副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第31話・後編
〜VSガメレオアーム、マスコローゾ、シミラ〜



 時間はカービィたち星の戦士が村に魔獣が2体出現して争っているとの通報が届く数分ほど前に遡る。
 マルクから通信を受け取った執行人の魔獣・ガメレオアームは、命令通りププビレッジのメインストリートへと向かっていた。
 バババヶ原の危険生物を捕食して飢えを凌いでいたガメレオアームであったが、危険生物の肉の味はあまり美味しいと言えたものではなかったようで、腹に溜まらず、すぐにまた空腹に苦しむこととなってしまった。
 言ってしまえば、『食べたのに食べたという実感が湧かない』という状態なのであろう。
 空腹に耐えられず、彼は村に入る直前で思わず大きな声で叫んでしまった。
「ダメだ、すぐに腹が減る。泣く子はいねぇがぁ〜!?俺が食べちゃうぞぉぉ〜っ!!……って、ぅん?」
 1人空しく叫んだガメレオアームだったが、あることに気が付いた。
「(村の方から美味そうなニオイが……これは…)」
 ある匂いを嗅ぎ付けたガメレオアームは背景に溶け込んで姿を消して準備を整えた。
「(丁度良い。村の方に行って、マルクの言う事聞かない悪い子ちゃんをお仕置きする前に腹の方を何とか出来そうだ)」
 舌なめずりをしたガメレオアームは音を立てずに村へと歩き続けた。


 〜ププビレッジ メインストリート〜

 村人に気付かれないよう姿を透明にし、音も無く村のメインストリートに侵入出来たガメレオアームは匂いのする方向へと歩いて行く。
 彼が向かった先は、コックカワサキが経営しているレストランだった。
 レストランの店内に入ると数人の客がそれぞれ席についており、注文を終えてカワサキの料理が出来るのを待っている様子で、中にはすでに用意された水を飲んでいる者もいた。
 ガメレオアームは他の客にバレないまま、カワサキがいる厨房の方へと進んでいく。
  「(やはりこれの匂いだったか………じゅるっ)」
 カワサキが作って、客たちの方へ持っていこうとしたのはガメレオアームの大好物・オムライスだった。
 注文した客が2人いたのか、オムライスは2つずつ作られていた。
 カワサキは次に注文されたと思われるドリンクを用意するために店の更に奥に行き、合わせて2人前あるオムライスから目を離した。
 『しめた』と言わんばかりにガメレオアームは大きな口を開けて長い舌を伸ばし、オムライスを乗せられていた皿ごと2つまとめて口に持っていく。
 バリバリ大きな音を立ててガメレオアームはオムライスを食べ終え、バレる前に店を出て行こうとした。
 しかし、そう思った矢先のことである。
「きゃあああああぁぁッッ!!」
「ん?」
 店の外から村人たちの叫び声が聞こえてきた。
 突然現れた何かに驚いたかのような大きな声だ。
「(もう来たってのか…。少しは休憩させてくれ。俺は1000年に1度の天才だぞ?いいや、売れっ子でモテモテの天才に休んでる暇なんてないか)」
 ガメレオアームは何が起きているのかをすぐに察して店から飛び出した。
 
 店から飛び出したガメレオアームは、まず人目につかない物陰に隠れて現れた魔獣の姿を確認した。
「(あれは惑星スカイハイにいたはずのフクロウの魔獣、『オウグルフ』だな……。あの程度の相手なら手こずることは無いか)」
 ガメレオアームが見た魔獣は赤色に近い、明るめの茶色の羽毛を持ったフクロウのような姿をした魔獣で、名前はオウグルフと言うらしい。
 オウグルフの体格は大きく、ガメレオアームの3倍はあると言えるほどであった。
 オウグルフの姿を見ると、物陰でガメレオアームは透明化してる状態から実体化し、姿を現した。
