副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第35話・その3
〜忍者たちとの戦い〜



 〜MTS 惑星アクアリス支部〜

 ボーラルの案内で、マルクは『極秘のもの』が保管されているMTSアクアリス支部にある地下室の一室に入るところであった。
「…ここの予備の空き部屋に僕にだけ見てもらいたいものがあるんだって?」
「えぇ…カメラは外してありますので、ここならグリル様やドロシア様にもバレない筈です」
「…………フッ」
 ボーラルは電子ロックが掛かったこの部屋の扉をパスコードでロックを解除し、マルクを部屋の中に入れる。
 そこでマルクを待ち受けていたものとは………。
「…………!!!」
 マルクは部屋に入った瞬間、自分の正面の壁に飾られていた『あるもの』に驚愕した。
 驚きのあまり目を大きく開いた彼だったが、すぐに興奮を抑えて平常時の態度に戻る。
「…ボーラル、これをどこで手に入れたんだ……?」
「既に組織の支配下にある『R427惑星』に物資補給のため立ち寄った際にこれを発見致しました」
「…R427惑星…?あぁ、かつてHN社がパワードマッシャーの調整や性能のテストをしていたあの荒れてる星か。そこの僕たちの支部に立ち寄った時に見つけたんだね。で、その星のどの場所で見つけた?」
「星の調査を続けていた下っ端のプランクの1人が、前にパワードマッシャーが暴れていた城のデリバリーシステムの部屋で装置のテストをしようとしたところ、偶然床が抜けたことで今までの調査で発見出来なかった城の地下室を発見し、この『不思議な絵画』を見つけ報告してきました」
「そうか………」
「同時にその地下室で発見しました、古文書らしき本も見つけまして現在私の手元に保管してあります」
「その古文書を見せてみろ」
 マルクに言われて、ボーラルは『絵画』と共に発見した古文書を渡した。
 マルクは古文書を受け取り、魔法で古文書のページをパラパラとめくり確認する。
「全て今は使われてない言語だな……。しかしこの言語、解読出来そうだ」
「ほほぅ…?」
「これに書かれている言語はドロシアの封印を解く時に使った魔法の術式に使われていた言語と全く同じなんだ。この古文書は僕の方で極秘に研究させてもらおうか。もしかすると絵画と共にこれは重大な発見かもしれない」
「では…?」
「この古文書は僕の方でグリルやドロシアの目につかないようなところに隠す。暇があればこれを解読する研究をしよう。ボーラル、お前はよくやったよ」
「ほほほ。別に大したことはしておりませんよ…。それから私の調査隊に同行していた下っ端たちは既に『口封じ』してありますよ。このことは貴方と私だけの秘密ですからね………」
「ほう…?……気が利くな」
 ボーラルの言葉の意味をマルクは理解したのか、不敵な笑みを見せた。
「ところでマルク様。私の次の仕事は…?」
「そうだな……お前はこのアクアリス支部から、恐らく別の星へと遠征に行っているお前の兄と連絡を取れ」
「にッ…!?兄さんと……ですか……?」
 マルクの命令に、冷静なボーラルが珍しく驚いたような顔をした。
「ん?嫌なのか?」
「いえ、別に……。ただ、兄さんとの仲は相変わらずで……」
「そんなことは最初から分かっている。お前とお前の兄が不仲なことぐらいな。連絡を取ったら、お前の兄には『星の戦士を討伐する話のためにウィザード・フォートレスへと戻って来い』と伝えろ。本当はグリルの仕事だが、僕は今こうして一緒にいるお前にやらせれば早いと思ってお前に任せることにした」
「承知いたしました。マルク様のお言葉であるなら兄さんも従い……ますかねぇ?」
「一応言っておくが、僕はお前の兄よりもお前の方が僕には従順だからお前のことの方を信頼している。人の信頼を得ることというのは大切なことだ。奴にはそれがわからないようだがな」
