〜惑星ケビオス とある山脈〜 「おい、お前たち!悪いがお前たちは今から俺たちの目的のために協力をしてもらうぜ」 「これはMTS本部からの命令だ。逆らえばどうなるかわかってるだろうな?」 「グルルルルル……」 「そ…それは……」 ここは惑星ケビオスの山岳地帯。 現在この場所では、人型でマスケット銃を持った2体の魔獣・モスケテロと、彼らに引き連れられている凶暴な犬の魔獣のティンダロス一匹と、もう一匹ブルドッグのような姿をした魔獣が、遭難した登山客である複数のキャピィ族と、それを救助しに来た山岳救助隊のキャピィ族を取り囲み、なにやら脅している。 2体のモスケテロはそれぞれマスケット銃と短剣を登山客や救助隊に突きつけ、ティンダロスとブルドッグのような姿をした魔獣は登山客や救助隊に向かって威嚇をしている。 彼らは自分たちの目的のために登山客や救助隊に協力を要請しているらしい。 「わかったなら俺たちにとっとと従え!」 「は、はいぃ…」 魔獣たちに脅された登山客と救助隊は怯えながらも彼らに協力をしようとする。 だが、そこに一つの人影が岩の陰から姿を現した。 「コラコラ。お前の仕事はそんなんじゃないだろう?ブレノウのおかげですでに洗脳済みで罪のない一般人を襲ってどうする?」 現れたのは、2頭身の人型で、頭髪は茶色で顔は美形、服装は茶色のスーツの下にワイシャツを着ており、右手にバイオリンが入っていると思われるケースを持った男であった。 「あぁ?それはMTSのグリル様からの命令で……」 「マルクたちMTSの上層部からはそんな『一般人を脅せ』なんていう命令はお前たちに出ていない。…いいか?お前たちのような勝手な行動をする魔獣はこの俺が管理しているということを思い出すんだ」 「お前が管理ぃ?一体何を言って……ハッ!お、お前は、まさか……!!」 「…やっと気づいたか、気づくのが遅すぎるな。そう、この俺が1000年に一度の天才にしてMTSの裏方の仕事の担当で、裏切り者殺しのプロと言われる『執行人(パニッシャー)』の異名を持つ魔獣……ガメレオアーム様だ」 自分の名を『ガメレオアーム』と名乗ったその男は、名乗り終えると姿を2頭身の人型から2足歩行のカメレオンのような姿をした怪物へと変身する。 カメレオンのような怪物に変身したその男と2体のモスケテロが会話をしている間に、登山客や救助隊は既にその場から逃げ出していた。 「くっ、上層部から直接命令を受けることの出来る上級ランク魔獣か…。こうなったらやるしかねぇ。俺たちの勝手な行動がバレないようにするために、こいつを殺すしか逃げる方法はねぇみてぇだな!行け、お前たち!!」 「さあ、お仕置きの時間だ」 2体のモスケテロの内の一体が号令をかけ、ティンダロスともう一匹のブルドッグのような魔獣がガメレオアームに襲い掛かる。 2匹の魔獣に対してガメレオアームは怯みもせずに正面から戦いを挑んでいく。 「「グガアァァォオォォオッ!」」 ティンダロスとブルドッグのような姿をした魔獣は大きく口を開けてガメレオアームに噛み付こうとする。 「犬は犬小屋に帰れ!」 ガメレオアームは2体の同時噛み付き攻撃をかわし、先端に鉤爪のような曲がった刃のついた伸縮自在で二又にわかれた尻尾をティンダロスに向かって伸ばす。 グサッ!! 「ギャアアアァウゥゥン!!」 胴体をガメレオアームの尻尾で刺し貫かれたティンダロスはその攻撃の前に気を失ってしまった。 「グオオオォォォォッ!!」 続いてブルドッグのような姿をした魔獣がガメレオアームに飛びかかるが、ガメレオアームは余裕を見せているのか、ただそれを見つめているだけであった。 「グオオォォッ!」 ブルドッグのような魔獣がガメレオアームの頭部に噛み付こうとした瞬間、ガメレオアームは口を開いてその中から虹色に光るエネルギー弾を3連続で撃ち出した。 ヒュンヒュンヒュン、ドガドガドガアァァン!! 