副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第26話
〜銀河戦士団の生き残り〜



 〜ウィザード・フォートレス 社長室〜

 惑星リップルスター襲撃事件から1日後。
 惑星ハーフムーンにあるMTSの本部のマルクの部屋こと社長室では、惑星リップルスターを侵略する事に失敗したマルクとグリルの2人が帰還し、怪我の治療を終えて寛いでいた。
 だが、グリルはどうも不機嫌なようで、見ただけで彼女がイラついていることがわかる。
「…イライラするわね………」
「グリル、何を怒っているんだ?」
「だって!お兄ちゃんはイライラしないの!?あの星の女王様が私達よりも強かったってことに!!」
「なるほど、自分が『宇宙で2番目に強い存在』ではなくなってしまって悔しくて仕方が無いのか」
「そうよ!私よりも強いのはお兄ちゃん以外許されないというのに……。ああぁぁぁぁぁ、もう!!!!!!
 グリルは怒りが抑えられなくなり、大きな声を出すと近くにあった椅子を掴んで壁に投げつけ、椅子を破壊して壁に穴を開け、 更に同じ部分に掌からの火球・フレイムボールを撃って爆破し、マルクの社長机も思いっきり蹴飛ばして破損させる。
いい加減にしないかっ!!!!!
「うっ…………」
 怒るあまりに物に八つ当たりし、部屋の一部を破壊したグリルのことをマルクは怒鳴りつける。
 グリルはマルクに怒鳴られて大人しくなってしまう。
「確かに僕も星の戦士なんかよりもずっと強く、そして僕達に匹敵するほどの強さを持った奴の存在には驚いたし、惑星を支配下に入れることが出来なかったのは非常に悔しい……。 だが、だからと言ってここでイライラを解消するのは止めろ。それと一番怒りたいのはお前ではなくこの僕であるということも頭の中に入れておくんだ…」
「ご…ごめんね、お兄ちゃん………」
 グリルはマルクについカッとなって暴れてしまった事を素直に謝る。
「まあイライラを消すなら、星の戦士相手にやってくるのがお前にとっては一番良いと僕は思うけどな……」
「あ!いいね、それ!早速ポップスターに行っちゃおうかな〜?」
「待て。その前に僕達がいない間や侵攻の準備中にに勝手な行動を繰り返したと思われるチクタクについてのことなんだが………」
「………え?」
「グリル、お前はパラマターを使ってしばらく奴の監視をしろ。そのときの奴の動きによって奴をどうするか決める」
「あ!うん、わかった!」
 グリルはマルクの言う事に従い、社長室を出て司令室へと向かった。


 〜デデデ城 玉座の部屋〜

「チクタク!お前がこの間持ってきた魔獣は全部やられたぞい!どうしてくれるんだぞい!」
「も、申し訳ございません!陛下の期待に答えることが出来ず……」
「仕方ない!今日はお前がカービィ達と戦うぞい!」
「わ…わかりました……」
 デデデに他の家来と同様にこき使われるようになってしまったチクタクはマルク達が自分が魔獣を勝手に使った事に気づいていないかどうか心配で仕方なかった。
 チクタクは魔獣を使って星の戦士達を倒し、手柄を得ようとマルクとグリルの命令を無視し、デデデのわがままにあえて従っていたのだが、 結果は魔獣達は星の戦士達、主にカービィとナックルジョーの活躍で倒されてしまい、ついには前もって教えられていたマルクやグリルが帰ってくる日を迎えてしまった。
 そのため、チクタクは自分の手柄を得ようとした計画が失敗し、おまけにマルクやグリルに魔獣を使った事がばれないかどうかひやひやしているのだ。
 だが、ここでまたチクタクは新たな作戦を考えつく。
「(陛下の言う事に従って、私が星の戦士を倒すことが出来れば……)」
 チクタクはデデデの言うとおりにすぐさま星の戦士達のところへ向かった。


 〜ウィザード・フォートレス 司令室〜

 ウィザード・フォートレスの司令室では、マルクからチクタクの監視を命じられたグリルが、機械でパラマターを操作し、モニターでそのパラマターを通してポップスターの様子を見ていた。
 モニターには外に出て星の戦士達を探すチクタクの姿が映し出されていた。
「(チクタク、なに考えているのかしら………?)」
 チクタクがこの後なにをするのか。その動向に注目するグリルであった。