「勿体ないお言葉ですね…」
「わかればお前はこのアクアリス支部の司令室へ行け。僕は古文書をウィザード・フォートレスを持ち帰る」
「兄さんへの連絡のこと、お任せください」
 それだけ言って、ボーラルは自分の『兄さん』に連絡すべくこの支部の司令室へと向かっていった。
 ボーラルがいなくなったのを見て、マルクはニィッと歯を見せて笑う。
「(…僕とお前だけの秘密だと?グリルとドロシアには確かに今は秘密だが、このことはいずれ時が来たら話すことにしよう…。元・宇宙最強の魔獣ボーラル…お前は役に立たないお前の兄と共に、こんな秘密を知ってしまったことで、お前が口封じ…もとい始末した下っ端どもと同じように死ぬんだ……星の戦士どもの道連れでな。今回の件と言い、リップルスターの件と言い、これまで充分働いてくれたお前には感謝はしている。だからこその名誉の死を与えてやろう……クッククク…)」
 何かを企むマルクはボーラルから渡された古文書を持ち、転移魔法で惑星ハーフムーンのウィザード・フォートレスへと向かった…。


 〜ププビレッジ 町はずれの草原〜

 場面は変わり、ここププビレッジの村はずれの草原ではベニカゲが3人のバイオスパーク相手に奮戦していた。
「ふっ、てやあッ!!」
「ぐおあぁッ!!」
 赤色、黒色、桃色の3人のバイオスパークを同時に相手しているベニカゲの成長は確かなもので、かつて初めてププビレッジにやってきたときから考えると見違えるほどであった。
 忍者刀による攻撃で赤色のバイオスパークを吹っ飛ばし、黒色のバイオスパークが仕掛けてくる攻撃も冷静にかわしていく。
「くそっ、なんで攻撃が当たらねぇんだよ!?」
 忍者刀で吹っ飛ばされた赤色のバイオスパークは煙玉を服から取り出し、赤色のバイオスパークに向かって投擲した。
「こんなもの!」
 ヒュン!
 飛んで来た煙玉にベニカゲはクナイを投げて撃ち落とし、無力化する。
「そらそらッ!!」
 クナイを投げた直後のベニカゲの横から、毒の塗られた短刀を構えた黒色のバイオスパークが飛び掛かる。
「フッ!!」
「ぐおッ!??」
 空中にいる黒色のバイオスパークに気付いたベニカゲは今度は手裏剣を4つ投げつけ、撃墜。
 しかし、ベニカゲのすぐ後ろには術の準備を済ませた桃色のバイオスパークの姿が。
「桜花吹雪の術ッ!!」
「!?…ぐわッ!!!」
 不意を突かれたベニカゲは爆発する花びらによる攻撃をまともに浴びてしまい、大きく吹っ飛ばされる。
「大したことないね!!」
 自分の忍術が決まり、喜ぶ桃色のバイオスパーク。
 しかし、彼女の横で態勢を立て直そうとしていた赤色のバイオスパークがすぐに異変に気が付く。
「桃忍、上だ!!」
「……え?」
 桃色のバイオスパークの攻撃を受けた直後にベニカゲは変わり身の術を使い、小石と入れ替わっていたのだ。
 赤色のバイオスパークが気付いた時には既に遅く、ベニカゲ本人は桃色のバイオスパークの真上の空にいた。
「食らえ、炎弾ッ!!」
 ベニカゲは火薬を着火させて火の玉状にしたものを2つ、上空から桃色のバイオスパークに向かって落とす。
「なんの!桜花吹雪の術!!」
 爆発する花びらを飛ばして火の玉を相殺しようとする桃色のバイオスパークだが、花びらは火の玉に燃やされてまるで通用しなかった。
 そして、火の玉は1つは彼女に、もう1つは赤色のバイオスパークの方をめがけて落ちてくる。
「そッ…そんな……」
 自分の術が効かなかったためか怯えて動くことが出来ず、桃色のバイオスパークは火の玉が目の前まで来ても呆然としていた。
 対する赤色のバイオスパークはギリギリのところで火の玉を避け、無事であった。
 ボオォォォォォッ!!!