「グギヤアァァァァァッ!!」 エネルギー弾を顔面に浴びたブルドッグのような姿の魔獣は怯み、どこかへと逃げ出してしまう。 「クソッ、役立たずが!今度は俺たちが相手してやるぜ!」 「あのイヌッコロ2匹よりもお前らのほうが弱いと思うんだけどなぁ」 「なッ…!?だ、黙れぇ!!」 ズガン、ズガァン!! ガメレオアームに挑発された2体のモスケテロはガメレオアームに向かって発砲する。 撃たれて弾丸が身体に命中したガメレオアームからは少量の血液が流れ出たが、彼はそれに仰け反ったりすることなく2体のモスケテロにぐんぐんと近づいていく。 なお、その血は何故か赤ではなく緑色であった。 「お前たち、大人しくいい子にするんだ」 ペットに話しかけるような口調でガメレオアームは2体のモスケテロと接近戦を展開。 2体のモスケテロは近づかれたことにより短剣を引き抜いて戦うが、突然ガメレオアームは彼らの前から姿を消してしまう。 「ど、どこに行きやがった!?」 「クソッ、どこにもいねぇ!」 「…どこを見ている?俺はこっちだぞ」 「「!?」」 2体のモスケテロが見失ったガメレオアームを探してキョロキョロしていると彼らの後ろからガメレオアームの声がした。 ザクッ!! 「ぎ……ぎぎぎ…」 その直後、2体の内1体のモスケテロが何かに腹部を貫かれ、前に倒れて死亡する。 「な…何……だと……?」 残された1体のモスケテロは何が起きたのか全く理解が出来ず、倒れたもう1体のモスケテロを見つめていた。 そして次の瞬間。 ガブリッ!!! 「ぅぐっ!!ぐ…ぐええ……え……」 まだ倒れていなかったモスケテロの背後から、ガメレオアームが大きな口でモスケテロの首から肩にかけてあたりにガブリと噛み付いたのだ。 噛み付かれたモスケテロは傷口からの出血多量が原因で死亡した。 戦いが終わるとガメレオアームはその場を後にしようとするが、そこにどこから喋っているのかは不明ではあるが、少女の声が響き渡る。 「連絡が取れないと思ったらこんなところにいたのね〜…」 「うん?その声は……」 声がしてすぐに、ガメレオアームの目の前に魔女のような姿をした、MTSの副官である少女・グリルが転移魔法を使って出現した。 「こうやって直接話すのは久しぶりね、ガメレオアーム」 「おぉ、グリル!忘れはしないぞ、俺の女神よ……」 「そ…そういう挨拶はこっちが恥ずかしいからやめてって前にも言ったでしょ……」 「照れるな、俺のことが好きだというのはわかっている。今すぐ俺の演奏を聞かせてやるぞ」 「そうじゃないってば!私はあんたなんかじゃなくてお兄ちゃん一筋だし!!……それよりも、今日は貴方に用事があって貴方の事を探していたのよ」 グリルはナンパ師のようなガメレオアームの態度に顔を赤くして照れ、困りつつ彼に用件を話そうとするが…。 「あぁ〜、わかった。俺と二人きりで…」 「違うって言ってるじゃない!!…もう、そんなんじゃなくて。言い直すけど、今日は頼みたい事があって貴方の事を探してたの」 「お?なんだ、それは。女神の頼みならなんでも聞いてやる」 ガメレオアームが勘違いをすると、グリルは更に顔を真っ赤にして思わず怒鳴ってしまうが、なんとか気を取り直して用件について話し始める。 ガメレオアームはやはりMTS上層部と通じている上級ランクの魔獣だったのだ。 「えっと、星の戦士たちがいる惑星・ポップスターに私たちが派遣している貴方と同じ上級ランク魔獣のMr.チクタクを始末してほしいの。次の日くらいに」 「チクタク…ねぇ…。あいつ、何かやらかしたのか?」 「貴方は丁度別の星で仕事中だったから知らないと思うけど、チクタクは私たちが新しく見つけた星に攻撃に行っている間、色々と私たちの命令にはない勝手なことをしたみたいなの。だから貴方に頼もうと……」 「わかった、わかった。