでしまった。
「うおおおおっ!」
 そして、今回初めてグリルと戦うメタナイト卿がグリルに斬りかかって来た。
 バシィッ!!
「!?」
「最強の騎士と伝説の宝剣って、この程度なの?」
 ドシュゥンッ!!
「うわあああっ!!」
 グリルはギャラクシアによる一撃を利き手でない方の左手であっさりと受け止めてしまい、爆弾ブロックを出現させて敵にぶつける技『シュートブロック』でメタナイト卿を吹き飛ばした。
 ビリビリビリッ!
「ぐああっ!」
 メタナイト卿は吹き飛ばされた後、シリカと同じく電気の柵にぶつかってしまう。
 バキュン、バキュン!
 メタナイト卿が吹き飛ばされた直後、ガンマンカービィが手に持ったリボルバー拳銃でグリルを狙い撃つ。
 強力な光弾はグリルの目や足などに的確に命中していくが、グリルは傷つくことなく、ダメージ一つ受けていない。
 そしてグリルは光弾に怯まず、カービィに歩み寄ってくる。
「貴方が私のお兄ちゃんが一番憎んでいる『星のカービィ』…。ナイトメアを倒したと聞くけど、どれくらいの力を持っているのか試したいな」
 カービィは続けてリボルバー拳銃から光弾を撃つが、グリルに効くことはやはり無く、グリルはカービィに掴みかかった。
 そして空中に放り投げると電撃のサンダーレインで追撃をした。
 バリバリバリィ!
「ぽよ〜〜!!」
「カービィ!」
 カービィのピンチにフームとブンが叫ぶ。
「てやあああっ!」
 ナックルジョーがバルカンジャブを撃ちながら再びグリルのところへ向かう。
 グリルは気弾に物ともせず、ナックルジョーに再びキック技を仕掛ける。
「ぐぉっ! があっ! ぐぶっ!」
 グリルの連続キックがジョーに炸裂した。
 だが、ナックルジョーはそれに屈することなく肉弾戦を挑む。
「たああああああっ!」
 グリルとジョーが肉弾戦を展開しているところにジョーを助けるべくシリカが戦いに割り込む。
 シリカは改造銃からナイフを伸ばしてグリルに接近戦を仕掛ける。
 だが、彼女の優れた剣術もグリルの前ではほぼ無意味だった。
 ガシッ!ガシッ!
「しまった!」
「そ〜れっ!」
 ドズゥゥゥン!!
「ぐああっ!」
 グリルはジョーとシリカの攻撃をそれぞれを軽々と受け止めて逆に二人のことを左右の手で掴み、同時に床にたたきつけた。
 グリルの力が強すぎたのか、ジョーとシリカは床にめり込み、身動きが取れなくなってしまう。
 ガシッ!
「ぐ…」
「あ…」
 その二人の頭をグリルは掴み、ジョーを掴んでいる左手からは高圧電流を、シリカを掴んでいる右手からは高熱をそれぞれ彼らの体内に送り込んだ。
「これは耐えられるかしら?今どこかで流行りの雷と炎のダブルパンチよ!…氷が無いのがちょっと残念だけどね」
 バリバリバリバリバリバリッ!!
 ボオォォォォォォォォォォッ!!

「「うあああああああぁぁぁっっっ!!」」
 それぞれ体内に強力な高圧電流と高熱攻撃を受けて内部から焼かれる感覚に襲われたジョーとシリカは悲鳴をあげ、倒れてこれ以上の戦いができない状態になってしまう。
 バシュゥゥゥン!
 バキュン、バキュン!

 ジョーとシリカをダウンさせたグリルにメタナイト卿がギャラクシアソードビームを、カービィが光弾を放った。
 ドガァァァァァン!
 それらはグリルに命中して爆発を起こす。
 だが、グリルはやはりというか、防御姿勢なしでその上まともに正面から受けたにもかかわらず、平然としている。
「あなた達2人とは初めて戦うから少し期待していたけど、所詮はこんなものかぁ〜…。でも、私はまだ楽しませてくれると信じているわよ?」
 グリルはガッカリしたような表情をしたがすぐにニコリと笑い、カービィとメタナイト卿の二人との戦闘を続行した。


