副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第21話
〜強大になる大猿魔獣〜



 〜大空の惑星・スカイハイ〜

 ここは大空の惑星スカイハイ。
 この星はすでにMTSの支配下に置かれているが、雲の足場とどこまでも青い大空からできている綺麗な星。
 現在ここには休暇として宇宙を旅して回っているMTS上層部のマルク、グリル、ドロシアの3人がこの星の大空を飛んでいた。
 マルクは普段あまり見せない羽の生えた怪物のような本来の姿で空を飛び、グリルはお気に入りの箒にまたがって空を飛んでいる。
「グリル、どうだ?久々にこうして思いっきり空を飛べる気分は」
「う〜ん、こういう広々とした星でこうやって空を飛ぶのは最高に気持ちいいね♪」
「でもどうして最初は『惑星フロリアに行く』と言っていたのにいきなりスカイハイなんかに変えたんだ?」
「フロリアでお食事するのは最後の楽しみにとっておこうかなぁ〜って思ったの。で、私はのびのびと最初はしたいからスカイハイを選んだの。ここを最初のお出かけの場所に選んで正解だったよ、お兄ちゃん」
「ふぅん、そうだったのか。でも、お前が喜んでくれるなら僕はそれでいいよ」
「そうだ!お兄ちゃん、この惑星スカイハイの支部に飛んでどっちが早く到着できるか競争しない?ワープとか使っちゃダメだよ?」
「面白そうだな、付き合ってやろう」
「やった〜♪じゃあ私の合図でスタートだよ?ドロシアはちゃんとどっちが勝ったか先にスカイハイ支部に行って見ててね?」
「…いいだろう」
 MTSの惑星スカイハイ支部は惑星スカイハイが惑星の構造の関係上、建物を建てることが難しいものとなっているため、他の惑星のように建物ではなく、空に浮かぶ城のような外見をした宇宙ステーションとなっている。
 グリルはマルクとそこまでどちらが早くつけるか競争しようというのだ。
 グリルに頼まれたドロシアは先に転移魔法でワープし、スカイハイ支部へ向かったようだ。
「じゃあ行くよ?よ〜い、ドン!!」
 グリルの合図で同時にスタートした兄妹。だが、マルクが一瞬で飛び去ってしまう。
「えええ?お兄ちゃん待ってよ〜!」
 グリルも後から飛んでいくが、マルクのスピードには敵わない。
 そして二人がスカイハイ支部に到着。
 マルクとグリル、ドロシアの3人はMTSスカイハイ支部の屋根の上にいる。
「も〜!お兄ちゃんの馬鹿!飛ぶの速すぎだってば!あれじゃあ競争にすらならないじゃない!」
 グリルはマルクにあっさり負けてしまい、そのこと怒っていた。
 マルクは普段は計算高く、理性的で大人びた態度をとり、日頃から様々な事に頭をフル回転させ、勉強や研究、読書を欠かさないという秀才学生のような感じの性格で、少々天然気味でコンピューターの事以外のことに関しては疎い妹のグリルに自分の持つ知識を教えてあげたりすることや、時々勝手な事をしたり暴走したりするグリルを止めることもあったりするが、実は意外にも勝負事になるとそれがどんなに小さな勝負であったとしても勝ちにくるという、グリルよりも幼稚でとにかく負けず嫌いな面もあるのだ。
 星の戦士達を自分やグリル、ドロシアと言ったMTS上層部が直接出向く方法、本社に連れてくる方法以外のどんな手段を使ってでも殺そうとしている事や、以前、自作の格闘ゲームで対戦相手であるカービィやメタナイト卿のタッグに対して勝つことに拘っていた事などもその性格からきているためである。
「もっと手加減してほしかったか?」
「あ…当たり前じゃない……」
 マルクの聞いたことにグリルは涙目で答えた。
「わかったわかった、今度はちゃんとやってあげるから…」
「ぐすっ…本当に…?」
「ああ、本当さ。まだまだ遊ぶ時間はたっぷりあるんだから」
「今度こそちゃんとやってよ?」
「何度も言わせるな」
「うん!」
 マルクは、性格からきた自分の容赦ない行動に泣き出してしまったグリルを慰めた。
「じゃあお兄ちゃん、もう一回…」
「?」
 グリルがそう言いかけるとマルクが何かに反応した。