女神の頼みなら喜んで引き受けるとしよう」 「じゃあ、私と一緒にウィザード・フォートレスに来てくれない?」 「ダメだ。女神の頼みとはいえ、俺の方もマルクから任された、まだ悪い子のお仕置きという仕事がたくさん残っている。それが全部済んだらそのチクタクや星の戦士がいるポップスターとやらに向かうから安心してくれ」 「それでもいいわよ、次の日までにポップスターに行ってくれるなら。あ、それからポップスターに行っても、私やお兄ちゃんから『そこで行動を続けろ』とかそういう指示がない限り、向こうの星にいる女の子とかにナンパしちゃダメだからね?特に星の戦士側についている女の子たちには。理由はお兄ちゃんが言ってたけど、『本当は裏の仕事をしているあんたの存在はそう簡単にバレてはいけないから』、だって」 「うげっ。…結構キツいこと言うなぁ、お前……。キュートなレディを見たら声をかけないわけにはいかないだろ。それに俺は星の戦士側についている女の子たちは一度もお目にかかったことないし、ちょっと興味があるな」 「もう一度お兄ちゃんが言ってた事を貴方に言うわよ。ナンパは、ダ・メ!!!!!」 「ちぇっ、仕方ねぇなぁ…」 グリルはガメレオアームにチクタクを殺すように頼んで転移魔法でウィザード・フォートレスに帰り、ガメレオアームはグリルの頼みを引き受けた後、『ポップスターで行動を続けろという指示が出るまでポップスターにいる女の子をナンパしない』という彼女の言いつけを渋々守ることを約束しつつ、先ほども使った姿を周りの景色と同化させて姿を消す特殊な能力でどこかへと行ってしまった。 〜MTS 惑星ホットビート支部〜 グリルがガメレオアームと連絡を取る数時間前。 MTSの首領マルクは惑星ホットビート支部にやってきた忍者のような姿をした一頭身の男・ヤミカゲを惑星ホットビート支部に迎え入れ、スピーカー越しに彼と話していた。 「で、僕たちに何の用だ?…………元、銀河戦士団の忍者部隊所属の………暗黒の忍者…ヤミカゲ」 「何故貴様はこちらにやってきて顔を明かそうとしない?」 名前を呼ばれたヤミカゲはマルクの聞いたことに答えずに、マルクとの直接の面会を求める。 「ああ、そのことか。悪いけど僕は基本的に他人には顔を見せない主義なんだ。特に相手がお前のようなまだ味方でもない奴なら尚更だ。もちろん、間抜けすぎると見た相手には顔を見せるけどね」 「なるほど。貴様が用心深い性格であることはよくわかった」 「お前はどうやらそのような態度を見る限り僕たちのことを探ろうとしているみたいだけどそうはいかない。聞けばお前は『星の戦士を倒すために僕たちMTSに力を貸す』と僕たちの組織の下っ端に言っていたようだが、それは本気で言っているのか?」 「もう一度聞く理由は?」 「お前のような裏切りに裏切りを重ね続けていた奴の言う事だ、半分信用できないんだよ。口先では僕たちに協力するとは言っても、さっきも言ったとおりこちらのことを探るのが本当の目的であるかもしれないからな。何せお前は諜報活動や工作活動をして敵を内部から破壊したり、一勢力の重要人の暗殺を行ったりすること…つまりは裏方の仕事のプロフェッショナルである『忍者』なのだろう?」 「ククッ……そこまで俺のことは信用できないか」 「ああ」 マルクはヤミカゲに騙されないように注意深く彼の話を聞いていた。 マルクの言うとおり、ヤミカゲはかつて銀河大戦のときにナイトメアと対立して銀河戦士団に入ったかと思うと再びナイトメアの元へ寝返ったという経歴を持っている。 お互いの考えていることの探りあいをする中、2人の会話はまだ続く。 「貴様は俺の真の目的は『MTSという組織とお前自身の正体を探る事』と考えているようだが、俺の目的はそうじゃない。ポップスターにいる『星のカービィ』と、宝剣ギャラクシアを持つ宇宙一の騎士で、かつての俺の同胞『メタナイト』に復讐をすること……それが俺の行動目的だ」 ヤミカゲが自分の口で話したことにマルクは首を傾げつつ話を続けた。 