「きゃああぁぁぁ……!」
 桃色のバイオスパークの身体が火の玉に包まれ、爆発を起こしてその周囲の草をも焼いていく。
 爆発が晴れると黒煙が上がり、地面には身体が半分焼け焦げた桃色のバイオスパークが仰向けで倒れていた。
 そのままピクリとも動かなかった為、どうやら焼死したようだ。
 それを見て、桃色のバイオスパークの死亡を確認した赤色のバイオスパークを舌打ちする。
「チィッ、あのバカが……なんで避けなかったんだ?しかし、これで刃射尾簾羽唖狗忍者軍団が1人減っちまったのか……」
「仕方ねぇ、赤忍。俺たち2人だけでやるぞ」
「ったく……」
 同じく身体に刺さった手裏剣を取り外し、態勢を立て直した黒色のバイオスパークが赤色のバイオスパークの横まで来て、ベニカゲの方へと身体を向ける。
「しぇああああッ!」
 黒色のバイオスパークが掛け声をあげてクナイを右手に持ち、正面からベニカゲに向かって走り出す。
 赤色のバイオスパークは後ろから鉤縄をベニカゲに向かって投げた。
 ベニカゲは最初に近づいてきた黒色のバイオスパークのクナイによる斬り付けを姿勢を低くして最小限の動作で回避し、続いて赤色のバイオスパークが足に向かって投げた鉤縄を軽くジャンプすることでこれも避け、忍者刀を振り下ろす。
 ザシュゥゥッ!!
「ぐわああぁぁぁ………!!」
 忍者刀で黒色のバイオスパークを斬り伏せ、すぐ下の赤色のバイオスパークが使った鉤縄も切断して使えなくするベニカゲ。
 ベニカゲの忍者刀に斬られた黒色のバイオスパークは持っていたクナイを落とし、前のめりに倒れた。
「野郎……!!食らえッ!!!毒霧地獄の術ッ!!」
「ふんッ!!」
 桃色のバイオスパークに続いて黒色のバイオスパークまでもベニカゲに倒され、頭に血が上った赤色のバイオスパークは、叫びながらまだ隠し持っていた紫色の毒霧を噴き出す煙玉をベニカゲに投げつける。
 しかしベニカゲにそれは当たらず、逆にベニカゲが投げた火薬に煙玉が焼かれてしまう。
「なんだと…!?」
 ヒュン、ヒュン!!
 煙玉が不発に終わって驚きながらも、ベニカゲが投げた2つの手裏剣が飛んで来たために赤色のバイオスパークはクナイを取り出してそれを弾く。
「はぁぁぁぁッ!!」
「くそッ!」
 忍者刀を持ち、斬りかかってきたベニカゲに対して赤色のバイオスパークはクナイ一本で応戦せざるを得なくなった。
 当然リーチが短いクナイの方が不利で、赤色のバイオスパークはベニカゲに押されていく。
 そして、ついにベニカゲの忍者刀が赤色のバイオスパークが持っていたクナイを弾き飛ばした。
「なにッ!?」
「でぃやあぁぁぁぁぁぁッ!」
「ぬわあぁぁッ!!」
 ブシュウゥゥゥゥゥッ!!
 無防備になった赤色のバイオスパークにベニカゲの忍者刀を使った渾身の力が込められた斬撃が命中。
「な…なんだ…とォ……!?」
 ベニカゲに斬られた赤色のバイオスパークはその場で傷口から血を噴き出しながら倒れたのであった。
「……ふぅ〜…。修行の成果はあったけど、肝心のカービィとフームは拙者のことを見てないなんてなぁ……。 いや!でもあの黒い奴と戦って、見せられる!よしっ、そうと決まればカービィを助けるぞ!」
 3人のバイオスパークを以前からは考えられないほどの実力を見せて纏めて撃破したベニカゲ。
 その様子をカービィたちが見ていなかったことが彼は少し不満だったようだが、次はカービィを助けるために、休まずに少し離れた場所で戦っている彼とヤミカゲのところへと救援に向かう。

 ベニカゲの友達の忍者のツキカゲも青色のバイオスパークと白色のバイオスパークを相手に、ベニカゲと同じく善戦していた。
「それッ!!」
 白色のバイオスパークが空中で回転しながら雪混じりの冷風をツキカゲにぶつける。
「ふッ!!!」
 ピシュン!
