副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第34話・前編
〜刃射尾簾羽唖狗忍者軍団、いざ参る!!〜



 〜ウィザード・フォートレス グリルの部屋〜

 MTSの本拠地であるウィザード・フォートレスにあるグリルの私室では、デデデ城から帰ってきたグリルが部屋にある椅子に座って、テーブルの上に置かれているサンドイッチとクレープをおやつとして美味しそうに笑顔で食べていた。
 そのグリルのところに、同じく城から転移魔法で帰ってきたばかりで、魔法で何か飲み物が入っているマグカップを持ってきたマルクがやってくる。
「お待たせ、グリル。ドロシアやウィズに頼まなかったから、飲み物はアイスティーしかなかったんだけどこれで良いかな?次はまた別の飲み物を仕入れておくからさ…」
「うん、全然いいよ!それと、やっぱりお兄ちゃんの作るサンドイッチとクレープは美味しいね♪」
「僕としてこれぐらいは出来て当然だし、それにいつも作ってるだろう?」
 冷えた紅茶を飲むグリルの横でマルクは笑顔で、それも当然であるかのように答えた。
 マルクの話からして、マルクがグリルに料理を作っているのはどうやら今回が初めてではないらしい。
 答えてからマルクは何かを思い出したかのように唐突に話題を変える。
「あっ、そうだグリル。僕は料理を作ってる間パラマターで見ていなかったけど、ヤミカゲたちはどうやってカービィたちを始末しようとしている?」
「え〜っとね〜…なんだか人質取ったり、引き連れてる忍者たちに分身の術使わせてお城の中を暴れ回らせたりとか、面倒臭いことやってるよ?」
「はぁ……忍者のくせになんでそんな回りくどい作戦を…。簡単に復讐を終わらせられないのか?それともただ単に始末するだけでは気が済まないのか?」
「わかんないけど、それお兄ちゃんが言えたことじゃないよね?」
「どういう意味だ?」
「お兄ちゃんだってさ、いちいち難しい作戦を立てたりとかするじゃん?」
「それとこれとでは話は別だ。僕はカービィを始末するためには自分の手を汚したくないからそうしているのであって、自分が戦いたいこととかどうでもいいことを理由に回りくどくてくだらなくて、忍者らしくないことまでしているヤミカゲの奴とは違う」
「そーかなー?」
「とにかく、お前はクレープとサンドイッチを全部食べ終わった後は、パラマターを使ってヤミカゲたちのことを監視しておけ。僕はまだやることがあるから、お前とは一緒にいれない。いつものことだが、僕がいないからって勝手なことはするなよ?」
「はぁ〜い!」
 グリルにヤミカゲのことを任せ、マルクは彼女の自室を後にした。


 〜デデデ城 通路〜

 消えたジョーとシリカ、ブンの行方を探しているカービィ、メタナイト卿、フームの3人。
 彼らが向かう先々で、城に侵入した敵とワドルディたちが戦っている場面に遭遇した。
 敵は複数存在していたが、そのどれもが2人組ずつで行動しており、片方は青色の服を、もう片方は白色の服を着ていた。
 3人は戦闘をワドルディたちに任せて先に進んだが、彼らは何者なのかはわかるはずがなかった。
 MTSからの刺客と考えれば早いのだが、そうだとしたらすぐにカービィやメタナイト卿を見つけ次第襲い掛かってくるはずであり、彼らはカービィたち3人を見ても無視してワドルディたちとの戦いを続けた。
 彼らの行動に、メタナイト卿とフームは急ぎながらも頭を悩ませていた。
「メタナイト卿、ワドルディたちと戦ってた彼らの目的はいったい何かしら……?ワドルディたちをあそこに引き付けてたようにも見えるんだけど…」
「まだ何も言えないが……少なくとも城を襲ったあの集団はカービィや私の姿を見ても攻撃を仕掛けてこなかったことから、私たちを攻撃することが目的ではないのはわかった。そなたの言うとおり、あの者たちはもしかするとワドルディたちを自分たちのところへ引き付けておくのが目的ともとれる……」
「ハッキリとしたことはわからないけど、彼らが攻撃をしてこないのなら……ブンたちを探すのに集中できるわね」
「うむ。ブンたちがどこへ消えたのかもまだわからないが、集団よりも3人の捜索が優先だな」
 メタナイト卿はそう判断し、カービィとフームも彼に従うことにして、煙が晴れた後に消えたジョーとシリカとブンを探すことを優先することに決め、城の通路を走って部屋を片っ端から探そうとし始めた。
 が、その時……。
『3人の居場所を教えてほしいか?メタナイト………』
「!?その声は…まさか…!!」
 カービィたちが通路を走り出そうとしたのと同時に、どこからか声が聞こえてきた。
 メタナイト卿はすぐに声の主が誰なのかを理解した。
 その声の主は……。
 ボフッ!!
