副編集長の鎌田様作・アニメ版星のカービィ 第2期予想小説
第36話・前編
〜裏切りの忍者の末路〜



 〜ウィザード・フォートレス 司令室〜

 カービィ達がヤミカゲと激闘を繰り広げている頃、MTSの本部ウィザード・フォートレスでは、既におやつを食べ終わったグリルがその戦況をパラマターを使って監視していた。
 監視をするグリルの横に、転移魔法でマルクがやってきた。
「グリル。今カービィやヤミカゲの様子はどうなっている?」
「あ、お兄ちゃん!ヤミカゲって人はついに魔獣になったみたいだよ?」
「ヤミカゲめ、あの薬によって得た力を自分の意思で引き出したか…」
 マルクはモニターに映る、魔獣化したヤミカゲの姿を見る。
「魔獣化した奴は名付けて、『忍者魔獣ゼンジューボー』…」
「ぜ…ぜんじゅ〜ぼ〜?何それ?」
 聞いたことの無い単語に、グリルは頭を傾げる。
「ゼンジューボーというのは、それは資料が少ないから本当のことかどうかはわからず、作り話ではないかと言われているが、銀河大戦が始まるよりも昔に活躍したという、忍者兼賞金稼ぎとして名を知られたらしいある人物の名前からだよ。奴に与えた試作品の魔法薬の効力が僕が考えていた通りなら、奴はあの姿になっても言葉を発することは出来るし、元から使えた忍術の威力も増している筈だろう。…ただ」
 グリルに言葉の意味を説明した後、マルクは少し険しい表情になった。
「ただ?」
「肉体を魔獣化したことで、今のヤミカゲにカービィ達を倒すことの出来る実力があるかどうかが問題だね。まあ、それにだ。奴がここで勝っても負けても僕達に損は無い」
「それって…どういうことなの?」
「奴の本当の目的…それはまだ今の僕にもわからない…。だからカービィを倒した後、或いはこの戦闘が終わって奴が僕達に牙を向ける可能性は大いにある。その奴が考えているであろう真の目的に僕は興味は無いが、敵になるなら厄介であるのには違いない…」
「…ということは?」
「つまりだ。奴が今死んでもどうということはないし、生き延びても僕たちの方で殺すまでということだ」
 マルクのその言葉を聞き、考え込んでいたグリルは何となくだが理解出来たようで笑顔を見せる。
「あ、そっか!お兄ちゃんは本当はあのヤミカゲのことを処分したいんだね?」
「それもある。今はカービィを倒すために手を組んでいるのであって、あんな怪しい奴はカービィ達が死んだ後はもう用は無い。カービィが奴を倒してくれたのなら、また今までと同じようにデデデ陛下やエスカルゴン殿を利用したやり方で殺そうとすれば良いんだからね」
「なるほどねー。……それで、この後はどうするの?」
「グリル、お前はまたシミラとウィズの2人と一緒に出掛ける準備をしておけ」
「えっ、どうして……?」
「うん、それはだね…」
 グリルに何かを伝えたマルク。果たして彼がグリルと彼女の側近の魔獣2体に命じたこととは……。


 〜プププランド 草原〜

「グハハハ、どうした?さっさと来い!!それとも新しい力を得たこの俺に恐れをなしたのか?」
 魔獣となったヤミカゲこと、忍者魔獣ゼンジューボーは突然の変身に怯んだカービィ達を挑発。
「畜生…言わせておけば…!!ツキカゲ!!」
「よし…!!」
 ベニカゲとツキカゲは2人で忍者刀を右手に持ち、ゼンジューボーに正面から真っ直ぐに向かう。
 そして左右1人ずつにわかれると跳躍し、左手で服の中からクナイを取り出して投げつける。
「無駄だ!!」
 ドンッ!メリメリメリメリッ!!
 ゼンジューボーは右手で地面を叩いて忍者の『畳返し』のごとく地面を壁状に切り取り、自分の目の前に垂直に立てた。
「なにッ!?」
 土の壁はゼンジューボーを守り、飛んで来た複数本のクナイを弾き返す。
 しかしベニカゲとツキカゲの2人は空中からそのまま急降下しつつ、忍者刀を同時に土の壁に向かって振り下ろした。
「「せやああぁぁぁぁぁぁッ!!」」
 ギィィィィィィィンッ!!