 ツキカゲは突風が当たる寸前に姿を消し、突風が吹き終わると同時に手裏剣を投げて反撃。
「危ない!!でござる!!」
 しかし、白色のバイオスパークに当たる直前に青色のバイオスパークが愛用の小刀で手裏剣を防いだ。
「たっ、助かりました〜……」
「白忍。後方からの支援を頼むでござる」
 青色のバイオスパークはそれだけを言うと小刀を手に分身の術を使って3人に分身、ツキカゲに斬りかかる。
「それならこっちもッ…!!」
 ツキカゲも対抗するかのように忍者刀を鞘から引き抜いてから3人に分身、分身体も含む3人の青色のバイオスパークと3対3の戦いを繰り広げる。
「今のうちに!!」
 ツキカゲと青色のバイオスパークの2人が分身し、入り乱れて戦っている最中に白色のバイオスパークは物陰で再びツキカゲに対して冷風を起こす忍術を使う準備をしていた。
 しかし…。
「甘いよ…!!」
「えッ……!?」
 ザクリッ!!
 突如白色のバイオスパークの正面に現れたツキカゲが彼女を忍者刀で斬り倒す。
 斬られた白のバイオスパークは悲鳴を上げることもなく地面に倒れ伏した。
「今のは!?」
 白色のバイオスパークが突然倒され、青色のバイオスパークは自体が把握出来ずに思わず分身の術を解除し、1人に戻った。
「白い忍対策に3人だけじゃなく、密かに4人に分身していたんだよ…!」
「ぐッ…隙のない忍でござるな……!!でも!」
 構えを取ると青色のバイオスパークは小刀とクナイを使い一瞬にしてツキカゲの分身体3人を倒し、本物のツキカゲの前に迫る。
 しかしツキカゲは鞘に忍者刀を収めており、瞬時に再び4人に分身。
 3体の分身体は青色のバイオスパークの左右と正面へと移動し、本物のツキカゲは跳躍。
 そして4人同時に忍者刀を鞘から引き抜き、本物のツキカゲは一気に急降下した。
「逃げ場はないよ、満月斬り!!」
「なッ!?」
 ズバアァァァァッッ!!
 四方向から同時に居合い抜きで青色のバイオスパークは斬り付けられ、何が起こったのかわからず棒立ちになっていた。
 必殺の剣術を披露したツキカゲは棒立ちになっている青色のバイオスパークの背後に着地。
 ツキカゲの分身体はその瞬間に全て消える。
「む……無念でござる……ヤミカゲ様…」
 着地したツキカゲが忍者刀を鞘に収めると、青色のバイオスパークはドサッとうつ伏せに倒れる。
 2人のバイオスパークを倒したツキカゲが横を見ると、ベニカゲは既に3人のバイオスパークを倒していたようで、彼のカービィとヤミカゲのいるところに向かっている姿が確認出来た。
「(僕も、救援に向かわないと……!!)」
 そう思いながらもツキカゲは口には出さず、先に向かったベニカゲの後を追う。

 ズバババババババババッ!!!