 そして、隠れていた物陰から飛び出し、村人をよちよちと歩いて追い掛け回しているフクロウの魔獣のオウグルフに飛び掛かった。
「言う事を聞かないイケない子は俺がお仕置きしなきゃなぁ!はあああぁッ!!」
 村人たちが逃げ惑う中、ガメレオアームは逆方向…オウグルフがいる方向に突進、跳躍する。
 ガメレオアームに気が付いたオウグルフは素早く空中へと逃げようとするが、ガメレオアームはそれを逃さず、オウグルフの足に捕まった。
 ガメレオアームはそのままオウグルフの身体をよじ登り、大きな口を開いて牙を突き立てる。
「ピイィィィッ!!」
 噛み付かれて悲鳴を上げたオウグルフはそのまま地面に墜落。
 ガメレオアームはさらに続けて攻撃を仕掛けようとするが、思い通りにはいかず、オウグルフが注入された毒に苦しみつつも足でガメレオアームを蹴飛ばした。
「ぐわッ!!」
 ガメレオアームを突き放したオウグルフは立ち上がり、左右の巨大な翼を羽ばたかせて突風を引き起こす。
 突風の所為で周囲には砂埃が上がり、地面に落ちたものやガメレオアームを巻き上げて吹き飛ばした。
「うがッ!!」
 羽ばたきによる強風で吹き飛ばされたガメレオアームはメインストリートのシンボルのような存在である大木にぶつかった。
「やったな……次はこっちの番だ」
 大木にぶつかってダメージを受けたガメレオアームだったが、構わずに立ち上がった。
 オウグルフの方はと言うと、ガメレオアームに注入された毒が効いてきたようで、羽ばたくとすぐにバテてその場にへばってしまった。
 そのことで突風が止み、ガメレオアームは行動が出来るようになり、次の攻撃をするべく再びオウグルフの方へと走る。
「もう逃げられねぇようだな」
 動けないオウグルフを見てにやけたガメレオアームは高くジャンプし、口を開けて虹色に光る弾丸『ペイントボム』を3連射した。
 ヒュンヒュンヒュン ドガアアァァァァンッッ!!
「ピギイィィィ!!」
 ペイントボムはへばっているオウグルフに命中し、爆発を起こす。
 ペイントボムを3発浴びたオウグルフは動かなくなり、そのまま呼吸が止まってしまった。
 戦いはガメレオアームが勝つことで終わった…かに見えた。
 ガメレオアームがオウグルフを倒して村から去ろうとしたとき、通報を受けて駆け付けたカービィ、フーム、ナックルジョー、シリカの4人が到着した。
「チクタクたちに続いてまた仲間を殺したのね、あなた……!」
「お前はどうしてそう簡単に、それも平気で仲間を殺せるんだ!?」
 ガメレオアームのすぐ横にあるオウグルフの死体を見たフームとシリカの2人が思わず口を開いた。
 2人とも、仲間を簡単に始末してしまうガメレオアームに対して怒りを表面上に出して顔をしかめており、幼い所為か状況をいまいち理解出来ていないカービィはともかく、ナックルジョーもフームとシリカの2人と同じ気持ちであろう。
 仲間が絶対に大切な存在であると考える星の戦士たちにとって、ガメレオアームのしている行為は許し難いことだった。
「悪いな、俺の女神たち。仲間殺しってのは今では組織内での俺の専属の仕事なんでね。仲間たちをそうやって管理している俺や他の奴らがどう思っていようとそれは変わらない」
「仲間を手にかけることに戸惑いは無いのか……!?」
 冷酷とも言える返事が返ってきて、ナックルジョーがガメレオアームに訊き返した。
「そんなことをいちいち考えていたらキリがない。仲間内では憐みの意味を込めて『辛い一生』…なんて言われることもあるが、気にしてしまったら負けだと俺は思っている。俺は俺に与えられた俺の役割を 果たすまでだ」
「…こっ……こいつ……!」
 ジャキン!
