副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第28話・後編
〜処刑〜



「はぁ、はぁ…。いくら倒しても出てくるなんて…これじゃあキリがないわ!」
「全部で何体いるんだ?数が多すぎるぜ……」
「ぽよ〜…」
 量産型の魔獣たちを相手に数十分ほど戦い続けていたカービィたち3人の星の戦士であったが、あまりにも多すぎる敵の数の前に疲れ始めていた。
 3人の動きも戦い始めたときほどのキレの良さはなく、疲れているのが身体や戦い方にも表れ始めていた。
 しかし、敵の数は確実に減っているようで、先ほどよりは敵の数は少なくなっている。
 更に数分が経過して、多数存在していた量産型の魔獣たちは3人の活躍で、あっという間に数える程度までに減ってしまった。
「ソードビーム!!」
「ギャアァァァアアァッ!」
 カービィがソードビームで最後のラガルトンを切り倒し、量産型の魔獣たちは全滅した。
 だが、3人の息はたくさんの敵を一斉に相手させられた事により、少々上がっていた。
「さすが、これぐらいはやってくれると私も思っていましたよ。ですが本番はこれからです。行きなさい!!」
「「「!?」」」
 チクタクが声を上げると、少し息が上がりつつあるカービィたちの目の前にまた新しい3匹の魔獣が出現する。
 今度は見た目からして量産型ではない、ある程度の戦力は持っていると推測される魔獣たちで、それはグリルからチクタクの元へ送り込まれたバーナードッグ、パワードスクイッシー、ダイコロの3体の魔獣だった。
「まったく、次から次へと……嫌になるな」
 ジョーはザコ魔獣に続いて現れた3体の魔獣を見て呆れ、溜め息をつく。
 3体の魔獣はそれぞれバーナードッグはカービィに、パワードスクイッシーはナックルジョーに、ダイコロはシリカに向かってきた。

「ガオォォォォォォッ!!!」
「はあああっ!!」
 バーナードッグは大型犬のような見た目からは想像がつかないほどの敏捷さでソードカービィに襲い掛かる。
 カービィは剣で攻撃を受け止め、応戦するが、加えてバーナードッグは大型犬らしい見た目どおりのパワーも兼ね備えていた。
 カービィはなんとか振り切り、バーナードッグを弾き飛ばして距離を引き離し、素早くソードビームで追撃を行う。
「ソードビーム!!」
「グガアアアッ!!」
 カービィの放ったソードビームがバーナードッグに向かって真っ直ぐ飛んでいったが、バーナードッグはそれに対して口から火球を吐き出して反撃。
 光刃と火球が正面から衝突して爆発を起こし、周囲を煙に包む。
 カービィの近くで戦いをサポートしようとしていたフームは、バーナードッグの特性と周囲の地形を観察して、あることに気がつく。
「(あの魔獣……もしかして前にメタナイト卿を襲ったチリドックっていう魔獣と同じ種類……?それで、すぐ近くには川がある…だったら…!)」
 フームはバーナードッグを倒すための策を思いついたのか、カービィに指示を与える。
「カービィ!その魔獣を川まで上手く誘い込むのよ!!」
「ぽよ!」
 カービィはフームの指示通り、川の近くまでバーナードッグを誘き寄せようと川の方向へ走る。
 バーナードッグはそれを追いかけてカービィに指示を与えたフームの思惑通り、川のすぐ近くまでやって来た。
 カービィはバーナードッグの炎を帯びた爪や牙による攻撃をかわして剣を構え、剣で下から空中へとバーナードッグを切り上げる。
 ソードカービィの新しい必殺技、『斬り上げスラッシュ』だ。
「斬り上げスラッシュ!!」
「グワアァァッ!」
 怯んだバーナードッグに、カービィは更に空中から剣を急降下しながら振り下ろした。
「メテオエンド!!」
「ガアアアアアアッ!!」
 バシャアァァァァァァン!!!