 騎士たちと、彼らに襲い掛かった4体のロボット魔獣・バトルマシーンたちは、カービィとメタナイト卿たちがいる草原よりも少し離れたところにある林に場所を変え、戦っている。
 バトルマシーンズは手に持ったビームマシンガンからエネルギー弾を連射。
 ソード、ブレイド、アックス、トライの4人は2人1組で行動しつつ、樹木や岩の後ろに隠れて何とかやり過ごそうとする。
 だが、次々と放たれるエネルギー弾によって樹木や岩はすぐに壊され、また別の場所に隠れて……を繰り返している状態に陥っていた。
 複数の樹木と茂みのある場所に隠れているソードとトライのペアは、バトルマシーンたちの激しい攻撃に対抗出来る策を練っていた。
「まずいな、トライ。アックスの手斧やお前の持つ槍で投げて攻撃をしようにも、奴らのエネルギー弾によって逆に弾かれてしまうし、ここにある障害物にも限りがある…。障害物が全てなくなる前に奴らに対して有効な策を考えねばな……。くッ…こんな時にカービィ殿や卿、ジョー殿、シリカ殿がいてくれれば……」
「フッ。確かに卿やあの子供の星の戦士3人なら、この程度の魔獣相手にここまで苦労はしないだろうな。それにしても俺たちもあの魔法使いに随分と嘗められたものだ……」
「あぁ…グリルという魔法使いも、大した魔獣じゃないと言っていたな。しかし、あのエネルギー弾の嵐を掻い潜って攻撃するにはどうしたら………」
「俺の槍は帯電しているし、機械である奴らには通じるとは思うのだが…何としても奴らの隙をだな…」
 暫く黙った後、トライはソードに再び声をかけた。
「………ソード」
「なんだ?」
「お前、奴らの攻撃を避ける自信はあるか?」
「その様子じゃ何かひらめいたようだな、元ナイト・バンテッドの参謀。良いぜ、作戦に乗ってやる。奴らの攻撃はちゃんと避けられるぞ」
「それなら、まずはブレイドとアックスを俺のいるところまで連れて来てくれ。そうしてから作戦を話す」
「わかった。昔と同じように、お前の作戦に従おう」
「助かる」
 ソードナイトは頷き、隠れていたところからわざとバトルマシーンたちから見えるところに飛び出す。
「排除スル!排除スル!」
 ソードを見つけた4体のバトルマシーンは彼に向かってビームマシンガンからエネルギー弾を撃つ。
 ソードは走ってそれを全てかわし、大岩の後ろにブレイドナイトとアックスナイトの2人が隠れているのを見つけると、彼らのところまでやってくる。
「ソード!?お前はトライと一緒じゃ…」
「トライが奴らに対する策を考え付いた。だから、まずはお前たち2人を連れてくるように頼まれたんだ」
「わかった。俺も行く」
「あいつの作戦はいつも面倒臭いし俺は嫌いだけど、このまま隠れてるだけじゃ確かに埒が明かないのも事実だしな…。協力してやるよ」
「よし!」
 ブレイドとアックスの2人を連れてエネルギー弾を避けつつ、ソードはトライのところに戻ってきた。
 戻ってきたことを確認したトライは3人に考えた作戦を説明しようとするが…。
「そろったな。手短に、それも1回しか言わんぞ?」
「俺は簡単な役目が良いんだけど…」
 やはりアックスはトライの作戦にはそこまで乗り気ではないらしく、そのことが髑髏のような顔にも表れていた。
「大丈夫だ。お前にはお前がやりたそうな役割を担当してもらうからな」
「おっ、なんだそれは?」
「それを今から順番に説明するところだろ。聞いておけ」
「へ〜い」
 トライは作戦に乗り気ではないアックスを黙らせると、作戦の説明を3人に対して始める。
 しかし、4体のバトルマシーンは既に4人のすぐ近くまで迫って来ていた。
「排除…排除…」
「…来たぞ!!」
「そのようだな!」
 トライの声と共に、茂みからソードとブレイドの2人が4体のバトルマシーンの目の前に飛び出す。
「敵発見!敵発見!」
 飛び出したソードとブレイドを視認したバトルマシーンたちはエネルギー弾を2人に向かって連射した。
「「うおぉぉぉぉッ!!」」
 バトルマシーンの撃つエネルギー弾を2人の騎士はそれぞれ反対の方向へと走りつつ、かわしていく。
 避け切れないエネルギー弾は剣で弾き返し、バトルマシーンを誘導するように動いた。
 ソードとブレイドの2人を追っていたバトルマシーンは一列に並ぶ。
 それを見計らっていたかのようにトライが槍を持ち、茂みから顔を出した。
「今だ!!」
 トライは槍を4本続けてバトルマシーンに向かって投げる。
 ビリビリビリッ!!
