〜ウィザード・フォートレス グリルの部屋〜 MTSの本部であるウィザード・フォートレスには、つい先ほど現れた元銀河戦士団員のパラガード卿とパルシバル卿の2人の攻撃の前に敗れて傷を負った、 MTSの副官グリルが逃げ帰ってきたところだった。 彼女は自分の部屋へとやってきたが、そこには兄であるマルクがすでに待っていた。 そして彼は、グリルのことを鼻で笑いながらからかうように話しかけた。 「フッ、…お帰り。ストレスの解消はできたのか?」 「し…知ってるくせに……」 「ハハハ。まああの元銀河戦士団員の2人の戦士が来ることは僕にとっても予想外の出来事だったし、お前も奴らの事を甘く見ていて手を抜いていたみたいだから、当然の結果だと思うけど?」 「次は逃げたりなんかしないわよ!」 「で。その件もそうだがお前、チクタクの監視はちゃんとしていたのか?」 「あ、やば。ちょっと忘れてた…」 グリルはマルクに話題を変えられ、自分の本来の任務であるチクタクの監視を忘れていたらしく、思い出したかのような表情をする。 マルクはそれに構わず、チクタクについての話を続ける。 「パラマターとお前の『相手の心を読む能力』というのを使ってポップスターにいるあいつが何を考えて行動しているのかというのを探ってきてくれ。 その報告を受け次第、僕は僕達がいない間に散々勝手な行動をしてくれたあいつをどうするのかを決める」 「チクタクを殺すことにしたらどうするの?私が直接殺しに行くわけ?」 「いや、組織に不用な奴や組織の裏切り者を始末する役目を持っている『あの魔獣』に頼もう」 「あ、わかった。でも私、あの魔獣はちょっと苦手なんだよね……なんと言うか…その……あの魔獣は『極上ナンパ師』というか…なんか………」 「全くだ。僕もあいつの趣味はよくわからないし、少し付き合いづらいと感じている。だがもしチクタクを殺すことになったらその仕事はあいつに任せるとしよう。 そしてそのときお前には奴を呼び出すのを頼みたい」 「オッケー。でも、それよりもまずはチクタクの監視から…でしょ?」 「ふん、まあそうだな。やることがわかったらお前は早く司令室へ行け」 「はーい」 マルクの命令に従ってグリルはテレポート能力でウィザード・フォートレスの司令室へ向かった。 司令室へ向かったグリルは、部屋に入った瞬間に通信が着ていることに気がついた。 「(なんだろう?またデデデ陛下から……かな?)」 最初はいつものようにそう思ったグリルであったが、通信の発信源はデデデ城ではなく、MTSの支配下に置かれている灼熱の惑星ホットビートにあるMTSの支部からであった。 灼熱の惑星ホットビートはその別名のとおり、惑星の表面温度が非常に高く、地表は激しく噴火を起こしてばかりの多数の活火山とそこから流れで続けている熱く煮えたぎる溶岩で覆われているという、 とても普通の生物が住むことのできる星ではないということで有名な星である。 だが、ホットビートにはポップスターやフロリア、アクアリスの生物とはまた違った、星の環境に適した進化を遂げた数少ない貴重な生物も存在するため、 生物学(動物学)が好きなマルクはその点に目をつけて自分の支配下にホットビートを入れたのである。 今回はそんな星にあるMTSの支部から通信がハーフムーンの本部に入ってきたわけなのだが、 グリルはそれに気づくとすぐに通信に応答するために、通信用のマイクなどが設置されている機械に駆け寄り、モニターの電源を入れるためのスイッチを押す。 「こちら本部のグリル。惑星ホットビート支部、今日はどんな用件で通信したのかしら?」 グリルは通信をしてきた組織の下っ端のプランクに最初に用件を聞いた。 「グリル様。今こちらのMTS惑星ホットビート支部に、なんでもMTSの上層部と面会を求めていると言う者がやってきているのですが……」 「私は別に構わないけど、お兄ちゃんにいつも言われてるでしょ?