「…どうだかな。じゃあわかった。今は表面上はお前と手を組み、カービィたちを潰すために協力しよう。そしてお前には奴らを確実に倒すための力も僕の方から分け与える。数日後、お前はカービィたちを殺すためにポップスターに向かってくれ。…で、お前の方もカービィに復讐をしたいのなら、何かそのための準備はしているのだろうな?」 「当然のように俺は奴らに負けないように己を鍛えた。そしてポップスターのプププランドとは別の国で手駒も集めた。用意などとっくにできている。あとは同じ星の戦士を憎む者同士として貴様らMTSの協力だけが必要だったのだ」 「手駒…か。そいつは楽しみだ。じゃあお前は今からその部屋に送られてくる魔法薬を飲んでくれ。そうしたら、このホットビート支部の司令室にある転送装置を使ってポップスターに行くんだ」 「その魔法薬とやらが、分け与えてくれる力という奴だな?」 「そのとおりだ。念のため言っておくが、確かに僕はまだ半分お前のことを疑っている。だが薬は罠ではなく、ちゃんとお前に力を与える効果を持つものだから安心してくれ」 「お前の言ったそのことが本当だといいが……な」 「しつこいぞ。…いや、しつこいのはお互い様か。じゃあ今からその戦闘力を上昇させる魔法薬をそちらに送るぞ。それを飲んだらお前はポップスターにいるという手駒に『MTSと同盟を結ぶことに成功した』と報告するんだ」 「良いだろう」 ヤミカゲはその後マルクの言われたとおりに行動し、ホットビート支部の建物内に存在する転送装置でポップスターへ向かった。 〜翌日 デデデ城〜 カービィたちが魔獣スプリンガーとブルファロスを倒した日、グリルがガメレオアームと連絡を取り合った日、そしてマルクがヤミカゲと協力関係を結んだ日である昨日から1日後。 デデデ大王は昨日倒されたスプリンガーとブルファロスに代わる、カービィを倒すための魔獣を注文しようとしていたところだったが……。 「グリル、今回の魔獣もカービィに簡単に負けてしまったぞい!早く新しい魔獣を…」 「う〜ん…。スプリンガーとブルファロスのコンビなら勝てると思ったんだけどなぁ……」 「お待ちください、デデデ陛下、グリル様!」 「「うん?」」 玉座に座っていたデデデ大王が振り返ったところにいたのはMr.チクタクであった。 「チクタク、もうお前に用はないから引っ込んでいろと言ったはずだぞい!!」 「そうではなく、デデデ陛下、グリル様…わたくしに最後のチャンスをください!!」 「「え?」」 デデデとグリルはチクタクの発言に驚いた。 デデデとグリルの2人は、チクタクの実力ではもう星の戦士と戦っても勝てるはずがないと完全に思い込んでいたからだ。 「どうせお前程度の魔獣じゃカービィやメタナイトに勝てるわけがないぞい」 「いえ、わたくしが考えた作戦なら今度こそカービィを倒せます。グリル様。それでは魔獣を何匹か、それもなかなか強力な奴をこちらへ送ってくださいませんか?」 「本当に勝てるの〜?……まあ、魔獣は一応それなりに強めなの複数と、量産型のラガルトンやアンドロン何体かをサービスで送ってあげるけど。でも、もしこれで失敗して勝てなかったら貴方の立場はどうなるか……わかってるわよね?」 「は、はい!必ずや、憎き星の戦士たちを倒してまいります!!」 「わかったわ。…デデデ陛下、貴方には申し訳ございませんが、チクタクの監視をお願いしますね」 「今度こそカービィを倒せるというのなら……仕方ないぞい。付き合うぞい」 覚悟は出来ていると思われるチクタクの返事を聞いたグリルはすぐに魔獣を転送するための準備を始めた。 「チクタク、さっきお前は『カービィを倒せる作戦がある』と言っておったが、それは一体なんぞい?」 