副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第34話・後編
〜帰って来た“紅”の少年忍者〜



 〜デデデ城 とある部屋〜

 カービィとメタナイト卿、フームの3人は気付くと廊下ではなく別室へと移動していた。
「…気付いたようだな」
「…ッ!!ヤミカゲ……!?」
 素早く起き上がり、ギャラクシアを構え直すメタナイト卿だが、目の前に広がっていた光景を見て思わず絶句する。
「クク……さあ、どうする?カービィ、メタナイト……」
 続いて起き上がったカービィ、フームの2人も、メタナイト卿と同じで動くことが出来なかった。
 3人が見ていた光景とは、人質として捕まったブン、そして戦闘不能となったナックルジョー、シリカの2人が手首を後ろに回されて縄で縛られ、バイオスパークたちにクナイを突き付けられているというものだった。
「カービィ!姉ちゃん!メタナイト卿!!」
「ブン!!」
 身動きが取れないブンはカービィたち3人に助けを求める。
「さてと。カービィ、メタナイト、フーム。悪いが人質を殺してほしくなければお前たち3人には今から俺が言う、俺たちの方で考えている条件従ってもらうぞ」
「…?」
 捕まっている3人と、カービィたち3人の間に入ってきたワイユーがカービィたちに説明を始めた。
「カービィとメタナイト。お前たち2人は今すぐ武器を収めて戦う意思が無いことを示せ。さもなくばここに人質として捕まえた3人をこの場で殺す」
「ぽよ?」
「なにッ…!?」
 ワイユーが押し付けてきた条件にはカービィとメタナイト卿が驚かないはずがなく、2人は戸惑った。
「カービィ?メタナイト?フーム?そこにいるのか…?」
「ジョー!!!」
 ブンの横で、目を瞑った状態のナックルジョーが口を開いた。
「俺とシリカは敵の攻撃で今は目をやられてる…!いいか?奴らの言うことに従ったらダメだ!こいつらはお前たちを戦わせなくした後で俺たちを殺すつもりだ!俺たちに構わず攻撃してくれ!」
「ガキの割りには頭が回るし察しが良いな、ジェクラの息子………」
 ガッ!!
「うぐッ……!!」
 自分たちの本当の目的を喋られてしまい、後ろからナックルジョーの頭を押さえつけるヤミカゲ。
 そしてヤミカゲはカービィたち3人の方に向き直る。
「フッ、仕方ないな……お前たち星の戦士どもを皆殺しにする前に俺からも本当のことを話してやろう。俺たちの真意はこの小僧が言った通りだ。武器を収めても収めなくとも、どちらにしろお前たちはここで始末させてもらう。最初の目的はお前たちを別々に引き離し、まずカービィとメタナイトを俺とワイユーの2人で殺した後で、痛めつけてからこのガキ2人も俺の手で殺し、それが出来なかったらこうやってこの部屋に集めて4人纏めて殺す策でいた……。で、今こうしてお前たち星の戦士は殺される寸前のところまで来てると言う事だ」
「くッ……!」
 ヤミカゲの話を全て聞いたメタナイト卿のギャラクシアを握る手に力が入る。
「カービィの方は充分弱らせた。メタナイト、お前は俺とワイユー、そして5人の『刃射尾簾羽唖狗忍者軍団』を相手に何分持つかな……?」
「バイオスパークの桃とバイオスパークの白。お前はカービィと金髪の小娘を拘束しておけ。ワイユー、バイオスパークの赤、青、黒は俺と一緒にメタナイトの相手だ」
 ヤミカゲの指示を受けた忍者たちは無言で頷くと、それぞれ言われた通りの行動に移す。
 カービィとフームを捕えるように指示された2人の女性のバイオスパークは、それぞれ桃色はカービィを、白色はフームを拘束するべく2人に襲い掛かる。
「桜花吹雪の術!!」
「ぷわあああッ!!」
 先刻のヤミカゲとの戦いで既に傷つき弱っていたカービィは、桃色のバイオスパークの忍術を正面からまともに食らい、変身が解けてニンジャカービィから普通のカービィへと戻ってしまい、倒れたところを縄で拘束されてしまった。
 しかし、一方の白色のバイオスパークは、非戦闘員であるはずのフームのところへ向かったのだが……?