知らない人を私達の施設に簡単に入れちゃいけないって。 お兄ちゃんそういう『組織や自分の秘密が漏れそうな事』ことにすごく神経質だから怒られても知らないからね?」 下っ端の言うその人物の詳細がわからないグリルは通信相手のプランクにマルクに許可を取らずに勝手に外部の者を入れたことを指摘した。 「話はまだ全部終わってませんって。私達も何も考えずにその者を支部に入れたわけではないんですよ。その者は昔銀河大戦のときに活躍した忍者のような格好をしていて、 実際にその当時銀河戦士団に所属していたそうで、なんでも『星の戦士を倒すのに力を貸す』と言ってきたので私達の方では素性はわかりませんでしたが施設内に入れることにした………というわけです」 「忍者みたいな格好をした元銀河戦士団員……?そんな人いたっけ?なんか思い出せないなぁ〜、一回登場したきり再登場できなかったとか何とかってのはうっすらと覚えてるんだけど……。 きっと影が薄いから名前すらも皆覚えてくれなかったかわいそうな人なんだろうね」 「………………」 グリルの少々わざとらしい態度にプランクは『覚えているくせに』と言いたそうな顔をしながら黙っている。 グリルはそのまま話を続ける。 「……それで?どうすればいいの?その人は私達MTSの上層部に会いたがってるんでしょ?私がそっちのホットビート支部まで直接会いに行けば良いわけ?」 「できれば一番偉い人……つまりマルク様に来て欲しいそうなのですが……」 「それはちょっとまずいかもね、お兄ちゃん絶対に知らない人には顔見せないだろうし。今から相談してくるね……って、ああ〜っ!もう、次は陛下から通信が来てる!! …ごめん、今は私忙しいから申し訳ないけどその人にそこのホットビート支部で待っているように言ってくれない?私は陛下との通信を終わらせたらお兄ちゃんにあんたが今言った事を話してみるから!」 「わかりました」 グリルはホットビート支部と通信している最中にデデデ大王からも通信が来てしまったため、ホットビート支部との通信を一旦切断し、デデデ城のほうへと通信を繋いだ。 〜プププランド 村のはずれの平原〜 「カービィ!今日は役立たずなチクタクに代わる、お前を倒すための新しい魔獣をMTSから買ってきたぞい!行くぞい、魔獣スプリンガー!!」 「スプリンガー、お前の力を見せてやるでゲスよ!」 「ビヨヨヨヨ、了解!!」 ポップスターでは先ほどグリルとの通信を終えて新しい魔獣をMTSから購入したデデデ大王とドクター・エスカルゴンがデデデカーに乗ってカービィ、メタナイト卿、 ナックルジョー、シリカと言った星の戦士達のところに直接出向き、魔獣・スプリンガーを彼らに差し向け、戦わせていた。 カービィはすでにボムカービィへと変身しており、戦いの準備は整っているようだ。 フームが見守る中、戦いは突然開始される。 「ビヨォ〜ン!!」 「バルカンジャブ!!」 「ぽよ!」 「ぐぎゃっ!」 スプリンガーは名前のとおり身体がバネでできた魔獣だ。 早速彼はその身体を利用したジャンプからの奇襲攻撃でカービィに襲い掛かる。 高いジャンプからの急降下プレスアタックをカービィ達4人はかわし、カービィとナックルジョーがまず最初にカービィが爆弾を投げ、ナックルジョーがバルカンジャブを放って反撃する。 だが。 「ビヨヨ、その程度か!?」 ビシュン ドガッ!! 「「うわっ!!」」 カービィとナックルジョーは直後にスプリンガーの伸縮自在な手足による打撃を顔面に受け、吹っ飛ばされてしまう。 「とおっ!!」 「はあっ!!」 「ん?」 カキイィィィン!! カービィとナックルジョーを吹っ飛ばした直後のスプリンガーに、メタナイト卿とシリカの2人がそれぞれの武器を構えて空中から斬りかかってくる。 