 ソードカービィの、『斬り上げスラッシュ』から繋げて放つ新技『メテオエンド』がバーナードッグに決まり、バーナードッグは川の方に水飛沫を上げながら倒れ込んだ。
「(やったわ…!これであの魔獣は水に…)」
 カービィの斬り上げスラッシュからメテオエンドに繋げるという新技2つの強力な連続攻撃を喰らい、川の方に倒れたバーナードッグ。
 カービィとフームはバーナードッグは水が弱点で、これで倒すことが出来たと確信した。
 しかし…。
「グゥ…グググ…グガアアオォォッ!!」
「えぇ!?そ…そんな…。あの魔獣は、水が平気なの!?」
「ぽよ!?」
 なんと、バーナードッグは何事も無かったかのように起き上がったのだ。
 カービィとフームの二人は、バーナードッグはチリドッグとは違い、水に弱くないことを知らされた。
 水に入った状態でも、バーナードッグは構わずにカービィとの戦闘を続行し始めた。
 しばらくすると、カービィはバーナードッグの水でも消えない特殊な炎を使った攻撃の数々の前に次第に押され気味になってしまう。
 連射される火球や炎を纏った牙による攻撃等は防ぐのがやっとで、なかなか反撃する事ができない。
「グオオオォォォッ!!」
 ボオオオッ!!!
「うわああっ!」
 火球を防ぎきれずに吹っ飛ばされてしまうカービィ。
「ガウゥゥゥッ!!!!」
「ぽよ〜!!」
 続けざまに炎を纏った爪でバーナードッグはカービィを攻撃する。  カービィは果たしてバーナードッグの弱点を見つけだし、この状況を切り抜けることができるのだろうか…?

 一方、ナックルジョーはカービィが戦っているすぐ近くで、パワードスクイッシーと戦っていた。
「(こいつ…HN社の魔獣のスクイッシーか?雰囲気が似ている……)」
 ナックルジョーは前にHN社に社員として潜入した際に何種類かの魔獣の資料を見たことがあった。
 その彼が見た資料の中に(その当時に戦ったマッシャーよりも後に出てきたが)、巨大なイカのような姿をした魔獣・スクイッシーも載っていたため、彼は今チクタクによって出現したパワードスクイッシーを見た瞬間にスクイッシーを思い出したのだ。
「(スクイッシーの奴の攻撃手段は資料を見た限りだと、触手と電撃による攻撃だったはず。…だけど、こいつはどうなんだ?しばらく様子を見て、すぐに対策を考えねぇと………)」
「キー、ピーピー」
「!?」
 パワードスクイッシーは見た目からは想像もつかないような鳥のように可愛らしい鳴き声を出しながら、ジョーに向かって触手を振り下ろす。
 ジョーは攻撃をかわし、後ろへ下がりながらバルカンジャブで反撃する。
「バルカンジャブ!!」
「キー」
 ズガン!!
 ジョーが撃った気弾はパワードスクイッシーの触手に弾かれてしまった。
「チッ!それなら次は……」
 ナックルジョーはまた技を繰り出すために行動に移そうとするが、それよりも早くパワードスクイッシーの触手が彼に襲い掛かった。
「(!!しまった………)」
 太い触手はジョーに巻きつき、そのまま彼は空中へと持ち上げられてしまう。
「くそっ、離れろ!!………ん?」
 触手に触れた瞬間、ジョーは全身に違和感を感じた。
「(冷たい……。これは…冷気か……!?)」
 実はパワードスクイッシーは体温が非常に低い魔獣で、その温度は0度を下回っている。
 そんな魔獣の身体に触れてしまったら凍ってしまい、運が良くても凍傷を負う。
 ナックルジョーはそんな体温が常識では考えられないほど低温のパワードスクイッシーの触手が体に巻きついているため、全身が凍り始めてきてしまった。
「(身体が…凍っていく……。早く…脱出しねぇと……!)」
 格闘家であるナックルジョーは持ち前のパワーでパワードスクイッシーの触手から力尽くで脱出を試みる。
 それはなんとか上手くいき、全身が凍る前に触手から逃れる事に成功した。
 だが…。
「(奴の触手に触っていた部分が疼く………。凍傷だ……)」
 ジョーは触手に巻きつかれたことにより、全身に軽い第1度凍傷を負っていた。
 皮膚は一部潮紅を呈し、その部分が痺れるようにズキズキ痛む。
 その所為で、彼は素早い動きが困難な状態となってしまった。
 パワードスクイッシーは続いてジョーに狙いを定め、2本の触手の間からビームを彼に向かって放つ。
 ピシュウゥゥゥゥ!!!
