副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第31話・前編
〜銀河戦士団とギャラクティックナイト〜



 〜ポップスター ププビレッジの外れ・バババヶ原〜

 ポップスターのプププランド周辺の時間は午前11時頃。
 ププビレッジより少し離れた場所にあり、肉食植物のピューキーが生息すると言われる密林・バババヶ原には、昨日カービィたち星の戦士をグリルや他の魔獣たちと共に襲って大苦戦させた上級ランク魔獣・ガメレオアームが、上官であるマルクの命令で、いつでもすぐに星の戦士を襲いに向かえるように身を隠していた。
 彼は朝食となる獲物を探して林のあちこちを移動しているらしい。
 斬り落とされた2本の尻尾の方はすでに回復しており、元通りになっていた。
「(マルクは次に連絡があるまでこの星に残っていろとこの俺に言って来たが…野宿がここまでキツいものだったはな…。食うための生き物はいることにはいるが、小さな虫や不味そうな草、そして昨日の晩に食べたが、肉が不味い有害生物ばかりでとても食べれたものじゃない……。こんなときは女神の作るオムライスがほしい……)」
 獲物を見つけられないガメレオアームは大好物であるオムライスのことを思い浮かべながら歩き、周囲への注意力が散漫になっていた。
 彼は崖へと直進しているのだが、全く気づかずにゆっくりとその方向に進む。
 崖の下には巨大な蜘蛛の巣があり、ガメレオアームを待ち受けているようだった。
 ガラッ!!
「ん?わあぁぁッ!!」
 足を踏み外したことでボーッとしていたガメレオアームは崖から転落、巨大な蜘蛛の巣へと引っ掛かる。
「これは……?」
   ガメレオアームはアクシデントに動揺することなく、全身に絡みつき、くっついたネバネバの蜘蛛の糸を見つめている。
 彼が逃げる間もなく、獲物が引っ掛かったことに気づいた、蜘蛛の巣を仕掛けた張本人であるこの密林に生息している巨大蜘蛛・コモが出現した。
「キシャアァァァァ…」
 コモは自分の体格の半分ほどの大きさしかない獲物のガメレオアームを捕食しようとゆっくりと近づいてくる。
「俺を食べるつもりか?…違うな、食われるのはお前のほうだ。はっ!!」
 蜘蛛の糸が身体中にくっついて動けないはずのガメレオアームだったが、簡単にそれを振りほどいてしまった。
 これにはコモも驚き、目を丸くする。
「グアアアアアッ!!」
 ガブッ!!
「グオオォォォォッッ!!」
 糸を振りほどいたガメレオアームは素早くコモに飛び掛り、大きな口を開けて胴体に食らい付く。
 ガメレオアームの牙から滲み出る、出血と麻痺の効果がある毒を体内に注入されてコモは動けなくなり、行動不能となった。
 弱ったコモの足を1本1本引き千切ってガメレオアームは口にする。
 最後は残ったコモの頭部と胴体を大きな口でそのまま食べてしまった。
「……まじぃ〜…」
 ガメレオアームは殺したコモを完食したが、あまり美味しくなかったようで、満足していなかった。
 自分の身体よりも大きい獲物を食べても空腹が満たされないガメレオアームは更に食物を探すべく、行動を再開し、密林の奥へと歩いていこうとしたが、歩き出した瞬間に彼が持っていた通信機に通信が入ってきた。
 ガメレオアームは人型のジャクソンの姿となり、茶色いスーツの内側から通信機を取り出す。
「…ガメレオアームです。愛をどうぞ」
 通信に応答したガメレオアームはいきなり意味不明な挨拶をしている。
「マルクだ。
 今ポップスターにいるお前にちょっと頼みたいことがあってな」
 通信の相手はマルクだったようで、相手がマルクとわかるとガメレオアームは途端に相変わらずの余裕を持った態度でありつつも、口調は普段のふざけたようなものではなく、声の質が少し変わって真面目そうなものとなった。
「その頼み事はどうしても俺が必要なのか?余程のことじゃなければ、俺は女の子のお願い以外はあんまり聞きたくなんでね。頼みごとがあるんだったら、今すぐグリルと代わってくれ」
「そんな偉そうなことを言ってもいいのか?普通に考えてお前は上官の僕に逆らえる立場ではないと思うが……まぁ良い。そうツベコベ言いつつもお前はいつも裏切ったり勝手な行動をせずにちゃんと頼まれた仕事だけをこなしてくれるからな。そういう意味ではお前は僕の腹心であるグリルよりも使いやすい。依頼の内容は、お前の本業とも言える仕事だな」