「戦えない相手には手荒なことはしたくないでござります。大人しく…」
「やあッ!!!」
「ぶッ!!?」
 フームに近づこうとした白色のバイオスパークは、逆にフームに殴り飛ばされ、部屋の壁にぶつかった。
「いッ…痛いじゃないですかぁ〜……。抵抗するなら、こっちも容赦はしませんよ?」
 態勢を立て直そうとする白色のバイオスパークのところに、カービィの確保を完了した桃色のバイオスパークが駆けつける。
「油断しすぎよ、あんた……」
「それはあなたも人のこと言えないですよ!攫ってくる相手を間違えるし……」
「あれとこれは別問題!!」
 目の前にいるフームを置いてけぼりにし、目的も忘れ口論を始めてしまった2人のバイオスパーク。
 その隙に、フームは拘束されたカービィ、ブン、ナックルジョー、シリカの元に向かう。
「(あの2人が気付いてないうちに助けないと……!)」
 フームはまず最初にあることを思い出し、ブンに手を貸してもらおうとする。
「ブン?メタナイト卿から貰ったナイフって、今あるかしら?」
「あぁ、いつも持ってる。奴らはそれには気付いてなかったぜ」
「じゃあそれを借りてもいい?」
 姉が聞いたことにブンは素直に頷き、フームはブンの服から、彼が大切にしているメタナイト卿のシルエットが描かれたナイフを取り出す。
 それを持ったフームはすぐに4人の手首を縛っている縄を切っていく。
 完全に自分たちの目的を忘れて言い争う2人の女性のバイオスパークに全く気付かれることなく、フームは4人を助け出した。
 その横でメタナイト卿は1人でヤミカゲ、ワイユー、赤と青と黒のバイオスパーク3人を相手に奮戦していたが、1人赤色のバイオスパークがふと目を横にやると、拘束から解放されたカービィたちと、横で口論をしている桃色のバイオスパークと白色のバイオスパークの姿が視界に入ってきた。
 それを見て赤色のバイオスパークは…。
「ちょッ……てめぇら!?いったい何やってんだ!??」
「「あ!!」」
 赤色のバイオスパークが怒鳴ると、怒鳴られた2人以外の部屋にいた全員が桃色のバイオスパークと白色のバイオスパークの2人の方に顔を向け、びっくりした当の2人は同時に赤色のバイオスパークの方を向いてから、目的を思い出したのかカービィたちの方を見る。
「あのバカどもが……!」
「はぁ…やれやれ」
「なんでこうなるんでござるか…?」
「どうしようもねぇな、あいつら…」
 怒鳴った赤色のバイオスパークだけでなく、ヤミカゲやワイユー、青と黒のバイオスパークも困り果てたのか、メタナイト卿に対する攻撃の手を止めてしまった。
 桃色のバイオスパークと白色のバイオスパークはまたカービィたちを拘束しようと動くが、時すでに遅し。
「波動斬り!!」
「「ぎゃああッ!」」
 攻撃の手が止んだその一瞬に、メタナイト卿が2人のバイオスパークに向かって波動斬りを繰り出す。
 炎の衝撃波を浴びた2人のバイオスパークは吹っ飛ばされて、カービィたちとの距離を離される。
 役に立たない2人を見て、ヤミカゲたちが今度はカービィたちをそのまま始末しようと向かってきたが…。
 ドォン!ボフッッ!!