 ゼンジューボーが作った土の壁は恐ろしい程に強固で、2人の刀をも簡単に防いでしまう。
「ぐわッ!!」
「がはッ!!」
 土の壁に傷を付けることすら出来なかった2人は転倒し、地面に身体を叩き付けられる。
「これは防御だけに使えるんじゃない」
「!?」
 ドガアァァァァンッ!!
「「うわああぁッ!!」」
 土の壁の向こうから声が聞こえたと同時に突然壁は爆発して粉々になり、忍者2人を大きく吹っ飛ばした。
「2人とも!!大丈夫!?」
 ベニカゲとツキカゲの2人にフームが声をかけながら駆け寄り、カービィとメタナイト卿が2人の身体を起こす。
「…ぐぐ…悔しいが…今の拙者達2人じゃあいつの防御を突破することは出来ないし、役に立てなさそうだ…」
「次は私が行く…!」
「メタナイト卿!!」
 メタナイト卿は翼を広げ、低空飛行をしながらギャラクシアを構えてゼンジューボーに突っ込んだ。
「うおぉぉぉぉぉッ!!!」
 ビシュウウゥゥゥゥンッ!!!
 ギャラクシアソードビームが飛び、土の壁を真っ二つに斬った後にゼンジューボー自身に襲い掛かる。
「でやッ!!」
 バシイィィィッ!!
 三日月状の光の刃が当たる瞬間にゼンジューボーは左腕のドリルを振り下ろしてそれを消し去ってしまい、彼は無傷であった。
「つおぉぉぉぉ!!」
「ふん!!」
 キン!キン!キン!!
 ギャラクシアを使った彼の優れた剣術も、左腕のドリルで全て受け止めてしまうゼンジューボー。ギャラクシアとドリルが何度もぶつかることで火花が散り、周囲には金属音が響く。
「風塵の術!!」
 ビュオォォォォォォッ!
「どわッ!!」
 ゼンジューボーが右手の平を前に突き出すとヤミカゲの時にも使っていた忍術『風塵の術』が発動し、メタナイト卿を突風で吹き飛ばした。
 しかしゼンジューボーの攻撃はこれだけでは終わらない。
「風だけじゃないッ!」
 ヒュン ヒュン ヒュン!!
 突き出されたままのゼンジューボーの右手の平は巨大化し、中央から3つの飛行物体を飛ばした。
 飛ばされた物体の内1つは風で吹っ飛んだメタナイト卿の足に、他はベニカゲとツキカゲに向かいベニカゲの背中とツキカゲの足に吸着。
「くッ…力が…抜けていく……!!」
 その物体はメタナイト卿の足から離れず、その上彼の体力を吸い取っているようで、メタナイト卿の抵抗する力を奪っていく。
 やがて物体は怪しい光を出し始め……!?
「まさか……!!」
 ズガアアァァァァァンッ!!
「ぐわああぁぁぁッ!」
「メタナイト卿ッ!!」
 メタナイト卿に吸着した物体は光った直後爆発を起こし、彼を巻き込んだ。
「クソッ、拙者の背中から離れろ!!」
「ぐッ…力を吸い取られてる…!?」
 ベニカゲとツキカゲも、それぞれ身体に吸着している物体を引き離そうと必死だ。
 だが体力を吸い取られている彼らは力で引き離すことは出来ず……。
 ドオォォォォンッ!!
「「うわああぁぁッ!!」」
 メタナイト卿、ベニカゲ、ツキカゲはゼンジューボーが飛ばした爆発物により、3人とも戦闘の続行が不能な状態となってしまった。
「この程度なのか…。まずはメインディッシュの前に、3人とも大人しく消えてもらおう……」
 ギュイィィィィィィンッ!