「よせ、シリカ!すぐに1人で突っ走ろうとするな!」
 ガメレオアームの言葉を聞いて我慢できなくなったのか、仲間のことを第一に考える性格で、人1倍他人を大切にする気質の持ち主であるシリカが、クロスガンからナイフを伸ばして斬りかかろうと前に出ようとするが、ジョーがシリカの左肩を掴んで押さえ、彼女のことを止めた。
「でっ…でも!ジョー……私はあいつのことが…」
「お前の気持ちはわかるが、今ここでお前が怒りに任せてすぐにでも戦うと周りに被害が出る。それと、戦うことになったら俺とカービィも一緒に奴を叩く。
あとは気持ちを少しは落ち着かせるんだ。
お前はいつもそうやって、目の前のこと以外の周りのことが見えなくなるんだろ?」
「………………」
ジョーに対して何か言いたそうにしていたシリカだったが、今はそんな口論をしてる場合ではないことはわかりきっていたため、大人しくジョーの言う事に従い、黙って武器を下ろした。
「相変わらず怒った顔も可愛いな。……それよりも、仮面の騎士はまた別のところにいるのか?」
 怒ったシリカの顔を見てガメレオアームは気分を良くしながら、仮面の騎士ことメタナイト卿のことについて話を振る。
「メタナイト卿は今………」
「グワアアアアアァァッッ!!」
「こ、こっちにも化け物が!」
「逃げろおぉぉッ!!!」
「!?」
 フームがガメレオアームに、メタナイト卿のことを説明しようとしたそのときだ。
 野獣のような吠え声と村人の声で彼女の声はかき消されてしまった。
 全員が吠え声と悲鳴が聞こえた方向を見ると、そこにいたのは村人に暴行を加えているマスコローゾの姿があった。
 マスコローゾもまた、ガメレオアームのようにポップスターに潜伏していたかどうかは定かではないが、村人が被害に遭っている今は星の戦士たちにそんなことを考えている余裕はない。
「何か面白いことは無いのか……?」
「ひっ…ひいぃぃぃ…!!」
 マスコローゾが怯えている1人の村人の頭をつかんで持ち上げる。
「あ〜あ、また関係のない人を襲ってらぁ。あの調子じゃあ、次にあんなことしたら殺すぞ?でも、今はちょうどいい」
 マスコローゾがいるのを見てガメレオアームは何かを思いつき、いきなり手を上げて大声を出した。
「ヘイ!そこにいる肩からヘンなものをぶら下げたライオンくん!!」
「グルル…?」
 ガメレオアームに呼ばれたマスコローゾは村人を解放すると、真っ直ぐに星の戦士たちとガメレオアームがいる方向に歩いてくる。
 星の戦士たちの正面にいるガメレオアームと、星の戦士たちの背後にいるマスコローゾ。
 カービィたちは挟み撃ちの状態となってしまった。
「退屈なんだろう?だったら俺達2人で星の戦士3人を倒すって言う、  昨日のゲームの続きでもやってみないか?」
「昨日の続き、か……。それも面白そうだ。早速始めよう」
 ガメレオアームと、彼の誘いに乗ったマスコローゾはそのままカービィたちに襲い掛かる。
「3人とも!わかってると思うけど、被害が出ないように村の外れまであいつらを誘導するように動いて!!」
「ああ!!」
 フームはサポートに回るべく横に避難しつつ3人に指示を出し、ナックルジョーがそれに返事をした。
 カービィとシリカも頷いて、フームの言った通りに村の外へ敵を誘い出すように動くことにした。
 
 カービィは正面から向かってきたガメレオアームと対決。
「カービィ、あの魔獣の羽毛を吸い込んで!」
 フームはカービィに、ガメレオアームに倒されたオウグルフの死骸から羽毛を吸い込むように指示する。
 オウグルフの羽毛を飲み込み、頭にネイティブアメリカンがつけているような羽飾りであるウォーボンネットをつけた姿・ウィングカービィに変身する。
 ウィングカービィは空を飛び、メインストリートを飛び越えて草原の方へと降り立った。
「グアアァァァオォォッ!!」
 ガメレオアームはウィングカービィを追って草原の方に飛び出す。