「なんだ?……ぐわあッ!!」
 いきなり何かが爆発したような音が立った後、部屋は真っ白な煙で覆われた。
「カービィ殿!卿!皆様、こっちです!!急いで逃げましょう!!」
「ぽよ?」
 カービィたち一行は声がした方向に全員引っ張り出され、引っ張ってる相手も確認出来ず、なすがままに連れて行かれてしまった。
「風塵の術!!」
 煙を鬱陶しく感じたヤミカゲは突風を巻き起こして部屋の煙を全て払い、完全に吹き飛ばす。
 煙が消えると視界は元通りになったが、そこにカービィたちの姿はなく、部屋にいたのは忍者たちだけであった。
「逃げたか……。なら仕方がない。お前たち!奴らを始末するための次の策を考えるぞ。俺について来い」
「了解です」
 ヤミカゲは部下の忍者たちを先導するように部屋から素早く出て行ってしまった。
 ヤミカゲの後ろに、ワイユーが続く。
 が、バイオスパークたちはすぐには部屋から出ずに、リーダーである赤色のバイオスパークが溜め息をついた後、呆れたような口調で喋り出した。
「ったく…。誰の所為で作戦が失敗したと思ってんだ?」
 赤色のバイオスパークは桃色のバイオスパークと白色のバイオスパークの2人がいる方向に目を向けた。
「「すみませ〜ん………」」
 不機嫌な赤色のバイオスパークに対して、桃色のバイオスパークと白色のバイオスパークは声を揃えて素直に、それも申し訳なさそうに目を逸らして謝罪する。
「お前らがもっと真面目にやってればこんなことにはならなかったと俺は思ってるんだがな…」
「赤忍〜、もうそれぐらいにしておいた方が良いでござるよ〜?過ぎたことにいちいち怒っていてもキリがないでござる」
「次にまた新しい作戦を立てて、今度こそあいつらを始末しなければならん。俺たちも急ぐぞ」
 桃色のバイオスパークと白色のバイオスパークの失敗の所為でイライラが収まらない赤色のバイオスパークを、青色のバイオスパークがイライラを無くしてやろうと宥め、黒色のバイオスパークは先に出て行ったヤミカゲとワイユーの後を追って部屋から出た。
「それもそうか。次の作戦もどんなものであろうと、やってやるじゃん。桃忍と白忍も、次はちゃんとやれよ?」
 青色のバイオスパークに宥められ、イライラを抑えてやる気を取り戻した赤色のバイオスパークも、部屋から出てヤミカゲたちが向かった方向へと消えていった。
「さぁ、桃忍と白忍も元気を出して。クヨクヨするのは無しでござる。赤忍はああ見えても桃忍と白忍のことは大切に思っているから…」
 落ち込んでいる桃色のバイオスパークと白色のバイオスパークを励ました青色のバイオスパークは2人を引き連れ、先へ行った仲間の元へと急ぎ足で向かう。
 星の戦士たちを取り逃がしてしまった彼ら忍者軍団は、次はどのような手で襲ってくるのだろうか……。


 ヤミカゲと仲間の忍者たちが見失ってしまったカービィたち星の戦士一行はある1つの部屋に連れてかれていた。
「皆様、大丈夫でしたか!?」
「貴方たち…来てくれたのね!」
 カービィたちを助けたのは、ワドルディたちと共に忍者と戦っていたはずのソードやブレイドらメタナイト卿の部下の騎士たちであった。
 フームは自分たちを部屋に連れて来た相手がソードたちと知って一安心した。
「そなたたちは、あの忍者たちと戦っていたのではないのか?」
 自分たちとは別々で戦っていたはずだ、と思ったメタナイト卿が騎士たちの内の1人、ヘビーナイトに詳しい話を聞こうとする。
「それについてですが、メタナイト卿。城で暴れていたあの連中は戦闘の最中に突然消えてしまいまして…。そこであなた方を探しに向かおうとしたところ、ワシたちの前に現れたこの者たちの協力もあって、すぐに見つけることが出来ました」
