〜プププランド 海岸〜 ここはプププランドの、村であるププビレッジからすぐのところにある海岸。 今日のプププランドは日差しが強くて普段よりも気温が高く、水浴びや海水浴には丁度良い日和であった。 カービィとブン、イローとハニーとホッヘの3人の村の子供たちは海水浴で遊んでおり、フームは海辺の生物の観察をしている。 皆が楽しく自由な時間を過ごしている中、砂浜という海岸周辺では村に一番近い位置にいたフームが村の方向からなにか音が聞こえてくることに気が付く。 「ちょっと、皆!」 「姉ちゃん?どうしたんだよ、急に」 「村の方から何か聞こえてこない?」 「え?」 カービィが空気を読まずにまだ1人で海で泳いでいる中、ブンと村の子供たちはフームが音が聞こえてくると言っている村の方に耳を傾ける。 「確かに、音楽みたいなのが聞こえてくるよ?」 耳を傾けながらそう発言したイローを初め、ブンや村の子供たちはフームの言う『村の方から聞こえてくる音』にすぐに気が付いた。 「村のほうに見に行ってみようよ〜」 「ええ、私も気になるわ」 「確かに気になるよなぁ」 ハニーは他の皆に村の方へ行く事を提案し、フームとホッヘが賛成する。 口に出しはしなかったが、ブンとイローも頷き、全員で村の様子を見に行く事になった。 「カービィ〜!いつまで遊んでるんだぁ〜?ちょっと皆で村の方に行くぞ〜」 「ぽよ?」 ブンに大声で呼ばれたカービィはやっと泳ぐのをやめ、すでに村の方に歩き始めていたフームたちの後を追った。 〜ププビレッジ メインストリート〜 「まぁ、素敵……」 「思わずうっとりしちゃうわ……」 村のメインストリートには、美しいバイオリンの音色が村の隅々まで響き渡っており、その音色がする場所に人だかりが出来ていた。 しかもその人だかりは村人の中でも村長夫人のハナ、署長夫人のサト、占い師兼カウンセラーのメーベルを初め、その他大勢の女性の村人しか集まっていなかった。 「な…なんなのかしら……これ…」 その様子をカービィやフームたちは不思議に感じ、女性の村人だけで構成されている人だかりに近づく。すると、村人が1人、フームに話しかけてきた。 「あぁ、丁度良いところにやってきましたねフーム様。今、とっても素敵な人がとっても素敵なバイオリンの演奏を聴かせてくれてるのですよ」 「素敵な人…?」 フームは村人の発言が気になり、カービィやブン、村の子供たちと一緒に他の村人を押しのけて人だかりの中心部まで入っていった。 カービィたちが見たのは、茶色いスーツを身にまとっているという見かけない格好をした、美形で2頭身ほどの若い見た目の男性が人だかりの中心でバイオリンを弾いているところであった。 彼の弾くバイオリンの演奏は聴いた者を夢中にさせるほど綺麗なもので、カービィたちも思わずその音色の美しさに言葉を失って演奏を聴くことに集中してしまった。 やがて演奏が終わり、村の女性たちは全員、バイオリンを弾いていた男性に揃って拍手を送った。 「有難く思え、1000年に一度の天才・ジャクソン様の演奏だ。1回3000万デデンの価値がある」 「さ…3000万デデン!?」 「あ…あんなにお上手でしたら、それぐらいの価値があってもおかしくないと思いますが…」 『ジャクソン』と名乗ったそのバイオリン弾きの言葉を村の女性たちはまともに受け止めてしまい、がやがやと騒ぎ始める。 「すいませんがジャクソンさん?貴方はどこから来たんですか?」 村の女性たちが騒ぐ中、フームはジャクソンに向かって彼自身の素性について聞く。 「俺はジャクソン、さすらいの音楽家にしてバイオリン製作者…。俺はすご〜くえら〜い人だ。近いうちに全宇宙の学校の教科書に俺の名前が載ることになるだろう…。そしてこの演奏は、ここにいる運命の女たちのための俺からの心ばかりのサービスだ」 チュッ! 「……!!」 ジャクソンはフームの手を握りながら説明し、説明が終わると彼女のその手にキスをした。 ジャクソンの、見ている者も恥ずかしくなりそうなその行為に、キスをされたフーム本人はもちろん、まだ初心なブンや村の子供たちは顔を赤くする。 特にフームはジャクソンの少々軽薄な態度は気に入らないと内心では思っていたものの、彼女も立派な女性である。 