しかし、スプリンガーは平然とした顔をして受け止めもせずに攻撃を正面から受ける。 「ビヨヨヨヨ、そんな攻撃は俺のバネで作られたボディの前には無力だぜ!ビヨ〜ン!」 「「ぐわあっ!!!」」 スプリンガーはメタナイト卿とシリカの攻撃をそのバネでできた身体で弾き返し、彼ら2人を転倒させる。 スプリンガーの身体は攻撃だけでなく、防御にも充分役に立つのだ。 「くっ、ソードビーム!!」 「ぐああああっ!」 受身を取ったメタナイト卿は素早くギャラクシアからギャラクシアソードビームを放ち、スプリンガーを続けざまに攻撃する。 空中からギャラクシアソードビームを浴びせた後、メタナイト卿は爆発と黒煙に包まれたスプリンガーの近くに着地する。 「……な〜んてな」 「!?」 「ビヨ〜ン!!」 ビシュウウウウン ズガアアン!! 「ぐっ!!!」 ダメージを受けたと思われるスプリンガーであったが、実はそこまでギャラクシアソードビームが効いていたわけではなかったらしく、 煙の中からバネのような足を伸ばしてきてメタナイト卿に反撃をしてきた。 メタナイト卿はギャラクシアを盾代わりにしてキックの衝撃に仰け反りながらもなんとか防いだ。 だが、メタナイト卿の後ろにはその隙を待っていたかのようにカービィとナックルジョーの2人が控えており、2人は助走をつけつつ跳躍し、スプリンガーに向かって攻撃を仕掛ける。 「今だ、メガパワーショット!!」 「ふっ!!」 「げっ!?どうわああっ!!」 ドガアァァァン!! ナックルジョーはバウファイターから教わった新必殺技のメガパワーショットを、カービィは両手に出現させた爆弾をそれぞれスプリンガーに炸裂させた。 「ぎゃあ〜っ!」 メガパワーショットと2発の爆弾を受けたスプリンガーは空中へ飛ばされ、弧を描いて地面へと落下する。 「なにやってるぞいスプリンガー!早くカービィ達を叩きのめすぞい!!」 「ビヨヨヨ、デデデ陛下。あと一匹魔獣が来ていることをお忘れで?」 「…おぉ、そういえば!お前と一緒にやってきたあの檻に入っていた魔獣か!」 「そのとおりです。え〜っと……」 するとスプリンガーはどこからかリモコンを取り出し、そのボタンを押し始める。 「何を……やっているんだ?」 「さあ?」 ナックルジョーとシリカの2人を初め、星の戦士達はスプリンガーの行動を不審に思ったが、首を傾げることしか出来なかった。 「ビヨヨヨ、じゃあ続きを始めるぞ」 リモコンをいじった後、スプリンガーは星の戦士との戦いを続行する。 しばらくお互いに攻撃されては防いで反撃をすると言った攻防が続いたが、スプリンガーが星の戦士達と間合いを取ったかと思うと一瞬彼はニヤけた。 「!?」 ズドドドドドドド!! 「ブモオォォォォォッ!!!」 スプリンガーがニヤけた瞬間、デデデ城がある方角から一頭の牛のような姿の生物がスプリンガーと星の戦士達の方向に鳴き声を上げながら猛スピードで向かってきた。 「ビヨヨヨヨヨ、これでお前らもおしまいだぜ!!」 スプリンガーはそう言うとその牛のような怪物の突進を身体を生かしたハイジャンプで避ける。 牛のような怪物はそのまま星の戦士達に向かって突進していく。 「あの魔獣は確か……」 「『猛牛魔獣ブルファロス』でゲスよ!まったく陛下ときたら魔獣の名前も覚えられないんでゲスね!!」 「おお、わしもそう言おうと思っていたところぞい!」 「嘘ばっかでゲスね。本当は忘れていたくせに…」 エスカルゴンが言ったとおり、スプリンガーがリモコンを操作した直後にやってきた魔獣は『猛牛魔獣ブルファロス』という名前であり、 この魔獣もスプリンガーと共にデリバリーシステムを通してポップスターにやって来た魔獣であった。 だが、デデデ大王は買った直後にグリルから提案された計画を受け入れて指示に従い、この魔獣はすぐに暴れさせずに鉄の檻に入れた状態で城の中に放置し、 後からスプリンガーが檻をリモコンで開けてこちらへ向かわせるという作戦を取っていたのだ。 