 倒れた3人に対しゼンジューボーは左腕のドリルを回転させ、トドメを刺そうと迫る。
「まずはメタナイト。貴様からだ」
「ぐぅッ………!!」
 ゼンジューボーの攻撃に抵抗しようとギャラクシアを杖代わりに立ち上がろうとするメタナイト卿。
「ほう…まだ立てる力があるとはな…。宝剣ギャラクシアの使い手なだけある…」
「きょッ……卿ッ!今の貴方では………ぐッ…!」
 先程のヤミカゲとの戦いで負傷したため戦闘を見ていることしか出来なかった騎士たち4人の内の1人であるソードナイトが、メタナイト卿の身を案じて駆け寄ろうとするが、傷が痛むのか、傷口を押さえて倒れる。
「ソード、動いちゃダメよ!」
「しかし、フーム様……!」
 フームがソードナイトを支え、彼を後ろに下げさせる。
「ククク……」
「はあぁぁぁッ!!」
 ゼンジューボーがメタナイト卿に襲い掛かろうとしたとき、彼の右横から叫びながら接近する影が見えた。
 カービィである。
 カービィは地面を蹴って跳躍、忍者刀でゼンジューボーの右腕を攻撃しようとする。
「…遅い」
「ぽよ!?」
 カービィの攻撃が当たりそうになった瞬間、ゼンジューボーは身体を光らせ3体に分身。
 分身したゼンジューボーはカービィを取り囲む。
 そして取り囲んだ3体のゼンジューボーのうちの1体が口を開いた。
「3体に分身した俺をどう倒すのかな……?ふっはっはっはっはっは…」
「ふッ!!」
 分身したゼンジューボーに驚きながらも、真上に跳んだカービィは3体のゼンジューボーを同時に攻撃するように手裏剣とクナイをばら撒く。
 しかし3体のゼンジューボーは同時に右手で地面を叩いて土の壁状に切り取り垂直に立て、手裏剣とクナイの雨を防ぐ。
「はぁッ!!!」
 ビシュウウゥゥゥンッ!!
 カービィの方も、手裏剣とクナイが防がれても忍者刀から光の刃を発射し、更に攻撃を加えた。
 だが土の壁を破壊するにはパワーが足りなく、壁に亀裂を走らせるだけで壊すまでには至らずに光の刃は消えてしまう。
 光の刃を放った後、カービィはゼンジューボーに包囲されないように空中で後方に一回転して受け身を取り、1体のゼンジューボーの背後に着地。
 すぐさま忍者刀を構えてゼンジューボーが振り向いた瞬間に斬り付ける。
「はたき斬り!!」
 ボヒュンッ!!!
 攻撃を受けたゼンジューボーは分身体であり、白い煙となって消えてしまった。
 残る2体のゼンジューボーは右手を巨大化させ、手の平の中央から標的に吸着した後爆発する小動物を飛ばす。
「「さあ貴様もアイツらと同じ目に遭わせてやる!!!」」
 2体のゼンジューボーは同時に口を開き、言葉を合わせる。
 しかし飛ばされた小動物に対し、カービィは冷静にクナイと手裏剣を投げつけて爆発させた。
「(クソッ、この姿になっても奴には俺の攻撃は通用していない……!?)」
 自身の術や攻撃をパワーアップしたニンジャカービィに悉くかわされ、ゼンジューボーは焦り出す。
 だが、顔の表面上に動揺している様子を出すことは無く、何か策を思い付いたようでニヤッと笑った。
「フッ…これならどうだッ!」
 分身している内の1体のゼンジューボーがカービィに向かって突進、左腕のドリルを回転させつつ突き出してくる。
 カービィはゼンジューボーを待ち構え、ドリルをかわしつつ忍者刀で相手の左腕を切断した…かに見えた。
 ザクッ!ボヒュン!!
 左腕を切断されたゼンジューボーは白い煙を出しながら消えてしまう。
「食らえ、爆水の術!!!」
 ドバアアアァァァァァァァッ!!!