「うわあああっ!!!」
 パワードスクイッシーの放ったビームを浴びたナックルジョーは一瞬で氷漬けになってしまう。
 パワードスクイッシーが使ったのは冷凍光線だったのだ。
 ナックルジョーは氷を砕こうと、身体に力を入れ、氷を砕いて脱出する。
 しかし彼はパワードスクイッシーの攻撃で体温を奪われ、彼は寒さに震え始める。
「(奴を何とかしないといけねぇけど、身体が……)」
「キー」
 再びパワードスクイッシーから冷凍光線がナックルジョーに向かって照射された。
 パワードスクイッシーの冷凍攻撃の前に、ナックルジョーはどう戦うのか?

 シリカはダイコロと交戦中であり、ダイコロの強力な攻撃に苦戦していた。
 ダイコロは巨大なサイコロのような姿をした魔獣であり、出た目によって出てくる攻撃が違うという性質を持っている。
 シリカはダイコロが次々と繰り出す強力な攻撃を避けることしかできないでいた。
「(攻撃が激しすぎる!これじゃあこちらが攻撃できない…)」
 ダイコロは空中へと飛び上がり、シリカの近くにそのまま落下する。
 シリカはその突進をかわすが、シリカが避けた方向はダイコロの、サイコロでいう『6の目』があった。
「!?」
 バシュバシュバシュバシュバシュバシュ!!!
「うわああっ!!」
 6の目の方向からは針状の光線が大量にシリカに向かって放たれた。
 前触れの動作もなしに突然飛んできた攻撃を回避行動を行った直後で隙が出来たシリカがかわせるはずもなく、針状の光線をまともに喰らってしまう。
「ぐ……う………」
 針状の光線はシリカの足や腕などに刺さり、刺さった部位からは赤い血が吹き出る。
 特に足をやられたためにシリカは動く事ができず、次の攻撃を避けられるような状態ではなくなってしまった。
 ダイコロは続いて空中にまた飛び上がり、シリカの近くに落下。
 今度はシリカの方向に『4の目』がある。
 4の目からは強力な電撃が飛び、シリカに直撃した。
「ぐああああっ!!!」
 電撃を喰らったシリカは感電して身体が痺れ、足の怪我と重なって更に動けない状態に。
 ダイコロはまた空中に飛び上がって転がり、シリカのいるところに向いたのは『2の目』。
 ダイコロからはロケットパンチが飛び出した。
 ズドオオオオッ!
「ぐぶっ!!!!」
 動く事ができないシリカの顔面にロケットパンチが炸裂。
「う………が……」
 顔面パンチを受けたシリカはダイコロにダメージ一つ与える事ができぬまま、地面に倒れ込む。
 彼女の敗北の瞬間であった。


 カービィたち3人の星の戦士が魔獣たちに苦しめられ、敗北寸前まで追い詰められている頃、メタナイト卿は林でグリルと戦っていた。
「それっ!ギャラクシアの力はそんなものじゃないでしょう!?」
 グリルは挑発するように楽しそうな笑みを浮かべながら後ろに下がりつつフレイムボールを右の掌から撃ち出してメタナイト卿を攻撃する。
「くっ、はああっ!!」
 ギャラクシアですぐさまフレイムボールを防ぎ、メタナイト卿は火球の爆発の中から飛び出してグリルに斬りかかる。
「甘いわね!!」
 メタナイト卿の行動はグリルにとって分かりきっていた行動であり、彼女は攻撃をかわしつつ、攻撃の機会を窺う。
 しばらくお互いに一進一退の攻防が続いていたが、突然グリルが攻撃の手を止めて話し始めた。
「そういえば貴方、カービィとか皆のところに行かなくて良いの?」
「!?」
「朝早くからヤミカゲに呼び出されてたから皆の事が心配なんでしょ〜?」
「…………」
 メタナイト卿は『お前の所為でカービィのところへ向かうことができない』と言いそうになったが、グリルの挑発であることはわかっていたので、彼女の言葉に反論せずに黙っていた。
「あ、やっぱり心配なんだ。じゃあ今からカービィたちのいる方向に進みながら戦わない?」
「!? 貴様!カービィたちに何かしたのか!?」
「さあ?でも私もあの子達が気になるからね。すぐにテレポートして目的の場所に向かうんじゃあつまらないし、さっきも言ったようにその場所へ向かいつつ戦いましょう?」