「グリル、どうやら通信が入ったらしい。今すぐここのスカイハイ支部の司令室で応答してくれ。多分デデデ陛下からだろう」
「え?これから競争しようと思ってたのに…」
 グリルは突然入ってきた通信の事を聞き、ムスッとした。
「いいから通信に応答してくれ。デデデ陛下からの通信は現在ハーフムーンの本部だけではなく各惑星の支部でも受け取れるようにしてあるんだ。僕やドロシアはここで待っているし、用件が済めばまたのんびりと遊べる。今回は『あっ!と驚く主婦の味方とも言えるお手軽な奴で、1匹だけでもマッシャーよりも強くて、4〜5匹いれば一つの星を簡単に壊滅状態にできるあの魔獣』を陛下に宣伝し、そのまま1匹売ってくれ」
「あ、わかった!あの魔獣だよね?じゃあちょっとの間行ってくるね♪」
 グリルは転移魔法で姿を消してMTSスカイハイ支部の内部にワープした。
「(まったく、グリルを喜ばせるとはいえ子供っぽい遊びをするのも楽じゃないな…)」
 マルクは表向きはグリルに付き合っているものの、内心子供のようにはしゃぐ(というか子供だが)グリルに少し呆れているようだった。


 〜デデデ城 デリバリーシステムの部屋〜

「夜中に暴れたあの強そうな魔獣の姿が見当たらないから代わりにまたカービィをやっつけるための魔獣をよこすぞい!」
「陛下、それなら『あっ!と驚く主婦の味方で、すでに色々な惑星で実演販売を開始していて、そのうち一家に一匹は置かれている時代が来るかもしれない』とお兄ちゃんが言っているほどお手軽で強力な魔獣がいるんですよ〜」
 デデデは今日も懲りずにカービィをやっつけるための魔獣を買うべくMTSに通信を入れていた。
 因みに、彼の言う『強そうな魔獣』とは夜に暴れたあの不死身とも言える生命力と破壊神と言える強さを誇っていた魔獣・ゴッドである。
「その魔獣、買った!ワシもその魔獣が一匹ほしいぞい!」
「りょうか〜い、じゃあ今からそちらへ送りますね〜♪」
 グリルの声の後にデリバリーシステムが起動し、魔獣がデデデのところへ送られてきた。
 送られてきた魔獣は一匹のオレンジのような明るい茶色の毛を持つ小さな子ザルのような動物であった。
「ウキッ、キー」
「…一家に一匹の魔獣はこのサルかぞい?」
 デデデは送られてきたサルのような動物がかわいい姿をしているものの、いかにも戦闘能力がなさそうな弱そうな見た目だったので、じろじろとそのサルのような動物を見つめていた。
 そんなデデデにグリルはサルのような動物について説明を始めた。
「その可愛いおサルさんこそが一家に一匹の魔獣『エルギガンデス』!」
「『エルギガンデス』?こんなちっこくて弱そうなサルなのになんだか強そうな名前で不思議で仕方が無いぞい」
「はい。その魔獣は星の戦士を察知して自然とそちらの方向へ向かい、星の戦士を見たときにある変化を起こすようになってるんです!そしてその後何が起こるのかは真相はそのおサルさんことエルギガンデスを外に放して様子を観察していてください。なんでそのような名前なのかすぐにわかりますから♪」
「わかった、言うとおりにしてみるぞい。おい、エルギガンデス。カービィをやっつけるために外に探しに行ってくるぞい」
「キッ!」
 デデデがサルのような動物…エルギガンデスに命令をするとそのエルギガンデスはなにかを察知したらしく、素早い動きで城の窓から外へ出て行った。
「(見失わないように望遠鏡で様子を見るぞい)」
 デデデはエルギガンデスが出て行った窓から望遠鏡で地上へ降り、どこかへ向かうエルギガンデスを見失わないように様子を見ることにした。

 〜デデデ城 メタナイト卿の部屋〜

 『MTS支持者の皆様こんにちは。偉大なるMTS上層部の代弁者たるチクタクです』
 メタナイト卿の部屋では、メタナイト卿とナックルジョーの二人がテレビを電源を入れ、チャンネルDDDから全宇宙に放送されているチクタクが司会のMTSの番組を視聴していたところであった。
「メタナイト、あのチクタクとか言う奴は早めに倒しておいたほうがいいんじゃねぇか?」
「いや、今はあの魔獣を倒すために動くにも動けない事はお前が一番理解している事だろう」