 噴き出した白い煙の中からカービィたち3人の目の前に現れたのは黒い衣に身を包んだ男・ヤミカゲと、もう1人紫色の忍者服を着た人物の2人であった。
「ヤミカゲ!!と、別の忍者も……?」
 フームは目の前に立ち塞がった2人を見て驚き、メタナイト卿がカービィとフームの2人を守るように、ギャラクシアを鞘から引き抜いてヤミカゲと紫色の忍者服を着た忍者に対してそれを向け、すぐに攻撃出来るような態勢を取る。
 が、ヤミカゲともう1人の忍者はメタナイト卿の行動を見ても動じず、ヤミカゲはもう1人の忍者の方にあることを確認する。
「ん?人質として攫うのはその小娘だったはずだが…まさか間違えたか?まあ良い。ワイユー、奴らが人質と他の星の戦士どもを何処へ連れて行ったかを感知出来ているか?」
「はい、私の嗅覚と聴覚でしっかりと出来ています」
「そうか」
 ヤミカゲは返答を『ワイユー』という名の忍者から聞くと、カービィたちの方を向く。
 その後すぐにフームが前に出て、2人に向かって大声を張り上げた。
「城のあちこちで騒ぎを起こさせて、ブンたちを攫っていったりしたのは貴方達ね!?」
「フーム!!」
 前に出てしまったフームをメタナイト卿が静止し、また守るように彼女より少し前に出る。
「ククク…そうでなかったら他に誰がいる?」
「ブンたちを何処へやったの!?今すぐブンたちを返しなさい!!」
「待て、フーム!!」
 ただ1人の弟のブンを攫われたためか、いつものような冷静さを失っているフームを再びメタナイト卿が静止した。
「確かに人質はとったが、俺の本来の目的はカービィ。お前に借りを返すことだ。まずはお互いの力を試してみたいところだが………」
「ぽよ?」
 ヤミカゲは忍者刀を引き抜いて、その先端をカービィの方へと向けて話した。
「あれから俺はお前に借りを返す…ただそれだけを考えて修行を続けた。HN社とは無関係にな。あのままで終わることは出来ん…」
 言い終わると、ヤミカゲは持っていた忍者刀を右手で構えて、左手を自分の後ろに回す。
「ワイユー、予定通りお前はメタナイトの相手をしろ」
「了解です」
「ふッ!!」
 横にいたワイユーにメタナイト卿の相手をするよう頼んだヤミカゲは後ろに回していた左手にクナイを持ち、カービィに向かって駆け出しながらクナイを投げつけてきた。
「危ない!カービィ!!」
 フームが叫ぶと、カービィは指示を出される前に吸い込みをし、投げつけられたクナイを飲み込んで一瞬で兜を頭にかぶり、手には忍者刀を持った姿・ニンジャカービィに変身した。
「ククッ、そうこなくてはな。だが、この前みたいに上手くいくかな……?」
「ぽよッ!」
 ニンジャカービィになったカービィに対して、挑発気味とも言える余裕を持った態度を見せているヤミカゲ。
 かつてのベニカゲがププビレッジにやって来た騒動以来の、ニンジャカービィとヤミカゲの二度目の戦いの火蓋が今切って落とされた。
「はッ!」
「ふんッ!」
 キンッ!!