「……………」
「本当は心配なくせに。私たちが仕組んだ罠とかに引っ掛かってるんじゃないか、とか思ってたりしてるんでしょ?」
「…それ以上の言葉を口にすることは許さん」
 後ろ向きにジャンプして逃げつつ時々魔法を繰り出してくるグリルをメタナイト卿は右手にギャラクシアを構え、マントを翼に変形させて低空飛行をして追いかけた。


 カービィとナックルジョー、シリカの3人はMTSが送り込んだ魔獣たちの前に危機に陥り、完全に追い詰められてしまっていた。
「デハハハハハ!カービィたちがやられてるとは、いい気味ぞい!!」
 デデデカーに乗ってその様子を目の前で見ているデデデ大王は愉快に笑っている。
「皆、しっかりして!!」
 フームは3人に呼びかけるが、3人とも魔獣の攻撃で傷だらけになり、起き上がることが出来ない。
「ようやくこのときがやってきましたね〜、待ってましたよ。お前たちは下がっていなさい」
 倒れているカービィたちを見て、デデデ大王とエスカルゴンのところにいたチクタクが3体の魔獣を少し後ろに下げ、カービィたち3人に歩み寄る。
「力をつけて万全の状態となっている貴方たちには勝てませんが、こう弱っていれば実力の差がどれだけあったとしても確実に私は勝つことができます。そう、私は今から貴方たちにトドメを刺さなければならないのです。…組織内での名誉と汚名返上のために、『私自身が直接手を下して貴方たち星の戦士を始末した』と報告したいのでね」
「ぐ………き…貴様……!卑怯だぞ……!!」
 魔獣の攻撃で傷だらけになってうつ伏せに倒れていたが、なんとか頭だけを起こしてシリカが目の前にやって来たチクタクを見ながら、彼の発言を聞いて顔をしかめる。
「戦いに卑怯も何もありますか?戦いというのはどんな汚い手や卑怯な手を使ってでも勝てばいいのですよ、それが私たちの組織の一番偉い『あのお方』の教えです」
「くっ………」
 シリカの反論を自分の考えを述べて一蹴したチクタクはもう3人の目の前までやってきていた。
「じゃあまずは貴方からいきましょうか。卑怯な事が嫌いだという、星の戦士たちの紅一点である貴方から」
「ぐっ……!」
 チクタクはそう言いながらシリカの頭を掴んで空中に持ち上げ、投げ飛ばした。
「ふんっ!!」
「うあああああっ!!」
 ズガガガガガガガアァァァン!!!
 空中に投げ飛ばしたシリカをチクタクは何発かの音符型のエネルギー弾で狙い撃ちにする。
 エネルギー弾は空中にいたシリカに全て命中し、大爆発を起こす。
「シ…シリカ!!」
 その光景を見たナックルジョーは思わず顔を起こして声を上げる。
 エネルギー弾をまともに受けたシリカは黒い煙を上げながら地上へ落ち、気絶して力なく横たわった。
「次は貴方の番です、魔獣ハンターのナックルジョー……!」
「なっ!?」
 シリカにエネルギー弾の攻撃でトドメを刺して彼女を完全に戦闘不能の状態にしたチクタクは、次にナックルジョーを標的にする。
 パワードスクイッシーの攻撃によって負った傷があるため、ナックルジョーもシリカと同じく、チクタクの攻撃を抵抗することができぬまま受けることに。
「終わりです!!」
 ジリリリリリリリィィィィィン!!
「ぐわああぁぁぁぁっ!!」
 ナックルジョーのすぐ近くでチクタクは破壊音波を放ち、彼を吹っ飛ばす。
「くっ……くそっ…」
 吹き飛ばされたナックルジョーは反撃しようとするが、立ち上がることが出来ない。
「ではお待ちかね、最後は『星のカービィ』……」
「カービィ、立って!でないとチクタクにやられちゃうわ!!」
「ぽ…ぽよ……」
 フームが倒れているカービィに呼びかけるが、カービィはバーナードッグとの戦いで受けたダメージで動けない。
 チクタクはそれに構わずゆっくりとカービィに近寄ってくる。
「トドメです!!!」
 チクタクがカービィに近づき、言ったとおりのトドメとなる攻撃を仕掛けようとした。
 …が、その時である。
 ヒュン ヒュン ヒュン!!