 組織内でのより良い権力を手に入れたいあまり、自分の考えていた事が失敗して焦り始めたチクタクは、外で遊んでいたカービィの目の前に出現する。
 今日もいつものように、カービィはフームやブン、村の子供達と一緒であった。
「『星のカービィ』!私や上層部のために死んでもらいます!ぬん!!」
 チクタクはいきなりカービィに襲い掛かる。
「ブン、皆と一緒に逃げて!カービィが吸い込めそうなものは……」
 フームはブン達に逃げるように言うが、肝心のカービィがコピー能力を得るためのものが見つからない。
 するとカービィは自分ひとりで吸い込みを行い、木から落ちてきた葉を吸い込んだ。
 葉を吸い込んだカービィは、まだフーム達が見たことのない、草で出来た帽子をかぶったような姿に変身した。
「あの…コピー能力は……?」
「む!あれはリーフカービィ」
「リーフカービィ?」
「リーフカービィは、切れ味の鋭い葉を飛ばして攻撃する能力…。木の葉を竜巻に乗せて敵を切り裂く攻撃が得意技だ!」
 フームの横にいつものように突然現れ、メタナイト卿がカービィが得た新しいコピー能力について説明をした。
 リーフカービィへと変身したカービィは、襲い掛かってきたチクタクに猛攻撃を始める。
「リーフカッター!!」
「ぐわっ!」
 カービィは文字通り無数のカッターのような木の葉をチクタクに向かって飛ばす。
 木の葉はチクタクを切り裂き、彼の身体から火花を散らさせる。
「くっ!なかなかやりますね、でもわたくしもここで死ぬわけには!!」
 チクタクはすぐに身体を起こし、音符型のエネルギー弾をカービィに飛ばし、反撃に転じる。
 しかし、カービィは飛ばされてきたエネルギー弾を避けようとはせず、周りに風を起こす。
 そして。
「リーフダンス!!」
「ぐおおぉぉぉっ!!」
 カービィは回転しながら竜巻を起こし、その竜巻に木の葉を乗せてチクタクに突進。
 カービィとぶつかったチクタクは吹っ飛ばされ、地面に勢いよく叩きつけられてしまう。
「ぐわっ!…って、ああ!?」
 チクタクはカービィの技を受けて吹っ飛ばされた直後、どこからか取り出した手鏡で自分の顔を見ると、またしても大事な髭が乱れている事に気づく。
「ま、また髭が…。早く整えなければ……」
 チクタクはそうぶつぶつと呟くと、攻撃で負った傷と乱れた髭を気にしながらカービィの目の前から逃走。
 デデデ城のほうへと逃げ帰っていった。
「ま、待ちなさい!」
「ぽよ〜!」
 逃げ出すチクタクの後をフームとカービィは追おうとするが、目の前にいたはずのチクタクはやはり一瞬で消えてしまった。
「消えた……?」
「ぽよ?」
「フーム」
「メタナイト卿?」
 少し遅れてチクタクを追おうとした2人のところへ来たメタナイト卿がフームに声をかける。
「無理に追う必要はない。あの魔獣は城の陛下のところへと逃げたに違いない。それに今、城の方にはジョーとシリカの2人がいる」