 カービィとヤミカゲはお互い同時にクナイを素早く投げた。
 2つのクナイは空中でぶつかり、床に落ちる。
 クナイが落ちたと同時に次に2人は一瞬で距離を詰めて、右手に持った忍者刀で斬り合い始める。
 刀同士がぶつかることによって立つ金属音が廊下に響き、互いに斬り付けては受け止めと、最初は互角のように思えた戦いだったが、ヤミカゲは以前ポップスターに現れた時よりも刀の扱いは更に上達しており、次第にカービィはその素早い忍者刀の攻撃に追い詰められていった。
 ガシイィィィン!
「く…!」
 ヤミカゲの忍者刀にカービィは弾かれてしまう。
「手裏剣投げ!」
「風塵の術!!」
 ビュオォォォォッ!!
「ぷあああ!」
 接近戦が不利と見たカービィは自己の判断で距離を取って手裏剣を投げるが、対してヤミカゲは以前の数倍にも威力が強化された忍術『風塵の術』を使って反撃。
 カービィを投げた手裏剣ごと吹き飛ばした。
 飛ばされたカービィは廊下の壁にぶつかり、倒れ込む。
「どうした、そんなものなのか?」
 カービィは傷つきつつも立ち上がり、忍者刀を構える。
 だが、ヤミカゲは隙を見せることなく一瞬でカービィの目の前まで詰め寄り、忍者刀を振りかぶった。
「はたき斬りッ!!」
「ぽよ!」
 ヤミカゲの忍者刀による一撃をカービィは自分の忍者刀で間一髪で何とか受け止め、相手の攻撃を受けずに済んだ…はずだった。
「返し四連撃!!」
「!?」
 キンキンキンキィィィンッ!!
「うわああッ!く…」
「そらッ!」
「ぶッ!!」
 受け止めた直後に素早く続いた四連続もの斬り付けにカービィは弾かれ、防御態勢が緩んだところにヤミカゲの蹴りを浴び、壁に減り込んでしまう。
「カービィ!!」
 パワーアップしたヤミカゲに苦しむカービィを見て叫ぶフームだが、彼女はその様子をただ不安そうに見ていることしか出来なかった…。

「悪いがすぐに終わらせてもらうぞ」
「くッ!」
 苦戦しているカービィの横で、メタナイト卿はヤミカゲの命令で襲い掛かってきた忍者・ワイユーと交戦。
 パワーアップをしたヤミカゲ程ではないがワイユーも実力は高く、ヤミカゲと同様に忍者刀を右手に持って行う単純な接近戦では、メタナイト卿と対等以上に渡り合えていた。
 横で戦っているカービィとヤミカゲの2人と同様に剣戟の応酬となり、ぶつかり合いの末に大きく弾き飛ばされた2人は、その勢いを上手く利用して身体を着地させてから素早く身構え、同時に助走を付けながら跳躍する。
「はああぁぁッ!!」
「てあああぁッ!!」
 キイィィィィィンッ!!
 ほぼ同時に振られたギャラクシアと忍者刀が空中で衝突し、乾いた金属音が鳴って互いの武器の刀身からは火花が散った。
 その瞬間にワイユーは忍者服からクナイを取り出して、忍者刀を受け止めていることで動けなくなってるメタナイト卿にそれを突き刺そうとする。
 しかし、メタナイト卿は更にその裏を読み、クナイが当たる直前にギャラクシアに炎を纏わせ、一瞬の隙が出来た強引にワイユーを振り払って剣を振った。
「波動斬り!!」
「!!!」
 ボオオオォォォッ!!!