 分身を囮にしてカービィ達のいる向きから自分の姿を隠していたゼンジューボーの本体は後ろで密かにエネルギーを溜めており、右手を地面について大量の水を呼び寄せ、それを大きな水柱に変えてカービィに向かって物凄い勢いで叩き付けてきた。
「さっきよりも技の範囲が広くなってるわ!カービィ、気を付けて!!」
 フームはゼンジューボーの爆水の術がヤミカゲの姿の時に本気で出してきたものよりも更に強くなっていることに驚きを隠せない。
 だが、相手が忍術を出してる最中にカービィの方もエネルギーを溜めていた。
「爆水の術!!!」
 ザバアアァァァアァァァンッ!!
 青いオーラを発していたカービィも同じくして右手を地面につくと水柱を発生させる。
 その大きさはゼンジューボーの物と互角だ。
 互いの出した巨大な水柱は激突すると、押し合い始めた。
「ぐうおぉおぉぉおおおぉぉぉッ……!!」
「はああぁぁぁぁあぁぁぁぁあッ……!!」
 両者共に譲らない術の撃ち合いで数秒は互角の状態が続いたが、徐々に少しずつゼンジューボーが押され始めていく。
「ぐッ…なに……ッ…?」
 ダバアァァァァァァァァァッ!!
「ぐわッ……ごぼごぼ……」
 水柱が押し返されたことにより、自分が出した水柱とカービィが出した水柱の両方の攻撃を受けたゼンジューボーはそのまま水柱に打ち上げられ、水柱が消えた後地面に叩き付けられた。
 周囲には大量の水が溢れ、メタナイト卿やフームたちの視界を遮る。
 やがて水は勢いが収まるが、周囲のゼンジューボーが畳返しのように地面を切り取った箇所の溝に水が入り、少しばかり深い水溜りが出来ていた。
「ク…ククク……この程度じゃまだ俺は殺れんな……!!」
「ハァ…ハァッ……ハァ…」
 爆水の術をまともに食らってもゼンジューボーは平然と立ち上がるという恐るべきスタミナを見せた。
 そのゼンジューボーに驚くカービィは、昨日から続いているヤミカゲとの戦闘によりダメージと疲労が蓄積し、更には爆水の術でゼンジューボーにトドメを刺そうとエネルギーを大量に消費した反動もあって息が上がり、疲れているのを隠すことが出来なくなっていた。
「ククッ…パワーアップはしても流石の星の戦士も疲労を隠せなくなってきてるようだなぁ……?」
 疲れているカービィを見てゼンジューボーは嘲笑っている。
「カービィ、しっかりして…!」
 カービィの元にフームが駆け寄り、彼の身体を起こすのを手伝った。
 カービィは態勢を立て直すと目付きを鋭くして目の前のゼンジューボーと対峙。
 カービィを起こしたフームも、ゼンジューボーを睨んだ。
「ぐッ……まだ戦えるのか…!?」
「カービィは貴方なんかに負けたりはしないわ!貴方の野望を止めなければならないもの!!」
「フーム…!危ないッ……!!」
 遠くで見ていたメタナイト卿はフームの身を心配し、傷ついた身体を奮い立たせ、ギャラクシアを杖代わりにして彼女の元へ向かう。
「小娘……どうやらカービィと共に殺されたいようだな…。さっきは手加減をしたがこの姿になった以上、もうそうはいかんぞ!!!」
 左腕のドリルを回転させ、ゼンジューボーはカービィの横にいるフームに向かって突き出す。
「!!」
 フームは思わず顔を伏せたが、それをカービィが忍者刀を、メタナイト卿がギャラクシアを使って2人掛かりで受け止めた。
「2人掛かりでないと俺の攻撃を受け止めることが出来ないとはな…」
「ぐ……!!」
 傷ついているカービィとメタナイト卿は必死でゼンジューボーのドリルを押さえ込んでいる。
「……もう飽きたな。さっさとこの戦いを終わらせ、俺の復讐を果たしてやる」
 ガギィィィィンッ!!!
「うわッ!!」
「ぐはッ!!」
「2人とも!!」
 カービィとメタナイト卿はゼンジューボーの攻撃で左右に弾き飛ばされてしまう。
 ゼンジューボーは最初に左に飛ばされたカービィに狙いを定めた。
「まずは貴様からだな、『星のカービィ』…。あの時の仮もついにこれで返せる……そこでそのまま死ねぇぇぇぇッ!!!
カァァァァァビィィィィッ!!