 ジョーとシリカの2人は背後から現れたマスコローゾと戦っている。
 2人はそれぞれバルカンジャブとマシンガン形態に変形させたクロスガンを撃ちつつ後退し、マスコローゾを草原に誘い出した。

 戦いの場は切り立った崖がある草原へと移った。
 その場所は、かつてHN社から送り込まれた最強魔獣・マッシャーが現れた場所でもあった。
 切り立った崖を背にガメレオアームとマスコローゾが並び、正面にカービィたち4人が横に並んで立っている。
「よし。ここなら遠慮なく戦えるぜ」
「昨日俺の女神のシミラに負けたくせによく言えるな、魔獣ハンターのボウヤ。…いや、生意気なガキと呼んだ方がいいか」
 自分に楯突く男が嫌いなガメレオアームはナックルジョーを敵視してるのか、彼に対しては女性と話す時と比べて言葉遣いが明らかに悪くなっている。
「ハァ…。また女神?貴方には女神が何人いるの……?」
 溜め息をつきながら、フームが呆れたような態度でガメレオアームに聞いた。
 すると、ガメレオアームが機嫌を直したかのような口調で嬉しそうに喋り出した。
「よくぞ聞いてくれた、俺の女神よ。そう、俺にとっての女神は『宇宙にいる全ての女性』だ。俺は女性を愛することこそが俺自身の使命であるとも思っている。
言ったはずだ。俺は女性相手なら対象年齢も種族も問わない。 俺は全ての女性の指と赤い糸で繋がれている。 『女の子相手には攻撃もしない』……いゃ、『出来ない』な」
「なんでそんな方向に話が行っちゃうのかしら?それに半分以上話の意味がわかんないし…」
 ガメレオアームの話を聞いたフームは困り果てた表情をする。
「おい、早くゲームの続きをしないか?」
「魔獣マスコローゾと言ったな?」
「あ?」
 マスコローゾは戦いの続きがしたくてしょうがないようだったが、あることが気になっていたシリカが彼に声をかけた。
「お前は昨日、私のことを『見覚えのある顔』って言ったな?そのことについてだが…」
「……?それがどうしたと言うんだ?」
「お前が戦争の時に見たという私に似た顔の人は、私じゃない。それは私の母さんだ」
「なるほど…な。
 そういうことだったか。あいつが始末したと言ってたのはお前の……ハッ!ハッハッハッハッハッハッ!!」
「な、何がおかしいんだ!?」
 突然笑い出したマスコローゾに、シリカは思わず声を張り上げる。
「俺の口からは言えないが、いずれわかることだ。
 奴とは戦争当時の話を色々としたが、何故だか奴からは『次世代の星の戦士の顔は自分で確かめてこい』と言われていた…。そしてお前から話を聞いて、今ようやくモヤモヤが消えて嬉しくてな。…話はそこまでか?」
「ああ。お前が隠していることが気になるが、それもそのうち私がお前の口から話させてやる」
「なら、さっさとゲームを続きから始めるぞ!!」
「はああッ!!」
 マスコローゾの声と共に、彼とガメレオアームは同時に、そしてそれぞれが先ほど村で戦った星の戦士に飛び掛かった。

「ガアアアアアァッ!!」
「フェザーガン!!」
「はッ!!」
 ウィングカービィは跳躍してきたガメレオアームを撃墜すべく、頭にかぶったウォーボンネットの羽毛を手裏剣のように飛ばす技『フェザーガン』を繰り出す。
 ウォーボンネットからは次々と羽毛が飛ばされ、空中にいるガメレオアーム目掛けて飛んでいく。
 ガメレオアームはこれを顔の前で両腕を交差させて防御態勢を取り、全て防ぐ。
 彼の両腕には多数の羽が突き刺さるも、それによるダメージは受けてないのか、構わずカービィに向かって急降下してきた。
「食らえぇぇッ!!」
「ぽよっ!?」
 ドガアアァァァンッッ!!!
 羽が突き刺さったままの状態の両腕をガメレオアームは急降下しつつ地上にいるカービィに向かって振り下ろす。
 ガメレオアームが勢いよく着地したことで地面が砕け、周囲に砂埃が舞ったが、カービィはギリギリのところで攻撃を空中に飛び立って回避した。
「フェザー狙い撃ち!!」
 バシュバシュバシュ!