 ギャラクシアから撃ち出された炎の衝撃波はクナイを突き刺そうとしていたワイユーに当たり、燃やし尽くした。
 素早い身のこなしの者でも、あの距離で波動斬りをかわすことなど不可能である…。
 メタナイト卿もそう考えて、敢えて至近距離で相手が隙を見せた時に反撃をしたのであった。
 波動斬りを受けたワイユーと思われる『それ』は、高熱の炎に包まれたまま床に落ちる。
 しかし、『それ』を確認したメタナイト卿は改めて忍者の能力を知らされることになった。
「くッ……」
 燃やされたワイユーと思われていた『それ』は、なんと本人を模った人形だったのである。
「こっちだ!」
「なにッ!?」
 受けたのがワイユー自身ではなく、人形であることを把握した直後のメタナイト卿の背後から、忍者刀を上段に構えたワイユーが急降下してきた。
 それにメタナイト卿は反応して、再びギャラクシアで受け止めた。刀を受け止められ、後ろへと一回転しながらメタナイト卿との距離を取ったワイユーに対し、メタナイト卿が口を開いた。
「お前が今使った忍術……『変わり身の術』という奴か?」
「よく知ってるな。その通りだ」
「一時は『あの男』と同じ組織に所属していたからな…忍術について少しは知っている」
「組織?『銀河戦士団』のことか…。ヤミカゲ様と会う前から、戦士団の団員は歴戦の強者ばかりだと噂として聞いていたが…なかなかやるな」
「それは褒めているつもりなのか?それよりももう1つ聞きたいことがある。何故お前はあのヤミカゲに加担している?本来は私たちに無関係なお前が星の戦士と敵対する理由など無いだろう?」
「残念だが、それについてはあまり詳しいことは教えられないな。俺は忍者として与えられた任務を果たすだけだ。はぁッ!!」
「ぬッ!!」
 ガギイィィィンッ!
 メタナイト卿が投げかけた質問に答えることを拒否し、言葉を言い終わるや否や、ワイユーは再び忍者刀でメタナイト卿に正面から斬りかかり、その攻撃をメタナイト卿が受け止める。
 2人の一進一退の攻防は時間と共に激しさを増していく…。


 一方、気絶させたナックルジョー、シリカ、ブンの3人を連れ去って青のバイオスパークと白のバイオスパークの2人と部屋で合流しようとしている赤、黒、桃色の3人のバイオスパークたちは、桃色のバイオスパークを先頭に、青と白のバイオスパークの2人落ち合う予定である部屋へと急ぎ足で向かっているところだった。
 時折跳躍しつつ、3人は会話を始めた。
「桃忍。追っ手は来てるかどうか確認出来るか?」  まず最初に黒いバイオスパークが先頭を行く桃色のバイオスパークに話しかける。
「大丈夫だよ、誰も追いかけてきてない」
 桃色のバイオスパークの能力で追っ手がいないことを確認出来た他の2人。
 次は赤色のバイオスパークが桃色のバイオスパークと話し始める。
「ここまでは予定通りか。で、あいつら2人がいるはずのどこか広い部屋ってのはまだか?」
「…もうそろそろ、2人が先に待ってるところに着くよ」
「いよいよか。存分に嬲ってやろうじゃん」
「ああ。後も予定通りに事が進めば良いのだが」
 3人はそんな会話をしながら先に進む。しばらくして、先頭を進んでいた桃色のバイオスパークがとある部屋の前の扉で止まった。
「あ!2人はここにいるみたい」
「よしっ」
 バンッ!!