「ぅん?」
 いきなり何か飛び道具のようなものがこちらへ向かって放たれたような音が聞こえてきたのだ。
 チクタクがその音がした方向を向くと、飛んできたのは虹色に光る3つの弾丸であった。
 ドガドガドガアアァァン!!
「うごおぉぉっ!!」
「え!?な、何が起きたって…いうの?」
「何事ぞい!?」
「誰なんでゲス…?」
 虹色に光る弾丸は3つ全てチクタクに被弾し、爆発を起こす。
 その光景は、フームやデデデ大王、エスカルゴンを初め、周囲の者を驚かせた。
「むぐぅ……だ、誰です!?星の戦士たちを亡き者にする絶好のチャンスだというのに……」
 弾丸を浴びて思わず転倒したチクタクは起き上がって態勢を整えながら自分を攻撃した何者かに対して怒った。
「グルルルルルル……」
 チクタクが声を上げたことに答えるかのように、一匹の化け物が何も無いはずの空間から浮き出るように姿を現した。
 現れた怪物は2足歩行のカメレオンのような姿をしており、周囲が唖然としている中、戦いの場に近づいてくる。
「な、何者かは知りませんが……私の邪魔をするなら許しませんよ!やれ、お前たち!!」
「キー!」
「ガオオオッ!!」
 チクタクの指示でパワードスクイッシーとバーナードッグが、突如乱入してきたカメレオンの怪物に戦いを挑んだ。
 パワードスクイッシーは触手を伸ばしてカメレオンの怪物を捕らえようとするが、カメレオンの怪物は簡単にそれをかわしてしまう。
 触手をかわした直後、カメレオンの怪物は口から先ほどチクタクにも放った虹色に光る弾丸を3連続で吐き出した。
「ベッ、ベッ、ベッ!!」
「キイィィィィィィィ!!!」
 バババッ ドガアァァァァン!!
 弾丸の爆発でパワードスクイッシーは呆気なくカメレオンの怪物に倒されてしまった。
 パワードスクイッシーが倒れてすぐ後に、今度はバーナードッグがカメレオンの怪物を襲う。
 バーナードッグは得意の火炎攻撃でカメレオンの怪物を焼こうとするが、カメレオンの怪物はまたも素早い動きで難なくこれを回避する。
 火炎を回避したカメレオンの怪物は大きな口を開けてバーナードッグの懐まで急接近。
「グアアアアッ!!」
 ガブッ! ブチィ!!
「グ…ガウ……」
 カメレオンの怪物に喉笛を食い千切られ、バーナードッグは息絶えた。
 最後に残ったダイコロは、空中に飛び上がって、カメレオンの怪物のほうに『1の目』を向かせ、砲弾を複数撃って遠くから攻撃してきた。
 しかし、ダイコロの攻撃にガメレオアームは臆することなく、先端に鉤爪がついた伸縮自在で2つにわかれている尻尾を伸ばし、ダイコロに巻きつける。
 動けなくなったダイコロに口から大量の虹色に光る弾丸を吐きつけて攻撃した。
 ドガドガドガドガァァァァァァン!!!