「裏切り者の魔獣の始末?それとも、MTSで一番のお偉いさんであるお前の言う事を聞かない悪い子のお仕置きか?」
「そのどちらかと言ったら後者の仕事だな。今、惑星スカイハイを脱走して宇宙へと飛び立ち、宇宙空間を飛んでポップスターに向かっている魔獣が1体いる。その魔獣は飛んでいる方向を下っ端たちに頼んで予測してもらったところ、そのままププビレッジの方へ飛来することがわかった。そこで……」
  「その魔獣をこの俺に始末してもらいたい……って感じだろ?」
  「そういうことだ」
  「その魔獣は『星のカービィ』とやらと戦わせなくていいのか?」
  「今カービィたちを始末するのはお前とマスコローゾ、そして今お前と一緒にいるはずのシャードロの仕事だ。逃げ出した魔獣をカービィやメタナイト卿たちと戦わせるなんて、余程のことが無い限りさせないよ」
  「わかった。じゃあ暫くしたら、俺はそいつを待ち伏せるために早めにププビレッジへ向かっておく」
  「……ところでだ、お前。今はパラマターをそっちに置いてないからわからないのだが、どこで何をしてるんだ…?『ププビレッジに向かう』と言ったということは、村にはいないのか?」
  「村人が恐れて近づこうとしない危険区域の密林で野宿だ。もう俺の正体は星の戦士たちにバレているし、ここに隠れてここの生物たちを狩り、それを食べている。だがあいつらの肉は不味すぎて、女神の手作りオムライスが恋しい。それから女神に演奏も聞かせてやりたい。本当は野宿なんてしたくなかったんだけどな。仕方ないこととは思っているが」
  「お前には悪いが、予定が変わらない限りはポップスターにいてもらうぞ。何度でも言うが、現在のお前の仕事は不要な魔獣の処分の他に、星の戦士の抹殺と言うのもあるからな。じゃあ、僕はまだ別のことで忙しいから、ここで切るよ」
  「わかった。…さて、俺もお仕事をするか」
 マルクが通信を切断するとジャクソンはまた通信機を上着の裏側に隠し、再びガメレオアームの姿となってマルクからの依頼を実行すべく、村がある方向へと歩き出した。


 〜デデデ城 メタナイト卿の部屋〜

 ガメレオアームがバババヶ原で行動を開始してから数分時間は経ち、メタナイト卿の部屋にはカービィとフーム、ナックルジョー、シリカ、騎士たちが召集され、待機していた。
 騎士たちの中で現在部屋の中にいるのはソードナイト、ヘビーナイト、アックスナイト、トライデントナイト、ジャベリンナイトの5人だけであり、残りの2人であるブレイドナイトとメイスナイトは外出中なのか、姿が見当たらない。
 しばらくして…。
 ガチャッ
「ただいま〜。戻ってきたダス〜」
「只今戻りました、メタナイト卿」
「ぽよ、ぽよ!」
 部屋に入ってきたのはどこかに出かけていたと思われる、メタナイト卿の部下であるメイスナイトとブレイドナイトの2人。
 2人が帰ってきて、カービィが親が帰ってきてはしゃぐ子供のようにニコニコしながら飛び跳ねて出迎えた。
「おかえり。早速だが、村人から目撃情報があったという魔獣・ガメレオアームはまだこの近くにいるのか?」
 メタナイト卿は、外出から帰ってきたブレイドナイトとメイスナイトにガメレオアームの事について聞いた。
 2人は、村人から『カメレオンのような化け物を見た』という情報を事前に聞いたメタナイト卿の頼みで、ププビレッジとその周辺の調査に出かけていたのだ。
 メタナイト卿から聞かれたとおり、ブレイドナイトがメイスナイトと共に行った、ガメレオアームらしき存在の行方の調査の結果について報告する。
「ガメレオアームは現在、かつて卿がカービィ殿を助けるべくフーム様と共に訪れた事のあるという、村から少々離れた場所にある密林・バババヶ原に潜伏中です。森には奴が食べ残したと思われる有害生物たちの死骸が、あちこちに散らばってました」
「その魔獣に殺された生き物の中には大きいヘビみたいな奴もいて、身体に大きな口で噛まれたような痕があったダス」
「うむ。有難うブレイド、メイス。…ガメレオアームらしき怪物についてはそういうことらしい。そしてシリカ、昨日新たに出現した魔獣・マスコローゾについて話したい事があるようだが、マスコローゾのことについてそなたから話を聞きたい。奴は間違いでなければ、私も心当たりがある魔獣なのだ」