 今度はカービィが空中から斜め下の地上にいるガメレオアームに向かって、新技『フェザー狙い撃ち』で攻撃した。
「ぐぅぅッ!!」
 ブシュウッッ!!!
 フェザー狙い撃ちで飛ばされた羽は舞っている砂埃の中にいたガメレオアームの大きな右目に突き刺さった。
 複数の羽が突き刺さった右目からは彼の緑色の血が噴き出した。
 舞い上がっていた砂埃が晴れると、カービィはガメレオアームの正面に着地し、ガメレオアームは右目に突き刺さった何本かの羽を引き抜く。
 羽を引き抜いた右目からは緑色の血が滴り、血の涙のようにガメレオアームの顔を伝って地面に垂れていく。
「チィ……早速右目をやられたか…。…まあいい。どうせ後で治るからな。確かに『アイツ』の言うとおりのあまり油断の出来ない相手だぜ、お前は。はあああッ!!」
 傷を負った右目を気にしつつも、ガメレオアームは口から『ペイントボム』を吐き出し、空中にいるカービィを狙う。
 カービィは羽を飛ばしてペイントボムを相殺、空中で爆発が起きる。
 更に爆発の中からカービィはガメレオアームに真っ直ぐ突っ込んできた。
 ウィングカービィの技『コンドル頭突き』だ。
「そう来るか。ふっ!!」
 ガメレオアームは攻撃を見切って跳躍し、カービィはそのまま地面に激突。
 地面に減り込んで動けなくなってしまう。
「カービィ、危ない!!」
 ズガアアァァァァン!
「ぷああぁッ!!」
 フームが叫んだ時にはもう遅く、ガメレオアームの吐き出した3つのペイントボムがカービィに炸裂した。
「これでお相子だ。まだ眠ったりはしないよな?」
「ぽ…ぽよ…」
 ペイントボムでダメージを受けたカービィであったが、傷つきながらもなおも立ち上がる。
「はああああっ!!」
 傷ついたカービィにガメレオアームが2本の尻尾を伸ばして先端についた鉤爪を突き刺そうとするが、カービィは飛んでガメレオアームの尻尾を避け、頭を伸ばされた尻尾に向かって突き出し、一気に急降下する。
「爆撃頭突き!!」
「やばいッ!!」
 シュルシュルシュルシュルッ
 すぐさま尻尾を引っ込めたガメレオアームであったが、ウィングカービィの新技『爆撃頭突き』はコンドル頭突きとは違って、ただ単に頭突きを食らわせるだけの技ではなかった。
 カービィの頭が地面にぶつかった瞬間………。
 ズドオォォォンッ!
「むぐッ!!!」
 周囲には衝撃波が発生し、ガメレオアームを吹き飛ばした。
 爆撃頭突きの目玉は頭突きそのものによる威力ではなくこの衝撃波であり、頭突きを敵に直接当てるよりも、衝撃波で敵を攻撃するほうがダメージを大きく与えられるという特性を持っているのだ。
 が、衝撃波を受けたガメレオアームは空中で受け身を取り、地面へ綺麗に着地する。
 2人の勝負は今のところ互角のように見えたが……?