「ああ、確かチクタクは『なにか特殊な力を持っている魔獣』だったっけな?」
 ナックルジョーの言うチクタクの持つ『特殊な力』…。
 それは言うまでもなく数日前にカービィ、ナックルジョー、シリカが3人で彼に立ち向かった際に見せた『気づかれないうちに瞬間移動をしてみせたり、物凄い速さで移動する能力』のことである。
 これはチクタクが時間を操る力を持っているためではあるが、星の戦士側は現在メタナイト卿が『時間を操っているかもしれない』と推測しただけで、本当のことはよくわかっていない状態であった。
 昨夜、ゴッドと戦ったときにメタナイト卿とナックルジョーはまず最初にチクタクを倒すことを考えたが、チクタクのその『特殊な力』の実態がわかっていないことを思い出し、すぐに動くかもう少し調査をするか悩んでいたところだったのだ。
 しかしここで、ジョーが話を変えた。
「話が変わるけど、チクタクのこともそうだが、メタナイト。あんたは夜にグリルが言っていた俺の親父の話…本当だと思うか?」
「?どうした?何故そのようなことを……?」
 唐突に質問をしてきたナックルジョーにメタナイト卿は聞き返す。
「……いや、あんたはどう思うのか聞いてみたかっただけだ」
 ジョーの答えを聞いたメタナイト卿は少し間を空けてからこう言った。
「私は、あそこまで知っているとなると本当かもしれないと考えている」
「あそこまで…って、土に埋めたこととか?」
「うむ」
「………………」
『実はこの宇宙には私の命を狙う者達が存在していますが、私は命を張ってここでMTSの偉いお方のお言葉やお考えを全宇宙の皆様に伝えていく覚悟であります!!』
 ジョーはメタナイト卿の考えを聞き、少し黙り込んでしまった。
 だが、その間にもチクタクの放送は続いている。
 チクタクの言う『命を狙う者達』とは、おそらく…と言うか100%確実に星の戦士達のことであろう。
 チクタクの放送が続く中、しばらくして、ジョーが口を開いた。
「…うん、あんたの考えを聞けて良かったよ。俺は…」
「『奴らの言っている事は信じる事ができない』だろう?」
「?あ、ああ…」
「だが、魔獣の素体に使われたそなたの父が本物であろうとなかろうと、あれは我々に対する挑発ということはよくわかった。しかし、元凶と思われるグリルと名乗ったあの魔女やその兄と呼ばれる存在を倒す前に、私達はすぐ近くにいる魔獣チクタクを倒す策を考えよう」
「ああ、そんなことはわかっているさ」
 メタナイト卿はジョーが言いたかったことや考えを見透かしていたが、今はチクタクを倒すことが最優先である、とジョーに改めて言った。
『では皆さん!今日はこの辺で!』
 メタナイト卿とジョーの会話の最中に、チクタクの番組も終わっていた。

 プププランドは正午が過ぎて午後の2時くらいの時間となっていた。
 カービィ、フーム、ブン、シリカの4人は今、デデデ城から少し離れたところで散歩をしていた。
 シリカはジョーと同じく、ヘビーナイトやソードナイト等の騎士達が行った治療やメタナイト卿の持つ宝剣ギャラクシアで行う『ギャラクシーヒーリング』のおかげで昨日グリルに負わされた怪我はなんとかなったらしい。
 散歩をしている途中、シリカがフームに声をかけた。
「フーム」
「え?なに?」
「改めて思ったけど、この星はいいところだよね」
「??」
「こんな星は多分、宇宙でも数少ないと思うよ?」
「どうして急にそんな…」
 シリカがいきなりそんなことを言い始め、フームは戸惑っていた。
「いや、私はこういうところはフロリアやアクアリス以外に見たことがないから…」
「『フロリア』と『アクアリス』って、このポップスターのすぐ近くにある星のこと?」
 フームは天文学にも詳しいため、フロリアとアクアリスには実際に行ったことはないものの、星の詳細についてはよく知っていた。
「うん。知ってると思うけど、どちらもこの星みたいに綺麗な星だよ。フロリアは緑でいっぱいだし、アクアリスは澄んだ水で覆われているし。今はアクアリスのほうはジョーの話では魔獣がいるみたいだけど…」
 スタスタスタスタッ!