 メタナイト卿はガメレオアームについての報告を聞いた後、自分の横にいたシリカに声をかける。
「はい。昨日その魔獣は、カービィやジョーが私を助けに来る前に私のことを見て、『昔に見たことのある顔』って言ったんです。当然私は初めて見たわけで見覚えが無く、人違いじゃないのか?と私は返しました。ところが、魔獣は更にこう付け加えてきたんです。『銀河戦士団の初代リーダーである奴と戦った事がある』…って。
その魔獣が言う、『銀河戦士団の初代リーダー』である人物は、メタナイト卿や私の母さんの知り合いなのでは……と思って、このことについて聞きたかったのです」
  メタナイト卿はシリカの話を全て黙って聞いた後、数秒の間を空けてから口を開いた。
「やはりあのマスコローゾは、銀河大戦が始まって間もない頃にギャラク様と戦った……」
「「!!」」
 メタナイト卿の発言に周囲の人物…特にフームとジョー、シリカの3人は目を丸くし、表情から驚きを隠せていないようであった。
「つまり…どういうこと?」
 フームは首を傾げ、メタナイト卿の話の続きを聞こうとする。
「その魔獣は『同じ名前を名乗っている別人』ということがあったりしなければ、かつて銀河大戦のときに銀河戦士団と衝突したことがある強力な魔獣だ。だが 彼はあのとき死んだはずでは……」
「メタナイト、そのときの詳しい事をもっと教えてくれよ。で、初代リーダーってのは…」
「ジョー!ちょっと静かにして!!」
  「うるせーな!お前だって俺と同じことを言いたいくせに…」
  「(仲が良いわね、あの2人。でも、なんだかいつもと逆のような…)」
 シリカが魔獣の口から聞いたという銀河戦士団初代リーダーが誰なのか気になって仕方が無いナックルジョーはメタナイト卿に早く話すように催促するが、シリカが急かしているジョーに注意をする。  横で見ていたフームは2人の子供のような声の掛け合いに呆れ、同時に普段は冷静さを失いやすくて先走る事の多いシリカを宥めたり、突っ込みを入れることの多いジョーが、以前ゴッドが襲撃してきたときほどではないものの、珍しくシリカよりも落ち着きがなかったことを不思議に思っていた。
「……2人とも、順番に話していくから静かに聞いていなさい。まずは私が知る『マスコローゾ』という名の魔獣のことについて話そう。あれは銀河大戦が始まってから30年ほど経った、ある日のことだった……」
 急かされたメタナイト卿はジョーとシリカのやり取りを見て『やれやれ』と思いつつ、彼らの親であるかのような口調で静かにしているように言い、銀河大戦の当時のことを思い出しながら、話を続ける。

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 ――銀河戦士団の創設者にして初代団長であったお方…『ギャラクティックナイト』様はその日、銀河戦士団の女剣士・ガールードを初めとした複数の部下と共に、私が所属していた部隊とは別の隊を組んで行動をしていた。
 そして彼らの部隊はナイトメア軍との交戦中、ある魔獣と遭遇した。城壁のような姿をしたその魔獣は星の戦士たちの前に現れると、自ら名を名乗ってきた。
 その魔獣の名は『マスコローゾ』。
 マスコローゾは名を名乗るなり、『ゲーム』と称してナイトメア軍の者や他の魔獣を押し退けて、ギャラク様やガールードたちに襲い掛かってきた。
 マスコローゾの荒々しい攻撃と硬い皮膚の前に団員たちはまるで歯が立たず、次々と倒れていった。
その中でもギャラク様と、部隊にちょうど配属されていた、ギャラク様や私と同じく銀河戦士団に初期からいる戦士である『トリストラム卿』、女性団員のガールードの3名だけが何とかマスコローゾに反撃し、互角に戦えていた。
 戦いは長引き、次々と戦士たちが倒れていく中、攻撃で傷ついたガールードがマスコローゾに捕まってしまった。
 マスコローゾがガールードにとどめを刺そうとしたその時、ギャラク様は槍を右手に持ち、隙だらけになっているマスコローゾに向かって駆け出した。
 ギャラク様はマスコローゾから見て右側から接近し、雄叫びを上げながらエネルギーを纏った槍を力強く突き出した……。

『うおおおぉぉぉぉッ!!』
『ぬぅ?』
 バシュッ バチバチバチイィィッ!!