「………?」
『ここの村に来るのも久し振りだな』
 ヘビーナイトが目を向けた方向から声が聞こえた後、カービィたちも声のした方に目をやるとそれを待ってたかのように何もない空間から、赤い忍者服を着た忍者と、紫色の忍者服を着た忍者の2人がドロンっと白い煙を出しながら出現する。
 そのうちの1人はカービィ、メタナイト卿、フーム、ブンの4人にとって見覚えのある人物であった。
「「あ〜〜〜〜〜〜ッ!!!」」
「貴方は……」
「ベ…ベニカゲ!?!?!?」
「そッ…そんなに驚かなくても良いだろ…」
 フームとブンの2人は思わずその人物を指さし、驚いたように声を揃えた後、ブンが名前を呼んだ。
 カービィたちの目の前に現れた2人の忍者の内、片方の赤色の忍者服を着た人物はかつてカービィたちと会ったことのある忍者・ベニカゲであった。
 2人の、自分を見た後のオーバーな反応に、当のベニカゲ本人は少し困っているようだった。
「でも……どうして貴方はここに来たの?修行の旅に出たはずじゃ…?」
 ベニカゲがこの村に来ていた理由が気になっていたフームはまずはその事について彼本人から聞こうとする。
「いや……実は…あれからこの星を修行のために旅していたのだが、2日前に道に迷ってしまって……。そして今夜偶然辿り着いたこの村で休もうとしたら、城の方が騒がしくて、来てみたら騒ぎに巻き込まれ、この人たちから話を聞き、今こうしているわけなんだ」
「偶然に偶然が重なってここまで来たのね………」
「偶然に偶然…かぁ…。根本的な部分は全然変わってねーんだな……」
「あ…あはははは……」
 ベニカゲの話を聞いたフームとブンは彼が相変わらずなのを見て多少呆れており、ベニカゲもその事を自覚していたのか、苦笑いをしていた。
「で、ベニカゲ?お前の隣にいる忍者って誰なんだ?」
 ブンは先程からベニカゲから見て左隣にいる、紫色の忍者服を着た人物も気になっていたようで、ベニカゲに問う。
「紹介するよ。こいつはツキカゲ。拙者が前に通ってた忍者学校の同級生で、拙者の友達だ。ツキカゲは拙者と同じ忍者学校の落ちこぼれの生徒で、こいつとも旅の途中で寄ったところでたまたま会い、成り行きで拙者と2人修行の旅に出ることになって、今一緒にいるんだ」
「初めまして、どうぞよろしく…。僕については、ベニカゲが話した通りだよ…」
「ぽよ!」
「こちらこそ、よろしくね!」
「よろしくな!」
 ベニカゲに『ツキカゲ』と呼ばれた紫色の忍者服を着た人物は少し恥ずかしそうにお辞儀をしながら挨拶をする。
 フームは、彼が意外と照れ屋な性格なのではないかと察したが、カービィとブンの2人と一緒に笑顔で挨拶を返した。
「それにしても貴方…旅の途中に成り行きで友達と出会って、この村に来たのも偶然って話しててブンの言った通り前と全然変わってないような気がするんだけど、修行の成果と言うか…忍術の腕前はどうなったの?あんなに下手糞だった刀や手裏剣の扱いは少しは上手くなったの?」
 本人からの話を聞いている限り、成績表を何者かに盗まれて村にやってきたという以前と全く変わらず、どことなく抜けてる部分があるベニカゲを見て、フームはもしかして実力の方も前からあまり変わってないのではないかと心配になってきて、それについてハッキリと問う。
「なッ…何を言ってるんだ!拙者が何もしないで旅を続けていたとでも!?その修行の成果は今すぐにでも見せてやりたいところだが………」
「ベニカゲ…!そんなことよりも、今はさっきの奴らに皆でどう対抗するか…でしょ?」
「あッ…そうだった!まずはそれからか…」
 フームの問いにすぐさま自分の修行の旅の成果を見せようとしたベニカゲだったが、目の前の敵を優先しようと止めに入ったツキカゲの声で冷静さを取り戻す。