 シリカがそう言いかけた途端、なにかがカービィ達4人に早歩きで向かってくる音が聞こえてきた。
「な…なに?」
「ぽよ?」
 カービィ達のところへやって来たのは2頭身の人型の二人組みで、一方はカービィとフーム姉弟はともかく、シリカにも見覚えがあったホッケーマスクを顔につけた赤い髪の毛を生やし、左腕が刃物となっているあの以前現れた魔獣のJ・アックスやチェンソー・Jとよく似た者。
 もう一方は4人が初めて見る、見慣れないベルベットハットとベルベットチュニックを身につけ、手には大きな銃を持っている者であった。
「Matar!(殺す!)」
「危ない!」
 ホッケーマスクをつけた者は謎の言葉を喋りながら鉈となっている左手を振り回してカービィ達に襲い掛かってきた。
 カービィ達はそれを避け、後ろに下がる。
 怪しげな風貌と攻撃してきた事もあり、その場にいた4人全員が彼ら二人を魔獣と察した。
「皆、下がってて!奴らは私が倒す!」
 カービィ、フーム、ブンの3人はシリカに言われたとおり、魔獣達から少し離れる。シリカは一人だけ魔獣達の前に出て、戦いを挑む。
 ここのところ、強敵魔獣戦で苦戦を強いられ、敗北する事が多かったシリカであったが、万全の状態であればMTSの下級ランク程度の魔獣に苦しめられたり、負けたりすることはまずない。
 その優れた射撃能力と剣術、格闘術で確実に敵を追い詰め、仕留めていく。
 シリカは自分のペースで今いる2体の魔獣と戦えていた。
 ブゥン!!ガギィン!
 ホッケーマスクをつけた魔獣が鉈を振り回してくるが、シリカはその攻撃を一回目は改造銃からナイフを伸ばして受け止めて弾き、その後は最小限の動作でかわし、そのナイフで切りつけ、反撃をする。
 ザブシュッ!
「グオォォオッ…」
 防御をすることができずにナイフの攻撃を受けたホッケーマスクをつけた魔獣は苦しみだす。
「はあっ!!」
 苦しんでいる魔獣にシリカは女性とは思えないほどの力強い右腕のストレートパンチを入れる。
 ドゴッ!
「ぶぅぉ!」
 ホッケーマスクをつけた魔獣はパンチを喰らって吹っ飛び、痙攣した後、動かなくなった。
 バギュン!!
「!!」
 突然、シリカとホッケーマスクをつけた魔獣が戦っていた横から弾丸が飛んできた。
 もう一匹の銃を持った魔獣がシリカに向かって銃を撃ってきたのだ。
「くっ!」
 バスッ!
 シリカはすぐさま反応して飛んできたそれを避ける動作を行ったが、弾丸が少し左の頬をかすり、そこから少量の赤い血が流れ出した。
 だが、全然気にするほどの傷ではなかったため、シリカは余裕の表情でいて、ガンマニアの彼女は魔獣の持っていた銃に対してコメントをした。
「それはマスケット銃?…シブいな」
 バキュン!
 魔獣は再び銃を撃ってきたが、シリカはそれを改造銃から伸ばしたナイフで弾き、前に親しい武器商人から貰ったとナックルジョーに話していた強力な小型の光線銃を取り出す。
「ふっ!」
 ドシュッ、ドシュッ!
 光線銃から放たれた2つの光線は魔獣の頭部と銃を持っていた手を撃ち抜いた。
 バシュゥゥン!ドサッ
 頭と手を撃ち抜かれた魔獣は頭が爆発して粉々になり、銃を落とした後、血を流しながら地面に倒れた。
 シリカは魔獣の持っていた銃…マスケット銃をコレクションに加えるというのか、それを拾って手に持った。
 しかし、その瞬間。
 ガバッ!!
「!!?」
 先ほど倒したはずのホッケーマスクをつけた魔獣が起き上がり、シリカに向かって鉈を振り回しながら走ってきたのだ。
「くっ!」
 カラン!カチャッ、ドォン!
 シリカはマスケット銃をまた地面にほうって改造銃をミサイルランチャーに変え、その魔獣の頭部に向かってミサイルを発射した。
 ドガァン、ブシャアアッ!!