『ぐ……あぐあぁあぁぁぁッ!!』

 ――ギャラク様の渾身の一撃は襲われていたガールードを助けただけでなく、マスコローゾに重傷を負わせることに成功した。
 怪我をしたマスコローゾはその場から逃走、煙のように姿を消してしまった。
 しかしギャラク様とトリストラム卿は、怪我をしたガールードの身を案じてマスコローゾのことを追わず、彼女を庇いながら銀河戦士団本部に帰還した……。
 マスコローゾとの戦闘で生き残ったのはギャラク様と、トリストラム卿、ガールードの3人だけであり、多くの犠牲者が銀河戦士団側には出た。
 だが、マスコローゾという魔獣は、戦争を通してそのたったの1回きりしか出現の報告が無く、行方は誰にも分からなくなり、戦士団の間では『ギャラク様との戦いで死んだ』という扱いにされた……。

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「ぽよ〜……?」
 メタナイト卿の知る『マスコローゾ』というHN社の魔獣のことについての昔話が終わったが、カービィにとっては話が難しかったようでぽかーんとした顔をしていた。
「…今の話を整理すると、メタナイトが言う、その銀河戦士団の初代リーダーだった『ギャラクティックナイト』って人と、もう1人メタナイトと同じくらい銀河戦士団に長くいた『トリストラム』って言う人、そしてシリカのお袋がマスコローゾって魔獣を撃退した……ってわけだな」
 ナックルジョーはメタナイト卿の話したことを自分なりに整理し、纏めた。
「その魔獣マスコローゾが昨日カービィや皆と戦った魔獣と同じ魔獣だとすると……あの魔獣はシリカのことをシリカのママと勘違いしたんじゃないのかしら…?」
「…なるほど……」
 フームがマスコローゾのことについて考えた可能性をシリカに話すと、シリカはそのフームの考えを肯定する。
「話を続けるぞ。次は銀河戦士団を結成した初代団長・ギャラクティックナイト様についての話だ」
 メタナイト卿の話の続きに、カービィたちはまた耳を傾ける。
 
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 ――魔王ナイトメアの宇宙征服の野望を打ち砕くべく、正義と自由を愛する者たちが集まって出来上がった組織『星の戦士団』もとい『銀河戦士団』は、ナイトメアに逆らった魔獣たちが最初に結成を考えて、それが起源となっている……というのはそなたたちも知っているだろう。
 『星の戦士が元は魔獣である』と言うのは私やカービィ、他の銀河戦士団に所属していた星の戦士たちのほぼ全てに言える誕生経緯であるということも…。
 ギャラクティックナイト様も元は銀河大戦が始まるよりも遥かに昔、ナイトメアによって生み出された強力な魔獣であった…。
 彼は絶大な力をナイトメアから与えられており、宇宙各地を他の魔獣を率いて荒らしまわり、ナイトメアの宇宙征服に大きく貢献をしていた。
 しかし、誕生から数百年経ったある日、突如としてギャラク様は人が変わられたかのように、ナイトメアに反発するようになっていった。
 ただ戦うことしか考えずに暴れるだけであった魔獣が何かが原因で、奥底に僅かに秘めていた『正義の心』に目覚めて、ナイトメアのしていることが間違いであると考えるようになったのだ。
 ついにギャラク様は決起、ナイトメアに反旗を揺るがしてナイトメア軍を脱退。
 ナイトメアの下を離れたギャラク様は宇宙を荒らしていた魔獣たちに必死に呼びかけた。
 『ナイトメアに利用されるがままでいいのか』と…。
 最初はその呼びかけに応じない者がほとんどであったが、次第にギャラク様に続いて『正義の心』を秘めていた者たちが、ナイトメアの支配に抵抗しようという気持ちを持ちだし始め、そしてそのような者たちは次々と増えていった。
 オーサー卿やパルシバル卿、そして私もギャラク様の説得によって正義に目覚めた者の1人であった。