 赤色のバイオスパークは扉を思い切り開ける。
 部屋には青色のバイオスパークと白色のバイオスパークの2人がすでに待っていた。
「おッ!ちょっと遅くなかったでござるか?」
「わりぃな、少し待たせちゃったみたいじゃん?それよりもヤミカゲ様に言われた通り、標的2つと人質をここに連れて来たぜ。…いゃ、実際には全員人質か」
 赤色のバイオスパークは青色のバイオスパークの目の前に自分が片手で背負っていた、気絶しているナックルジョーを意識をまだ戻させないように静かに床に下ろした。
 それに続いて、黒のバイオスパークもシリカを床に静かに下ろし、桃色のバイオスパークもブンを静かに下ろす。
 桃色のバイオスパークがブンを下ろした途端、青色のバイオスパークの横にいた白色のバイオスパークがあることに気付く。
「あの、攫ってくるのは星の戦士2人の他は女1人だ、って最初に話してませんでしたか…?」
「ああ、俺もそのつもりだった。だけど、桃忍が標的を感知出来ていたクセにヘマをやらかしてな」
「ごっ、ごめんねぇ〜、みんな…」
 赤色のバイオスパークの説明の後、桃色のバイオスパークは苦笑いを浮かべながら他のバイオスパークたちに謝った。
「取り敢えずだ。まずは人質を縛っておくぞ」
 服から縄を取り出した黒色のバイオスパークが気絶しているブンを座らせた状態にし、手首を後ろに回して手首だけを縄で縛って、拘束する。
 次に赤色のバイオスパークがナックルジョーに近づき、彼の腹を思いっ切り蹴った。
「ぅぐ…ッ!!が……げほっ、げほッ!」
 腹筋を綺麗に割るほど身体を鍛えているナックルジョーでも、気を失っている間にいきなり力が入っていない腹部を蹴られるというのは流石に効いたようで、彼は苦しそうに咳をしながら目を覚ました。
 同時に青色のバイオスパークも、シリカの腹を蹴ることで意識を取り戻させる。
「ぐッ……げほッ…!こ、ここは…?」
 目を覚ました2人は状況を把握するために周囲を見渡す。
「星の戦士の2人……だったな。お前ら2人をここまで連れて来たのは俺たちだ」
 自分たちの状況がまだわかっていないジョーとシリカの2人に、赤色のバイオスパークが声をかけた。
「てめぇら……!」
「私たちをこんなところまで連れてきて、いったい何をしようとしている…?」
 ナックルジョーとシリカは目の前にいる、目的不明の5人組に対し警戒心を強める。
「そう、俺たちはお前ら2人を倒すためにわざわざここまで連れて来たんだ。俺たちのことは皆こう呼んでいる…。その名も……」
「「刃射尾簾羽唖狗(バイオスパーク)忍者軍団!!!!!」」
 赤色のバイオスパークの合図で、他の青、黒、桃、白色のバイオスパークが彼に合わせて声を揃え、5人全員で決めポーズをした。
「「…………??」」
 5人組のノリについて行けないジョーとシリカの2人は、彼らの決めポーズを前にして唖然としている。
 2人が唖然としているのを見たバイオスパークたちは決めポーズを止め、また赤色のバイオスパークが話し始めた。
「…まぁそういうことで、俺たちの目的はお前ら2人を片づけて、そこにいるガキを人質として取ることなんだ。わかったならこっちからやらせてもらう」
「なに!?」
 赤色のバイオスパークにクナイの先を向けられたジョーとシリカはすぐに身構える。
「見せてやろうじゃん!俺たちの戦い方って奴をな」
 ジョーとシリカが戦えるようになったと思ったバイオスパークたちはそれぞれ別々に散らばった。
 散らばったバイオスパークの中で白色のバイオスパークは2人を逃げられないようにするためか、身体を空中で回転させて冷気を発生させ、入ってきた扉を凍らせてしまう。
 すぐに彼らを追撃しようとする2人だが…。
「ぐ…!!」
「くッ……」
 突然ジョーとシリカは2人とも、身体の一部を押さえて顔を歪める。
「しまった…俺たちはまだ傷が癒えてない…。シリカ。俺たち派手に動くと傷口が開くかもしれないが、かと言ってすぐにここを退くこともできない。なるべく無理はするなよ?」
「わかった。ジョーの方こそ、気を付けてね?」
 傷が完治していないため、無理せず戦うようにした2人。ナックルジョーは赤と青と黒の3人、シリカは桃と白の2人を相手に戦っていたが、戦いが始まって間もなく2人はバイオスパークたちのトリッキーな動きに翻弄され始めていた。
「スマッシュパンチ!!」
「のわッ!?」
 ズガンッ!!