初めて異性の他人からキスされたことによってさすがに熱が上がってしまい、ついついフラついてしまった。 その横でそれを見ていた村の女性たちは羨ましそうに目を輝かせ、鈍感で尚且つまだ幼いカービィはそれを見ても何だか分からず、ボーッとしている。 「キ……キスなんて私、初めてなんだけど…」 続いてジャクソンはフームの横にいた、まだ幼いとは言えども女性であるハニーにも同じように手を握りながらそこに軽くキスをする。 「キャッ!?」 ハニーはフームと同じようにジャクソンにキスをされて照れてしまい、一瞬倒れそうになってしまう。 「あぁっ!私にもお願いします〜!!」 「フーム様やハニーちゃんだけじゃなくて私にも!!」 「私も〜!!!」 フームとハニーの手にキスした後のジャクソンを見て、目を輝かせていた村の女性たちは一斉にジャクソンに集った。 しばらくして、ジャクソンのサービスに満足した村の女性たちが去っていくと、先ほどまで女性だけで作られた人だかりがあった場所にはカービィとフーム、ブン、村の子供たち、そしてジャクソンだけが残された。 「と、ところで!…ジャクソンさんは、これから行くところってないんですか?」 「そうだなぁ…。運命の女がいるところであればどこにでも行くが……」 「良ければ、私たちがこの村を案内しますけど?」 「おぉ、それはいい!さあ女神よ、どこか面白いところへ案内してくれ」 「わかりました。では…」 「…何をやってるんだ?」 「……?」 フームがカービィたちと共にジャクソンを村の様々な場所に案内しようとしたとき、村にナックルジョーとシリカの2人が姿を現した。 「なんか村の方が騒がしいって言うから来てみたんだけど…もうその騒ぎは終わったのか?」 「それが…」 ナックルジョーに聞かれたことにフームが答えようとすると、彼女の横でジャクソンがナックルジョーの隣にいたシリカのことを見つめていた。 「ウホッ!いい女…」 「…………?」 いきなり初対面の男に声をかけられたシリカは動揺し始める。 そんなシリカに構わず、ジャクソンは言葉を続ける。 「ん?なんだ?お前のその服?脇…よく見たら脇が丸見えではないか…。この世界のその体型で脇が見えてるとは、今というのは素晴らしい時代だなぁ!ふっはっはっはっはっはっ!!」 「!!!!!」 ジャクソンはシリカの服装を見て、いかにもスケベのような発言をする。 シリカはそれを聞いて思わず顔を真っ赤にしながら、反射的に戦闘服の、ジャクソンの言ったとおりの脇が見えている部分を両手で隠してしまう。 そのテンションに周囲は置いてけぼりにされており、しばらくはジャクソンが1人で喜んでいたが、なんとかフームが村案内をしようとジャクソンを誘い、ナックルジョーとシリカも合流した状態で村の各地をまわっていくこととなった。 〜レストランカワサキ〜 カービィたち一行は、ジャクソンをレストランカワサキに案内する。 客は今やって来たカービィたち以外は現在1人もいない。 店主のコックカワサキは、やって来たジャクソンを迎え入れてくれた。 「いらっしゃ〜い。あのぉ〜、どちら様で〜?」 「俺は1000年に一度の天才で…」 ジャクソンは先ほど女性たちにも話したものと似ているが内容が微妙に違う長い前置きをだらだらと話した後、いきなりカワサキに注文をする。 「とりあえず俺の分のオムライス10人前と、俺と今一緒にいる女神の分だけドリンクを持って来い」 「は〜い……って、1人で10人前もぉ〜!?」 「あぁ、そうだ。この俺こそが『素晴らしきオムライスの会』名誉会長のジャクソン様だ」 カワサキは注文を受けるが、ジャクソンが一人で10人前も食べるといったことに腰を抜かした。 驚くカワサキに対し、ジャクソンは意味不明な答えを返している。 「いいからオムライス10人前と、ドリンクの俺と女の子3人分の合わせて4人分だ。早く持って来い」 「女にしか興味ないのかよ……」 「そうみてぇだな」 ブンとナックルジョーはひそひそとそんな話を小声で話していた。 ジャクソンが言う女の子3人とは、間違いなくフームとシリカ、ハニーのことであろう。 カワサキはすぐにオムライスを10人前、ドリンクであるジュースを4人分、ジャクソンのところに持ってきた。 「お待たせ〜。