 カービィとガメレオアームが戦っている隣で、ナックルジョーとシリカは先ほどから引き続いてマスコローゾの相手をしている。
「バルカンジャブ!!」
「ふんッ!!」
 ナックルジョーが放ったバルカンジャブとマスコローゾが放った爪が衝突し、爆発する。
「たあぁぁぁッ!」
「ふんぐぅッッ!!!」
 爆発によって発生した黒煙の中をシリカが突っ切り、クロスガンから伸ばしたナイフでマスコローゾを斬りつける。
 斬りつけるだけでなく、身体ごとぶつかってきたシリカをマスコローゾは受け止めて押し返すように投げ飛ばす。
 シリカは空中で一回転しながら綺麗に着地し、クロスガンのミサイルランチャーの機能を使って正面にいるマスコローゾに砲撃をした。
「でやああああッ!」
「ぐわぁッ!!」
 ズガアアァァン!!バラバラバラ……
 砲撃に怯んだマスコローゾに、更にジョーの強烈な跳び蹴りが命中。
 マスコローゾは後方に跳ね飛ばされ、岩の壁に激突した。
 岩壁に激突したマスコローゾは崩れ落ちてきた複数の岩に埋もれてしまったかと思われたが、すぐに岩を吹き飛ばして何事もなかったかのように起き上がった。
「なかなかやるようだな…………面白い!」
 2人の実力を気に入ったかのような発言をしたマスコローゾは左手から爪を伸ばし、それで自分の右腕を傷つける。
 傷ついた右腕からは彼の皮膚の破片と血液が飛び散り、瞬時にそれが集まって新たな物体を形成していく。
 彼の身体の破片から作られたのは彼の身体と同じくらいの大きさはある棍棒であった。
 棍棒が作られると同時にマスコローゾが自分でつけた右腕の傷は治癒され、マスコローゾは棍棒を拾い、構えてナックルジョーとシリカに突進。
 マスコローゾを押さえ込もうとジョーとシリカも走り出すが、マスコローゾは押さえられる直前で両足を揃えて跳躍し、左手の爪を長く伸ばして真下にいるジョーとシリカに向かってそれを発射、爆撃する。
 ズガズガズガズガアアアン!
「くッ!!」
 空中から雨のように降り注いだ爆発する爪をジョーとシリカは左右に分かれてかわした。
 シリカはかわしてすぐにクロスガンから岩壁の、マスコローゾがいる高さの空中よりも高い部分を目掛けて鉤縄を発射して引っ掛ける。
 そのままシリカは岩壁に突っ込み、そこに真っ直ぐぶつかってしまう直前に両足で岩壁を蹴って壁から鉤縄が外れると同時に、落ちながらマスコローゾの斜め上の空中から彼の頭部に光線銃を連射、地面に着地する。
「グワアアアァッ!」
 頭部への光線銃による射撃に怯んだマスコローゾの下にはすでに右の拳にエネルギーを溜めて待ち構えていたナックルジョーがいた。
「パワーショット!!」
「ぐぅわあああぁッ!!」
 ナックルジョーのパワーショットの直撃を受け、マスコローゾは大きく飛ばされる。
 しかし、ジョーの技をまともに浴びたにも関わらず、マスコローゾは攻撃によって胸に負った傷から白煙を出しながらも、平気そうな顔をして立ち上がった。
「クックック……。この俺が相手の力量を見誤るとは…少しお遊びが過ぎたか?」
「ジョーの攻撃を受けても痛がってる様子が無い……!?」
「そのようだな。間違いなくあいつは俺が爺さんから教わった『パワーショット』で仕留められる 寸前まで追い詰めることが出来たチクタクよりも強い………!!」
「俺は銀河戦士団の初代リーダーと言われているアイツともう一度戦うまでは死ぬわけにはいかん」
「ギャラクティックナイトのことか?あの人は生きてるのか死んでるのかもわからない、とメタナイトから聞いたけどな」
「ギャラクティックナイト様に会って何をするつもりなんだ……?」
「奴に会ってあの時の借りを返す。それまではMTSの命令通り、お前たちの相手をしてやろう」
「いや、お前はギャラクティックナイトって言う人と再会することはない」
「何故そこまで言い切れる……?」
「ここで俺たち2人に倒されるからだッ!!」
 ジョーが叫んだと同時に、彼とシリカの2人はマスコローゾに向かって同時攻撃を仕掛けようと駆け出した。


 一方、メタナイト卿はシミラと剣による激しい戦いを繰り広げていた。
 その横ではグリルとウィズの2人が傍観に徹している。
「たああッ!!」
「ミラー斬りッ!!!」
 ギイィィィィィン!!