「それはですね…ごにょごにょ……」 チクタクは小声でデデデ大王に自分の考えている作戦を伝える。 「おぉ、それは良い考えぞい。その作戦で、カービィたちを一網打尽にする…ということかぞい?」 「はい。あとは送られてくる魔獣とこの私の実力次第ですが、まあ何とか上手くやってみせますよ」 デデデとチクタクが話している間に主力となる、グリルの言う『それなりに強めの』魔獣数匹と、多数のラガルトンシリーズとアンドロンシリーズの魔獣が送られてきた。 「チクタク。私が貴方に送ったのは、HN社のチリドックを基にして作った火炎魔獣のバーナードッグ、同じくHN社の魔獣のスクイッシーの強化型であるパワードスクイッシー、最後に我が社オリジナルのサイコロ魔獣・ダイコロね。じゃあ、あとは任せたわよ」 「はい」 グリルは魔獣を送ってそれぞれ魔獣の説明をした後、通信を切断してディスプレイの画面から消える。 デデデ大王とチクタクはすぐに魔獣たちに指示を与え、『作戦』を実行しに外へと向かった。 〜ウィザード・フォートレス 司令室〜 デデデ大王やチクタクとの話を終えて通信を切った後のグリルは1人で考え事をしていた。 「(チクタクには『失敗したらどうなるか』って言っちゃったけど、お兄ちゃんに言われたとおり、もうガメレオアームには『今日の仕事が済んだらポップスターに行ってチクタクを殺して』って頼んじゃったのよねぇ…。でもチクタクはお兄ちゃんがもういらない、って言ってるし、カービィたちを倒せたとしても殺して大丈夫だよ……ね?それよりも、お兄ちゃんにさっきのチクタクが戦っているってことを報告しなきゃ)」 グリルは考え事をしつつ、司令室から出て行き、兄であるマルクのところに向かった。 再び場面はポップスターの方に変わる。デデデ城では、ワドルディ兵士たちが城中を走り回っているなど、なにやらパニック状態となっていた。 「な…何が起きてるの?」 「ぽよ?」 その事態に直面したフームは唖然としてしまう。 一緒にいたカービィとナックルジョー、シリカも同じように固まっていた。 するとそこに、ソードナイトとブレイドナイト、ヘビーナイトがやってきて、事態の説明を始める。 「カービィ殿、フーム様、大変です!現在城に以前にも現れた、トカゲのような姿をした魔獣やロボットのような姿をした魔獣が多数出現して暴れまわっています!」 「デデデ陛下やエスカルゴン閣下、魔獣チクタクの姿も見当たらない事から、恐らくそれと何か関係があるのかと……」 「なんですって!?それよりも貴方たち、メタナイト卿はどこにいったか知らない?」 「私たちも丁度卿のことを探しているところでした。卿も今朝から姿を消しています。私たちに黙って1人でどこへ行ったものか……。ともかく、私たちはワドルドゥ隊長やワドルディたちと協力し、手分けして城を蹂躙している魔獣の集団の討伐と、行方をくらましたメタナイト卿の捜索をします。カービィ殿とフーム様、ジョー殿、シリカ殿は今すぐにデデデ陛下たちを探し出して、取り押さえてください。この騒ぎを抑えるために」 「わかったわ。行きましょ、3人とも!」 「カービィ殿。念のため、これをお渡ししておきます」 城の外へと飛び出そうとしたカービィに、ヘビーナイトが前と同じように自分がよく使う大剣とは別の、ソードナイトたちが持っているのと同じくらいの大きさの普通の剣を渡した。 カービィはそれを飲み込んでソードカービィになった。 そしてカービィとフーム、ナックルジョー、シリカはソードナイトたちから情報を聞いて現在の状況を把握し、すぐに彼らに言われたとおりデデデを探すために外へと向かった。 城の外へと出てきたカービィたち4人はデデデ大王たち3人を探して近くに川のある草原までやってきた。 「どこへ行ったのかしら?」 「ぽよ〜?」 「こっちの辺りには、来ていないのか?」 4人がデデデたちを探しながら歩いていること数分。 