「はぁ…はぁ…。このままでは、私が上層部の方達に……。なんとしても上層部の皆様やデデデ陛下の期待にお応えして、汚名返上を…汚名返上をしなければ………。でもその前に、傷と髭を…」
 独り言を喋りながら、カービィのもとから時間を操る能力で逃げたチクタクはデデデ城の前までやってきた。
 カービィが前よりも強くなっていて自分1人ではどうすることもできなくなってしまったことに彼は焦っており、どうにかしてカービィ達を倒せる方法はないのか?と必死で考えていた。
「MTS上層部のお考えを全宇宙に広める事も大切ですが、それよりも星の戦士達を倒す方法を………」
 チクタクは考え事をしながら周りのことを気にせず前に歩く。
 それは傷や髭を気にしていること以外はボーッとしていたと言ってもいいだろう。
 そんな状態のチクタクは、目の前に人が2人いる事に気がつけなかった。
「ん?」
 チクタクが前を見ると、そこにいたのはMTS上層部や自分が抹殺対象として認識している星の戦士達であるナックルジョーとシリカの2人だった。
「今度こそお前を倒す!」
「もう逃がさない!」
「な!?…ふん!貴方達2人ごとき、『星のカービィ』とは違って私の敵ではありませんね!上層部の方々の為にも、自分自身の汚名返上の為にも、今すぐ貴方達を始末します!」
 チクタクはジョーとシリカの2人を倒そうと考え、時間を操作する能力を使用し、2人の周囲を高速で動き回り始める。
「時間を操っているとか何とか知らないけど、お前の動きはもう見切っている!!」
「なにっ!?ぐわああっ!!」
 超感覚能力でチクタクの動きを見破ったシリカは光線銃で素早く彼を攻撃。
 光弾を浴びたチクタクは思わず動きを止めてしまう。
「でやあっ!!」
「ぐぬおおぉぉっ!!」
 動きの止まったチクタクにナックルジョーはパンチを炸裂。続いて彼の腕を掴んでジャイアントスイングを決める。
「ぐわあああああっ!!」
「パワーショット!!!」
「ぎゃあああっ!!!」
 ジャイアントスイングで空中に飛ばされたチクタクはナックルジョーのパワーショットによる追撃を宙に浮いたままの状態で喰らって身体が爆発し、そのまま地上へと落下。
「ぐ……こんな…はずでは………。ガハッ!!」
 バチバチバチッ!!
 地上に落下したチクタクは身体から火花を散らしつつもなんとか起き上がって戦いを続けようとするが、  先ほどのリーフカービィとの戦いで傷を負っていた上にすでに動きの方も見切られてしまっていた今の彼には、  ジョーとシリカの2人を相手にするには分が悪かったようで、怪我で戦闘の続行は難しい状態になっていた。
「この一撃で…決める!!」
 傷を負ったチクタクの前にいるナックルジョーは、トドメの一撃として新技のメガパワーショットを放とうと、右の拳に青白い色をしたエネルギーを収束させていた。
 そして技が放たれようとした、そのとき。
 ズガアアアンッ!!
「「うわああっ!!」」
 突然どこからか飛んできた火球の爆発が、ジョーとシリカの2人を吹き飛ばした。
「!!…グ、グリル………様……?」
 驚いたチクタクが火球の飛んできた方向の空を見上げると、そこにいたのはMTSの副官にして、現時点のカービィら星の戦士達にとって『超えられない壁』そのものと言える存在・グリルであった。
「チクタク、貴方はデデデ陛下のところへ逃げなさい。この子達の相手は私がするわ」
「は、はい!」
 グリルは傷だらけの状態のチクタクを逃がすと、ジョーとシリカの2人と相対する。
 そして、ジョーとシリカのところには、カービィとメタナイト卿、フームの3人も駆けつけた。
「貴方は確か……グリル!!」
 グリルを見たフームは憎いものを見るような、険しい表情になった。
「今日私は物凄くイライラしてるの。だからあんた達星の戦士をいじめてイライラを消そうと思ってね……!」
「や、八つ当たりかよ……。だが、それにしても何があったのか気になるな」