 ギャラクシアとシミラが持つ杖が変形した剣が互いにぶつかり合い、火花が散る。
 剣を受け止められたメタナイト卿は宙返りをして相手との距離を取り、次の行動に移す。
「ギャラクシアソードビーム!!」
「リフレクトバリアー!!」
 メタナイト卿がギャラクシアから三日月状のエネルギー刃を飛ばすと、シミラはそれに対抗して透明な防御壁を張って、メタナイト卿の技を跳ね返す。
「くッ!!」
 ギャラクシアソードビームが自分のところに跳ね返ってくると、メタナイト卿はマントを翼に変化させ、空を飛んで攻撃を避ける。
 ギャラクシアソードビームは直進してメタナイト卿が空を飛ぶ直前に彼の後ろにあった岩に命中し、岩は真っ二つに切断された。

 2人が互角以上の勝負をしている中、戦いを見るのに飽きてあくびをし始めたグリルが、自分から見て左横で同じく戦いを見ていたウィズに、メタナイト卿とシミラに聞こえないぐらいの小声で話しかけた。
「ねぇ、ウィズ?そういえば私たちって何しにこの星にやってきたんだっけ?」
「本日……と言うよりは昨日からの私たちの仕事はもう終わりましたが、先日惑星ホットビート支部を訪問し、私たちの組織に協力を申し出てきたという元銀河戦士団の男・ヤミカゲと、ヤミカゲに連れられていた他の忍者たちにご挨拶をし、村まで案内することだったはずです」
 ウィズもグリルと同じくらいの声の大きさでグリルとの会話を続ける。
「あの後ヤミカゲと、その子分の忍者さんたちは誰にも気付かれずに村に入って、お城で待機することは出来てるのかしら?」
「『忍者』というのは潜入や暗殺と言った人に気付かれないような裏の仕事のプロです。
恐らく誰にも気付かれてないでしょう」
「そっか〜…。じゃあ私やっぱり戦いを見てるだけってのは飽きちゃったし……あとは任せたわよ」
「グリル様!?いったい何を……?」
 ピシュン!!
 ウィズにそれだけ言い渡すと、グリルは転移魔法でどこかに消えてしまった。
 グリルが転移魔法で消える様子は、メタナイト卿と戦っている最中のシミラも目で確認した。
「ウィズ!グリル様は何処へ行ったのだ!?」
「わからない……。行き先も何も言わずに突然消えてしまった」
「やれやれ…世話をする役、監視をする役と言うのも楽じゃな……うわあっ!!」
 シミラはウィズと会話をして少し攻撃の手が緩んだところにメタナイト卿の攻撃を受け、転倒する。
「仕方ない。グリル様の行き先が分からない以上、探しようもないな。シミラ、目の前で味方がやられているのに見ているだけと言う訳にもいかない。力を貸そう」
「ウィズ、余計な手出しをされるのは私が一番嫌いだと言う事を……」
「そんなことを言っている場合じゃない。お前にはそういう部分があるから、グリル様に陰で『友達が出来なさそうなタイプ』って言われるんじゃ?」
「うッ………」
 ウィズに図星を突かれ、シミラは思わず口を閉ざしてしまった。
 そしてウィズは頭に被っていたシルクハットを左手に持ち、右手に持ったスティックでシルクハットを叩いた。
 すると、シルクハットの中からは、2頭身の人型で4本腕がある魔獣が次々と出現した。
 召喚された数は10体。
「そうか。昨日の戦いでは見せてこなかったようだが、それがお前の能力か」
「行け、魔獣『シュランガー』。メタナイト卿から伝説の宝剣を奪うのだ」
 ウィズの特殊能力を初めてお目にかかったメタナイト卿はギャラクシアを構え、敵が向かってくるのを待伏せる。
「グガアアァァァッ!」
 シュランガーという名の召喚された10体の魔獣たちは、4本の腕全てに鋭いサーベルを持ち、一斉にメタナイト卿に襲い掛かる。
 メタナイト卿は待伏せていた状態から瞬時に3体のシュランガーを斬り伏せ、絶命させたが直後、すぐに彼の背後からまた別のシュランガー2体が空中から奇襲を仕掛けてくる。
「!!」
 しかし、2体のシュランガーはメタナイト卿を斬ることのできる寸前の距離で大きく真横へと飛んでいった。