オムライス10人前と、ジュース4人分出来たよ〜」 「さあ食べるかぁ!」 ジャクソンは早速スプーンを持ってオムライスを食べようとする。 そんなジャクソンを見て、ブンはジャクソンが頼んだジュースを何故かしっかりと飲んでいるフームに声をかけた。 「なぁ、姉ちゃん。カワサキってまた調味料とか間違えてるんじゃ……」 「そうね。口に合わなかったらどうするのかしら?あの人……」 料理を作ったカワサキと、カワサキの料理を普通に食べれるカービィ、そして今オムライスを食べようとしているジャクソン以外の人物が不安になってる中、ジャクソンはついにオムライスを口にする。 「!!こ…これは……!」 ジャクソンがそう言った時、フームやブンは「やっぱりね…」と言いたげな感じで苦笑いしていた。 だが……。 「………最高だ、美味い!!!」 「「ええぇぇぇぇええぇぇっ!?」」 「ぽよ?」 何とジャクソンは、カワサキが作ったオムライスを美味いと絶賛したのである。 一口オムライスを食べたジャクソンは、続けてオムライスをパクパクと食べてしまう。 周囲の人物はジャクソンの言ったことに唖然とした。 「カービィや前にこの星に来たキハーノさんほどじゃないけど、美味しいって言ってこんなにたくさん俺の料理を食べてくれる人がいるなんて嬉しいね〜」 ジャクソンはその後、オムライス10人前をあっという間にご飯粒を一つも残さずに全部食べ尽くしてしまった。 ジャクソン以外の全員は、食事中にジャクソンに対する自己紹介を済ませたが、やはりジャクソンは女性であるフームとシリカ、ハニー以外は殆ど相手にしている様子がなかった。 「食べた、食べた。食べた後は…」 「あのぉ〜、お代は……」 カワサキがお金をジャクソンに請求すると、ジャクソンはそれを聞き入れずに持っていたバイオリンのケースの中からバイオリンを取り出す。 「俺の〜♪演奏は1曲10億デデンだ〜〜♪」 そう言った後、ジャクソンは先ほどと同じようにバイオリンを弾き始めた。 「(なんでだろう?何回聞いても、ウットリしちゃう……)」 「俺は音楽とかわからないけど、いい演奏だなぁ〜……」 カワサキが音楽に夢中になってボーッとしている間に、ジャクソンはバイオリンを弾きつつ、さり気なくレストランカワサキを後にする。 全員がジャクソンが消えてしまったことに気がついたのは、ジャクソンが消えて数10分後。 「!!……ジャクソンさんはどこ!?」 「いつの間に外へ出てたのか、金も払わずに……!」 「あぁ、お勘定を〜」 フームとナックルジョー、コックカワサキは慌てて店の近くを探すが、ジャクソンの姿が見当たらない。 「カワサキ、ジャクソンさんは私たちの方で探しておくわ!」 「た、頼んだよ〜」 フームを先頭に、カービィとブン、ナックルジョー、シリカ、村の子供たち3人は、いつの間にか皆が知らないうちにどこかへと消えてしまったジャクソンを探してレストランカワサキの外に出た。 フームたちがカワサキの料理の勘定を踏み倒して出て行ったジャクソンを探し始めてから数時間後のことである。 空は赤くなって、すっかり夕方になってしまっていた。 カービィたちは村のどこを探してもジャクソンを見つけることが出来ず、諦めてデデデ城のほうへ帰ろうとしているところであった。 村の子供たち3人は自分の家へ帰宅し、現在残っているのはカービィとフーム、ブン、ナックルジョー、シリカの5人だけである。 すると、デデデ城へ続く丘のほうの道へと差し掛かった途端、音楽が聞こえてきた。 ジャクソンが演奏している、バイオリンの音色である。 音が聞こえてすぐに、ジャクソンらしき人影を見つけることも出来た。 「あ!あんなところに!!」 フームが最初にジャクソンらしき人影を見つけ、その方向へと走っていった。 他の全員も、フームの後を追って走り出す。 「おぉ、2人の女神。待っていたぞ」 「何言ってるのよ!貴方、お金払わないで店を出て行くなんて何考えてるの!?」 「お前に会えたこと、そして今日の出来事は全て運命…って奴だ」 「話が噛み合ってないわよ!貴方ね……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ… 「なんだ!?」 「土の中から何かがこっちへ向かってくる!!」 