 ウィザード・フォートレスの司令室では、パラマターを通じてデデデ城の星の戦士とグリルの様子を見ていたマルクが少しイライラしているところであった。
「グリルの奴…余計なことをいつまでもやっていないで早くゴッドを回収して来い…!」
 そんなマルクに対して横にいたドロシアが声をかけてきた。
「マルク。私がグリルを連れ戻してこようか?お前はデデデやエスカルゴン以外の奴らの前に出るのはマズい……いや、それはお前が一番熟知していたことだったか?それはともかく、私なら奴らの前に出ても大丈夫なはずだろう?」
「…そうだな。お前がグリルを止めてゴッドを回収させ、連れ戻してこい。ついでに一応、奴らに自己紹介も忘れないように。ただ、僕の名前を口にすることは厳禁だということや、今はお前はまだ戦いに出向く必要が無いから戦うのもダメというのは、すでに承知しているな?」
「そのつもりだ」
「じゃあ今すぐ行ってきてくれ」
「ああ」
 ドロシアは自分から現在星の戦士達と戦って本来の頼まれごとを放棄しているグリルを連れ戻そうとマルクに名乗り出た。
 そしてマルクからも頼まれた彼女は転移魔法で一瞬でポップスターへ向かった。


 マルクとドロシアがそんなことを話している間も、カービィとメタナイト卿の二人、そしてグリルの戦いは終わらない。
 カービィがグリルを狙い撃てばグリルはそれを無視してフレイムボールをカービィに撃ち、メタナイト卿がギャラクシアによる攻撃を繰り出せばグリルはサンダーレインで反撃をする。
 お互いそのような攻防が続いていた。
 だが、やはり疲れ知らずなグリルはずっと余裕でいられるが、カービィとメタナイト卿はスタミナが尽きてきていた。
「はぁ…はぁ…お、恐ろしい強さだ…。あのような敵は今までで初めてだ…」
 メタナイト卿はグリルの強さに驚くばかりであった。
「ここでバテてもらっちゃこまるのよねぇ〜……。まだまだゲームはコンティニュー…」
 グリルがそう言いかけた瞬間、彼女のすぐ目の前に彼女に付き従っている魔女・ドロシアが現れた。
「グリル、お前があいつに命じられたことを忘れたか?」
「あ!ドロシア!え?お兄ちゃんに言われたこと…あ!ゴッドの回収だっけ?」
「そうだ。奴は今、お前がなかなか戻ってこないことに少し腹を立てている。私と共に急いで帰るんだ」
 グリルはドロシアのおかげで自分のやるべきことを思い出したようだった。
 だが、突然現れたドロシアと初対面であったカービィ達星の戦士とフームとブンの姉弟は困惑していた。
「あ…あなたは一体何者なの?」
 フームがドロシアに向かって問う。
「…私はドロシア。MTS上層部の一人であり、『絵画の魔女』の通称を持っている」
「絵画の…魔女?」
 通称の意味がよくわからず、その言葉を口に出したフーム。
 ドロシアの事がよくわからないのは周りも同じであった。
 そしてドロシアは話を続ける。
「我々MTSの最終目的はお前達星の戦士を殺して理想の世界を作ることだ。だが、私は今お前達と直接戦うことはしない」
「ぐ…た、戦わないとは……ど、どういうことだ?そして、お前達の理想とする世界というのは、一体………?」
 グリルによってボロボロにされたジョーがなんとか起き上がり、ドロシアにMTSの目的について聞く。
「我々が理想とする世界…それは私にもわからない。グリルの兄であり、MTSの首領でもあるその者の考えは他の者には理解することが難しいものでな…。ただ、奴がこの宇宙から星の戦士を全て消すことが一つの目的であることは間違いないだろう。私がMTSに従っているのはそれを行うことでグリルが幸せになれるとその人物が言っているからであって、それ以外の理由は知っても私は得も損もしないだろうし、興味など無い。それと、私がお前たちと戦わないのはグリルの兄からの命令でもあるが、もし戦ったとしても今のお前たちでは私に太刀打ちすることはできないだろうな」
「…不可能………だと………………?」
 ジョーと同じく、グリルによってボロボロにされたシリカが起き上がり、口を開く。
「そうだ。私やこのグリル、そしてMTSの首領であるグリルの兄といったMTS上層部は、かつてお前たちが戦い、そしてそこにいる『星のカービィ』が打ち破った魔王ナイトメアの数倍以上の力を手に入れているが、お前たちが今まで送られてきた魔獣に苦しんでいるようであれば、我々上層部は基本的に出向く必要は全く無いとグリルの兄は言っているのだ。グリルは好きでお前たちと戦ってあげているらしいが、今の段階では我々の作り出した魔獣でもお前たちを殺せる事も有り得るのだからな」