 ミサイルは魔獣の頭部に命中し、頭部が粉々に砕け散った魔獣は地面にうつ伏せの状態で倒れ、死亡したようだった。
 ホッケーマスクをつけた魔獣が倒れた事を確認すると、シリカは銃を持っていた魔獣が使っていたマスケット銃をまた左手に持った。
 後ろに下がっていて魔獣が倒されたことを目の前で見ていたカービィ、フーム、ブンの3人が戦っていたシリカのところへやってきた。
「いつもやられ役だけど、たまにはこうして活躍しないとダメだよなぁ〜」
「しーっ!」
「?どうしたの?」
 妙な会話をしているブンとフームを見てシリカは首を傾げた。
「え?あ、別になんでもないわよ」
「……………?」
 適当に誤魔化したフームがとても不思議に思えたシリカであったが、そんな思考は自分達の目の前にやって来たある動物を見て一気に吹っ飛んだ。
 ザッ!
「ウキッ、ウキッ、キーキー!」
「え??」
「ぽよ?」
 カービィ4人のところにやってきたのは一匹の子ザルであった。
「フーム、このサルって森とかに住んでいる野生のもの?」
「え?み…見慣れない種類ね…。こんな毛が明るい色のサルなんて見たことないわ」
「でも結構可愛いじゃん」
 ブンは子ザルに向かって手を伸ばした。
「ブン!そのサルちょっと怪しいってば!」
 子ザルに触ろうとしているブンに向かってフームは注意した。
「キキッ?」
 サッ!
「あ!」  子ザルは自分を触ろうとしたブンの手を避け、カービィの方へ向かった。
「ぽよ?」
「キィィィーッ…!」
 カービィと子ザルは少しの間見つめ合っていたが、子ザルの様子に異変が起き始めた。
「キ……キキィィィィィッ!」
 グッ…ググググググッ!!
「な…なに?」
 子ザルの声は唸り声のようなものになり、身体の大きさがどんどん大きくなり、厳ついものへと変化していく。
 そこにいた4人は何が起きているのかわからず、ただ子ザルを見つめている事しかできなかった。
 カービィ達の目の前に現れたこの子ザルこそが、先ほどデデデが注文した魔獣・エルギガンデスである。
 そして子ザルことエルギガンデスは変化を終えた。
「グオォオォォォォオォォオ!!」
 変身を終えたエルギガンデスは小さな子ザルの姿からとても大きくて見た目が厳ついゴリラのような姿となっていた。
 エルギガンデスは近くにいたカービィ達4人を踏み潰そうと足を上げた。
 それを見たカービィ達4人はエルギガンデスから距離を離す。 「なんてこと…」
「ぽよ…」
 フームとカービィは姿の変わったエルギガンデスを見て驚き、ブンは何も言えなくなってしまっていた。
「グガアァァァアァァァァァァァ!!」
「ふっ!!」
 ビシュン!!
「ガアァァァァアァ?…グウゥゥゥゥゥ」  襲い掛かろうとしてきたエルギガンデスの顔をシリカは光線銃で撃った。
 光線銃から撃たれた光線はエルギガンデスの左の頬をかすり、左の頬からは血が流れる。
 先ほどのシリカと同じような状況だ。
「グガアオウゥゥゥ!!」
 エルギガンデスは地響きを立てながらカービィ達4人のところへ向かってくる。
「来て、ワープスター!」
 フームが新ワープスターを呼ぶと、カービィはそれに飛び乗る。
「カービィ、これを!フーム達は安全な場所に隠れてて!」
「言われなくても!」
 シリカは手榴弾を取り出してカービィに投げつけながら、フーム達にこの場から逃げるように言う。  カービィは手榴弾を吸い込み、ボムカービィへと変身し、シリカと共にエルギガンデスの方に向かっていった。
「オォォオォォォォォ!!」
 ヒュウゥン、ドガアアン!
 ズバババババババババッ!
 カービィは爆弾を空中から落とし、シリカは地上でマシンガン形態に変えた改造銃でエルギガンデスを撃つが、通用しない。
 ズボッ、ブゥン!
 するとエルギガンデスは近くにあった大木を引き抜き、それを両手で掴んで振り回してきた。
「あ!?」
「ぽよ?」
 ドゴォン!!
「「うあぁ!」」
 ヒューン、ドスッ!