フームがジャクソンに説教を続けようとした途端、地面が揺れ始めた。 シリカは鋭い勘で地中から何かがやってくるのだと予感する。 しばらくして、シリカの予想通り、地中から巨大なウナギの姿をした化け物が姿を現した。 「グガアァァオオォォォォッ!!」 「魔獣か!?」 ナックルジョーとシリカの2人はすぐに前に出て、突然現れた怪物と戦う。 ウナギのような姿をした怪物は、本来のウナギと同じように身体が粘液でヌルヌルしており、ジョーとシリカの2人をその能力で手こずらせた。 「うおぉぉぉっ!!」 ナックルジョーが空中からパンチを浴びせようと右腕を突き出して怪物の胴体に向かって急降下をする。 しかし、パンチがヒットした瞬間の事である。 ヌルッ 「なにっ!?」 「グオオオオオッ!!」 ドン!! 「うわあっ!!!」 ウナギのような姿の怪物はヌルヌルした皮膚でナックルジョーの攻撃を受け流し、逆に尻尾を彼に叩きつけ、地面にめり込ませた。 「てやああああっ!!」 続いてシリカが愛用のクロスガンから伸ばしたナイフをウナギのような怪物の顔面に突き刺そうと飛びかかる。 彼女は武器を持っていないほうの左手で怪物をつかもうとする。 だが、粘液でヌルヌルしている身体をつかむことができず、シリカは左手を触れるまでは成功したが、そのまま滑り落ちてしまう。 ヌルッ 「うあっ!」 ズガァン!! 「ぐああっ!!」 怪物の身体から分泌される粘液の所為でつかむことに失敗したシリカは怪物の頭突きをまともに受けてしまい、地面へと勢いよく叩きつけられる。 「2人とも!!」 「ぽよ〜…」 フームは苦戦する2人を心配して思わず叫ぶ。 カービィも不安そうな表情を浮かべている。 しかし、そんな中1人だけ場違いなことをやっている者がいた。 ジャクソンである。 「あ、そうだ。フームと言ったな?あとで歯磨きセットとパジャマを買いに行こう」 「ハァッ!!?」 ジャクソンの突拍子もない台詞にフームは驚く。 「俺とお前、今夜は一つ屋根の下でトゥギャザーしようぜ?」 「こ…こんなときに何を言ってるの!?今は非常事態なのよ!!!」 「安心しろ!俺は全ての女性のタイプに適応できる!しかもツルツルでペッタペタでロリロリの幼女から、シワシワでクッチャクチャでヨボヨボのお婆ちゃんまで、対象年齢問わず…だ」 「そんな問題じゃないでしょ!!馬鹿なの、貴方!!?」 フームはジャクソンの空気を全く読んでいない、場違いすぎる行動と言動の前に激怒し、怒鳴り散らす。 先ほどまで年上の相手ということで敬語を使っていたのを忘れて。 フームがジャクソンに対して怒っている間も、戦闘はまだ続いている。 「接近戦がダメなら……!」 ナックルジョーは、右の拳にエネルギーを溜め始める。 「シリカ、悪い!あの化け物の注意を引き付けておいてくれ!!」 「わかった!」 シリカはナックルジョーの指示通り、クロスガンをマシンガン形態に変形させ、自分の方に怪物の注意を引き付ける。 「いいぞ、シリカ!こっちも準備は出来た、すぐにその化け物の近くから離れろ!!」 「うん!」 シリカが怪物の近くから離れると、ナックルジョーはエネルギーが溜まった右の拳を怪物に向かって突き出す。 「メガパワーショット!!」 「ググアァァァァアッ!!」 ドガァァァァァン!! ナックルジョーの必殺技・メガパワーショットがウナギの怪物に決まり、怪物は爆死する。 「ふぅ、終わった…」 「やったわね、2人とも!!」 「ぽよ〜!」 怪物を倒してカービィたち3人のところへとナックルジョーとシリカは戻ってきた。 「あれも多分MTSが俺たちを殺すために送り込んできた魔獣と考えて良いだろうな」 「そうね…。今の魔獣はそこまで強力な奴じゃなかったみたいだし、つい最近までこの星にいた強い魔獣のチクタクはガメレオアームっていう魔獣によって殺されたけど、またそのガメレオアームって魔獣が今度はこの星に送り込まれてくるかもしれないし……。とにかく、MTSの魔獣は送り込まれてきたらどんどん倒してこの星の平和は守らないと!」 ナックルジョーとフームはウナギのような怪物が魔獣であると断定する。 そして、ガメレオアームという、チクタクのことを先日殺害した魔獣のことについて話し始める。 「そういえば、貴方はMTSや魔獣のことについて何か知ってることはあるの?