「お前らみたいな奴なんかにカービィ達が負けるわけがないだろ!」
 ドロシアの星の戦士側を甘く見ているかのような発言にブンが反論する。
「まあ、だがお前達星の戦士もいずれ長く生き延びる事ができればそのうち私やグリルの兄と戦う事になるだろう。…そこまでに生きていれば、の話ではあるがな」
「貴様!話に出てきている『グリルの兄』とは何者だ?」
 メタナイト卿がドロシアに謎の存在…グリルの兄のことについて聞く。
「グリルの兄…。それは我々の中での一番の機密事項だ。奴の本名を教えるわけにはいかないが、お前達の身近に存在する人物では無いことは確かだ。恐らくこの中で知る者はいないだろう」
「ではなぜ組織名に『マルク』の名が?」
 メタナイト卿はドロシアの言う事に更に突っ込んでいく。
「その『マルク』がどうかしたのか?」
「『マルク』というのは…私がまだ銀河戦士団に所属していた頃に私に協力をしてくれたマジカルーマ族の少年の名だ。何故彼の名が組織名に?」
「さあ?それは偶然の一致だろう。実は私も銀河大戦時の頃から生きている存在で、ナイトメアとも面識があったが、そのような奴には会ったことは一度もないから私にはわからない。それとも私の言う『グリルの兄』とお前の言う『マルク』という少年は同一人物とでも言いたいのか?なんの確証もなしに…」
「……………」
 ドロシアはメタナイト卿に組織の首領がマルクであることがバレないように上手く誤魔化した。
「もう聞きたいことはなにもないようだな。私がお前達に教えてやれるのはこれぐらいだ…。グリル、奴が待っている。魔獣ゴッドを抱えて魔獣処分場へ向かえ」
「りょうか〜い」
 ドロシアとグリルは転移魔法でその場から姿を消してしまった。
 それと同時に、先ほどまでフームとブンを閉じ込めていた結界と、星の戦士達を閉じ込めていた電気の柵が消えた。
「みんな!怪我は大丈夫?」
「すまねぇ…俺とシリカはもう今日はこれ以上動く事は無理だ。ギャラクシアのパワーに頼るのもよくねぇだろうし…」
 心配してやってきたフームにナックルジョーは苦しそうに答える。
「それにしても、MTS上層部のドロシア…。グリル以外にもまだ恐ろしい敵がいたとはな…」
 メタナイト卿はドロシアの存在を危険視していた。
「ドロシアもそうだけど…今回の黒幕と思われるグリルのお兄さんって一体何者なのかしら?それとメタナイト卿のあった『マルク』と、組織名の『マルク』は、本当に関係の無いものなの…?」
 フームはドロシアが言っていた事に頭を悩ませていた。
「今日出てきたドロシアって奴もグリルも、そしてグリルの兄貴と呼ばれている奴も気にいらねぇけど、俺にとって一番気にいらねぇのは、グリルの奴があの魔獣を生み出す為に親父の身体を使ったと言ったことだ…」
 怪我をしているジョーは相変わらずグリルの発言に怒りを抑えられないでいた。
「だからジョー、あいつらの言っていることを気にしちゃ…」
 シリカが怒っているジョーをまたなだめようとする。
「んなこたぁお前に言われなくたってわかってるよ。だけど俺は、とにかくあいつらが許せねぇんだ。他の人の身体を好き勝手使いやがって…!」
「…………」
 そのジョーの言葉を聞いて、シリカは彼の気持ちを理解したのか、ジョーに対して何も言わなかった。
「ナックルジョー。お前の気持ちはわかるが、今はMTS上層部と直接戦うより、彼らが送り込んでくる魔獣を潰してこのププビレッジを守りつつ、彼らの戦力を少しずつ減らしていこう。特に今もまだこの地には、前にカービィやお前が戦った上層部の代弁者を名乗る魔獣・チクタクが潜伏しているからな」
「ああ。ようするに身近にいる奴からやっつけていくってことだろ?」
「うむ」
 メタナイト卿も、ナックルジョーと同じく、MTSによってかつての旧友であったナックルジョーの父・ジェクラの身体が魔獣として使われていた事が内心とても許すことなどできず、腹を立てていた。
 だが、まず自分達がやるべきことは送り込まれてくる魔獣を倒すことであるとジョーに言った。
 そして話が終わってカービィ達は怪我をしているジョーとシリカの二人を支えつつ、ターンテーブル付き超巨大エレベーターの乗り場に向かってそれで地上へ戻ることとした。




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