「ジ…ジジジ…ジ…」
 投げられた槍は1本につき1体のバトルマシーンに命中し、電流で動きを停止させることに成功。
「行けえぇぇぇぇ!!」
 動きが止まった、4体のバトルマシーンに最後はアックスが斧を投げつけた。
 ヒュン ズバババババッ!!
 1列に並んでいたバトルマシーンは全て斧で頭を斬り落とされ、全てが機能停止したようだった。
「やったぜ!!俺たちの戦略勝ちだな!」
「作戦にはあまり乗り気じゃなかっただろう…」
 先程とは打って変わりバトルマシーンを一網打尽にして途端にはしゃぎ出したアックスと、その横で彼の掌を返した言動にやれやれと呆れているブレイド。
 ソードとトライも作戦が成功し、ハイタッチをした。
「流石だな。俺とブレイドが囮になって奴らの気を引きつつ一列に並ぶ状況を作り、続いてお前が電気を帯びた槍で痺れさせ、最後にアックスの斧で全員に止めを刺す…。 普通に斧や槍を投げただけではエネルギー弾に撃ち落されるし、かと言って正面突破は得策ではないということを考えての作戦だったみたいだが、全部お前の指示通りに上手く行ったな」
「お前たちが山賊団を抜けた後も、こうして作戦を考える役割は続けていたんだ。前に城を襲った時も俺が作戦を考えていたんだが、その時は失敗したな」
「トライ、これからもその回転の速い頭で我らのご主人を支えてくれ」
「勿論だ。メタナイト卿の元へと下ったその時からとっくに心に決めている。ソード、これからも俺たちで卿を助けていこう」
 トライの言葉に、ソードは同意し静かに頷く。
「さて…と。俺たちのやるべきことはまだ残ってるだろ?ソード、ブレイド、トライ」
 向き合っていたソードとトライのところに、アックスとブレイドの2人がやってくる。
「早くカービィ殿や卿のところへ急ごう!」
「おう!」
「よっしゃ!」
 ブレイドの言葉にソードとアックスは返事をし、トライもブレイドと顔を合わせ、林を抜けてカービィたちが戦う場所へと急いだ。

「ギャラクシアソードビーム!!」
「またか!?」
 ズガアァァァァァァァァンッッ!!
 騎士たちや2人の忍者がそれぞれ敵を倒してヤミカゲと戦うカービィの救出に向かい始めた頃だが、メタナイト卿とワイユーの激しい死闘は続いていた。
 ワイユーは素早い身のこなしでメタナイト卿が放つギャラクシアソードビームを避けつつ、光刃が標的を外れ岩に当たって起きた爆発により上がった黒煙を利用して姿を隠しその中から手裏剣を投げて反撃をする。
 ヒュン、ヒュン、ヒュン!
「ぬッ!?」
 キィィィン!!
 手裏剣をギャラクシアで弾くメタナイト卿。
 しかし彼に休む暇など与えられず、手裏剣を弾いて1秒も経たないうちに黒煙から飛び出したワイユーが忍者刀を右手に持ち、メタナイト卿に斬りかかる。
 その上ワイユーは左手に先程波動斬りを防いだ時と同じようにエネルギーを纏わせていた。
 だがメタナイト卿もワイユーに黙ってやられたりはしない。
「防御が甘い!ギャラクシースパーク!!」
「そう来たかッ……!!」
 ブシュウゥゥゥ バリバリバリバリィィ!!
 空中から右手に忍者刀を持ち、左手にエネルギーを集めつつメタナイト卿に突っ込んだワイユーは胴体の守りが完全に甘くなっていた。
 メタナイト卿は一瞬でそれを見極め、ギャラクシアに緑色の電撃を集めてワイユーの身体にそのままそれを突き刺し、身体を貫いて確実に仕留めた……かに見えた。
「……!?」
 ボヒュン!!