 シュランガーを吹っ飛ばしたのは投げつけられた斧だったようで、斧が飛んできた方向にメタナイト卿が目をやると、そこにはアックスナイトが立っていた。
「助太刀しますよ、メタナイト卿!」
「アックス!?そなたが……」
「俺だけじゃありませんよ。もちろん皆一緒です」
 アックスナイトに続いて、ヘビーナイト、ソードナイト、ブレイドナイト、メイスナイト、トライデントナイト、ジャベリンナイトもメタナイト卿のもとに到着する。
「ご主人!我らも加勢します!!はあぁッ!」
   ソードナイトが鞘から剣を引き抜き、吹っ飛んだうちの1体のシュランガーに立ち向かう。
 残るシュランガーはアックスナイトの攻撃で吹っ飛んだもう1体のシュランガーを初め6体。
 騎士たちは1人1体ずつのシュランガーとの戦いを始めた。
 メタナイト卿はシミラとウィズ、2体の強敵と対峙したが……。
「ウィズ、お前にはここを退いてもらいたい」
「さっきも言ったが、見ているだけと言う訳には……」
「魔獣を召喚したのだからそれだけでもう良いだろう。お前はすぐそばで戦っているシュランガー達が倒されたら、それに合わせてまた魔獣を召喚するだけにしてくれ」
「ハァ………グリル様ほどじゃないが、少し面倒な性格だな……」
 ウィズの発言を押し退けて、シミラはただ1人でメタナイト卿と戦う。
 先ほどと同じように、鋭い剣戟の音が辺りに響く。
「(もう1体の魔獣が加勢してこない分、昨日カービィたちを助けたときに比べれば苦労はしないが…。それなら今目の前にいるこの魔獣をなんとしても倒さねば……)」
   剣同士がぶつかって甲高く澄んだ金属音を耳にしながら、メタナイト卿はとにかくシミラをここで倒そうということだけを考えていた。
 シミラやウィズだけではなく、他にも今カービィや自分たちにとって強敵と言える実力の高い魔獣はガメレオアーム、マスコローゾ、シャードロと確認された中ではまだまだいる。
 その中の1体だけでも潰せれば、間違いなく敵の戦力を減らすことに繋がる。
 今回シミラと1対1で戦っているが、これが敵を確実に倒すチャンスなら、ギャラクシアによる強力な技を出し惜しみしている余裕などない。
 そのような結論に至ったメタナイト卿は以前も使った必殺技を使う決心をする。
「(やはり奴を倒すなら、今しかない……!!)」
 ギャラクシアの一撃を受け、シミラは宙に舞った。
「ぐっ……」
「ギャラクシースパーク!」
「うわあぁぁッ!!」
 ギャラクシアから緑色をした高圧の電撃を周囲に放つ技がシミラに命中。
「くっ……この程度の攻撃……」
 電撃を受けてもシミラはまだ立ち上がるが、メタナイト卿がすでに次の技を繰り出す態勢に入っていることに気付くことが出来ず、対応に遅れる。
「竜巻斬りッッ!!」
 ゴオオオォォォォッッッ!!
 メタナイト卿は容赦なく次はギャラクシアから巨大な竜巻を発生させてそれをシミラにぶつける。
「ぐああぁぁぁぁぁ!!」
竜巻に巻き上げられた後、シミラは地面に頭から落下し、気絶。
起き上がることは出来ず、戦闘不能となる。
「これで終わりにしよう………!」
 竜巻斬りを出し終えてまたすぐにギャラクシアにエネルギーを集め始めるメタナイト卿。
「(!?こ…これは……まずい…!!)」
 相手が再び何かの技を出そうとしているのを見て、ウィズはシミラのところへ向かおうとするが……。
ハイパーマッハトルネイド!!!!!
シミラァァァァァァァァァッ!!
 ゴオォォォ、ドガアアァァァァァァァァァァァン!!!
 ウィズの必死な叫び声が聞こえたのを最後に、メタナイト卿からは巨大な竜巻が四方向に放たれ、周囲の音は爆音によって掻き消され、辺りは全て吹き飛ばされた。
 メタナイト卿最強の大技が決まり、強敵の魔獣シミラは倒されたのか?
 それとも…………。
 




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