そのような事情があって遅れて登場した魔獣・ブルファロス。ブルファロスは2本の大きな角を突き出して正面にいたシリカに向かって突っ込んだ。 グサッ! 「…ぐっ!!!」 2本の角の内の1本の角の尖っている先端が突進を受け止めることが出来なかったシリカの腹部に突き刺さる。 「ブモオォォオォォォッ!!」 ビュウウウウン!! 「うわあああっ!」 ブルファロスはシリカを角に突き刺したまま、雄たけびを上げつつ頭を上に振って彼女を空中へ放り飛ばした。 シリカは空中へ飛ばされ、そのままブルファロスの背後の地面に背中から落下し、落ちたときの衝撃でダメージを負い、起き上がれなくなってしまう。 シリカを吹き飛ばしたブルファロスは次はメタナイト卿に狙いを定める。 「ブモオオォォォォォォゥッ!」 「くっ、波動斬り!!」 メタナイト卿はブルファロスに向かって火炎のような衝撃波をギャラクシアから飛ばすが、ブルファロスには全然効いておらず、ブルファロスはその突進で波動斬りを打ち消してしまう。 「ブモォォォォッ!」 ドガン! 「ぐわっ!!!」 ブルファロスの突進を防ぎきれずにメタナイト卿は横に吹っ飛ばされる。 「奴の突進を止めねぇと!」 突進攻撃を暴れながらもなおも続けるブルファロスの正面にナックルジョーが立つ。 彼はブルファロスの突進を受け止めようとしているのだ。 「ブモオォォォォォォッ!!」 それに構わずブルファロスは正面にいるナックルジョーに向かって真っ直ぐ角を突き出して体当たりを仕掛ける。 ガシッ!!! 「くっ……」 「ブモオオオオッ!!」 ズザアァァァァァァァッ!!! ナックルジョーはそれぞれの手でブルファロスの2本の角を掴み、角を受け止めている手と踏ん張るための足に力を入れて顔を赤くしながらも突進を止めようとする。 だがそれでもそのパワーを止めるのは難しいのだろうか、数メートルほど後ろに押されてしまいつつもなんとか突進を受け止めた。 そして踏ん張り切ってそのままブルファロスを投げ飛ばそうとしたが………。 「うおおぉぉぉっ!!」 「相手はブルファロスだけじゃねぇってのを忘れたのか?」 「なっ!?」 ナックルジョーが気づいたときにはすでにスプリンガーが彼の背後におり、バネのような足を伸ばしているところであった。 ビヨォ〜ン ズガァァン!! 「うあっ!!」 ブルファロスに気を取られて隙だらけであったナックルジョーの足元にスプリンガーのキックが命中。 足を蹴られたナックルジョーは思わずブルファロスの角から両手を離し、仰向けに転倒してしまう。 解放されたブルファロスは倒れているナックルジョーの腹の上で左の前足を上げ、そのまま踏みつける。 「ブモオオッッ!!」 「ぐっ、がはああぁぁっ!!」 ブルファロスに数回踏みつけられたナックルジョーはその激しい攻撃の前にダウンしてしまう。 「残るはカービィ、お前だけだな!一気にカタをつけてやる」 「ぽよ!」 スプリンガーはカービィを指名すると、自分はカービィの方を向いたままブルファロスの正面に立つ。 そして、後ろのブルファロスに指示を与える。 「ブルファロス、あれをやるぞ!」 ブルファロスはスプリンガーの指示に無言で応じ、もうなにをするかわかりきってるように足を曲げて姿勢を低くした。 そしてそのブルファロスの身体にスプリンガーがバネのような身体を巻きつけた。 「(一体何をするつもりなのかしら……?)」 「(あいつらは何を考えてるぞい?)」 ブルファロスとスプリンガーの2体がやろうとしていることが予測できないのは心の中でそう思ったフームやデデデだけでなく、 スプリンガーとブルファロスの2人以外の倒れて見ていることしか出来ないメタナイト卿達などの周囲の者も大体同じようなことを考えていると思われる。 