 ベニカゲが話が出来る状態になったのを確認したフームは、本題であるヤミカゲについての話を2人の忍者に振る。
「ベニカゲと、ツキカゲ。貴方たちもさっき見たからわかってると思うけど、相手はあのヤミカゲよ?修行の旅を経てどれ程強くなったかはまだ見せてもらってないけど…貴方たち2人の忍術であいつに勝つ自信はあるの?」
「そこまではわからないが、今の拙者たち2人の実力なら…あの五色の忍者たちなら纏めて退治することは出来そうだ。それに、この部屋にも既に仕掛けてある」
「仕掛けてる、って……?」
「ああ。拙者たち2人がここにいる者の気配をしばらく消す術を使ってるからな。夜明けまでは多分大丈夫だ」
「…多分というのがちょっと心配だわ……。それにしても、その自信がどこから来るかわからないけど……とにかく今はヤミカゲたちを倒す協力をしてくれるのね?」
「奴らと戦うことになったら、修行の成果はその場で見せてやる!」
 フームの言葉に、ベニカゲは気合いを入れ直して張り切っている。ベニカゲ本人が説明したことによると、今はベニカゲとツキカゲの2人の忍術で自分たちの居場所がヤミカゲたちに簡単に見つからないようになってるという。
 カービィ、フーム、ブンの3人が2人の忍者と話している横では、メタナイト卿と騎士たちも今後のことについて話し合っていた。
「卿、ご存知かと思われますがこの部屋は外からは見えない隠し扉からしか入れない部屋です。その上、今はあの忍者2人の特殊な忍術のおかげで、2人が話すことによれば夜明けまではここにいても奴らには気付かれないそうです」
「うむ。あのヤミカゲにその術が通用するのかどうかはわからないが、2人がそういうのなら彼らを私は信じよう」
「では……」
「そうだな…まずはヤミカゲたちに対する何か良い策を考えねばな」
「どうするの?メタナイト卿…」
「そうだな…。まずはジョーとシリカ。そなたたち2人はここに残って休んでいてくれ」
 心配そうにこれからのことをどうするかをフームに訊かれたメタナイト卿は負傷して戦うことが困難になっているナックルジョーとシリカの2人を見て、彼らに残るように言う。
「あぁ、悪いな…。目の方は回復したが、今回は付き合えそうにない…」
 ナックルジョー自身も、毒霧による効果が先程よりはマシになって視力は回復したものの、自分が今は敵と満足に戦うことが出来るような状態であることはわかっており、力になれないことが申し訳無く思ったのか、俯きながらメタナイト卿の言う事に従う。シリカも黙って頷き、メタナイト卿の言う通り部屋に残ることにした。
「ヘビーナイト、メイス、ジャベリン。お前たち3人はここに残ってジョーたちを守れ。ソード、ブレイド、アックス、トライ。お前たちは夜が明けたらカービィや私に同行して、ヤミカゲたちを探してほしい。ベニカゲ、そしてツキカゲと言ったな。そなたたちもカービィや私たちと行動を共にしてくれぬだろうか?」
「任せておけ!拙者たちも忍者だ!!」
「本当に大丈夫なのか〜?」
 先程から変に自信満々なベニカゲのことをブンはやはりいまいち信用出来ない様子で、期待はしていないようだった。
「決まりだな。念のため見張りはヘビーナイト、メイス、ジャベリン。お前たち3人が交代で頼む」
「わかりました」
「了解ダス!こう見えても山賊の時から夜更かしは得意分野だったんダスよ!」
「俺は…元々眠らない……」
 メタナイト卿が夜明けの後のヤミカゲたちに対する作戦の会議の中心となってそれぞれの役割が決まり、カービィたちは僅かな間ながらも夜明けまでの休息に入った……。


 〜ウィザード・フォートレス 資料室〜