 ジョーの渾身のスマッシュパンチが赤色のバイオスパークに命中した…かに思われた。
「どこ見てんだよ?」
「うわあッ!!」
 赤色のバイオスパークは『変わり身の術』でジョーの攻撃を避けて彼の後ろに一瞬で回り込み、スライディングしながら彼の足を蹴って転ばせる。
「はあああぁぁッ!!」
「くッ………!」
 赤色のバイオスパークの攻撃で転倒したジョーに向かって、小さな刀を持った青色のバイオスパークが急降下。
 ジョーを切り裂こうとするが、ジョーは青色のバイオスパークの腕を掴み、受け止める。
 しかし次は黒色のバイオスパークが今度は黒い短刀を持ち、ジョーに突き刺そうとする。
 それに気づいたジョーは青色のバイオスパークを突き飛ばし、素早くスピンキックを浴びせることで黒色のバイオスパークの攻撃を寸前で回避する。
 その後も3人を相手にしながらも上手く攻撃を避けつつ反撃をするナックルジョーだったが、敵も素早い動きや変わり身の術などで攻撃を避け続けるため、戦いが長引き、次第に怪我をしているというハンデを背負っているジョーの方が体力的に不利になり始める。
「(このままじゃ…いつまで経ってもこの状況を抜け出すことが……)」
「たああッ!!」
「なッ!?」
 何とかして状況を打破する方法を考えるジョーは、考えつつ赤色のバイオスパークが投げたクナイを避けるが、そのクナイがおとりであったことを見抜けず、クナイを持って左横から駆けてくるバイオスパークに気付かなかったため、反応が遅れる。
 ブシュウッ!!
「ぐあッ!!うッ……」
 ジョーは左横を向いて反撃しようとするが、それよりも速く青色のバイオスパークがクナイで斬り付けてきたため、身体を切り裂かれてしまう。
 切り傷自体は小さいもので済んだが、同時にその衝撃でマスコローゾとの戦いで受けた傷口が開いてしまったようで、彼が身体に巻いていた治療用の白い包帯に赤い血が滲み出し、思わず彼は動きを止める。
 しめたと言わんばかりに今度は赤色のバイオスパークが彼に向かって、両手にクナイを持って飛び掛かる。
「そらそらぁッ!!」
「うわああぁぁッ!!」
 動きを止めていたナックルジョーに赤色のバイオスパークのクナイによる攻撃が命中。
 身体から血を流しながら、ナックルジョーは床に仰向けの状態で倒れ込んだ。

 ナックルジョーと同じくして、シリカも桃色のバイオスパークと白色のバイオスパークの見事とも言える息の合った連係攻撃に手も足も出ないでいた。
 万全の状態であれば苦労しないはずの相手であったが、今の彼女はシャードロに貫かれた深い傷を負っていたため、実質ジョー以上に苦しい状態にあった。
「ウフフ、こっちよ!」
「ぐぅ……!」
 素早い身のこなしでシリカをからかうかのように動き回る桃色のバイオスパーク。
 シリカはクロスガンをマシンガンの形態に変え、桃色のバイオスパークに向かって撃つ。
 桃色のバイオスパークに弾丸に当たったかと思いきや、彼女は姿を消し、彼女がいたはずの場所の床にはピンク色の花びらだけが残された。
「ど…どこだッ!?」
 シリカは左右を見て桃色のバイオスパークの行方を探すが、見つからない。
「掛かったわね!」
「!?」
 シリカが気付いた時には、桃色のバイオスパークは既に彼女の背後にいた。
「それッ!!」
「あッ!?」
 シリカが振り向いた瞬間に桃色のバイオスパークは手裏剣を3つ投げつける。
 反応が遅れ避けることが出来なかったシリカの左腕に手裏剣が刺さった。
「ぐ……!」
 左腕の傷口から手裏剣を引き抜くシリカ。手裏剣を引き抜いた傷口から血が噴出し、彼女は右手で傷口を押さえる。
 しかしその数秒の隙の内に桃色のバイオスパークは新たな攻撃の準備に取り掛かっていた。
「まだまだいくわよ、桜花吹雪の術!」
 バシュバシュバシュバシュバシュ!