 貫いた瞬間、すぐにメタナイト卿はワイユーのその手応えの無さに気が付いた。
 それもその筈で、メタナイト卿が攻撃したのはワイユーの分身体。
 攻撃を受けた分身体は消滅し、メタナイト卿は周囲を見渡して本物を探そうとする。
「こっちだ!!」
「なにッ!?」
 グサッ!!!
 声と共にメタナイト卿の背後の地面からワイユーが飛び出し、メタナイト卿が振り向く前に左手に持ったクナイを左腕に向かって突き刺した。
 クナイはメタナイト卿の左腕を貫いて肉を抉り、赤い血を滴らせる。
「くッ………!」
「そろそろ…トドメを……」
「はあぁぁッ!!」
 ブシュウゥゥゥッ!!
「ぐおあぁあぁぁぁッ!?」
 背後を取ったために油断していたのか、ワイユーは右肩に振り向いたメタナイト卿によってギャラクシアを突き刺された。
 彼の右肩からは血が噴き出し、辺りの草には血渋きが飛び散った。
 ワイユーは慌てて地中から飛び出し、左手で血が噴き出す右肩を押さえるが…。
「ギャラクシアソードビーム!!」
「うわあぁぁぁあぁぁッ!!!」
 ドガアァァァァン!!
 ギャラクシアから撃ち出された三日月状の光の刃がワイユーに命中し、2人の勝負は決した。
 光の刃は爆発し、ワイユーを宙へと吹き飛ばす。
 ワイユーは弧を描いた後地面に叩き付けられる。
 倒れたワイユーにメタナイト卿は歩み寄った。
「成る程。あの爆発を煙幕に利用して、その中でお前は分身を作って囮にし、自分は地中に潜って私を確実に倒そうとしたのだな?」
「あぁ…その筈だった……。だが…あんたは俺のやろうとしていたことを…読んでいたみたいだな……」
「確かにあの時分身が来る可能性があることは私も予測出来ていたが、地中へ身を隠す能力までは読み切れなかった……。敵ながら少しは感心したぞ」
「『少しは』は余計だろ……」
 一言多かったメタナイト卿の言葉にワイユーは少し苦笑いしながらツッ込んだ。
「私はこれからお前の主人との決着を付けに行く。お前も私とヤミカゲの関係は知っているだろう?」
「知っている……。ヤミカゲ様本人から直接お聞きした………」
「彼とMTSの野望を阻止するため、宇宙の正義と平和のために私は彼を倒す。さらばだ」
 メタナイト卿は倒れているワイユーを残し、カービィとヤミカゲが戦っている場所を目指そうとする。
「(ヤミカゲ様……私はどうやら………ここまでのようです……)」
 心の中でワイユーは主人の名を思いつつ、静かに目を閉じ、事切れた
「卿!ご無事でしたか!?」
 ワイユーを倒した後のメタナイト卿の元へ、バトルマシーンたちを倒しカービィの援護に向かう途中のソードナイトたち4人の騎士が駆け付ける。
「お前たちか。私なら大丈夫だ……くッ…」
「卿!!」
 メタナイト卿がワイユーのクナイにより負傷した左腕を押さえた為、騎士4人は彼の身体を支えようとする。
「心配は要らない。この程度の傷、応急処置を施せば…。それに、利き腕はやられていない」
「し、しかし…」
 心配する騎士たちを制し、取り出した布をメタナイト卿は怪我をしている左腕に巻く。
「言いたいことはわかっている。元々私のことを守るのがお前たちの役目なのに、守れずに怪我をさせてしまって申し訳ないと思っているのだろう?」
「は…はい…」
 メタナイト卿の言葉に対しブレイドは返事をし、他の3人も頷いた。
「戦況のこともあり、そのことは私は気にしてなどいない。それにお前たち。今は何があってもヤミカゲとMTSをとめることが先だ」
「……はッ!」
 メタナイト卿も騎士4人に合流し、ヤミカゲと戦うカービィを助けに向かった。




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