 ナックルジョーはグリルに何故イラついているのかを聞く。
「何でイライラしてるか…って?あまり言いたくないわね、そういうことは。じゃあさっさと始めましょ?」
「くっ!!」
 気づいた頃にはすでにグリルはカービィ達に襲い掛かってきていた。
 星の戦士達(特に、ポップスター以外の星でも遭遇した事のあるナックルジョーとシリカの2人)は、グリルのその恐るべき強さというのは熟知していることであった。
 デデデ城でグリルがたった1人でカービィ達4人を退けたのを目の前で見ていたフームも、今のカービィ達ではグリルに勝てる可能性は低いということは理解していた。
 だが、この逃げにくい場所では戦う以外の選択肢は星の戦士達にはなかった。
 グリルはカービィに向かって掴みかかり、投げ飛ばそうとする。
 投げ飛ばそうとしたときメタナイト卿が横からグリルに攻撃をし、カービィを救う。
 グリルは以前デデデ城で戦ったときとは全く違う戦い方で星の戦士に襲い掛かってきた。
 彼女はダンスをするかのような不規則的な動きで星の戦士達を惑わし、隙を作らないように攻撃をする。
「ていっ!」
「どわああっ!」
「それっ!」
「「うわああっ!!!」」
 メタナイト卿の攻撃を避けて弾き飛ばし、同時に攻撃してきたジョーとシリカの2人をキックで吹っ飛ばすグリル。
「くっ!!」
「カービィ、これを吸い込んで!」
 シリカが改造銃から撃ったミサイルをカービィは吸い込み、ミサイルカービィに変身する。
 続いて体勢を立て直したジョーとシリカは2人でグリルに向かって気弾と砲弾を連射した。
 ズドズドズドズドズドォォォン!!
「きゃははははっ!2人揃ってノロマね!!ちゃんと当てなさいよ!!!」
 しかし、グリルは2人の攻撃を走って全て回避してしまう。そして彼女は隙を見て瞬間移動をし、ジョーとシリカの目の前に出現する。
「えいっ!!」
「「ぐわあっ!」」
 2人の足元を蹴って転倒させるグリル。だが、そのすぐ後にグリルの横から何かが飛んできた。
 ギューン!!
 それはミサイルに身体を変形させ、突進してきたカービィであった。
「甘いわね!」
 グリルはカービィの突進を受け止め、上空へ飛ばす。
 上空へ飛ばしたカービィを追ってグリルも空へと飛び立った。
「わああっ!!」
 投げ飛ばされたカービィは空中でミサイル形態から普通のミサイルカービィへと戻ってしまう。
 そして彼の横にグリルが飛んできて、空中で彼の身体を掴んだ。グリルはカービィを掴んだまま地上へ急降下する。
「そ〜れっ!!!」
「うわあああっ!!!!」
 ズガアアアアアアン!!!
「「カービィ!!」」
 グリルはカービィを地面に思い切り叩きつけ、一発で戦闘不能の状態にした。
 地面にめり込んでいるカービィにフームとブンの2人が駆け寄った。
「まだ戦いは終わってないわよ!!てえぇぇぇぇい!!」
 倒れて動けないカービィに追い撃ちを仕掛けようとグリルが襲い掛かろうとした、そのとき。
 バシュウゥゥゥゥン!!!!
「ぐっ!!」
 グリルの横から三日月のような形をした光の刃が飛んできた。  それはソードカービィやメタナイト卿が使う『ソードビーム』そのものであった。
「大丈夫か?おめえ達」
「間に合ってよかったな」
「あ……貴方達は、確か…」
 カービィ達を助けたのはメタナイト卿とよく似た、騎士のような格好をしたそれぞれ緑色の身体と明るい紫色のような身体を持った2人組であった。
 フームはその2人の姿に見覚えがあり、思い出そうとする。
 だが、フームが思い出そうとする前にメタナイト卿がその2人を見て口を開いた。
「パルシバル卿に……パラガード卿…!」
「なっ…なんですっ…て……!?」
 メタナイト卿の言ったとおり、現れたのはナイトメアとの最終決戦にも参加した銀河戦士団の生き残りで、メタナイト卿のかつての同僚だった2人の戦士。