 それぞれ攻撃の後で隙ができたシリカとカービィはエルギガンデスの大木を振り回す攻撃を避けられず、攻撃を喰らって吹っ飛ばされてしまい、カービィは新ワープスターから叩き落されてしまった。
 しかし、吹っ飛ばされたシリカは素早く起き上がり、エルギガンデスに向かって走っていく。
「たあぁぁぁぁぁっ!!」
 エルギガンデスの目の前までやって来たシリカは跳躍し、エルギガンデスの首元に乗っかって改造銃から伸ばしたナイフを突き刺した。
 まるでかつてキリサキンと戦ったときと同じような状況だ。
 そしてシリカはナイフをエルギガンデスの首元の部分から引き抜いて光線銃をそのナイフを突き刺していた部分に突きつけ、引き金を引いてビームを零距離で発射した。
 ドシュドシュドシュドシュドシュン!
「ガアアアアアァァァッ!!」
 この攻撃が効いたのだろうか、エルギガンデスはかなり痛がっている様子だった。
 だが、エルギガンデスは首元のシリカに向かって自分の腕を回した。
 ガシッ!
「しまった!」
 エルギガンデスはシリカをガッチリと掴んで自分の顔の前まで持ってくると、両手で彼女を掴み、その状態で、物凄い力で締め付けた。
 ギリギリギリギリ…!
「うぐっ…がああああっ!」
 強い力で締め付けられたシリカは悲鳴を上げずにはいられなかった。
 ブゥン、ドガアアァン!
「うぐぅっ!」
 シリカを締め付けた後、エルギガンデスは右手でシリカを持ち、そのまま思いっ切り地面に投げ、叩きつけた。
「ぐ…」
「ガオオォォォォォォ!」
 地面に叩きつけられた後、全身が痛みながらも起き上がろうとするシリカをエルギガンデスは踏み潰して止めを刺そうと足を上げた。
 ヒュン、ドオォォォン!!
 カービィはシリカを助けようとエルギガンデスに爆弾を何度も投げつけるが、エルギガンデスは怯まない。
 それどころか、エルギガンデスはカービィも掴んでシリカのいる場所に投げ飛ばした。
 そして二人まとめて踏み潰そうとする。 「(ぽよ…)」
「(やられる………!)」
 エルギガンデスの足が自分の真上にやってきて、絶体絶命の状況に陥り、カービィとシリカは思わず目を瞑り、二人の危機に戦いを見ていたフームとブンも目を瞑った。
 だが、そのとき。
 ドシュウゥゥゥン!
「グアアアアアッ!!」
 エルギガンデスの横から気弾と三日月のような形状の光刃が飛んできたのだ。
 それらはエルギガンデスに直撃し、ひっくり返させて、今にも踏み潰されそうになっていたカービィとシリカを救った。
「カービィ、立て!」
「ぽよ…」
「シリカ、大丈夫か?」
「うん、なんとか…」
 助けに来たのはメタナイト卿とナックルジョーであった。
 メタナイト卿はカービィを、ナックルジョーはシリカを支え、起き上がらせた。
「あんなゴリラとっとと片付けるぞ、はあっ!」
 ナックルジョーは空を飛んで空中からひっくり返っているエルギガンデスに攻撃を仕掛けようとする。
 だが、ジョーが攻撃しようとした瞬間、上半身だけ起き上がったエルギガンデスは口を開け、破壊光線を撃ってきた。
 ビシュウゥゥゥゥゥッ!
「わっ!」
 ジョーはエルギガンデスの予想外の攻撃に驚いたが、素早く回避をし、当たらずに済んだ。
 空中に向けて撃たれた破壊光線はそのまま空へと消えていった。
「あんな武器を隠し持っていたなんて…」
 想像のつかないエルギガンデスの攻撃に驚いていたのはジョーだけではなく、他の者も同じであった。
 シリカはそのことをつい口に出してしまった。
 エルギガンデスは立ち上がり、続いてカービィ達に向かって近くにあった岩石を投げつけようとそれを掴んだ。
「させない!」
 バゴォォォォン!
 しかし、その後のエルギガンデスの行動を見透かしたシリカが撃ったミサイルランチャー形態の改造銃によって岩石は破壊されてしまい、エルギガンデスは岩石の爆発に怯んだ。
「たあっ!」
 再び新ワープスターに乗ったボムカービィがまっすぐ爆弾をエルギガンデスに投げつける。
 ヒュン!