突然周囲に彼らが探していた人物…デデデ大王の声が響き渡った。 「だははははは、罠にかかったぞい!」 「「「「!?」」」」 4人は周囲を見渡すと、空中からアンドロンシリーズの魔獣と、アンドロンシリーズの魔獣に抱えられたラガルトンシリーズの魔獣が多数舞い降りてきた。 その数は先ほどから城で暴れていた数に匹敵すると言えよう。 そして、声の主であるデデデ大王と、取り巻きのエスカルゴンとチクタクがデデデカーに乗って出現した。 「カービィ、お前は今日こそチクタクと魔獣軍団の力でやっつけてやるぞい!」 「最近役に立ってなかったチクタクでゲしたが、今日は部下の魔獣も本人のやる気も違うんでゲスよ!」 「エスカルゴン殿、二言ほど余計ですって!…というわけで星の戦士たちよ、今日で決着をつけましょう!!」 「ん?お前たち、メタナイトはどうしたぞい?」 デデデは、姿が見当たらないメタナイト卿のことをフームたちに聞く。 「メタナイト卿はどこに行ったか、私たちも知らないわ。貴方たちが裏で何か仕組んでいるのかと思ったけど…」 「チクタク、お前の作戦ではメタナイトも来るはずじゃなかったのかぞい!?」 「いやはや、これは予想外でしたね……。でもまあ良いでしょう。メタナイト卿だけになったら、私がその気になればいつでも倒すことが可能です」 「…どうやら、あいつらもメタナイトがどこに行ったか知らねぇみたいだな」 デデデとチクタクの会話内容から、ナックルジョーはメタナイト卿の行方はデデデたちも知らないということを知る。 「それよりもジョー。敵の数が多すぎる……どうするんだ?」 シリカはナックルジョーに目の前の多数の敵をどうするのかを聞く。 「どうするも何も、こいつらを全滅させるほかないだろ?片っ端から潰していくしかねぇ。だけどあいつらのことだ、『カービィを倒す』ということをあそこまで強調しているということは、まだ何かを隠しているに違いないから、注意していかないとな」 「わかった。全力で戦うよ」 「うむぅ…。魔獣をまだ隠しているということがバレなければ良いのですが…」 チクタクは自分の手口がジョーに感づかれていることに気づかず、少々不安そうな口調で呟いた。 「魔獣ども!3人をコテンパンにしてやるぞい!」 デデデ大王の指示で、ラガルトンシリーズの魔獣とアンドロンシリーズの魔獣は一斉に3人の星の戦士に襲い掛かる。 カービィとジョー、シリカの3人は素早い攻撃と見事な連係で量産型の魔獣を次々と倒していく。 カービィが剣で魔獣を切り裂き、ジョーが体術と気弾で魔獣を捻り潰し、シリカが砲弾で魔獣を粉砕する。 「ふむ。なかなかやりますね……。でも、お楽しみはこれからです」 3人の星の戦士が魔獣たちと戦っている中、チクタクは不敵な笑みを浮かべて星の戦士たちの方を見ていた。 〜ププビレッジ 村はずれのとある林〜 カービィたちが魔獣と戦っているのとほぼ同刻のことである。 村はずれにある林では、メタナイト卿が何者かを探しているかのように周囲を気にしつつ走り回っていた。 「(あの影はこの辺りに逃げ込んだはずだが……)」 メタナイト卿が周囲を見渡していると、彼が探していると思われる『影』のような何かが目の前を横切った。 その影のような何かは、メタナイト卿を確認すると彼に向かって飛び道具のようなものを飛ばした。 ヒュン ヒュン! 「!!」 ブスッ!! メタナイト卿は飛んできたものをすぐに横に移動して回避する。 地面に刺さった2本の何かは、忍者が使う飛び道具である『クナイ』であった。 「(クナイ?…まさか)」 メタナイト卿は現れた相手が誰なのかを察する。 するとその影はメタナイト卿の隙を突いて真っ直ぐに突っ込んできた。 ジャキン!! 「くっ!」 影は刀のようなものを取り出してメタナイト卿に切りかかった。 メタナイト卿はギャラクシアを引き抜き、刀の一撃を受け止める。 