 弾丸が当たった事によって発生した大爆発が収まると、ダイコロの姿は跡形もなく消えていた。
「な…なんと……。これは………どうしたものか…」
 3体の魔獣を簡単に蹴散らしてしまったカメレオンの怪物の実力を見てチクタクは動揺し、焦り始めている。
 『次はお前の番だ』と言わんばかりに、カメレオンの怪物はチクタクに近寄ってくる。
「ぐぬ…こうなったら仕方ありませんね。私が邪魔者を排除します!ぬぅん!!」
 チクタクは正面にいるカメレオンの怪物に向かって音符型のエネルギー弾を発射。
 エネルギー弾は爆発し、確実に正面にいるカメレオンの怪物に命中したかに思われたが…。
「グアアオオオォォッ!」
「ぬぅ!?」
 カメレオンの怪物はいつの間にかチクタクの背後におり、チクタクの左腕にそのまま噛み付く。
「が……な…何故…?そ…そうでしたか……貴方が…」
 噛み付かれながらもチクタクはどうやらカメレオンの怪物の正体に気がついたようであったが、カメレオンの怪物はチクタクの左腕を力任せに引き千切り、突き飛ばす。
 引き千切られたチクタクの腕の断面からは機械が露出した。
「い…命だけはお助けを………私はまだ死にたくは…」
 腕を引き千切った噛み付き攻撃が相当強烈だったのか、チクタクは情けなくカメレオンの怪物に対して命乞いをする。
 だが、カメレオンの怪物がチクタクのその言葉を聞き入れるはずもなく、怪物は容赦なくチクタクに向かって虹色の弾丸を口から連射する。
「ぬぐぁあぁぁぁっ!!」
 弾丸を正面から数発浴びて倒れそうになっているチクタク。
 だが、彼に対してのカメレオンの怪物の攻撃が止む事はなく、今度は尻尾をチクタクに向かって伸ばし、先端の鉤爪を彼の正面に向ける。
 尻尾はチクタクの顔にそのまま伸ばされ、それぞれ2つにわかれているそれは彼の左右の目に。
「ぬぎゃあぁああぁぁぁっ!!!!」
 2つに分かれたカメレオンの怪物の尻尾はチクタクの目を貫通させ、彼の視力を奪う。
「お……おぉお……お…………」
 バチッ バチバチバチバチバチィッ
 チクタクは身体から電流を走らせた後、その場で仰向けに倒れた。
……わたくしは偉大なるMTS上層部の代弁者……わたくしのすること全ては利益のため……わたくしは偉大なる……わたくしは……わた……わ……
 チクタクは思考が完全に停止し、その言葉を繰り返したが、次第に声が小さくなって動かなくなった。
 自分の利益の為に上官からの命令にも逆らった“代弁者”の、哀れで呆気ない最期であった。
 チクタクが動かなくなって死亡したことを確認したカメレオンの怪物は、更にチクタクの右足に噛み付いてそれを引き千切り、最後には口から吐き出す虹色に光る弾丸をチクタクに向かって放ち、爆発で遺体を処理した。
 身体がバラバラになったチクタクからは機械が飛び散り、カメレオンの怪物の足元に、チクタクの鼻と、彼が大切にしていた髭が転がった。
 バキィッ!!
 カメレオンの怪物はそれを踏みつけて粉々にする。
 そしてカメレオンの怪物は、カービィたち星の戦士とフーム、デデデ大王、エスカルゴンの方を見る。
「一体……何が起きたのだぞい?」
「わ…わたくしにもさっぱりわからないでゲス……」
「言葉が通じるかどうかわからないけど…貴方は一体何者なの!?」
 デデデ大王とエスカルゴンは、突然出現したカメレオンの怪物によって目の前で3体の魔獣とチクタクが立て続けに、それも無惨に殺害された光景を見て唖然としている。
 フームは、チクタクを初めとした魔獣たちを倒してしまったそのカメレオンの怪物に素性を聞いた。
「グルルルル…」
 だが、カメレオンの怪物は唸るだけでフームの質問には答えない。
 するとその場所に、先ほどから林で戦っていたメタナイト卿とグリルもやって来た。
 やって来たグリルはすぐにカメレオンの怪物に声をかけた。
「あ、ガメレオアーム!ちゃんとチクタクを始末してくれたんだね〜、どうも有難う!」
「が…ガメレオアーム……?」
「え!?どういうことなの……?」
 グリルと『ガメレオアーム』と呼ばれたカメレオンの怪物が知り合い同士だったことに、思わず小声で呟いたデデデ大王とフームはもちろん、グリルとガメレオアーム以外のその場にいた全員がその事実に驚きを 隠せず、戸惑い始めている。