「ぐああぁぁぁぁッ!!」
 桃色のバイオスパークは声と共にピンク色の花びらをシリカに向かって大量に飛ばす。
 花びらはシリカに当たる度に1つ1つが次々と爆発する。花びらがなくなった後、倒れそうになるシリカであったが、敵が攻撃の手を休めることはなく、白色のバイオスパークが空中で身体を回転させ、彼女に向かって冷風を放った。
 するとシリカは足を凍らされ、身動きが取れなくなってしまう。
「う、動けない……!」
「「てぇーーーいッ!!」」
 動くことが出来ないシリカに、桃色のバイオスパークと白色のバイオスパークは2人同時に跳躍し、跳び蹴りを繰り出す。
 ドスッ!!
「がはッ………!」
 腹部に2人の蹴りをまともに食らったシリカは、衝撃で足の氷が砕けて解放されたは良かったが、後ろに大きく吹っ飛ばされ、すでに赤色のバイオスパークの攻撃で倒れたナックルジョーの横へと転がってきた。

「う………」
「ぐ………」
 完全に癒えていない怪我で弱っていた所為もあり、バイオスパークたちの攻撃の前にダウンを奪われたナックルジョーとシリカの2人。
 倒れそうになりながらもまだ戦おうとするが…。
「食らえ、毒霧地獄の術!!」
 ヒュン ボフッ!!
「「うわああッ!!」
 立ち上がろうとする2人のところに、赤色のバイオスパークが2つの紫色をした球状の物体を投げつける。
 球体は床に落ちると破裂、中からは紫色の濃い霧が吹き出し、ジョーとシリカの2人を包み込む。
「ぐ……げほっ、げほっ、げほッ!!」
 霧を吸い込み、咳き込むジョーとシリカだが、2人は同時に目も痛みだし、思わず両目を瞑る。
 そして、数秒で霧は晴れるが、2人は両目が痛くて開けられず、呼吸も困難な状態になってしまった。
「げほッ!げほッ!げほッ!」
「ぐッ…が……」
「フッ、俺の毒霧が効いてるみたいじゃん?」
 毒でもがき苦しむ2人を見て、赤色のバイオスパークは覆面の下でニヤリと笑った。
 更に、苦しむ2人に黒色のバイオスパークが近づき、なにやら服の中から黒い色をした短刀を取り出して最初にそれをジョーの身体に突き刺す。
 ブスッ!
「ぐぅぁッ…!」
 これもすぐに効いたようで、ジョーは自分の身体の更なる異変を感じ取る。
「ぐぁッ……がぁ…!!」
「見ることが出来ないと思うが、これに塗られているのは即効性の麻痺毒だ。お前はもう身体が痺れて動けないだろう。次は女、お前の番だ」
 黒色のバイオスパークは隣にいるシリカの身体にもその黒い短刀を突き刺し、麻痺毒を流し込む。
「あ……が………!!」
 ジョーと同じように、注入された麻痺毒はすぐに効きだし、シリカも身体が痺れて動けなくなってしまった。
 2人がもう戦えない状態になったことを確認した五人のバイオスパークは、次に予定されている行動を新しく開始するべく、話し合いを始める。
「あの2人はあれぐらい痛めつけておけばヤミカゲ様も充分というだろう。桃忍、お前はヤミカゲ様とワイユー殿に俺たちの役目は終わったことを伝えに行け」
「オッケー。任せて!」
「俺たちの役目は今倒した2人を人質のガキと同じように拘束したらそれまでだが、何もしないで待つというのも退屈だな」
 赤色のバイオスパークの指示で、桃色のバイオスパークは凍っている扉を蹴破って、持ち前の感知能力を利用してヤミカゲとワイユーを探しに出かけ、赤色のバイオスパークや、他の色のバイオスパークはつまらなさそうにそのまま部屋に残った。


 その頃、廊下ではカービィはヤミカゲ相手に苦戦続きで、メタナイト卿もワイユーとの勝負がなかなかつかないでいた。
 ヤミカゲの数々の忍術はカービィを苦しめ続け、いつしか戦闘はヤミカゲの方が優勢なまま一方的な展開へと陥っていた。
「カービィ、俺の新しい技を見せてやる!貴様を殺すために用意したとっておきの技をな!!」
「はぁッ…はぁッ…」
 倒れて息を切らし、反撃もままならないカービィの目の前にヤミカゲが立ち、両手で印を結んで身体から赤い炎のようなオーラを放ち始める。
「……!?カービィ、早く逃げて!!」
「ぽ…ぽよ……」
 ヤミカゲを見て危険を感じたフームはカービィに向かって叫ぶが、傷だらけの状態のカービィは逃げることが出来ない。
 そんなカービィを見てフームは意を決し、カービィのところへと駆け出す。
「カービィ!!!」
「秘技、爆炎の術!!!」
 ボオオオオオッッ!!!