スプリンガーの身体が全部巻きついた後、ブルファロスはスプリンガーの背後に尻尾を引っ掛けて弓矢を引き絞るときのようにスプリンガーの身体を引っ張った。 ギリギリギリギリギリ…… 「カービィ、何か来るわ!気をつけて!!」 フームは危険を感じ、思わずカービィに向かって叫ぶ。 「喰らえ!必殺……スリンキーキャノン!!」 「ブモオオォォッ!!」 バシュウウウウウウン!!! スプリンガーの必殺技の名前をそのまま言う掛け声と共に彼の身体を引っ張っていたブルファロスの尻尾は放たれ、スプリンガー自身はカービィに向かって大砲の弾のように飛んでいった。 ボムカービィは出現させた爆弾を投げて猛スピードで飛んでくるスプリンガーを撃墜しようとするが、飛んでくるスプリンガーに攻撃はまったく通用していない。 ドオォォォォン!! 「わあああっ!!」 「カービィ!!」 魔獣達の合体必殺技をカービィは防ぐ事ができず、真正面から浴びてしまう。 それを見てフームは悲痛な叫び声を上げる。 「ビヨヨヨヨヨ、どうだ!俺達の合体必殺技は!!」 カービィを一発で吹っ飛ばしたスプリンガーは勝ち誇って得意気な表情を浮かべ、完全に油断していた。 そう、横で倒れていたメタナイト卿が起き上がりつつあったことに気づかずに。 合体必殺技を受けたカービィは起き上がろうとするが、ダメージは思ったよりも大きく、なかなか自力で立ち上がることが出来ない。 「カービィ、しっかり!」 カービィの側にフームが駆け寄り、なんとか彼を起こしてあげた。 「まだやる気か?よし、ブルファロス!もう1回行くぞ!」 スプリンガーとブルファロスが再び合体必殺技『スリンキーキャノン』を繰り出す体勢に入ろうとした、その時である。 「マッハトルネイド!!」 「ぬあっ!?」 彼らの横で起き上がったメタナイト卿が身体を回転させつつ空中を動き回って相手を切り裂いて攻撃する技『マッハトルネイド』で反撃をしてきたのだ。 スプリンガーは持ち前のボディのおかげでマッハトルネイドを無力化したが、ブルファロスはマッハトルネイドをまともに受け、空中へ浮かされる。 そのとき、ブルファロスの体毛も宙に少し舞った。 「カービィ、あの魔獣の毛を吸い込んで!」 メタナイト卿によって宙に舞ったブルファロスの毛を見逃さなかったフームはカービィに指示を与え、その毛を吸い込ませる。 毛を吸い込んでカービィはアニマルカービィに変身。 「なにっ!?」 アニマルカービィに変身したカービィを見てスプリンガーは驚く。 アニマルカービィはスプリンガーとブルファロスのタッグに向かっていき、態勢を立て直したメタナイト卿は後方からカービィのサポートを行う。 「もう許さねぇぞ!ビヨ〜ン!!」 「ブモーーッ!!」 スプリンガーは身体を使って跳躍して、ブルファロスは角を突き出してカービィ達2人の方へ直進して近づいてきた。 「ぽよ!」 カービィは獣のような走り方からジャンプし、同じくジャンプをしてきたスプリンガーを踏み台のようにして空中から下へ叩き落とす。 「ぬがっ!!」 スプリンガーを地面へたたきつけて更に高く飛んだカービィはブルファロスの真上へとやってくる。 「ブモッ!?」 ブルファロスは自分の真上の空にいるカービィの影に気がつき、突進を止めたときはもうすでに遅かった。 「ドリルアタック!!」 ギュイィン ドガアアアアン!! アニマルカービィの必殺技『ドリルアタック』がブルファロスの胴体を貫き、大爆発を起こさせる。 ブルファロスは跡形もなく消し飛んでしまった。 続いてメタナイト卿が叩き落とされて動けないスプリンガーの近くに地面にギャラクシアを突き刺し、ギャラクシアから緑色の電撃を周囲に放って攻撃する技『ギャラクシースパーク』を放った。 「ぎゃあぁぁあぁぁっ!!」 