秘技・爆炎の術ゥゥゥゥゥゥッ!!!!
 動けずにそのまま赤いオーラを纏ったゼンジューボーにトドメを刺されそうなカービィを見て、フームは思わず悲鳴を上げる。
 ゼンジューボーは派手に跳躍し、右手を地面について火柱を放とうとする。
 しかし、その時だった。
爆炎の術ッ!!!
「なにィッ!!??」
 ゴオオオォォォォォォォォォォォッ!!!
ぐわああぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!??
 突如ゼンジューボーから見て右斜め前に出現したもう1人のニンジャカービィが炎のような赤いオーラを纏った状態でゼンジューボーに接近、地面に右手をついて巨大な火柱を発生させた。
 ゼンジューボーはその高熱の火柱に巻き込まれ、断末魔の叫びを上げた。
「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
 全身を焼き尽くされ、ボロボロにされたゼンジューボーは爆水の術を受けた時と同じように地面へと真っ逆様に落下する。
 同時に、ゼンジューボーが襲おうとしていたニンジャカービィの分身体は消え、爆炎の術によりエネルギーを使い果たしたカービィは変身が解け、力が抜けたようにその場で静かに倒れた。
「カービィ…!!」
 フームは変身が解けて倒れたカービィを抱き上げ、無事であることを確認すると強く抱きしめた。
「ゴフォッ……何故だ…?何故あの時貴様は……!?」
 爆炎の術で身体を焼かれ、虫の息の状態のゼンジューボーは状況を理解出来てないようで、カービィがどこで自分の隙を突いたのかを思い返そうとする。
 そしてゼンジューボーはフームに抱きしめられているカービィの方を見て、彼の全身が水で濡れていること、カービィが飛んで来たと思われる方向に自身の術で穴を開けた地面に水が溜まっていることに気付いた。
「そうか…カービィ……貴様は俺が爆水の術を食らったあの時、密かに分身を作った後に自分は水溜りに逃げ、反撃のチャンスを窺っていたのか……。姿や単純な強さだけでなく、戦法や戦闘テクニックも俺以上に忍者らしいものへと進化を遂げていたとはな………」
 喋るゼンジューボーに対し、フームとメタナイト卿は厳しい目を向ける。
 ゼンジューボーは観念したのか、2人を気にしながらも口を開いた。
「なんだその目は…?わかった、この俺を倒した褒美にクレイトスの奴とMTSの情報を教えてやりたい…ところだが、お前たちにとっては残念な話だが俺は奴らのことは殆ど何も知らない………奴らの首領と思わしき人物もスピーカー越しにしか話せなかった………。奴らの元へ行って組織の一員となり、奴らの秘密を……探る俺の計か……」
 ボオォォォォォォッ!!
ぐぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
「「!!」」
 いきなり空中から降ってきた火の玉がゼンジューボーに直撃、虫の息であった彼に完全にトドメを刺し、殺した。
 その光景にゼンジューボーの話を聞いていたフームとメタナイト卿は驚き、火の玉が降って来た方向の空を見上げる。
「やっぱり裏があったのね〜…。お兄ちゃんも最初っから信用してなかったみたいだけど……さ!」
 火の玉が降って来た方向からゆっくりと地上に降り立ったのはMTS副官のグリルと、彼女の側近である魔導魔獣のシミラとウィズの3人組。
 グリルの右手からは煙が出ており、火の玉ことフレイムボールを撃った犯人はグリルだとメタナイト卿とフームはすぐに察し、グリル達の目的を訊こうとフームは声を張り上げた。
「いったい何しに来たの!?」
「カービィに負けちゃったしこのヤミカゲって忍者にもう用は無いんだけど、死体は回収しておくように言われたのよ。それにこいつ、今喋ろうとしていたけどやっぱり私達のところに潜り込んで何かしよう としてたみたいね。…ウィズ!」
「…承知致しました」
 ヒュウウゥゥゥゥン…!