メタナイト卿に刀の一撃を受け止められてしまったその影は、バック転をしてから空中でジャンプをするという華麗とも言える動きを見せた後、メタナイト卿の背後に降り立った。 メタナイト卿はギャラクシアを剣の鞘にしまってから影の降り立った後方へと振り向き、その影に話しかける。 「また会ったな、ヤミカゲよ。私をここへ呼び出したのはお前だったか」 メタナイト卿に話しかけられたその人物は身体全体を覆っていた黒い布を脱ぎ捨て、正体を現す。 黒い布の中から出現したのは、黒い忍者服に身を包んだ人物で、MTSと結託したヤミカゲであった。 しかし、彼がMTSと結託したことをメタナイト卿は知る筈もない。 「メタナイト。俺が何故お前一人をここまで呼んだのか…わかっているだろうな?」 「HN社の刺客として私を殺すためか?…いや、お前が所属していたHN社は滅びたはずだ、カービィによって」 「確かにお前を殺すことも俺の目的だが、それよりも重要な話がある」 「重要な話……?」 「俺はMTSの首領とコンタクトを取り、奴らと手を組んだ」 「!!!!!」 メタナイト卿はヤミカゲの発言に驚きを隠せないでいる。 「奴らと手を組んで、俺は更なる力を手に入れた。そして、お前と前にこの俺のことを負かし、俺のプライドをズタズタにした『星のカービィ』を抹殺する……!!」 「ならば、今ここで私と戦うのか……?」 「今ここでお前と戦うつもりはない。俺は数日後、この星で仲間にした忍者たちと共にお前と『星のカービィ』のところに殺しに向かう。今日は宣戦布告とMTSと手を組んだ事を報告するためにお前を呼んだまでだ」 「……わざわざ連絡ご苦労だったな」 「最後に、宇宙各地を回っていたときに仕入れた情報だが……。俺はもちろん、お前やオーサー、パルシバルらもよく知る、銀河戦士団に所属していた『群青色の戦士』の異名を持った男……『クレイトス』は生きている」 「なにッ!?」 「…そう。銀河大戦の途中、『世の中の全てに絶望した』という理由をつけて銀河戦士団を抜けたあいつだ。奴はどこかの星でMTSに対抗するべく身をどこかの辺境の惑星に潜めて動き始めているらしい。それがどうというわけではないがな」 「………………」 「情報は以上だ。さっきも言ったとおり、俺は自分の仲間にした忍者たちに『MTSと結託する事に成功した』ことを報告して数日後にお前たちを殺しに行く。それまでなんとか生きていることだな……ふんッ!!」 「!?」 ボフッ!!! ヤミカゲは煙幕を使って林から完全に消え去ってしまった。 ヤミカゲの話を聞いたメタナイト卿はその場で考え事をし始める。 「(あの『恐ろしい男』がHN社よりも恐ろしいMTS社と手を組んだとは……。奴はどんな手を使ってこちら襲ってくるかわからない、注意しておかなければ。そしてもう1つ、ヤミカゲはクレイトス卿が生きていると言ったが、もし本当にそうなら、あの方は今何をしているのか気になる……。城へ帰ってからオーサー卿と連絡を取り、今日の事について話さなければ)」 メタナイト卿が考え事をしていると、そこにまた、ヤミカゲとは違う人物が顔を見せた。 「へぇ〜。クレイトス卿が生きている、なんていう情報は初めて聞いたわね…。早速お兄ちゃんやドロシアに報告したいところだわ」 「!? き、貴様!!」 現れたのはMTSの副官のグリルであった。 どうやら転移魔法でポップスターまでやってきて、メタナイト卿とヤミカゲが話していることを盗み聞きしていたらしい。 「メタナイト卿、今日は貴方1人なのね。私も今日はお兄ちゃんが全然遊んでくれないから暇で暇で」 「……………」 「これからやることはもうわかってると思うけど、今からもう始めましょ?」 「くっ!!」 メタナイト卿は再びギャラクシアを引き抜き、グリルは魔法で右手に箒を召喚してお互いに向き合う。 林の中での、メタナイト卿とグリルの一騎打ちが開始された。 |