 ギャラク様の呼びかけによって、ギャラク様とオーサー卿、パルシバル卿、パラガード卿、ノイスラート卿、ガーベイン卿、トリストラム卿、メドラウト卿、クレイトス卿、そして私の10人によって、銀河戦士団は結成された。
 その後もギャラク様の説得で次々と正義に目覚めた元魔獣たちが集まり、元は魔獣であった者だけではなく、様々な星からナイトメアに立ち向かおうとする者たちが銀河戦士団に入りたいと申し出てきた。
 ナックルジョーの父のジェクラと、シリカの母のガールードも、その銀河戦士団入りを申し込んできた者だった。
 こうして銀河戦士団はナイトメア軍に対抗できるほどの大きな組織となったのだ……。

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「…ギャラクティックナイト様についての話は以上だ」
「オーサー卿からも聞きましたが、メタナイト卿って銀河戦士団を作ったメンバーの1人だったんですね。すごいなぁ……」
「でもメタナイト、ナイトメア要塞を攻撃するときに協力してくれた人たちや、この前ヤミカゲの奴が言っていたクレイトス卿以外の人は……やっぱり…」
 シリカはメタナイト卿が銀河戦士団の結成に関わっていたことに驚き、ナックルジョーはナイトメア要塞を共に攻撃してくれたオーサー卿ら4人の元銀河戦士団メンバー、先日現れた忍者のヤミカゲが『行方をくらましていたが健在である』と話したクレイトス卿以外の人物はどうなったのかを、殆どがもうこの世の人ではないと察しつつ、返ってくる答えが救いのないものであると考えてメタナイト卿に彼らの行方を訊いた。
「ギャラク様はある日忽然と姿を消してしまった。その行方と原因は誰にも分からず、数日後に戦士団の中で特別編成の捜索隊が結成されて彼を探しに出かけたのだが、見つけることが出来ず、捜索隊のメンバーは一部はナイトメアの手先によって殺され、残りはナイトメア側のほうへと寝返ってしまった。それ故にギャラク様は公には死亡扱いされたが、本当はまだ生きていられるのか、亡くなられたのか、私にもわからない。トリストラム卿は行方知れずで、メドラウト卿は残念ながら大戦中に亡くなられてしまったことが確認された。ガーベイン卿は…………」
 メタナイト卿がギャラクティックナイトら3人のメンバーについて話し終わり、続けて残りの1人であるガーベイン卿のことについて話し始めようとしたその時。
 ドンドン!
「ん?誰だ?…アックス、悪いがちょっと出てくれ」
「へ〜い」
 部屋のドアを誰かがノックする音がし、メタナイト卿はアックスナイトにやってきた来客を迎え、応対するように言う。
 メタナイト卿に頼まれてアックスナイトはドアを開けた。
 ドアを開けた向こう側にいたのは1人のワドルディ兵士であった。
「あ、ワドルディじゃん。何かあったのか?」
 アックスナイトに用件を聞かれたワドルディは何か書かれた紙をアックスナイトに渡して、またどこかへと行ってしまった。
 アックスナイトはワドルディから渡された紙を持ってカービィたちが集まっている部屋の真ん中あたりまで戻ってきた。
   やってきたワドルディの姿を見たフームは何か思い出したかのか、騎士たちに疑問に思っていたことを聞く。
「そう言えば気になったんだけど、ワドルディたちやワドルドゥ隊長はどうして私たちのほうに協力的になってきているの?この前、ここにたくさんの魔獣が襲ってきたときも、魔獣を追い払うために戦ってたみたいだし…」
「そのことについてですが、あのときにワドルドゥ隊長が我々と協力関係を結んでほしいと、自ら進んで願い出てきたからです」
「ワドルドゥ隊長は、陛下に前と同じような過ちを犯してほしくないと考えていて、私たちと協力してMTSに対抗したいそうで。私たちはこれを了承し、ワドルドゥ隊長とワドルディたちは表向きは前と同じように陛下を守るために行動し、裏では出来る限り私たちを支援してくれるとのことです」