バチバチバチッ ズガアァァァァン!! スプリンガーのその身体は弾力性抜群ではあるが、金属で作られているため、非常に電気を通しやすい構造となっている。 それ故に、電撃による攻撃が最大の弱点ともなってしまっている。 電撃攻撃を浴びたスプリンガーは体内から黒焦げにされ、火花を散らした後動かなくなった。 「くぅ〜っ、悔しいぞい!」 魔獣が2体とも倒されたことを確認したデデデ大王は悔しがり、デデデカーに乗って城の方へと逃げ帰っていった。 高い戦闘力や合体技などでカービィ達を苦しめた2体の強力な魔獣達であったが、自分達の力を過信して隙を見せたのが命取りとなり、 最期はその隙を突いたカービィとメタナイト卿によって倒されたのであった。 〜数分前 デデデ城 玉座の間〜 ここからは時間を少し遡り、話はカービィ達がスプリンガーやブルファロスと戦う数分前へと戻る。 「チクタク、昨日は『カービィ達を倒す』と自信満々に言っておいて逆に逃げてきた…というのはどういうことぞい?」 「あの、デデデ陛下。カービィ達はもはや私では手に負えないみたいで…」 「カービィを倒すことが出来ず、その上手下の魔獣達までも弱いお前はもう信用できん。わしはお前ではなくもう別の魔獣に頼るぞい!」 「へ…陛下?」 「陛下の機嫌を損ねたでゲスね、間違いなくあんたは極刑でゲしょうなぁ〜」 「そ、そんな……」 デデデ城では、カービィやメタナイト卿に2度も敗北を喫し、その上MTS上層部に秘密で自分の部下の魔獣を何体かつれてきたが、 それもあっけなく全部倒されて立場がなくなってしまったチクタクがデデデとエスカルゴンの2人から文句を言われていた。 「もうお前には何も頼まないぞい、わしは今から新しく買った魔獣でカービィを倒してくるぞい!」 デデデはチクタクにそう言いながら部屋を出て行ってしまい、エスカルゴンもデデデに同行するために部屋を出て行った。 部屋にはチクタクが1人残され、彼は考え事を始めた。 「(ま、まずい……。このままでは私のMTSでの地位が危ないではないですか…。今までずっとマルク様やグリル様にくっついてなんとか良い地位と高い利益を得てきたというのに…。 今この状態を上層部の皆様方に見られたら私は利益を得るどころかMTSから追放される…。なんとしてももっと褒美を手に入れるために星の戦士達を何とかしなければ…)」 そんな1人で考え事をしているチクタクを影で監視している存在がいた。 グリルが事前に放っていた監視魔獣パラマターである。 チクタクの行動は、全てパラマターを通してグリルに見られていたのだ。 「なるほどね〜、チクタクは心の底から私達に従っていたと言うよりはお金とかご褒美とかを私達から貰うほうを優先してたんだ〜………。 今まで知りたいとも思わなかったからわからなかったけど…」 MTSの本部では、パラマターでチクタクの様子を監視していたグリルがモニターに映っているチクタクの姿を見ながら独り言をなんとなく呟いていた。 グリルは見た相手の心を読み取る能力でチクタクが考えていた事などを全て見破っていたらしく、チクタクの真意を知った。 「要するにチクタクは『自分が利益を得るために僕達を手段として扱っていただけだった』、ということか」 「あ、お兄ちゃん!……うん、そんなところじゃない?」 「今話したことはとある有名な哲学者の思想にもあったことだけどね。だがチクタクの組織への忠誠心はどれぐらいのものなのかはともかく、 確かにお前の調べたとおり奴の『なによりも自分の利益を優先している』という考えを知ったからには、どうにかしなければな………」 「どうするの?チクタクのことは殺しちゃうの?」 「そうだな……お前の言うとおり、チクタクは『あの魔獣』に頼んで殺してもらおう。あいつはMTSの思想を宇宙に広めるための代弁者としては役に立ったが、 僕やお前が直接指示を出せないような状態になった途端に勝手な行動を始めたりしたし、お前が調べてくれた、奴の行動目的からしてもうあいつは不用だと僕は判断した。 