 そんな中、グリルは客であるデデデ大王にチクタクが死んだことについての真相を話し始める。
「デデデ陛下、実は最初からこういう計画だったんですよ」
「計画ってなんのことぞい?」
「はい。チクタクは私のお兄ちゃんがもう組織に不用な存在と判断したので、このガメレオアームに殺してもらうことにした…というわけなんです」
「なるほど。役立たずな部下や邪魔者を全て極刑にするとは、MTSもわしとよく似ているぞい」
「陛下、そういう問題じゃないでゲしょうが!」
「まあ今日のところはもうこの辺で、あんたたち星の戦士に用はないから。メタナイト卿と戦って満足したし。じゃあ、ガメレオアーム。早く本部に帰るわよ」
 デデデ大王やグリルが話している間、ガメレオアームはグリルの言っていた『星の戦士側についている女性』であるフームとシリカのことを見つめて考え事をしていた。
「(全く、喋れないフリをするってのはキツいなぁ……。それにしても……あの金髪のポニーテールでジト目っぽい目つきの女の子と、あそこでボロボロになって倒れてる女の子の二人が、グリルの言っていた『星の戦士側についている女の子』か……。二人とも中々可愛いな、今度マルクに頼んで接触する許可でももらおうかな…)」
「なにやってんのよガメレオアーム!早く帰るって言ってるでしょ?」
 ガメレオアームはグリルの言葉を聞いて彼女の元へ向かう前に、フームの方を見て舌なめずりをした。
「うっ……」
 フームはガメレオアームと呼ばれた魔獣が自分に向かって舌なめずりをしたのに気づき、魔獣がそのような行動を取った意味はわからなかったが、背筋がゾッとするような不快感を覚えた。
 フームがガメレオアームに不快感を覚えたのと同時に、グリルとガメレオアームは転移魔法で姿を消した。
「エスカルゴン、今日のところはひとまず引き上げるぞい!」
「あ、はい!わかりましたでゲス!」
 デデデ大王とエスカルゴンは、カービィやフームたちに何か言われたりする前にデデデカーで素早く城の方へと逃げ帰ってしまった。
「あの魔獣、一体なんだったのかしら…?それよりもメタナイト卿?貴方、朝からいなかったけどどこに行ってたの?」
 フームは新たに出現した魔獣・ガメレオアームのことを考えるよりも、メタナイト卿が先ほどまで何をしていたのか彼自身に聞いた。
 傷だらけになっているカービィたちは、メタナイト卿のギャラクシアによる回復技『ギャラクシーヒーリング』をかけてもらい、怪我を回復させた。
「その件についてだが……朝、私は城の廊下を歩いていると目の前を何かの影が横切り、それを追いかけて外へ出た。その影は私をどこかへ連れて行こうとしているかのような動きをしていて、気がつくと私は影を追って林まで来てしまった。だが、私はいつの間にか影の事を見失っており、辺りを探した。するとその影は突然攻撃を仕掛けてきた」
 メタナイト卿は自分がデデデ城から姿を消したわけを話し、自分が林まで追いかけた影の正体は、かつてカービィと戦った忍者である『ヤミカゲ』であったこと、そしてヤミカゲはMTSと結託した事、更にかつての自分の銀河戦士団の同僚であった戦士『クレイトス卿』が生きているという情報を自分に渡してきた、ということをカービィたちに説明した。
「ヤミカゲ…まだ生きていたなんて……」
 チクタクを殺害してしまった新しい魔獣が現れた後で、ヤミカゲはまだ生きていてMTS側についたことを知ったフームは驚くと同時になんだか嫌な予感を感じていた。
「メタナイト、あんたが今ヤミカゲから生きているということを聞いた元銀河戦士団の『クレイトス卿』ってどんな人なんだ?」
 ヤミカゲの話を聞いた後、ナックルジョーがヤミカゲの言う『クレイトス卿』という人物についてメタナイト卿に聞く。
「クレイトス卿はかつて、私やオーサー卿、お前の父と同じく銀河戦士団に所属していた戦士で、私やオーサー卿、パルシバル卿たちと共に銀河戦士団を結成したメンバーでもあり、あまり他人に関心を示さない寡黙な性格であったが実力は確かで、『群青色の戦士』という異名を持つほどの人物であった…。だがある日、突然彼は『世の中の全てに絶望した』と言い残して銀河戦士団を抜け、その後の行方は私は知らなかったが、 ヤミカゲの言う事によればクレイトス卿はどこかの辺境の星に潜み、生きているとのことだ」