「流石にワドルドゥ隊長も、今の自体がおかしいってことに気づいていたのね…」
 ソードナイトとブレイドナイトの2人がフームやカービィたちにワドルドゥ隊長とワドルディたちのことについて話し、さらに続けて詳しい説明をした。
 ソードとブレイド、他の元ナイト・バンテッドの騎士たちがワドルドゥ隊長自身から聞いたことによると、MTSが自分たちの客であるデデデ大王の意思とは関係なく魔獣を送り込んでくる頻度がHN社よりも高い傾向にあることにワドルドゥ隊長は気が付き、その状態をおかしいと感じて『本来は命令には逆らえない立場ではあるが、陛下にまた同じ間違いをしてほしくない』と、デデデ大王の暴走とMTSを止めるために星の戦士たちや騎士たちに協力したいという考えに至ったそうだ。
 元々ワドルドゥ隊長も以前から、いつも部下たちに無理難題を吹っかけて困らせてしまう独裁者であるデデデ大王に対して不満を持ったりすることもあった良識人であったため、このワドルドゥ隊長がこちら側に協力してくれるという姿勢を見せたことにはフーム達も素直に喜んだ。
 ソードとブレイドの口からワドルドゥ隊長とワドルディたちのことについての話が終わると、続いてアックスナイトからワドルディが持っていた紙を受け取ったメタナイト卿が口を開いた。
「村人から、メインストリートにて怪物が2体争っているとの報せが届いたらしい。戦っている内の1匹の怪物はカメレオンみたいな姿をしていたそうだ」
「ガメレオアームね!!」
 カメレオンのような姿と聞いた途端、フームは暴れている2体の怪物のうちの1体はガメレオアームであると断定した。
「この近くに潜伏しているのであれば、そうと見て間違いないだろう。カービィ、ジョー、シリカ。村へ行って魔獣たちから民を守るぞ」
「ぽよ!」
「おう!任せておけ」
「わかりました」
「フームはカービィのサポートを頼む」
「ええ!」
「お前達、留守は任せた」
「はっ!…ですが、もし卿に万が一のことがあれば必ず駆けつけますので」
「うむ」
 カービィ、ジョー、シリカ、フーム、騎士達のそれぞれにメタナイト卿は指示を与え、自分はカービィたち4人と共に魔獣が現れたという村の方へと向かった。

 村の方へと急ぐカービィたち5人。
 しかし彼らの前に、彼らにとっては出来れば遭遇したくない相手が運悪く出現した。
 ピシュン!!
「こんにちは。5人揃ってどこに行くつもりなの?」
 現れたのはMTS副官のグリルと、その側近である魔獣のシミラとウィズだった。
「またお前達か…!!」
「あなた、今度は何しにやってきたの!?」
 ナックルジョーとフームは、グリルに食って掛かる。
「今日はもうお仕事が終わっちゃったところでさぁ、貴方達と戦うためにここに来たんじゃないの。でも、それだけで帰るのはちょっと勿体ないし、寄り道も 良いかなぁ〜……って思って」
「この前も今と似たようなことを言って、我々に戦いを挑んできたな」
 メタナイト卿は前にデデデ城で彼女と戦った時のことを思い出し、ギャラクシアを鞘からすぐに引き抜けるよう、突き出ている持ち手に右手を添えた。
 それに構わずグリルは会話を進める。
「それよりも貴方達。なんだか急いでるみたいだけど何かあったの?」
「村をガメレオアームともう1匹違う魔獣に襲わせてるのはあなたじゃないの?」
 グリルが訊いてきたことにフームはすかさず言葉を返した。
「魔獣?ガメレオアームとシャードロがこの星にいることは知ってるけど、更にもう1匹いるって言う魔獣については知らないわ。何も聞いてないもの」
 フームの話を聞いたグリルはガメレオアームの他に現れたという魔獣のことについて何も知らないようだった。
「……で?そんなことよりも。貴方達は私たちの暇潰しの相手をしてくれるのかしら?」
 グリルは話ばかりで退屈になってきたのか、話を元の話題に戻す。
「今聞いたと思うが、私たちは村を襲っている魔獣を倒すために急いでいるんだ。お前たちに付き合っている暇なんかない!」