 緑色の身体を持つ戦士が銀河戦士団の生き残りにして『銀河戦士団最強』と言われていたパルシバル卿、明るい紫色の身体を持つ戦士が同じく銀河戦士団の生き残りのパラガード卿であった。
 グリルは思わぬ助っ人が登場するという、予想外の出来事に戸惑いを隠せないでいる。
「バッカヤロウが、世話かけんじゃねぇ…」
「す、すいません………」
 パルシバル卿はナックルジョーとシリカの2人に駆け寄り、傷ついた2人の身体を起こさせる。
 シリカはパルシバル卿の言った事に少々申し訳なさそうな顔と口調で謝った。
「危ないところでしたね、メタナイト卿。奴の事は貴方から情報を受け取ったオーサー卿から聞いています」
 パラガード卿もカービィとメタナイト卿のところへ駆け寄って2人の身体を起こすのを手伝った。
 そして駆けつけた銀河戦士団の生き残りの戦士の2人は、先ほどまでグリルと戦っていた4人を少し離れた場所にいるフームの元へ運び、休ませる。
「私のお楽しみを邪魔しようとするなんていい度胸ね、なんであんた達がこんなところにいるのか知らないけど……」
「黙れ!今度は俺達が相手をしてやるっ!!」
 グリルは来るはずのなかった銀河戦士団の生き残りの戦士達が、何故ポップスターに来ていたのか見当がつかないでいたが、とりあえず事の流れの関係で戦う気満々の彼ら2人と戦う事にした。
「でやああああっ!!」
「うおおおおおっ!!」
「ふっ!」
 それぞれ剣を取り出して切りかかってきた2人の戦士の攻撃をグリルは跳躍してかわし、 上空から爆発する性質を持ったブロックを無数に召喚して攻撃する技『ブロックアヴァランチ』で地表にいる彼ら2人を攻撃する。
 ドガドガドガドガドガアァァァンッッ!!!!
「フッ、これはかなり効いたんじゃないかしら……?」
 グリルは爆発に包まれた地表面を得意気な表情で見下ろす。
 だが、その次の瞬間。
「ん?……えぇっ!?」
 グリルは自分の上に出現した影に気がつき、顔を上げる。
 するとそこには自分が魔法で攻撃したはずのパルシバル卿の姿が。
 パルシバル卿はグリルが気がついたすでにそのときには持っている剣を大上段に構えていた。
「でやっ!!」
「ぎゃっっ!?」
 大上段に構えていた剣をパルシバル卿は目の前にいる、隙だらけとなっているグリルに力一杯振り下ろす。
 剣による一撃を受けたグリルは地上に叩き落とされてしまう。
「やったわね……ていっ!!」
 地上へと叩き落とされたグリルは空中から自分の正面にいた先ほどのブロックアヴァランチによる攻撃を避けていたのか、  無傷でいたパラガード卿と、その横に空中から降りてきたパルシバル卿の2人に向かって火球『フレイムボール』を放つ。
 火球が爆発し、周囲はまた煙に包まれる。
「今度こそ当たったわよね……?」
「アホが」
「……それは残像だ」
「!!??」
 ズガアアアン!!!
 2人の声に驚いたグリルの目の前に、その声の主であるパルシバル卿とパラガード卿が姿を現す。
 フレイムボールも彼ら2人には命中していなかったらしく、グリルは2人の同時攻撃を受けて吹っ飛ばされる。
 煙が晴れ、吹っ飛ばされたグリルは2人の戦士のいる方向を見る。
 驚いた表情をして2人を見ているグリルに対し、2人とも仮面をしているのでわかりづらいが、パルシバル卿は得意気な表情を、パラガード卿は全く動じない表情を浮かべていた。
「ぐぅ……相手がさっきまで戦ってたカービィとメタナイト卿ほど強くないだろうと思って、私は少し貴方達のことを甘く見ていたようね。 確かに貴方達2人の実力は伝説の宝剣を持つメタナイト卿と一緒で歴戦の戦士に変わりはなかった……次から私はさっきよりも少し力を出していくけど、平気かしら?」
「ふん!俺達の方も、まだ全然本気を出しちゃいねぇぜ……?」
 パルシバル卿はグリルの挑発的な態度に動じず、自分達も本気は出していないと彼女に挑戦するかのように返す。