 グリルに命じられたウィズは魔法のシルクハットを手に持ち、その中にゼンジューボーの死体を吸い込んでまたシルクハットを頭に被り直す。
「他の忍者たちの死体回収も完了したし、今日はもう用事が無いから帰るわ。明日からはまた私達とデデデ陛下が貴方達の相手だから。それじゃあね♪」
 最低限の言葉だけを残し、グリルと魔導魔獣2体は転移魔法でその場から立ち去る。
 グリル達の気配が完全に消えたのを確認したフームは肩の力が抜け、思わず安心した表情を浮かべた。
「ハァ……今の状態で戦いを挑まれなかったのは助かったわ……」
「うむ。ヤミカゲとの決着も付いたが、まさか彼があのような形で最期を迎えることになるとは…」
「グリル達は魔獣になったヤミカゲの死体や、他の忍者たちの死体を回収して何をするつもりなのかしら…?」
「…それは私でも予測が付かない。しかし、奴らに利用されたジョーの父・ジェクラのことを考えると……奴らはまた死体を生き返らせようとしているのか…?また同じことをするかわからないが、嫌な予感がする……」
 グリル達がゼンジューボーこと魔獣化したヤミカゲや、ヤミカゲの部下である忍者の死体を回収したという行動の訳について理解がまだ出来ないメタナイト卿とフーム。
 しかし、以前利用されたナックルジョーの父親・ジェクラの件を考えると2人は嫌な胸騒ぎが収まらなくて仕方がなかった。
「ぽ…ぽよ…」
「あッ!気が付いた?カービィ?」
 メタナイト卿とフームが話している途中、気を失いフームの両腕に抱きかかえられていたカービィが目を覚ました。
「ぽよ?」
 目の前に敵がいなかったためか、カービィは状況を把握出来ずに辺りをキョロキョロしている。
「カービィ。敵は…ヤミカゲは…そなたが眠っている時にあの魔法使い…グリルに殺された」
「ぽよ〜…」
 フームの横にいたメタナイト卿はカービィにすぐに状況を教え、それを聞いたカービィは納得したのかしていないのか、何とも言えぬ反応を返した。
 3人のところに、ベニカゲとツキカゲの2人の少年忍者、ソードナイトたち4人の騎士たちが互いに傷ついた身体を支え合いながら集まってきた。
「卿、カービィ殿、フーム様!ご無事ですか!?」
 傷を負っていながらもブレイドナイトはカービィ達の心配をし、無事かどうか確認をする。
「心配はするな。私もカービィも怪我はしているが、命に関わる程のものではない」
「フーム様もご無事のようで何よりです」
 騎士たちにカービィと自分は大怪我という程の怪我はしていないことをメタナイト卿は伝え、騎士たちの内の1人のソードナイトもフームがヤミカゲによって怪我をしていないのを確認出来て安心している。
「くっそぉ〜…拙者は結局肝心な時に役に立たなかった……!!」
「くッ………!」
 ヤミカゲを相手には活躍することが出来ず、悔しがっているベニカゲとツキカゲ。
 しかし、そんな彼らのところにメタナイト卿は怪我をしている足を引き摺りながら近づき、口を開いた。
「いや、ここに来たのは偶然だそうだが今回はそなたら2人に私は感謝をしている」
「…え?」
「元々は私やカービィ達だけでヤミカゲとの決着は付けようとしていたが、ジョーとシリカは戦うことが出来なくなり、人手が不足していたところにそなたらが現れ、協力をしてくれると申し出てくれた…。ヤミカゲが率いていた忍者達を倒せたのは協力してくれたそなたらのおかげだ。本当に感謝している」
「そッ…そんな風に言われると照れてしまうな……」
「うん……」
 メタナイト卿から今回の件のことで感謝をされ、ベニカゲとツキカゲは嬉しそうにしている。
「早く城へ戻ろう。俺も含めて皆、傷の手当てが必要な筈だ」
「この傷じゃ、戻るまでがつれーなー…」
「うむ。ここから城までは少し遠いが、急ごう」
 トライデントナイトが急いで城へ戻ることを提案すると、アックスナイトは少し怠そうな返事をした。
 対してメタナイト卿はその提案を受け入れ、カービィ達は怪我をした身体を支え合いつつ、時折フームが気遣う形で城への帰りを急いだ。




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