 構っていられる時間なんかない、とシリカはグリルに対して強い口調で言い放った。
「それさぁ〜、自分よりも強い相手に言える言葉なの?それに、そっちが乗り気じゃなくても私たち3人から逃げられないことぐらいわかってるでしょ?」
「くっ……」
 グリルはシリカの発言を『やれやれ』と言うように彼女の主張を受け付けなかった。
「わかったなら早速……」
「はああぁぁッ!!」
「ぬ!?」
 いい加減戦いを始めたがっていたグリルは、自分から見て右横にいたシミラに目で合図し、その後シミラが杖を魔法で両刃の剣に変形させ、星の戦士たちに斬りかかってきた。
 だがその直後、星の戦士たちの中から素早い動きでメタナイト卿が1人飛び出し、ギャラクシアを鞘から引き抜いてシミラの剣を受け止め、押さえつけた。
「メ……メタナイト卿ッ!!」
「ぽよぉ!!」
「フーム!そなたはカービィたちと村の方へ…」
「で、でも…貴方だけじゃ…」
「メタナイト!フームの言うとおり、1人でそいつら3人を相手するには……」
「そうです!メタナイト卿、戦うのなら私たちも一緒に…」
 メタナイト卿は自分のことをこの場に置いて、フームにカービィたちを連れて村の方へ行くように急かすが、当の彼女とナックルジョー、シリカの3人はそれを拒んだ。
 何しろグリルはカービィたち4人の星の戦士が力を合わせて戦っても全く歯が立たなかった強敵。
 そしてつい昨日新しくカービィたちの目の前に姿を現したグリルの側近の魔獣であるシミラとウィズも、昨日は弱ったカービィたちにトドメを刺しに来ただけのようなもので本当の実力はまだ不明ではあるが、副官の側近に選ばれることからそれ相応の実力者であることが予測できる。
 いくらメタナイト卿の剣術とギャラクシアのパワーが優れたものとは言えど、1人だけでこの3人を同時に相手にするのは無謀すぎる。
 このまま1人で戦えば最悪の結果にもなりかねない。
 そう思ったフームとジョー、シリカであったが、メタナイト卿は…。
「私は3人を倒すとは言っていない。隙を見て、そなた達の方へと合流する。わかったら村の方へ急いでくれ。村人たちが危ない」
「わ……わかったわ。でも、無理だけはしないでね、メタナイト卿」
メタナイト卿に言われてフームはカービィたち3人の星の戦士の先頭に立ち、村の方向へ急いで走っていく。
「あ〜あ、逃げちゃった。せっかくいじめてあげようと思ったのに……」
「グリル様、追わなくてよろしいのですか?」
 カービィたちが走って行った方向を見つめるグリルに、ウィズが声をかけた。
「いいわよ、もう。私気が変わった。シミラ、メタナイト卿の相手は貴女1人に任せるわ。私とウィズは見るだけにしておくから」
「承知いたしました。メタナイト卿を始末すればよろしいのですね?」
「うん。昨日の戦い方見る限り、いちいち1対1の戦いじゃないと嫌だとかくだらないこと言ってる貴方にはそっちのほうが良いでしょ?」
「くっ、くだらないなんて、そんな……」
 獲物が逃げてしまったことにより、戦う気が失せてしまったグリルはシミラにメタナイト卿を倒すように命じる。
 シミラはメタナイト卿とまだ剣で鍔迫り合いをしつつ会話に応じていたが、グリルに自分のポリシーを馬鹿にされて落ち込むような表情を一瞬見せる。
 一方でメタナイト卿はシミラの鍔迫り合いをしつつ会話を続けるという余裕さに驚いていた。
「それからメタナイト卿。あの子たちに合流するみたいなこと言ってたけど、簡単にシミラや私たちから逃げられるなんて思わないでよね?」
「……………」
 ガギイィィィィンッッ!!
 お互いに剣を弾き合い、距離を取ったメタナイト卿とシミラ。
 2人は再びお互いの剣を構えてまた正面からぶつかろうとする。
 果たしてメタナイト卿は、先を急いだカービィたちのところへと追いつくことができるのであろうか……。




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