「す…すごい……!!」
「あれが…銀河大戦を生き残った戦士の戦い方……」
「ぽよ〜……」
 その頃、物陰から戦いの様子を見ていたフームとシリカ、カービィ、ナックルジョー、メタナイト卿の5人はパルシバル卿とパラガード卿の2人の戦いぶりに感心していた。
「(俺の親父は……あんなすごい人達と一緒に戦っていたのか……)」
「あの2人……銀河大戦当時よりも更に腕を上げている…」
 特にナックルジョーはかつてあの2人の戦いぶりに自分の父親の影を見た。
 そしてその戦いぶりをメタナイト卿や彼らの同僚であった自分の父親は近くで見ていたというのと、改めて自分の父親も含めた銀河戦士団員は偉大であるということも感じ取っており、 メタナイト卿も銀河大戦のときの2人の戦う姿を思い出し、今の2人の動きを見てそのときよりもまた2人が強くなっていたことに気がついていた。

 場面はグリルと戦っているパルシバル卿とパラガード卿の2人の方に戻る。
「じゃああんた達の期待に答えて、私もさっき言ったとおり少しだけ力を上げるわよ?」
 グリルは再確認するかのような言葉を言い終えると2人の戦士に猛スピードで向かっていく。
「「!?」」
「てぇぇぇいっ!!」
「ぐぁっ!!」
「ぐっ!」
 グリルの予想以上に速かったスピードに2人の戦士はそれぞれ彼女の強力なパンチを受けてしまう。
「な、なんてスピードだ!?…だが……」
「見切れない速さでは…ない!!」
 2人の戦士はすぐさま態勢を立て直すとパンチを打った後のグリルに向かって切りかかった。
「おっと!」
 グリルは2人の攻撃をかわすが、2人がその攻撃を彼女自身の隙を作り出すためだけに放ったことには気づけなかった。
「ソードビーム!!」
「きゃっ!?」
 攻撃をかわしたすぐ後のグリルにパラガード卿はソードビームを放つ。
 光刃はグリルには当たらなかったものの、彼女の体勢を崩すことには成功した。
 そして…。
「でりゃあああっ!!」
「ウソッ!?」
 ドシュウゥゥゥゥン、ズガアァァァァァンッ!!!
 パルシバル卿は体勢を崩したグリルに向かって剣から青白いエネルギー波を発射。
 グリルはパルシバル卿の放った攻撃に反応する事ができず、エネルギー波の直撃を食らって吹っ飛ばされた。
 エネルギー波が命中したことによって起きた爆発が晴れた後、パルシバル卿とパラガード卿の2人はグリルを探したが、彼女の姿を見つけることは出来なかった。
「チッ!逃げられちまったぜ。これからというところだったのによぉ…」
 グリルが逃げてしまったことを察したパルシバル卿は少し悔しそうに呟いた。
「相変わらず戦いがお好きですね、パルシバル卿」
「ヘッ。メタナイトも昔と変わらずちょっと堅苦しいじゃねぇか」
 グリルを探す事をあきらめたパルシバル卿とパラガード卿の2人のところにパルシバル卿に声をかけたメタナイト卿を先頭に、物陰に隠れていたカービィ達がやって来た。
「あの…お2人は……もしかしてナイトメア要塞を攻撃したときの…」
「おぅ。おめえはそのときメタナイトと一緒にいた奴か。よろしくな」
「フーム殿……ですね?数日前にメタナイト卿から情報を入手していたオーサー卿から聞きました。以後お見知り置きを」
 声をかけてきたフームのことを、パルシバル卿とパラガード卿は前にナイトメア要塞を攻撃した際にメタナイト卿と一緒にいた少女であると覚えていたらしい。
 そして、メタナイト卿は2人と話を続ける。
「それで、2人はどうしてここに……?」
「それについてなのですが…」
 パラガード卿が説明する前に、パルシバル卿が口を開き、喋り始めた。
「何日か前にオーサーの奴から聞いたんだけどよぉ、なんでも『なんらかの別の姿に擬態できる、魔獣を殺す役割を持っている魔獣』ってのが今宇宙各地を回っているって話なんだ。 確かに『なんかの姿に擬態する』って言っても、ナイトメアの奴のところの魔獣にもそんな奴いっぱいいたし、第一そいつらみたいに最初は出て来ても見破ることは難しいんじゃねぇかって思うだろ?
だがよ、今回のその魔獣はどうやら『緑色の血を流す』という決定的な特徴があるみたいでよ、そいつもかなり危険な魔獣だからおめぇ達も気をつけろよ、というわけだ」
「パルシバル卿、今一番大事な説明が抜けていましたよ」
「おっと、忘れてた。そいつはどうやら『擬態して姿を完全に消す』っていう能力を持っているから、油断できない相手だっていうことも忘れずにな」
「そんな魔獣がいるなんて…。まさか、その魔獣ももしかするとここにいるチクタクみたいな強力な魔獣じゃないのかしら……?」
「うむ。確かに油断は出来ない。もしもその魔獣がチクタクよりも強い魔獣だとすれば尚更だ」
 元銀河戦士団員の話を聞いたフームとメタナイト卿は根拠はないが、その話に出てきた魔獣がチクタクよりも実力が高い可能性があると予測する。
「…ということです。私達は今日はそれをメタナイト卿達に知らせに来ただけで、それぞれまだ別にやることがあるので失礼します」
「おめえ達もさっき言った魔獣のことは警戒しておけよ。俺の方もオーサーの奴の頼みでこれからそいつの捜索をしに行く。それじゃあな」
「さ、さようなら……」
 自分達の宇宙船がある方向へと向かっていくパラガード卿とパルシバル卿の2人を、フームとメタナイト卿、そしてカービィ達星の戦士3人は見送った。
 銀河戦士団員の生き残りの2人の戦士から聞かされた『擬態能力を持つ魔獣』。
 その魔獣はすでにカービィ達の身近まで迫ってきていたが、今の彼らにはまだ想像もついていなかったのであった。




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