 フームが傷ついたカービィを抱き上げた直後、ヤミカゲが開いた両手を床につき、その瞬間に彼の正面に巨大な火柱が一直線に放たれた。
「……!!!」
 フームと、彼女の腕に抱かれるカービィに火柱が凄まじい音を立てながら迫ってくる。
 逃げ場を失ったフームは迫り来る火柱を前にして思わず目を瞑ってしまう。
「ぬ…いかん!!カービィ、フーム!!」
 横でワイユーと戦っていたメタナイト卿はカービィとフームの危機を見て、ワイユーを無視して2人の元へ翼を広げて飛んでいく。
「逃げるな!!」
 ヒュンヒュンヒュン!!
 自分をそっちのけでカービィたちのところへ行くメタナイト卿に向かってワイユーはクナイを3本投げる。
「しッ!!」
 後ろから飛んで来たクナイを避けてメタナイト卿はヤミカゲが放った火柱と、カービィたちの間に割って入った。
 ワイユーがメタナイト卿に向かって投げたクナイはメタナイト卿が避けたため標的に当たらず、ヤミカゲの火柱に入ると一瞬で超高熱により溶解されて跡形も無く消えてしまう。
 バシイィィィィィィンンッッ!!!
「ぐッ……!」
 ギャラクシアを盾の代わりにして、カービィとフームの2人を飲み込もうとしていた火柱を間一髪で防ぐメタナイト卿。
「く………ぐぐ……ッ!!」
 火柱のパワーは非常に強力で、ギャラクシアを構えて防御態勢を取って踏ん張っているメタナイト卿は徐々に後退りをした。
「ぐ………うぅ……ぐわあッ!!!」
 ズガアアァァァン!!
「メタナイト卿ッ!!」
「ぽよ!!」
 火柱を防ぎ切ったものの、火柱が消える瞬間に生じた大きな衝撃でメタナイト卿は弾き飛ばされてしまう。
「まさかこの俺の新しい技を防ぐことが出来るとは……。相変わらずお前と、お前の持つその宝剣は只者ではないようだな、メタナイト…!」
「くッ………」
 並び立ったヤミカゲとワイユーの2人を前に、ギャラクシアを杖の代わりにしてメタナイト卿は立ち上がり、態勢を整えて戦い続けようとするが、ヤミカゲたちのところに更に違う影が入り込んだ。
「ヤミカゲ様!」
 ヤミカゲの元に現れたのは、ピンク色の忍者服に身を包んだ一頭身の忍者・桃色のバイオスパークであった。
 桃色のバイオスパークがやってきたことで、ヤミカゲは全て把握したのか、覆面の下でニヤリと笑った。
「そうか、わかった。…小娘、メタナイト、そしてカービィ。ここまで生き延びた貴様らに良いものを見せてやろう……」
「…どういうこと?」
「フンッ!!!」
 ボフッ!!
 フームの言ったことにヤミカゲは答えず、ワイユーは床に煙玉を叩き付け、辺りは白い煙に包まれる。
 やがて煙が晴れると廊下からはヤミカゲ、ワイユー、桃色のバイオスパークだけでなく、カービィ、メタナイト卿、フームの3人も姿を消し、廊下には夜の静けさが戻った…。




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