「メタナイト卿、もしもそのクレイトス卿が生きているとしたら私たちの力になってくれるのでしょうか…?」
「いや、わからない。何故あそこまで優秀だった人物が銀河戦士団を抜ける事になったのか…。理由は彼は『世の中の全てに絶望した』と言っていたが、本当のことは彼自身の口から聞かないと謎のままだからな」
 シリカの質問に、メタナイト卿はクレイトス卿が仲間になってくれるのを望むのは難しいというかのように答える。
 チクタクが死亡し、そのチクタクを殺した魔獣ガメレオアームと、MTSと同盟を組んだという元銀河戦士団員の忍者ヤミカゲ。
 更にヤミカゲの口からメタナイト卿に聞かされた、かつての銀河戦士団員であるという人物・クレイトス卿が生きているという情報。
 星の戦士たちはそれらの存在と情報に不安を募らせる。
 しかし、これからもより強力な敵を送り込んでくるであろうMTSに星の戦士たちはどう立ち向かっていくのか。
 星の戦士たちの長く苦しい戦いは始まったばかりである――。


 〜MTS本部 ウィザード・フォートレス社長室〜

 カービィたちがヤミカゲやクレイトス卿のことについて話し合っている頃、MTSの本部であるウィザード・フォートレスのマルクの部屋である社長室では、先ほどポップスターから帰ってきたグリルとガメレオアームが、マルクとドロシアにチクタクを排除したこと、そしてグリルはそれに付け加えてメタナイト卿とヤミカゲの会話を盗み聞きした際に知った、『元銀河戦士団員のクレイトス卿が生きている』ということを報告していた。
「そうか。あのクレイトス卿が生きていたという情報をヤミカゲの奴が隠していたとはね…。その件については明日以降調べてみるとするよ。それはともかく。チクタクの始末、ご苦労だったぞガメレオアーム。で、今日お前によって死んだチクタクの代わり…というわけではないのだけれど、明日から何時までかはまだ決めていないが、しばらくの間お前はポップスターに滞在し、星の戦士たちを殺せそうなら殺せ。数日後、僕から帰還命令が出たらそのときは星の戦士たちを殺せていなくてもこっちに戻ってきてくれ」
「おぉ〜、マルク、俺はお前がそう言ってくれるのを待ってたぞ」
「え!?お兄ちゃん、ガメレオアームがポップスターに行っちゃったら、その間のいらない魔獣を殺す仕事は誰がやるの?」
「何言ってるんだ?その仕事をするのはお前しかいないだろう」
「(いきなりガメレオアームをポップスターのカービィたちのところに送るなんて…。やっぱりお兄ちゃんの考えてることってわからない部分があるわね…)」
 マルクの『ガメレオアームをポップスターに送る』という考えが理解できずに頭を悩ませるグリル。
「それからグリル」
「え!?な…なに?お兄ちゃん?」
「明日からお前には僕とドロシアの二人の魔力で共同で作った2体の上級ランク魔獣の護衛をつける」
「え?そんなの別にいらないって……」
「護衛というよりはお前の監視と世話をする役…と言った感じかな。おい、部屋に入って来い」
「「失礼致します」」
「……?」
 マルクの声を聞いて部屋に入ってきた2人の内1人は2頭身の人型で魔女のような風貌を持ち、もう1人はシルクハットと赤いマントを身につけたマジシャンのような姿をしている。
「お前たち、グリルに自己紹介をしろ」
「初めまして、グリル様。明日から貴方の護衛に就くことになった、シミラという者です」
「同じく、貴方の護衛に就く事になったウィズです」
 最初に魔女のような姿をした魔獣がシミラと名乗り、その次にシルクハットを被った魔獣がウィズと名乗った。
「私のことを守ってくれるの?これからよろしくね〜♪」
「さあグリル、ドロシア。これからは星の戦士を本格的に潰しにいくぞ」
「うん、これからの戦いも楽しみだわ!」
「グリルが星の戦士を殺して幸せと言うのなら、私はグリルについていくまでだ」
「ありがと、ドロシアは頼もしいな♪」
 新たに出現した上級ランク魔獣のガメレオアームにシミラ、ウィズ。
 MTSはチクタクよりも更に強い上級ランク魔獣をポップスターに送り込んで星の戦士たちを殺すつもりらしい。
 星の戦士たちとMTSの戦いはまた新たな局面へと突入しようとしていた………!!




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