見かけからして外国か他の星の人だと思われるけど…」 フームは、隣で話を聞いていたと思われるジャクソンに、MTSのことで知ってることはないか聞く。 「MTS?魔獣?…いや、知らないな。俺が考えているのは宇宙中の女性のことと、音楽のことぐらいだからな」 「あっ、そ。何も知らないのね…。聞いて損したわ」 フームはジャクソンの言った事に少々呆れていた。 だが、ジャクソンはフームに先ほどまでの軽い態度からは考えられないほど真面目な態度で逆にこう聞き返してきた。 「聞いてて思ったんだが、お前たちはどうしてそんなに頑張るんだ?なんでそのMTSと魔獣を倒したいんだ?」 「え?そ、それは…」 フームが理由を話す前に、ジャクソンの質問には彼女に代わってナックルジョーが答えた。 「奴らは自分たちの目的を達成するには俺やここにいるカービィ、シリカと言った星の戦士が邪魔らしい。奴らはすでにいくつもの他の星を支配下にしているみてぇだ。そんな奴らをただ放っておくわけにはいかない。俺たちも命を狙われていることだしな」 「へぇ〜………」 ジャクソンは大人しく、ナックルジョーの話を聞いていた。 数秒ほどの沈黙を破り、大人しく話を聞いていたジャクソンが口を開いた。 「…あ!しまった…泊まるところを考えてなかったな………」 「(…まさか)」 フームはジャクソンのその発言に一瞬嫌な予感を感じた。 「そうだ!フーム、さっき俺はお前に『一つ屋根の下でトゥギャザーしようぜ』って言ったよな?」 「!!もしかして…」 「今からお前の家に案内しろ。そう、そこでお前と…」 「それは嫌よ!……でも貴方は悪い人じゃないみたいだし、あのバイオリンの演奏は確かに上手だし、バイオリンの演奏はパパやママにも聞かせてあげたいし…」 「よし!そうと決まればこの俺をお前の家までお前が案内するんだ。あぁ〜、今日も最高の1日だったなぁ〜…」 「…ジョー、私、ちょっとあの人のあのノリについていけない………」 「ああ。俺も同じだ」 シリカとナックルジョーは、ジャクソンのその性格にやはり呆れてしまっている。 結局、ジャクソンを彼が何者なのかまだよくわからない状態でデデデ城に泊めることとなってしまったカービィたち。 カービィ、フーム、ブン、ナックルジョー、シリカ、そしてジャクソンの6人はデデデ城への道を進んでいった。 〜デデデ城 中庭〜 「いやぁ〜、ジャクソン殿のバイオリンの演奏は素晴らしいですなぁ〜」 「ホント、うっとりするほど素敵だわぁ〜…」 時間は更に経ち、外はすっかりと暗くなってしまっている。 フームとブンの両親であるパーム大臣とメーム夫人は、デデデ城にやってきたジャクソンのバイオリンの演奏を中庭で聴いたのだが、やはり今までに聞いてきた人たちとほぼ同じ反応を見せ、彼の演奏を絶賛した。 しかし高台から、そんなジャクソンの様子を見る者がいた。 メタナイト卿とソードナイト、ブレイドナイト、そしてヘビーナイトの4人である。 「あの男は…一体……」 ソードナイトは、いつの間にかデデデ城にいたジャクソンに不信感を持つ。 「フームたちが城の中に入れたそうだが……なんだか嫌な予感がする」 メタナイト卿もソードと同じく、嫌な予感がしてならない様子であった。 「もしかすると、数日前に卿がかつてのお仲間であるパルシバル卿とパラガード卿から聞いた魔獣と言うのは……まさか……」 ブレイドナイトは、数日前にカービィやメタナイト卿が銀河戦士団の生き残りであるパラガード卿やパルシバル卿から、『何らかの姿に擬態し、魔獣を殺す役割を持っている魔獣』という存在についての情報を聞いており、自分はその場にいなかったが、後でその報告を聞いたので、そのことについて思い出した。 「そうと決まったわけではないが、しばらく様子を見るぞ。それまではあまり手は出さないようにしよう」 「「「はっ!!」」」 メタナイト卿はそれだけを3人の部下に言うと、すぐに3人と共に自分の部屋へと戻っていった。 メタナイト卿も疑っていたが、ププビレッジに突如現れたバイオリニストの男・ジャクソンは一体何者なのだろうか。 星の戦士やMTS、魔獣などのことについては知らないようだが、本当にただの通りすがりの音楽家なのか? 彼の正体は、果たして……。 |