 エルギガンデスは爆弾を跳躍して避けるが、自分の後ろに横からマントを翼状にして飛んでくるメタナイト卿に気づいていなかった。
「つああっ!」
 ズバッ!!
 接近したメタナイト卿はギャラクシアでエルギガンデスの尻尾を斬り落とした。
「ガアアアァアアァァアァッ!?」
 エルギガンデスは尻尾を斬り落とされて悲鳴を上げる。
 跳躍したエルギガンデスの真下を新ワープスターに乗ったカービィが通り、斬り落とされた尻尾を自分で吸い込んだ。
 エルギガンデスの斬り落とされた尻尾を吸い込んだカービィは動物の毛皮を被ったような姿へと変身した。
「あ!また新しいコピー能力じゃん」
 戦いを見ていたブンはカービィを見ながらそう言った。
「メタナイト卿、あのコピー能力は何?」
 フームはエルギガンデスの尻尾を斬った後、自分達の横へやってきたメタナイト卿に変身したカービィの事について訊く。
「うむ、あれはアニマルカービィ」
「アニマルカービィ?」
 フームとブンはメタナイト卿の言った名前を繰り返して言った。
「あのコピー能力は主に哺乳類に分類される動物の体毛や毛皮、爪などを吸い込む事によって得られる。アニマルカービィとなったカービィは地上での動きが野獣のように素早くなり、壁なども容易に登れるようになる。その上身体に纏っている毛皮のおかげで冷気や寒さにも強くなる。そして両腕についている鋭い爪で相手を引っ掻いて攻撃する…。接近戦においては非常に強力なコピー能力だ……!」
 メタナイト卿は冷静に新しいコピー能力『アニマルカービィ』について解説していく。
 アニマルカービィとなったカービィは新ワープスターから飛び降りて、エルギガンデスの真正面に立った。
「ガオォォオオォォ!」
「ふっ!」
 ドズゥゥゥウゥン!
 エルギガンデスは目の前にやって来たカービィに向かってハンマーパンチを繰り出す。
 しかし、カービィはメタナイト卿が解説したとおりの『野獣のような素早い動き』でそれを簡単に避けてしまう。
 そしてカービィは避けた後エルギガンデスの足から身体の方へと普通では考えられない速さでよじ登っていき、あっという間にエルギガンデスの顔面部分まで到達してしまった。
「す…すげぇ…」
 その俊敏さを見て、一緒に戦っていたナックルジョーとシリカは思わず戦う手を休めてしまった。
 よじ登ったカービィはエルギガンデスの顔につかまり、鋭い爪で、しかも連続で引っ掻き始めた。
 ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ!
「ガァアァアアアァッ!!」
 顔を連続で引っ掻き回されたエルギガンデスは苦しみだし、仰向けで地面に倒れてしまう。
 エルギガンデスが地面に倒れた瞬間、カービィはエルギガンデスの顔面から離れるように空高くジャンプをした。
 野獣の力を手に入れたおかげで瞬発力や跳躍力もパワーアップしているのだ。
 カービィは倒れているエルギガンデスの腹部の真上にジャンプをし、そこで逆さまになり、空中でドリルのように回転し始めた。
 そしてそのままカービィはエルギガンデスの腹部に向かって急降下する。
「ドリルアタック!!!」
 ブシュッ!!
「グアァアォォオオォオォ!!」
 ドガァァァァァァァァァン!!
 回転してドリル状になったカービィの体当たりを受け、腹部を貫かれたエルギガンデスは大爆発を起こし、倒された。
 魔獣が倒されたのを見て、フームとブン、メタナイト卿、ナックルジョー、シリカがエルギガンデスがいた場所に駆け寄った。
 しかし、エルギガンデスが爆発した後、そこにはカービィの姿は無かった。
「カービィ!どこいっちゃったの?返事して!」
 ボフッ
「ぽよ!」
「カービィ!!」
 フームがカービィの名前を呼ぶと、彼女のすぐ横の地面からカービィが飛び出した。
 メタナイト卿は解説していなかったが、これもアニマルカービィの能力の一つである。
 アニマルカービィはその爪や必殺技の『ドリルアタック』などを使って地中を素早く掘り進む事もできるのだ。
 今のところ、地中で活動する事のできるコピー能力はアニマルカービィだけなので、これも大きな長所と言えよう。
 そんなこんなで、今回もデデデが注文したMTSの魔獣はカービィによって倒され、一日が終わったのである。




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