 グリルに星の戦士たちやヤミカゲたち忍者軍団の監視を任せ、資料室で魔法の研究を続けるマルク。
「(父さんはどれだけ多くの『黒魔術』を残しているんだ?使えそうなのは僕の手で改良して使っていかなければ…。使用時にリスクが伴う魔法についても改良が必要だ…。そして僕やグリルが元々使える魔法についても更にレベルアップさせておかないと…)」
 マルクは分厚い本を1冊1冊調べては棚に戻していく。
「(魔獣ももっと強いのを作り出せるようにし、星の戦士たち……特にカービィを確実に倒せる奴を……僕は…)」
 マルクが考え事をしながら黒い色の表紙の本を読んでいる最中のこと。
 資料室に突如として通信が入った。
「なんだ……?」
 マルクは急いで通信に応答すべく、資料室の部屋のちょうど中心にある機械へと向かう。
 機械のスイッチを押すと、ディスプレイが天井から登場し、画面に映ったのは調査隊の一員として宇宙へと派遣されていたサイボーグボーラルであった。
「ごきげんよう、マルク様。今はお1人ですか?」
「なんだ、ボーラルか。僕は今1人だが……お前は今どこにいる?」
「それは良かった。私は今調査隊に参加した下っ端たちと一緒にアクアリス支部に帰ったところです。こちらには私と下っ端たち、侵入者撃退用の魔獣たち以外は誰もございません。早速ですが、実は組織の首領である貴方だけにお話をしたいこととご覧になってもらいたいものが幾つかございまして……」
「今すぐアクアリス支部に来い……か?」
「はい、その通りです。このことは表沙汰にしたくはありませんので……」
「グリルやドロシアにも話せないことなのか?」
「ええ。1件については問題ございません。しかし、もう1件についてはグリル様とドロシア様のお二方にはどうかご内密にしてほしいのです…。特にドロシア様、あの人には……」
「わかった、すぐに行こう。しかしタイミングが良かったな」
「…はい?」
「グリルは今自分の部屋にいるし、ドロシアは別の支部にいたから通信してきたタイミングが良かったということだ。ドロシアの方は今何してるかわからないがな…」
「居ることがわかっていたら問題のない1件だけについて話しておりました。ドロシア様のこと、深追いはしないのですか?」
「いや、敢えてしていないだけだ。奴が僕のグリルに対する扱いでいつも警戒していることぐらいはわかっている。ここで奴を深追いし、仲間割れをしてしまえば奴のことだ、グリルへの想いが強くなり過ぎて何をやらかすか…。しかもそうなれば星の戦士どもにも僕達の組織に付け入る隙を作ってしまうかもしれない…。どちらにしろ今は表向きだけは奴とは出来るだけ友好な関係を保っていくつもりだ。数少ない僕の話良い相手でもあるしね……」
「なるほど…確かにドロシア様と関係を悪くしてしまえばマルク様の障害となる存在が星の戦士たち以外にも増えてしまうことになりますね…。更に考え過ぎかもしれませんがドロシア様の行動によってはグリル様も…」
「そういうことだ。邪魔が増えると面倒だからな」
「では先程の件、アクアリス支部にて私は貴方をお待ちしております」
「転移魔法で行けば一瞬だ」
 通信を切断すると、マルクは転移魔法でボーラルが待つアクアリス支部へと向かった。
 ボーラルが言う2件の用事。
 うち1件の『マルクにだけ話したいこと』、『マルクにだけ見てもらいたいもの』とは果たして何なのであろうか?
 星の戦士たちにとっての脅威はまた増えてしまうのか?
 そのことは『マルクにだけ見てもらいたいもの』を発見したボーラルだけが知っている…。




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