期待はしていたが、所詮は奴も『失敗作』だった……ということか」 「まったく、お金じゃ買えないものもあるっていうのをあいつは知らないんだね!さっき話すのを忘れてたけど、 私が星の戦士達と戦ったときにチクタクは新しいコピー能力を得たカービィに押されてたし、 陛下の話だと私達がマリエルを送り込んだ際にはメタナイト卿との一騎打ちにも負けてたみたいだよ?」 「メタナイト卿との一騎打ちに負けたというのは初耳だな。グリル、そういうことはもっと早く言ってくれ。でもお前のその発言で今、僕はチクタクを殺すことに決めた。 そうすると、奴を殺すのをいつにするかを決めなくちゃな…」 「う〜ん……。『あの魔獣』も色々と忙しくて宇宙のいろんな惑星を転々としてるみたいだからね〜……」 「その殺すと決めた日までに間に合わない可能性もあるが、とりあえずさっきも言ったように奴と連絡を取ることが出来るようになれば、お前からあいつに依頼してくれ」 「まあこれでチクタクをどうするかが決まったってことだよね?…で、話は変わるんだけどお兄ちゃん」 「……なんだ?」 「さっきホットビート支部にいる下っ端のプランクから聞いたんだけど、そのホットビート支部にお兄ちゃんと会うことを望んでいるお客さんが来てるんだって。 そのお客さんは報告によると、なんだか普通のお客さんと違う雰囲気を持っている、忍者みたいな姿をしている人みたいなんだけど……どうする?」 「忍者だと?まさかあいつが……。それよりも、こんなときに客とは面倒だな……。お前に代わりに行ってもらいところだったが、ここは僕が直接行こう。 ……相手は普通ではない、そして忍者のような姿と聞いて、なんだか嫌な予感がしてな」 「なんか心当たりがあるの?それと、直接……と言っても顔を見せるわけじゃないでしょ?」 「当たり前だ。面会なんてする気は全くない。その客には部屋で待機してもらって、その部屋にセットされているスピーカーから話すだけにする。実態がわからないのではこうでもしないとね」 「ふ〜ん…。じゃあ今から行ってくるの?」 「ああ、面倒くさいがすぐに終わらせてくるつもりだよ。もしも僕が中々帰ってこなかったら、チクタクを始末する計画はお前に任せた。ちゃんと『あいつ』に連絡しておくんだぞ」 「は〜い」 マルクはこれからやるべきことをグリルと話し合うと、部屋にグリルを1人残して転移魔法でMTSの惑星ホットビート支部へと向かって行った。 〜MTS 惑星ホットビート支部 司令室〜 マルクがテレポートで惑星ホットビート支部の司令室に到着すると、部屋に待機していた下っ端のプランクとマドゥーの2人が彼を出迎えた。 「お待ちしておりました、マルク様」 「お客人は、3階の資料室の『Y-B倉庫』に待ってもらっています」 「わかった、すぐに通信を繋ごう」 マルクはプランク達2人の報告を聞くと早速部屋のマイクなどが設置されている機械を使って資料室へと通信を繋いだ。 司令室のモニターにカメラ越しに映った人物は黒い忍者のような服を着ており、体型はカービィなどと同じ一頭身で、背中には忍者刀を背負っていた。 マルクはその部屋に居る忍者服を着た人物にマイクで話しかけた。 向こう側の部屋にはスピーカーが設置されており、そこからマルクの声は相手に伝わるという仕組みになっている。 「待たせたな。僕が正真正銘、魔獣販売会社MTSの社長だ。まさか客がHN社の資料にも載っていたお前だとは思わなかったよ」 「………………」 その人物は、設置されている監視カメラの方を見てマルクの言っていることを黙って聞いていた。 そしてマルクは構わず話を続け、その中でその者の名前を口にした。 「で、僕達に何の用だ?…………元、銀河戦士団の忍者部隊所属の………暗黒の忍者…ヤミカゲ」 |